35.よく考えればモモコは男だった
アンベールが回復してから一行が町を出ると、少し草原が続いたが、また林が見えてきた。
その林の中を突き進むも、終わりが見えない。
「なあ、フェムト。この道はいつまで続くんだ?」
「朝まで」
「ってことは、どこかで野営?」
「そだよ」
「腹減ったあああああっ」
「この辺りは、鹿が出るから、仕留めて焼くことだね」
「鹿の肉って、うまいのか!?」
「美味だよ」
「じゅるる……。
それより、汗かいた。もう、びちょびちょ」
「もう少し先に、温泉があるよ」
モモコの目が輝く。
「なんと! 温泉!
いいね、いいね!」
「一緒に入る?」
「おお、そうだな!」
と、その時、モモコは後ろから肩を叩かれた。
振り返ると、アンベールが口に拳を当てて咳払いをしている
「モモコ。自分の立場を、よーーーーーく、わきまえることだ」
「はあ?」
「体を見てみろ」
その言葉に、モモコは、自分の体を見るまでもなく意味がわかった。
自分は、本当は、モモコの体と入れ替わっているアンベール。
つまり、女だけれども、男なのだ。
モモコの頬も耳も、見る見る赤くなる。
「あ、ああ、あー……。
じゃあ、お前が代わりに入るか?」
思いがけない申し出にアンベールは狼狽える。
「ちょ、ちょっと!
何を言うの、モモコ!」
フェムトが眉をひそめた。
「やだなぁ、アンベールって。
いくらパーティで一緒だからって、女と一緒に温泉は入れないよ。
さあ、行こう。女の勇者様」
「そうよ。行きましょ」
ゼプトがモモコの手を引いて、ずんずんと歩いて行く。フェムトも続く。
「ちょっと待って! モモコ!」
「「アンベールのエッチ!」」
フェムトとゼプトが振り返って、あかんべえをした。
エスカが「ムフフ」と笑うので、アンベールが見下ろして「こらっ!」と睨み付ける。
「アンベール。猫に当たるでない」
アルバンの忠告に、アンベールは、泣きそうな顔になった。
「そんなに女と風呂が入りたいか?」
「いえ、その……」
「まあ、入りたい気持ちも、私も男である以上、わからんでもないが」
「二重否定……」
「ここは我慢だ。
連中が入り終わったら、私とアンベールとで入ろう。
それまで、ここで待つべきだ」
アンベールは、ますます顔を赤らめた。




