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虹の先に繋がる世界  作者: 水無月 壱九
グロスティア
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10話 テント

少し勿体振ったように溜めてから、タラタタッタラーという効果音と共に取り出したのは魔法の袋。

ミイ師匠にもう1個貰ってたヤツだ。

ミイ師匠は魔法の袋の説明をする時にこう言っていた。

これ頑丈。空間固定されてる。揺れない。広い。入れた物は中に入って探せ。蓋閉める時間止まる。

つまり、蓋さえ閉めずに外界と繋がる穴さえ空けておけば、時間も止まらずにとても安全な空間が提供されるということ。広さも横10m、縦10m、高さ10mだったか。高さはまあいいとして、平面の広さだけでもシングルベッドを50個くらい置けるくらい広いわけだ。

因みに魔法の袋は入口に入ると一旦縮小されるように吸い込まれるから入口以上の大きさの物も収納可能なのだ。

さて、今しがた取り出したこの魔法の袋だが、ちょっと細工がしてあり、蓋が完全に閉まらないようになっている。

なので間違って魔法の袋に封印されるという危険がなくなり、持ち運びが非常に簡単な頑丈なテントというかハウスなのである。

昨日は野営っていうものに興味があったので出さなかったが、思いの外疲れた&今日は布団で寝るモードだったので、素敵アイテムの存在をアリアに発表したのだった。


「昨日も欲しかったな・・・。」


ごめんなさい。野営してみたかったんです。


魔法の袋だと紛らわしいので、暫定で魔法の袋(家)と命名した。魔法の袋は頑丈だから壊される心配はあまりしてないが、侵入を防ぐ為に魔法の袋の周りをバリアで覆う、更にインビジブルをかけて袋を見えなくしたので防犯機能としては結構高いと思う。

興味津々のアリアをエスコートし魔法の袋(家)の中に入る。


中は修行の合間にコツコツクリエイトで作っていたのでそれなりに家具は揃っている。洞窟内で作っていたから素材が石しかなかったので石製のテープルとベッドが置いてあるのだが、石製のベッドは硬くて痛そうだ。

しまったな。師匠のとこから布団をパチってくればよかった。明日町に着いたら布団とか買おう。というより木材と布が欲しいな。

洞窟内でもそうだったけど、石のベッドってなんか冷たい感じがするんだよね。


次はキッチンだ。こちらも石製だがキッチンは石製でいいだろう。白い石で作ってあるから見た目もいいしね。このキッチン、流し台の排水溝にはイレイズの魔法も付与してあるし、コンロも常備してある。鍋や食器も鉄製や陶器の物が用意してある。頑張って冷蔵庫と窯も作った。ちなみにガスや電気がきているわけではないので、使う時に自分の魔法で火を出さないといけない。冷蔵庫は中に氷が入った箱が置いてあり、氷が解けてきたら持ち主から魔力を吸って再度凍らせて冷蔵庫内を低温に保つように工夫してある。


家の設備の中でも風呂は特に気合を入れて作った。

足が伸ばせる広さにして、壁には富士山の絵を特殊魔法のペーストで転写した。メインルームと風呂場の間には脱衣所兼洗面所があり、そこには洗濯機と小型の冷蔵庫が置いてある。冷蔵庫の中には牛乳とコーヒー牛乳のビンや冷たい食べ物も入っている。完璧だ。

元々この世界の人はお湯に浸かる習慣がないらしい。水に塗らしたタオルにと石鹸で身体を洗っておしまいなんだと。修行してる時に汗でべったりになったり結構汚れたりしてしまっていた為、風呂の必要性を感じて自然魔法を覚えた時に風呂を作成したところ、俺があまりにも気持ち良さそうにサッパリした状態で出てきたので、アリアも気になったらしく、1度体験してからは毎日風呂に入るようになっていた。


最後にトイレだが、これは緊急用も兼ねて2つ作ってある。もう料理は上手になっているから大丈夫だと頭ではわかっているのだが、なんとなくまだ怖いのだ。ただこのトイレにはまだ紙がないので、今は自分で水を出して洗うしかない。早急に紙を入手しなければいけないな。明日町で入手できればいいが、無理そうなら木材を手に入れてクリエイトで作成しよう。


「うわぁ・・・凄いね。」


「あぁ、後で個室作ろうか。」


プライベートな空間は必要だろう。


「あ、別にこのままでいいよ。着替えとかできるスペースだけ作ってくれれば。」


「うん?いいの?」


「ずっと住むわけじゃないんだし、それぞれの部屋に篭っちゃうより一緒に空間にいた方がきっと楽しいと思うんだ。ヨーヘーが嫌じゃなければ・・・だけど。」


「嫌なんてことはないよ。じゃあ、物置みたいなのだけ作って、後はこのままにするね。」


「うん♪」


「じゃあ、夕飯にしよっか。今日は俺が作るね。」


「え、私が作るよ?」


「料理の修業は終わったんだから、アリアが無理に作る義務は無いんだよ?」


「折角上手になってきたのにぃ・・・」


いつの間にこんな料理好きになったんだろう。料理を始めた頃に比べたらアリアの料理の腕を信頼しているので、作らせたくないというわけじゃない。まぁ以前出来なかったことが出来るようになって楽しくなってきたんだろうなぁ。


「でもアリアだけに作らせるのも俺の気が引けるしなぁ」


「気にしなくてもいいのに。」


「でも俺も久しぶりに料理したいんだよなぁ。」


料理は俺の趣味でもあるのだ。ここで引いてしまうと今後も料理担当はアリアになってしまい、俺が作る機会が減少してしまうだろう。


「あ、じゃあこうしよ?一緒に作るの!!」


名案を思いつきましたと言わんばかりのアリアの言葉に苦笑しつつ、俺はそれを了承した。可愛い女の子と一緒に料理を作るなんて胸が躍るじゃないか。


「今日の食材はアナウサギの肉だね。今日もオールバーニングにする?」


「いや、今日はこれも使おうと思うんだ。」


俺は食材保管用の魔法の袋、通称:魔法の袋(食料庫)から米を取り出した。


「細々してる。豆・・・じゃないよね?何これ?」


「米っていう食べ物だよ。俺のいた国では主食だったんだ。」


この世界の人達の主食は主に豆だ。乾燥した穀物を粉にしてパンのようにしたものもあるが、メインは豆らしい。

だが、今日は米料理だ。誰がなんと言おうと米だ。もう米が食べたくてしょうがないんだよ。

というわけで、今日の夕飯はアナウサギのリゾットにしようと思う。

タマネギやバター、調味料等を取り出しアリアに食材の説明をする。初めて見る食材にアリアは興味津々の様子だ。

作り方を説明しながら一緒に調理を行った。

修行の時も思ったけど、やっぱりアリアと一緒に料理するのってなんか楽しいな。

手が触れたり、肩が触れたりうれしいイベントである。


そんなこんなで出来ました。アナウサギのリゾットです。


机に並べて夕飯ターイム!


「それじゃ、いただきます。」


「いただきます。」


うん、美味しい。うまく出来たみたいでよかったよー。


「お米・・・不思議な食べ物だけど、柔らかくてすっごく美味しいね。」


よしよし、好印象のようだ。米の信者にしてやろう。

米炊くときは1~2時間くらい水に浸しておくと美味しくなるから今のうちに浸しておいて2時間くらい経ったら魔法の袋に入れておこう。

美味しいお米を食べさせて米が恋しいと思うレベルにするのが目標だ。


「お米は色んな料理に合うからねー。これから色々教えてあげるよ。」


「うん!わーい楽しみだなぁ♪」


新しい料理を覚えられるとご機嫌な様子だ。今まで色んな料理を学んできたから引き出しはたくさんある。こんな形で役に立つとは思わなかったなぁ。



夕飯も終わり、次はさっぱりする為にお風呂に入る事にした。


「アリア、後片付けしておくから先にお風呂入っておいでよ。」


「いいの?それじゃお言葉に甘えて先に入らせてもらうね。」


アリアがお風呂に向かったので、俺もお風呂に・・・行くのは我慢して食器を洗う作業を始めることにする。

うっかり覗いてしまったら後が怖い。

以前、修行中に3回程アリアの入浴中に扉を開けてしまったことがあった。後ろ姿だったり絶妙に隠されていたので、大事な部分は見えていないのだけど、それはそれは酷い目にあった。・・・そう、酷い目にあったのだ。

そんな昔の事を思い出しながらクリーンで食器を綺麗にしてから水で濯いで乾かしておき、手を拭こうとしてある事に気付く。


「タオルが無いな。」


ふむ・・・これは今風呂に入っているだろうアリアが出てくるときに困るかもしれない。

準備がいいと評判(自称)の俺なのでアリアが体が拭けなくて困らないようにタオルを作りますかね。

昨日掛け布団に使った布をクローンで複製。複製した物素材としてクリエイトでタオルに変えていく。

フェイスタオル、ボディタオル、バスタオル、タオルマットを作成し、出来上がった物をクローンで増やす。5組くらいあればいいか?

いや、フェイスタオルは多目に作っておくか。

よし出来た!

出来上がったタオルをアリアが出てくる前に脱衣所に置いておくかね。



「アリアー、タオルだけど脱衣所に置いておくねー」


脱衣所に入りながら一声掛けると


「・・・・・・」


「・・・・・・」


裸のアリアがそこにいた。

アリアがキョトンとこっちを見ている。しかし目は合わない。なぜなら俺の視線は違うところを向いていたからだ。

うん。綺麗な桃色だ。さらに視線を下に移すと・・・ふむ、やはり髪の毛の色と同じなんだな。


「タオル、ここに置いておくね。冷蔵庫に牛乳とかチーズとか入ってるから湯冷ましにどうぞ。」


「・・・あ、うん。ありがとう。」


こういう時はさりげなさが重要だ。

そのまま回れ右をして脱衣所から出ようとしたところで・・・肩を掴まれた。

何事かと後ろを振り向・・・


「振り向かなで!!」ゴキッ


ぬぐぉぉぉぉ・・・!く、首がぁ・・・。

そして今首を回された際に背中に何か柔らかい物が当った気がする。こ、これは、生乳様じゃないだろうか!?くっ!!なんで俺は上着を着ているんだ・・・!!

そのまま動くなと言われて一旦離れるアリア。

30秒後程経ってから振り向くように言われた。

戦々恐々としがら振り向くとバスタオルを巻いたアリアがいた。

顔は耳まで真っ赤だ。そりゃ恥ずかしいよね。

だがそれ以上にとても怒っているようだ。

怒ってるアリアもかわ・・・やっぱり怖い。


「正座」


「はい。」


この正座は俺が教えた物だ。最初に怒られた時にこのポーズをしていたら、以降怒られる時には正座を強要される。対してアリアは俺の前に腕を組んで立っている。目の前にあるものにドキドキする。バスタオルから覗かせる生足が眩しい。


「どこ見てるの!私の顔を見なさい!!」


違うところを見てたら視線を上げさせられた。

いやだってさ!正座すると目の前に来るんですよ!!見るなって無理でしょう!?


「見ましたよね?」


「み、見てません。」


さすがに苦しいだろうと思いつつも怖くて正直に言う勇気がでない。それにアリアが敬語になっている。これアリアが怒っている時の特徴です。


「視線が下にいってたように見えましたが?」


「き、気のせいかと」


「私の裸・・・見ましたよね?」


確かめるようにもう1度聞かれる。


「ゆ、湯気があって見えませんでした。」


ジー・・・


アリアがジト目で俺の目を覗き込んでくる。


「なんで目を逸らすんですか?」


「可愛い子に見つめられると照れるので・・・」


「か、かわっ!?」


ボンっと更に赤くなるアリア。可愛い。


「ごほん、み、見えてないならいいんです。でもよかったです。汚い物だから見られたら恥ずかしいですから。」


「え!?全然汚くなんてないよ!すっごく綺麗なピンク・・・あっ」


ニコニコしているアリア。


「何か言いたい事はありますか?」


「お、お手柔らかにお願いしまぁす。」


とてもとてもとても酷い目に合いました。

ボコられた後にヒールで回復させてまた折檻とか絶対に神聖魔法の使い方間違っている。

酷い目に合いながらもバスタオルから覗かせる太股に視線奪われてしまっていたら更に酷い目に合いました。

気になっちゃうのは仕方ないんだよぉ!!静まれ俺のエロ魂っ!


「ごべんなざい!ごべんなざい!ごべんなざい!!!」


「はぁはぁ・・・気をつけてくださいね。身体冷えちゃったので、もう一回お風呂に入り直してきます。」


「ヴぁい・・・ずびばぜんでじだ・・・」


ぼろ雑巾のような俺がそこにいた。



「ところでヨーヘー、この牛乳って何?」


あ、敬語モード終わった。許してくれたみたいだ。よかった。


「ぞればでずね」


「むぅ、聞き取り辛い・・・『ヒール』」


「それは地球にいる牛という生き物のお乳でお風呂上りに飲むものなんです。タオルを体に巻いて、足を肩幅くらいに開いて牛乳を持っていないほうの手は腰に当てて、グイっと飲むのが正しい作法なのです。」


「ふーん、そうなんだ?あがったら飲んでみよっと。」


そう言ってアリアは風呂場に消えていった。


俺も退散しよう。

第2ラウンドは嫌だ・・・。


「お風呂あがったよ。あのコーヒー牛乳?すっごく美味しいね。お風呂上りの身体に染み込むーっていうか気持ちよかったよー」


気に入って貰えて何よりだ。お風呂を気に入ってくれたアリアならわかってくれると信じていたよ!


さて、俺も風呂に入るかなー。なんか疲れたし・・・。

カポーン

あ、石鹸がないや。住んでみて足りない物が結構あることに気付くな。明日買う物をちゃんと決めておこう。


「今日はとりあえず『クリーン』」


やっぱ風呂はいいねー。1日中歩いた疲れが癒されるよ~。ハァービバノンノン。

風呂から上がってから作法通りに牛乳を飲み、アリアと明日の予定を話して寝る事にした。


「う・・・硬い・・・」

やっぱり石のベッドは改善が急務だな。あと布団。これじゃ石の上に寝てるのと一緒だよ。


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