9話 起きやしねぇ
セリア姉さんを探すということで方針が決まったが、どこにいるかもわからない。
いきなり詰んだんじゃね?と思ったが、キレースという町に手掛かりがあるはずだとアリアが言うので、一応は進む方向を決める事が出来た。
出発前からいきなり躓く事をギリギリ回避できたわけだが、手掛かりであるキレースがどこにあるのか知らないので確認しないといけない。
「アリア、キレースまでどれくらいあるの?」
「えーっとね、この場所からなら歩いて10日くらいかな?途中に3つ町があるよ。ここから一番近い町までなら南に向かって進めば明日の夕方には着くから、今日は野宿して明日はそこで1泊しましょ。」
「りょうかーい」
移動手段が陸路の場合、歩くか馬車というのが一般的らしいので、1ヶ月以上掛かることを覚悟していたが、思ったより遠くなくて安心した。それにしても野宿か。なんか冒険してる気分になってワクワクするな。
歩きながら周囲の景色を確認するが周りは見渡す限り草原だ。丈が20cmくらいの草が辺り一面を覆っている。道があるわけじゃないから正直歩きにくい。
アリアの話によると街道はあるらしいが、ミイ師匠の洞窟があった場所は街道から大きく外れた場所にあり、スーラまではずっとこんな草原が続いているらしい。最初は冒険の始まりにワクワクしていたのだが、数時間もすると殆ど代わり映えしない景色に正直飽きてきた。歩いても歩いても同じ景色な気がして、進んでる方向が本当にあっているのか非常に不安になってくる。
しかしアリアが自信満々に進むから進んでいる方向はたぶん大丈夫なんだろう。
いざとなったらフライで上空から確認すればいいや。
そしてとうとう異世界でありがちなイベントに遭遇してしまった。
魔物さんとのご対面ー。
魔物とかイノッチ以来だな。ずっとミイ師匠のとこに篭ってたし、食材はアリアがどこからか調達してきていたので、俺はあの日以来あんまり外に出ていなかったので魔物に遭遇することもなかった。
若干退屈していた所に都合良く出てきてくれてウェルカムだ。ウェルカムなのだが・・・。
「ねぇアリア。あいつキモチ悪いんだけど、あれなに?」
地面から直径10cmくらい、全長1mくらいのミミズみたいなのが生えている。先端に牙っぽいのが一杯ある。
「グランドワームね。牙で攻撃してくるから気をつけて。牙に当ると痛いよ。」
うん、あれ当ったら痛そうだね。それ以前にウネウネしててキモいんですけどね。
「動きは速くないからそれ程危険じゃないけど、油断はしないようにね。」
「わかった。『ファイアーピラー』」
グランドワームの足元から炎の柱が立ち昇る。
キシュァァァァ!!
炎に包まれのた打ち回るグランドワーム。
「うぇ、ウネウネしとる・・・」
1分程暴れていたグランドワームが地面に倒れふした。
こんがり焼けましたー。
っていうかあっけなさ過ぎるだろう!
やっと退屈しのぎになると思ったのに!
いや、別に苦戦したいとかいうわけじゃないけど、魔法1発で終了とか拍子抜け過ぎる。
グランドワームを見るとブスブスと煙を出して焼き加減はちょうど良さそうだな。
いや、食べませんよ?これを食べる程ハングリーポイント溜まってないしから!
そもそも食べれる食材かどうかもわからない。
アリアが調達してきた食材の中にコレはいなかったはず。
・・・いなかったよね?知らずに食べてたってことないよね?
アリアもグランドワームの死体をそのまま放置してるし、やっぱり食べるものじゃないんだろう。
戦闘と呼んでいいのかわからない戦闘を終えた俺達は最寄の町があるであろう方向に向かって再び歩きだした。
だんだん日が落ちてきて辺りが暗くなり始めた頃。
「今日はこの辺りで野営しましょ。」
そう言ってアリアは厚手の布を取り出す。
「食事を取った後に順番で寝ましょう。5時間寝たら見張り交代ね。」
「見張りってどうやるの?」
「周囲の警戒かな。異常があったらすぐに起こして。今日は私が先に見張りするからね。」
初めての見張り番!ちょっと楽しみだ。
夕飯にオールバーニングアナウサギを食べた。正直このネーミングはどうかと思うのだが、製作者のアリアが決めたことなので多くは言うまい。ただ長いからオバサギと略そう。
アリアの料理の腕が上がった事でオバサギは美味しく食べられた。
見た目で大丈夫とはわかっているんだけど、この料理の時だけは微妙に躊躇ってしまう。これがトラウマというやつか。
その後アリアと雑談をして寝る事にする。
「じゃあお先に失礼するね。」
「うん。おやすみなさい。」
「おやすみー」
記念すべき冒険初日だったけど、あまりに何もなかったのでこんなもんかと思いました。まる
・
・
・
「ヨーヘー、起きて。交代だよー。」
「・・・うーん、あと5時間・・・」
「朝になっちゃうよ!?私が寝れないよーーー起きてーーーー!」
「ふぁ・・・おはようアリア。見張り交代?」
「うん。そうだよ。この辺なら何もないと思うけど油断は禁物だからお願いね。布団貸してー。」
俺は体を伸ばしつつ被っていた布団をアリアに渡す。うー、体痛ぇ・・・。
「じゃあ、後はよろしくね。おやすみなさーい。」
「ん。おやすみー」
さて、初めての見張りでちょっとウキウキしたわけだけど。
「・・・暇だな。」
最初のうちはホークアイなんかを使って見張りをしてみようかと思ったんだけど、これ遠くの物でもよく見えるようになる魔法なわけですが、暗くて何も見えない。夜とか使えない魔法だな。鳥目ってことなのか?
今度、暗視とか熱探知できる特殊魔法を自作してみよう。てか、暇だし今やっちゃうか。
暗視、暗視か。暗視スコープとか光を増倍させて電子に変換して映し出すんだっけ?光の増倍をイメージした魔法でやってみるかな。
集めて増やして増やして増やして観察・・・と。こんな感じかな?
呪文はどうしよう?むー、「ホルスの目」って月の目って意味だっけ?イメージに合うしこれでいいかも。
『ホルス』
ピカーッ!!
とんでもない光量が辺りを照らした。
「あぁぁあぁあぁぁ、目が、目がぁぁぁぁああ!!」
失明してないだろうか?くそっ何がホルスだ!バルスじゃねーか!今気付いたけど名前似てるな!
そんなことを考えながらゴロゴロ地面を転がる俺。
10分くらい何も見えない状態が続いたが、少しずつ周りが見えてくる。よかった失明してなかった。
次は増やす量を抑えて・・・『ホルス』。
・・・おぉ!見える!見えるぞぉ!!ちょっと暗いか?もうちょい明るく調整してと。
また一つこの世界に新しい特殊魔法が生まれた。
新しい魔法とは本来であればこんなに簡単に作れるものではないらしいのだが、地球の暗視スコープのイメージを持っていた俺にはイメージしやすいものであり、短時間で作り上げる事ができた。
それにしてもさっきの騒ぎで起きなかったのか。
スゥスゥ・・・
あれだけ強い光出たのに熟睡してるなー。
・・・寝顔可愛いな。
そのままアリアの寝顔を堪能しつつ、朝まで見張りを続けました。
おぉ、太陽。
日の出のときの太陽ってなんか見ちゃうよね。
この肌寒い空気がなんというか清々しいなー。
さて、アリアを起こすかな。
「アリアー、朝だよー。」
「スゥスゥ・・・」
「アリア?おーいアリアーーー」
ゆっさゆっさ
「うみゅ・・・スゥスゥ・・・」
こいつぁ手強いっ
ほっぺを掴み伸ばしてみる。
「アリアー。おきろー」
「うぃー・・・スゥ・・」
こうなったら・・・眠りから覚めないお姫様を強制的に起こす行為があるのだが、それをやったらたぶん怒られる。そしてきっと嫌われる。それにそんな度胸ないわ!それにしても柔らかそうな唇だな。いやいや!ダメだから!!
というわけで。
アリアの鼻を摘まむ。そしてアリアの唇に触れないように口を指で挟みこむ。
「ムグッ!?・・・ンーッ!ンーッ!!」
「起きた?」
「ンムーーッ!」
起きたっぽいので手を離す。
「プハッ!ハァハァ!」
「おはよ♪」
「・・・はぁはぁ」
荒い息のまま布団を掴み、俺を一睨みすると布団を持った手を振りかぶってきた。
「普通に起こしてよーーーーっ!!」
「起きなかったんだよ!?最初は普通にしてたんだよ!?」
「だからってビックリするじゃないっ!」
「どう起こせば良かったの!?」
「体揺するとかあるでしょ!」
「それはもうやりましたよ!?起きなかったのですよ!?だからって水かけるのは可哀想だし、おはチューは、いやなんでもない。」
「おはチュ!?」
ボンっとアリアが真っ赤になり、自分の唇を押さえる。
「・・・し、してないよね?」
「我慢しました。俺は紳士なので!」
「・・・ジー」
アリアが覗き込んでくる。てか顔近い顔近い。
「ホ、ホントだよ!?」
「信じるからね?」
ついでに窒息モーニングは次からしないって約束までさせられてやっと許してもらえました。
朝食に昨晩の残り物を食べて出発の準備をする。
野宿ってのは疲れが取れないな。
気の抜けない環境で睡眠時間も少なめだからしょうがないってものあるんだろうけどね。
まぁ今日の夜には町に着いている予定だし、ベッドで寝れそうだから頑張って歩きますか。
今日もグランドワームやアナウサギにエンカウントしつつ町を目指して歩いているわけだけど、この辺の魔物ってあんまり強くないんだな。アリアに聞いてみたけど、一般人でも倒せるような魔物しか出ないらしい。平和なのはいいことだ。でも、油断してるとベヒモスみたいな例があるから気は抜かないようにとのこと。イノッチ元気かな・・・?
そんな感じで進んできたが、辺りがだんだん暗くなってきた。町の気配はない。
「・・・あのーアリアさん?」
「あ、あれー?おかしいなぁ?もうとっくに着いていてもいいはずなのになぁ?」
若干声が震えている。
「あれですか?迷子ってヤツですか?」
「えっと・・・テ、テヘッ☆」
可愛い。イラ可愛い。
「あの、ごめんなさい・・・。迷っちゃったみたい。」
俺が無言なのを怒っていると勘違いしたのか申し訳なさそうにしょんぼりしている。
「しょうがないよ。ちょっと飛んで町が見えないか探してみるね。」
「ごめんなさい。お願いします。」
「『フライ』」
飛翔呪文を唱えて上昇する俺。
100mくらい上がったところで、西の方にわずかだが光が見えた。たぶんあれが町だな。東にズレて進んでいたようだ。草原で目立った目印もないし仕方ないよなー。距離は10kmくらいかな?
町の場所がわかったので地上に降りる。
「どうだった?」
「西に10kmくらい離れたとこに複数の光が見えたからたぶんそこが町じゃないかな?」
「そうよかった。・・・10kmってどれくらい?」
あ、そうだった。単位が違うんだ。たしか1センチが1マールで100毎に単位が変わって、マミムメモだったな。
「1メール先かな?」
「結構あるね。もう1泊野宿かな・・・ごめんね。」
「いやいや。目印もなかったし、迷っちゃうのはしょうがないよ。気にしないでいいよ。」
「うん、ありがとう。でもお詫びに今日は私に見張りをやらせて。」
「いや、見張りは必要ないよ。一緒に休もう。」
「え?でもいくら強い敵がいないからって見張りがいないと危ないよ?」
んっふっふー、そう思うよね?でも俺には考えがあるのです。こんなこともあろうかと用意していた物を使う時がきたのだ。
「それはね、これを使うんだ。」




