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虹の先に繋がる世界  作者: 水無月 壱九
グロスティア
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77話 暗闇に潜む脅威

アダマンタートルの討伐が予想外に早く片付いてしまい、時間が余ってしまったが、特にやる事もないので今日はそのまま日が暮れるまでイノッチと遊んでからキレースに戻った。

夕食の準備をしているとソン爺とマッスルさんが揃って訪ねてきた。なぜか毒セリアさんも一緒だ。毒セリアさんは生魚大丈夫なんだろうか?今日のメニューは海鮮丼なんだけどな・・・。

俺はそんな心配をしていたのだが、毒セリアさんは生魚に臆することもなくパクパクと食べきっていた。さらに食後には甘い物を要求されたのでホットケーキを作ってあげるとこちらは凄い勢いで平らげておかわりまでしていた。やはり女性は甘い物に目がないのだろうか?

ソン爺とマッスルさんは海鮮丼に満足したのか、上機嫌でマグロと酒を酌み交わしていた。マッスルさんは昨日飲んだ日本酒が気に入ったらしくゴクゴク飲み、ソン爺はチビチビ飲んでいる。マグロも調子良く飲んでいるみたいだ。でもなマグロ、お前明日また二日酔いになったら覚えておけよ。

最終的には酒の輪に毒セリアさんまで加わって夜遅くまでドンチャン騒ぎしていた。宴はそれぞれが楽しんでいるようだった。大声で笑い合うマッスルさんとマグロ。泣きながら俺に愚痴を零すソン爺、そのソン爺に終わりのない説教を始める毒セリアさん。

・・・これ毎晩やるの?

その予想は当たっており、それから1週間毎日同じような宴が設けられたのだった。ご近所さんから苦情がこないのが不思議なレベルだが、気配りが出来る男である俺が、魔法で音が漏れないようにしているから迷惑は掛けてないと思う。


宴の後はヒドイものだった。大イビキをかいて寝てるマッスルさんとマグロはいいとして、真っ白な顔になって横たわっている毒セリアさんは寝ゲロをしている。受付嬢をやっているだけあって毒セリアさんは美人なのだが、寝ゲロによってその魅力は大幅に損なっている。少なくない数がいるであろう彼女のファンには見せられない光景だな。

一番怖いのはピクリとも動かないソン爺だ。天に召されてるんじゃないかと思うくらい静かに心安らかに横たわっている。本当に大丈夫だろうな・・・?

毎日がこんな感じだった。朝になるとマッスルさんは姿を消し、馬鹿野郎が3人横たわっているのを見つけるのが毎朝見られる光景だった。マグロは放っておいて毒セリアさんを背負って、ソン爺を手押し車に乗せて冒険者ギルドに出向くのが、ここ最近の毎朝の日課である。その2人を申し訳なさそうに毎回引き取る職員さんが少し可哀想だった。




俺達は1週間討伐の依頼をこなして大分連携にも慣れてきた。マグロが不在だからあいつが復活したら、またその辺の連携も深めないといけないが。討伐もアダマンタートルの討伐を行ったおかげで、中級の魔物を問題なく倒すことができることがわかった。

苦戦するかどうかは事前情報がどれだけ入手できるかだな。地面に潜るということを知らなかった為に地中から飛び出た魔物にお尻をブスってやられたこともあったのだ。あと5cmズレていたらアーッなことになっていたよ。別の穴は空いたけど掘られるよりはマシだろう。凄く痛かったけどな。


月も替わって今は12月だ。千年祭まで1ヶ月をきったことで街も盛り上がってきており、活気が凄くなってきた。


そういえばリーリアさんからセリアル教会でセリアル様の物語の劇をやるので、アリアにセリアル様役をやってほしいとの依頼がきたな。俺にも従者その1をやってほしいと打診されている。演劇なんてやったことないし、あんまりやりたくないけど、アリアが引き受けるなら俺も引き受けようと思っている。だって従者その1ってセリアル様の旦那役だもんな。例え役だとしてもアリアの旦那を他の男に任せるなんて嫌だからな!

なぜ俺達なのかと聞いたらアリアはセリアル様の子孫で役としては打ってつけだということ。俺については俺とアリアの雰囲気が、ユグドさんとセリアさんのそれに似ていたからあなたにお願いしたのよという理由だった。どういう意味なんだろうか。

もし引き受けることになったら、幼稚園の時に配役された王子様を演じた実力を見せてあげようじゃないか。なぜかその劇は10人くらい王子いたけどなっ!!


今日もいつものように毒セリアさんを背負って、ソン爺を転がしながら冒険者ギルドに向かっているわけだが、この人達は仕事をナメてるんじゃないだろうか?フリーターだった俺が言えた口ではないが、社会人としてどうかと思うぞ。特に毒セリアさんなんて女性も捨ててるんじゃないかと思うくらいだ。毎日毎日粗相をしているからな。美人なのに勿体ない、非常に残念な感じだ。


死んでる2人を冒険者ギルド職員に受け渡すといういつものルーチン作業を行い、依頼板を確認すると1週間前からなくなっていない依頼があることに気が付く。


「[調査]キレース海岸南洞窟の調査・・・ねぇ。」


詳細を見るとキレースの南にある、奥行き100mくらいある洞窟で不穏な気配がするという報告があったとか。初級冒険者が確認に行ったが誰も戻ってきていないらしい。それで依頼が中級にランクアップしたみたいだが、依頼人である冒険者ギルドがケチっているのか、報酬が3千レンスと少ないということもあり、未だ誰も受けないみたいだ。


「皆、この調査依頼受けてみる?」


俺は依頼用紙を指差して皆に確認してみる。皆というのはアリア、タァマちゃん、トリスだ。マグロは・・・ここんとこ毎日二日酔いだからな・・・タァマちゃんの刑に処してある。魚の本能なのか猫に異常なまでの恐怖を感じるらしい。それでも夜飲むのをやめないのはアッパレというか呆れるというか・・・。おっと話が逸れたな。


「うん、ちょっと不気味な感じもするけど気になるといえば気になるもんね。私は構わないよ。」


「私はやってみるべきだと思います。調査というのも冒険者の立派な仕事ですし、その調査によって、後に続く者が助かりますからね。私達も色々な情報に助けられたりしましたから、ここは貢献という意味でやった方がギルドの印象もいいはずですよ。」


「タァマもやりますよーっ!」


「んじゃ、これ受けてみよっか。」


依頼書を依頼板から剥がして受付に持っていく。


「あ、これ受けて頂けるんですね!よかったです!今日受けてくれる人がいなかったらギルド職員が行く事になってたんですよ。助かりました。」


初級とはいえ、調査に行った者が帰ってこないような場所には行きたくはないだろう。


依頼手続き完了し、気をつけてくださいねとギルドカードを俺達に返してきたので、任せといてくださいと言いながらそれを受け取る。




キレースを出て海岸沿いを2時間程歩いた場所に、直径3mくらいの大きさの大穴が口を開いていた。


「ここが南洞窟かな?」


「はい、そうみたいですね。資料によると、深さは100ミール程で入口から40ミール進んだところで分岐しているようです。右に向かうと60ミール程の1本道で、左に向かうと20ミール進んだ先に20ミール位の広さの広間があるそうです。ただ、それよりもこの洞窟から何やら良くない気配を感じますね。慎重に行った方がいいと思います。」


うん、これはたぶん魔力だと思う。この魔力を人を不快にさせるような術式を乗せて垂れ流してるのかもしれない。


「俺が先頭を歩くからアリアは殿をお願い。」


俺、タァマちゃん、トリス、アリアの順に洞窟内に進入した。洞窟内は暗かったのでライトの魔法で洞窟内を照らしながら進んでいく。

奥に行けば行く程に不快な気分になってくるな。慎重に10分くらい掛けて40mを進んだところで、分岐に差し掛かった。

右か左か。不快な感じは左の方が強いな。相談した結果左に進む事に決定。周りを警戒しつつ20m程進んだ所で広い空間に出た。ここまではトリスの言ってたデータ通りだ。

広間全体を照らすには光量が少なかったので魔力を強めにして広間全体を照らしてみた。すると広間の真ん中に黒い物体が山になっているのを見つけた。近付いてみると黒い物体の正体がなんなのかわかった。これは人だ。干からびたミイラだな。服装からすると冒険者なんだろうな。そんなミイラが10体くらい積み上げられていた。恐らくこの洞窟の調査にきて帰ってこないという冒険者なのだろう。帰ってこないという話は20日くらい前のものだ。さすがに20日ではミイラにはならないと思うんだよな。ということはこいつ等をミイラにした奴がいるってことだ。スカウトには魔物の反応はないが、異様なプレッシャーを感じるな。

俺達はお互いが背中を合わせて全方位を警戒することにした。

周りを探っていると、広間の一番奥から拍手の音が聞こえてきた。


「クッカッカッ、さすがにそういう陣形を取られると不意を付く事は出来ぬな。」


「誰だ!?」


「今はこの洞窟の主である。まぁもう用は済んだから今日にでも立ち去ろうとはしていたがな。」


姿を現したのは身長190cmくらいの黒髪をオールバックにした男だった。特徴的な尖った耳に真紅の瞳。そして貧血なんじゃないかと思うくらい青白い肌。一言で言えば不気味だ。


「その赤い瞳は・・・魔族っ!」


トリスが登場した男を見て、男の種族を口にした。あれが魔族か。話には聞いていたが、初めて見るな。魔族にも色々な種族がいるそうだが、魔族全ての種族が、共通の特徴として赤い目を持っていると聞いていた。


「こんにちは美しいお嬢さん。ご名答、吾輩は魔族だ。」


「この死体はお前がやったのか?」


「んん?あぁそれか。ちょっと腹が減ったのでな。丁度良かったので頂かせて貰った。若く、なかなか活きのいい味をしていたぞ。」


魔族の男は舌で自分の上唇をペロリと舐めて余裕の笑みをこちらに向けてくる。


「ふむ・・・小僧、お前の連れは美人揃いだな。是非とも味見してみたいのだが、まぁ当然抵抗するだろう?なので、吾輩とゲームをしないか?何、ルールは簡単だ。これから吾輩が小僧を殺す。小僧が死んだら小僧の負け。そこの娘達を頂かせて貰おう。小僧達の勝利条件は・・・そうだな。ゲーム開始から5分後に小僧が生きていたら小僧達の勝ちだ。女共は景品だから殺しはしないし、お前らは全員でかかってきてくれてかまわない。吾輩が5分の内に殺すのは小僧だけというルールにしよう。どうだ?」


「断った場合は?」


「ゲームをしないのであれば、吾輩は捕食者として全員を頂くまでの話よ。」


なんとなくわかるけどこいつは強い。今まで出会った奴らの中でこんなにプレッシャーを感じる奴はいなかった。あいつの強さが未知数だから勝てるかどうかはわからないが、5分間生き延びれば命を保証するというのであれば、より生き延びる可能性の高い条件の方がいいはずだ。戦うことが回避できる雰囲気じゃないのは確かだ。その戦いに向こうから俺達に有利な条件を付けてくれたんだ。断る理由はないだろう。


「・・・わかった。その勝負受けよう。」


「クッカッカッ。そうこなくてはな。その勇気を称えて吾輩の種族を教えてやろう。少しは生き残る可能性が上がるかもしれないぞ。吾輩は夜の支配者、ヴァンパイア族だ。」


マジか・・・あの有名な吸血鬼さんですか。地球だと超人的な身体能力と反則的な再生能力、そして霧になったり、魅了の眼光を持つアンデッドの王という認識なんだけど、この世界ではどうなんだろう?

トリスに確認すると、顔色を悪くしながらも教えてくれた。この世界でも同じようなものらしい。トリスの怯えっぷりを見る限りやばそうな相手なんだろうな・・・。


「もういいか?そろそろ始めるぞ?あんまり簡単に死ぬなよ?」

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