表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
虹の先に繋がる世界  作者: 水無月 壱九
グロスティア
97/172

96話 郵便屋さん

「さて、皆落ち着いたところで今後について決めようか。」


俺はマグロの体液まみれになってしまったズボンを着替えてから皆に向き合った。何があったかは聞かないで欲しい。


「実は貴族をぶっ飛ばしてしまいました。なので指名手配されちゃうと思います。とりあえずザクレンに行くという事は変わらないけど、今後活動し辛くなるかもしれません。」


「そうですね。あの貴族は私達が冒険者だという事も知っているようでしたし、手を回される可能性は高いですね。捕まる気がないのであれば、この国の冒険者ギルドは利用しない方がいいかもしれません。」


「この国のだけでいいの?」


「はい、犯罪を犯した冒険者は相当な重犯罪者でない限り、その国でしか指名手配はされません。犯した犯罪も国によって罪の重さが違いますからね。同盟関係にある国同士でしたら引き渡しもあるでしょうが、幸いこのロイト王国には同盟国はありませんので、国外に出てしまえば捕まることは無いと思います。もしヨーヘーがあの貴族を殺してしまっていたら少し話も違ったのでしょうが、傷害くらいではそこまで重い罪にはならないでしょう。よく自制しましたね。」


「マジで?貴族の種子を刈り取ってきちゃったんだけど、そんなに重い罪にならないのか。後悔はしてないけど安心したぜ。」


「・・・貴族の種子とは?」


俺はトリスに耳打ちして教えてあげる。タァマちゃんにはまだ早いからな。するとトリスは若干顔を赤らめてコホンと咳払いをした。


「と、とにかく国外逃亡すれば問題ないです。たぶん。」


この反応は場合によっちゃ重罪ということか。


「そうか、まぁ幸いザクレンに行った後は予定を決めてなかったし、そのまま他国に高跳びしちゃうかー。」


「それが宜しいかと思いますよ。」


「アリア、タァマちゃん。故郷を捨てることになっちゃうけど大丈夫?」


「にゃぁ!お兄ちゃんのいるところがタァマのお家ですっ!ずっと一緒にいますからっ!」


「私もこの国にもう家族はいないし、今は皆が家族だと思ってるから問題ないよ。・・・でも。」


「でも?」


「ううん、キレースで知り合った皆と会えなくなるんだなぁって思うとちょっと寂しいね。」


あぁ、そうか。この国から出るということは、ソン爺やマッスルさん、それにカナさんとも会えなくなってしまうのか。それは残念だな。

俺達の指名手配が発行されれば、ギルド長であるソン爺の耳にも入るよな。心配かけないように今回のあらましについて手紙を書いておいた方がいいかな?

皆に相談すると、ソン爺にはちゃんと伝えておいた方がいいだろうということになったので、俺はソン爺に向けて手紙を書くことにした。

異世界に来て初めての手紙だ。なんか緊張するな。ただその手紙が爺さんに向けて書くという事であまりテンションは上がっていない。内容、内容ねぇ・・・。


拝啓・・・は硬いか。

やっほー・・・軽いよな。

チェーッス・・・馬鹿丸出しだな。


10分後。


とりあえず要点だけを書いたなんの面白みの無い手紙が出来上がってしまった。こんなのつまらない。一緒に虫の死骸も入れておこう。


「この手紙ってどうやって届けるの?」


「そんなの郵便屋さんに届けて貰うに決まってるじゃない。」


この世界にも郵便屋さんいるんだな。聞くところによると、どんな困難な所でも手紙を届けるという郵便屋があるらしい。

どんな困難な所でも届けるってのが怪しくもあるが、実績としては火山の噴火口に届けたとか、戦争の最前線にいる兵士届けたとか、大昔の手紙を何百年も掛けて届けたとか、魔境と呼ばれる場所に届けた等々数々の武勇伝があるらしい。

他にも郵便屋が火事になった際に、逃げ遅れたと思われる職員の焼死体の下から手紙が見つかったという話。炎から自分の体を盾にして手紙を守ったというウソのような話まであるんだとか。本当だったらとんでもないプロ意識だよな。

この郵便屋さんは世界中に支部があるらしく、このマギルにも支部があるから、街を出る時に手紙を出してから出発するということになった。


宿を引き払った俺達は、この街に詳しいアリアの案内で郵便屋の建物までやってきた。


「えっと、信頼と実績のグングニル郵便・・・勇ましいなおい。必中ってことをアピールしてるとかか?」


「凄いプロ精神の持ち主達らしいですよ。手紙を届ける事に命を掛けてる方達ですからね。」


そんなに自分達を追い込まなくてもいいのに・・・もう狂気のレベルだよ。

若干ビビりつつも店内に入ると、中には40歳くらいの女性が受付をしていた。


「いらっしゃいませー。お預かりでしょうか?」


「あ、はい。これをキレースの冒険者ギルドマスターに届けて欲しいんですけど。」


「お手紙ですね?はい、お預かり致しますー。このサイズでしたら30レンスですねー。」


30レンス、300円か。日本にいた時は封筒なら80円くらいだったよな。交通の便があまり良くないであろうこの世界で、この価格設定は元取れるんだろうか?ある程度まとめて一気に運んだりするのかな?


「お願いします。これ30レンスです。これ何時頃届きます?」


出来れば指名手配が発行される前に知らせておきたいんだけど。


「あ、時間をご指定されますか?100年後でも1000年後でもお届けしますよー。但し、1年に付き保管料として10レンス頂いておりますがー。今までで最長997年保管した実績を持っておりますよ。」


997年ってスゲーな!どうしてあと3年後にしなかったんだ・・・。


「あとちょっとで千年だったんですね。」


「えぇ、ですがお客様の要望だったので、私共の都合で配達年月日を偽ることは許されませんー。ですので約千年と宣伝させて頂いておりますよー。」


「凄いですね。でもそれは全然年単位じゃないんです。出来るだけ早い方がいいんですけど。」


「はいっ、速達ですねー。キレースの冒険者ギルドでしたら場所がハッキリしておりますので、本日中にはお届け出来ると思われますー。」


「・・・は?今日中?キレースですよ?俺達キレースから船で2日掛かったんですけど?」


「はいっ!このサイズでしたら問題なく転送できますのでー。」


「て、転送?」


「はいっ!グングニル郵便だけが持つ輸送手段でございますー。グングニル郵便の支部にはすべてこの箱が設置されているんですがー、実はこれ転送の魔道具なんですー。この箱に手紙を入れて転送先を指定するとー・・・あら不思議ー!手紙が一瞬で移動してしまいましたー!」


なんだそれ!?スッゲー!!地球の配達システムなんか目じゃなかった。


「ちょ、ちょっと見せてもらってもいいですか!?」


「申し訳御座いませんー。こちらの魔道具はグングニル郵便の秘匿技術になりますのでお見せする事は出来ないんですー。例え王族の方でもお見せする事は出来ませんー。」


くそぅ・・・移動が楽になる技術ゲットできると思ったのに・・・!

でもそういう概念はあるということだよな。それさえ理解できれば・・・作れるか?そういう物もあるという事がわかっただけでも良しとしよう。


「ありがとうございましたー。またのご利用をお待ちしておりますー。」


郵便受付のおばちゃんに笑顔で見送られ、俺達は郵便屋を後にして街の外に向かった。


「結局馬が手に入らなくてね。徒歩になっちゃっうけど皆頑張ろう・・・はぁ、頑張って馬車まで作ってあったのになぁ・・・まさか馬が手に入らないとは・・・もうその辺のフォレストウルフ捕まえて引かせるかなぁ・・・」


「頑張ろうとか言っておいて一番へこんでるのヨーヘーじゃない。大丈夫だよ。私歩くのも結構好きだもん。まぁ馬車があればすっごい楽なのは認めるけどね。」


「そうです。それにどんなに疲れても、見張りを気にせずにマジカルハウスでゆっくり休めるじゃないですか。多少時間は掛かってしまいますが、安全が確保出来ているというのは気分も楽なんですよ。」


「そ、そうだよな!ちょっと最近楽し過ぎてだらけてしまったのかもしれないな。30メールくらいワケないよなっ!」


無い物は無い。もうそう割り切って行くしかない。

そんな話をしながら街の門までやってきた。


「ここから俺の逃亡生活が始まるのか。」


「にゃあ!にゃんかかっこいいですっ!泥棒猫タァマ参上ですっ!」


泥棒猫っていうと悪女を連想してしまうよ。タァマちゃん、誰から男を奪うんだい?

俺がそんなことをぼんやりと考えていたら、タァマちゃんはふみぃ~と俺に甘えてしがみついてきた。お?奪われる男は俺か?こんなに可愛い泥棒さんにならいくらでも奪われちゃうぞぉ。




マギルを出て街道を歩き始めてみたが、変わらぬ景色が続いている。


「ねぇ、ザクレンまでってさ、途中に街とかないの?」


「えっと、昔はあったよ。コルベール王国が滅亡するまでは3つくらい街はあったけど、今は無いかな。」


「ん?被害があったのはザクレンだけなんでしょ?」


「それでもね。政府がなくなっちゃったから行政も滞るし、コルベールの町や村にはどこも無法者がのさばるようになっちゃったの。助けてくれる兵士もいないから商人や農民は商品を奪われちゃって、やっていけないってことで逃げちゃったのね。そうなると物流も止まるから、食べるものに困ったコルベール人はほとんどがロイト王国や隣のグレイグ王国に難民として逃げていっちゃって、ゴーストタウンがたくさん出来たのよ。そんな街や村は賊が根城にしてたりするから、治安の関係上コルベール国内の街に寄るのは辞めた方がいいと思うよ。あと、ここからザクレンまでの進路上には、ロイト王国の補給基地がいくつかあるけど、さすがに指名手配されているかもしれない状態だから、寄るわけにもいかないよね。」


「ということはザクレンまでどこにも寄らずにひたすら歩き続けるわけね。」


「そうだね!頑張ろーっ!」


「お、おー・・・」


何故か元気なアリアにいまいちテンションの上がりきらない返事を返して歩き出すのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ