27.無人の大地にたなびく黒煙
茫漠たる緑の大地に起伏に沿ってクネクネと続く茶色の筋のような道。
その舗装されていない道は、馬車が1台しか通れないほど細く、向こうから馬車でも来ようものなら緑のカーペットへ足を踏み入れることになる。
だが、道を空けることは一度もなく、それ以前に牧草地帯なのに、牛も馬もいない。揚げひばりのような鳥もいない。
ラパン族の獣人すら、姿がないのだ。
こうなると、平和でのどかに見えるこの緑の大地に、自分たち以外のあらゆる生けるものは全て死に絶えたかのように思えてくる。
「なあ、どうして誰もいないんだ?」
「うむ……」
「鳥どころか、バッタも蟻もいないぞ」
「確認したのか?」
「いや、あくまでそこは想像で……」
「まあ、そうであろう。
それにしても、確かにおかしい」
「おお、アルバンもそう思うか。
さては、魔王出現でみんな逃げたとか?
早く町へ行こうぜ!」
「LV2の成り立てホヤホヤが勇んでも、魔王相手は無理。
大方、腹が減っただけだろう」
「バレたか……」
しばらく歩くと、モモコがしゃがみ込んだ。
そして、ステイタス画面を開く。
「マジでか!?」
「どうしたの?」
アンベールが背後から画面を覗き込む。
モモコが画面を指さしながら振り返った。
「これでも体力が5しか減ってねえ」
「よかったじゃん」
「うわっ、なんか、100キロは歩いた気分だぜ」
アンベールがモモコの頭をコツンと叩く。
「まだ30分も歩いていないわよ」
「お前さあ、よく自分の頭をポカポカと――」
「シッ!」
「おっと、いけねえ。奴にはまだ言ってなかったな」
小声になったモモコは、少し先を歩くアルバンの方へ目を向ける。
「だって、叩きやすいところにあるんだもの」
「手加減してくれよな。
モモコの中身は、俺、アンベールで、いちお、お前の体を借りてるんだから」
「ま、……考えておく」
アンベールは、モモコに目を向けたまま腰を上げた。
と、その時、エスカが素っ頓狂な声を上げた。
「おい! 黒い煙が見えるぞ!」
三人は、どこどこ、と目をこらし、額に手をかざす。
しかし、地平線には、湧き上がった白い雲が壁のようになっているだけ。
「さすが千里眼、と言いたいところだが、俺たちにはなんも見えねーぜ」
そう言いながらモモコは、目を閉じて肩をすくめた。
エスカは、呆れ顔でモモコを見上げる。
「そんなに目が悪いのか?」
「特殊能力を持つお前と一緒にすんな!」
そこへ、アルバンが「まあ、言い争っても仕方あるまい」とつぶやきながら、早足で先を急いだ。
「おっ、あいつ、足がみじけーくせして、超はええ。
俺たちも行くか!」
「そうね」
二人と一匹は、アルバンの背中を追った。




