19.経験値アップの森
今回のミッションでは、モモコとアンベール、そしてエスカにとって、有利な点が2つある。
それは、セーブポイントで過去に戻れること。
そして、記憶がリセットされずに残ること。
失敗したら、やり直しが利く。
記憶に残っているので、次は失敗しないように作戦を立てることが出来る。
こうなると、考えようによっては、ほぼ無敵だ。
森の中を歩いている最中に、モモコはアルバンから、まだ聞いていない情報を引き出した。
まず、モモコかアンベールのどちらかが死ぬと直近のセーブポイントに戻るのだが、エスカだけが死んでも同じことが起こること。結局、二人と一匹のいずれかが死ぬと、全員が過去に戻ることになる。
モモコだけが戦って勝利しても、戦っていないアンベールやエスカの経験値が上がること。ただし、スキルまでは連動して上がらない。スキルが上がるのは、戦った者だけだ。
セーブは、勇者のアンベールしか出来ない。ゲルトの引き出しも勇者のみだ。
武器や防具やアイテムは、売買できる。だから、ゲルトに困ったときは、不要な物を売れば良い。
「他にないのかよ?」
「わからなければ、聞くが良い」
「だから、攻略本が欲しいよなぁ……」
「魔導書なら貸しても良いが」
「何でもいいから、くれ」
「やらんぞ。貸すだけだ」
アルバンから魔導書を受け取ったモモコの前に、電子音とともにメッセージ画面が表示された。
『>モモコが魔導書を手に入れました』
「きったねー本だなぁ」
「要らなければ、返せ」
「これは、攻撃に使えないのか?」
「馬鹿を言うな」
「例えば、こうやって。
とりゃあ!」
「痛い! 本の角で頭を叩くな!」
しばらく森の中を歩いていると、狼型の魔物が現れた。
練習したいというアンベールが、聖剣を取りだして、危なっかしい振り回し方だったが、何とか撃退した。
魔物は、息絶えると、光の粒となって消えた。
また、狼型の魔物が現れた。
今度は、違う魔法を使いたいというモモコが、火炎の魔法を使って、こちらは難なく倒した。
こんな調子で、次々と現れる魔物を撃退しつつ、三人と一匹が森を抜けた。
目の前には、腰までの高さの草が生い茂り、所々に、林とまでは行かないが、木々が固まって群生している。
「フー。練習用のフィールドを抜けた、ってとこかな」
「経験値アップのための森だったわね。汗をかいたわ」
「お前たちも、序盤であの戦いぶりは上出来だ。
経験値も大分アップしたであろう」
モモコとアンベールは、それぞれ自分たちのステイタス画面を開いて、経験値を確認する。
二人とも、青いドレスの女を倒したときは10だったが、今は75になっていた。
「おおおっ!? 結構アップしているぞ!」
「魔物を十匹倒したから、平均7.5」
「一匹当たり、5ないし10ってところだな。
99まで後24。
ん? おい、アルバン」
「何だ?」
「もし、魔物三匹で経験値が30アップしたら、75は105になるのか?」
「99で頭打ちだ。正確には、そのLVでの最高値で頭打ちになる」
「搾取だぁ……」
モモコは、獣道らしい道を見つけて、歩き始める。
「おいおい、そっちじゃない。町に行きたいなら反対側だ」
アルバンが、ケーンを持っていない方の手で手招きする。
「いやあ、なんか気になるんだよなぁ、こっちの道」
「行かない方がいいぞ」
「アルバン。お前、もしかして、こっちに何があるか、知っているだろ?」
「……」
「なあ、アンベール。
これ、草ぼうぼうだけど、開拓地の跡って感じじゃね?」
「そう……ね。
作物を植えた跡があるわ。全部枯れているけれど」
「アルバン! こっちに誰かいるだろ!?
会わせたくないから、反対側を誘ってるんじゃないのか!?」
「……」
「答えたくないなら、俺が確かめてやる」
モモコは、獣道をずんずんと歩いて行った。




