36.大胆なポーズの双子
モモコが連れて行かれたのは、林の奥。
両手を二人に引かれながら、低木を避けて落ち葉を踏みしめて歩いて行くと、モワッとする暖かくて湿った空気が漂ってきた。それは、脱衣所から風呂場に入っていく感覚に近い。
硫黄のような匂いもちょっとしてくるが、木々の向こうに火山活動らしいものは見られない。
「もうすぐ、そこ」
フェムトが少し早歩きになったので、モモコたちも歩調を合わせた。
彼女が大きな木を迂回すると、見えてきたのは、林の真ん中で湯気がもうもうと立ちこめる池。直径10メートルほどの大きさで円形に近い。
見た目は「湯気の立つ池」なのだが、もしかしたら人工的に作られた露天風呂なのかも知れない。
「この温泉って、ここから魔王の城へ行くまでに、いくつもあるよ。
回復効果があるから、疲れたり傷を負ったら、ここに入ると体力も魔力も全回復するし、傷も治る。
だから、超便利」
モモコは、一種の回復の泉みたいなものだ、と思った。
それが、魔王の城へ行くまでに各所にあるとなると、非常に都合が良い。ヘロヘロになったら、「温泉」と称する「池」にドプンと浸かれば良いのだ。
「いいねぇ、全回復の温泉」
「いいでしょう? さ、着替えて」
フェムトもゼプトも、いきなり服を脱ぎ始めた。
すると、彼女たちは、服の下には何も身につけていないことがわかった。これにはちょっと驚き、目が釘付けになる。
「どうしたの? その格好で、まさか入らないよね?」
フェムトの怪訝そうな顔で我に返ったモモコは、ブレザーを脱ぎ始めた。
魔法『ズレーブラー』をかけられたと適当なことを言って、ずれたブラをアンベールに直してもらうため脱いだ経験があるから、脱ぐのも着るのも問題ない。
だが、人前で全裸になるのは、かなり抵抗があるのだ。
体がモモコだから、なおさらである。
幼馴染みの全裸が、今ここにある。それだけで、意識が飛びそうだ。
「ここには、あのエッチなアンベールがいないし、女同士だから、いいじゃない」
そう言うフェムトにズキッとさせられて、モモコは心の中で『いやいや、そのアンベールがここにいるんだが』と激しく動揺する。
「え? もしかして、女同士でも恥ずかしい?
ほら、私は大丈夫だよ。見せよっか?」
服を脱ぎ捨てたフェムトが、全裸の正面をモモコへ向けた。
両手を腰に当てて、ちょっと体を傾かせ、右足を前に出して交差させたポーズに、モモコは悩殺される。
半球状に膨らんだ胸をグッと突き出すので、自然と視線がその膨らみの先端へ行ってしまう。
「モモコには負けるけど、ほら、それなりにあるでしょう?」
はい、あります。十分、あります。形が良すぎて、鼻血が出そうです。
「でも、モモコって、大きいから羨ましいなぁ」
あのー、体を揺らすと揺れるんですが。そんなにプルンプルンと、やめてください。もっと鼻血が出ます。
すると、これまた全裸になったゼプトが、同じようなポーズを取る。
こちらは、膨らみかけの小さな胸で、大きさには姉に負けるが、悩殺には十分だ。
「どう? 私。
姉さんには負けるけど、いずれ追い越すから」
はい、ゼプトたん、それはもう期待しています。フェムトたんを抜き去っちゃってください。
「大きくなったら、モモコにも負けないから」
うーん、それはハードル高いけど、頑張ってね。今でも卒倒しそうなのに、その体型で胸がここまで大きくなったら、どうなることやらですよ。
「あー、まだ脱がない。
えーい! 脱がせちゃえ」
「おー!」
やめてください、フェムトたん、ゼプトたん! 素っ裸で、そうやってモモコお姉様の体を触るのは! 反則級です!
「ちょ、ちょっと待って!」
「待たない」
「待てない」
「やーめーてーくーれー!」
モモコは、くすぐったさと恥ずかしさにもだえながら、一応は抵抗した。
しかし、二人の手によって力尽くで素っ裸にされるのに、それほど時間は掛からなかった。
「「すごーい!」」
もちろん、豊穣な双丘のことだろう。なにせ、自分でも、足下が見えないくらい大きいのだから。
こうやって、二人にジロジロと眺められると、たとえ女であれ、男に見られるのとあまり変わらない気持ちになる。
胸の辺りが、視線でチクチク刺されるような感覚に襲われる。
モモコの中のアンベールは、それまでのモモコの気持ちが、少しはわかったような気がしてきた。
「さあさあ、入ろうよ!」
「気持ちいいから」
モモコは、フェムトとゼプトに両手を引かれながら、温泉へと向かった。
揺れる自分の胸を見下ろしながら、大いに心配する。
――もし自分がモモコと体が入れ替わったアンベールだとバレると、どうなるのだろう?
暖かい温泉に足を踏み入れて、ジワッと足から温まってきたモモコだが、その心配を抱いた途端、ブルッとした。
女だと思っていたら、男なのだ。
ショックは計り知れないだろう。
モモコは膝まで温泉に浸かりながら、揺れる水面の上に、ずっと視線を落としていた。




