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虹の先に繋がる世界  作者: 水無月 壱九
グロスティア
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74話 釣りバカ

朝食を食べ終わり、昼食のおにぎりを作っていると、借家の掃除をしていたトリスが呼びに来た。


「ソン爺さんがお見えになってますよ。」


「え?何でここがわかったんだ?」


昨日は家を借りたとは言ったが、場所までは話していない。

借家の入口に出るとカラカラ笑うソン爺と、朝日にボディを光らせるマッスルさんが待っていた。


「おぉヨーヘー!準備は出来ているか!?さっそく海洋調査にいくぞっ!」


この人達は仕事しなくていいのだろうか?それぞれ組織の代表のはずなんだが・・・。


「ソン爺、どうしてここが?」


「ほっほっほっ、昨日別れた振りをして尾行したからの。」


マジか。この爺さん侮れねぇな。てか、尾行なんてしなくても聞かれれば教えたっつーの。


「ほっほっほっ、その驚いた顔が見たかったのじゃ。大成功じゃのぅ。」


このクソジジい・・・。


「とりあえず準備しますんでもうちょっと待っててください。」


家の中に招いて茶でも出して待ってもらうべきだろうが、ちょっと悔しかったので外で待っててもらうことにした。

皆にまた海に行くよと声を掛けてからマジカルハウスに戻り、昼食用のおにぎり作りを再開する。

タァマちゃんは昨日怖い思いをしたから嫌がるかなとも思ったが、全然気にしていなそうだった事にちょっと安心する。もしかしたらマグロを捕まえたのが嬉しかったからかもしれない。む、ややこしいな。魚のマグロのほうね。

おにぎりを作り終えて借家に戻ると、ソン爺とマッスルさんが家の中に入って寛いでいやがった。・・・にゃろう。


「よしっ!準備できたな!船はもう外にまわしてあるからすぐに行くぞぃ!」


ソン爺の号令の下、全員で借家からゾロゾロと出ると、目の前に昨日乗った船が停泊していた。ただ接岸するには深度が足りなかったらしく、陸から10mくらい離れている。どうやって乗り込むのかと思っていたら、ソン爺とマッスルさんが海に飛び込んた。

マジかよ。

船の近くの水面に顔を出した2人はそのまま縄はしごを伝って船上に上がり、お主らもはよ来いと手招いている。

えぇー・・・あれやるの?少し躊躇していたらマグロがドポーンと飛び込んでいった。おぉ、あいつ泳ぐの速いな!さすが魚人だ。泳ぎはお手の物なんだなー。

さて、どうするか。まぁ態々濡れる必要もないよな。意を決して飛び込もうとしているトリスを止めてイメージを固める。


「『アイスウォール』」


俺は魔法で岸から船に向かって伸びる氷の橋を作成する。


「『サンドストーム』」


威力を抑えた砂嵐を氷の橋に吹き付けて、砂を滑り止めにして簡易橋の完成だ。


「さて、渡ろうか。」


4人で船まで渡るとソン爺が無表情でこちらを見ていた。


「そんなもんができるなら早く出して欲しかったのぅ・・・。ワシ濡れ損じゃ・・・。」


知るか。我先に飛び込んでいっただろうが。


「まぁいいわい。それより、お主は初めて見る顔じゃの。」


「これは申し訳ない。ミーはトロ=オーマという。ヨーヘーのパーティメンバーだ。以後宜しく頼むよ。」


「ふむ、そうじゃったか。ワシはクライソンじゃ。ソン爺でいいぞい。キレースの冒険者ギルド長をやっておる。」


「ほう!ギルド長だったか!ギルド長がこんな所で油売ってるとはこの街は平和なんだね!」


「職員が優秀じゃからの。ワシは最終決定だけすればいいのじゃ。それにこれは海洋調査という立派な仕事じゃ。遊んでいるわけではないんじゃよ?」


「ギルド長自らそんな仕事をやるとは・・・立派な心掛けだね!なーっはっはっはっ!」


「そうじゃろうそうじゃろう、ほっほっほっ。」


なんだろう、この2人の会話は聞いててちょっと疲れる。2人は放っといて操舵室に移動しよう。


船はすでに沖に向かって動いており、もう岸から100mくらい離れていた。操舵室ではマッスルさんが鼻歌交じりに船を操っているのが確認できる。


「マッ・・・アンデルセンさんご苦労様です。今日はどこまで行くんですか?」


「おう!そうだなぁ。俺の勘だとあの辺りに魚がいそうな気がするな!」


マッスルさんの指差す方向を見てみるが全然違いがわかんないな。あ、そうだ。


「アンデルセンさん。これ見てください。」


俺は持ってきた物をマッスルさんに手渡した。


「ぬ?これは?」


「昨日推進装置について興味を持ってたでしょう?それはスクリューっていって、俺の故郷の船はそれを使って動いてたんですよ。」


このスクリューは昨日暇を見つけてクリエイトで作っておいたのだ。


「ほう!これがヨーヘーの言っていた推進装置か!それで?どうやって使うのだ?」


俺はスクリューの原理をマッスルさんに説明して、これを回せば魔力が切れても船を動かす事が出来るという事を伝えようとしたところであることに気付いた。・・・これどうやって回すんだ?


「むっは!これを回せは船が進むのか!よくわからんがそういう物なのか!しかし回す方法がわからないな!ヨーヘーの故郷ではえんじん?とやらで回していたというが、魔力は使わないんだよな?」


「俺も詳しくないのでわからないんですけど、エンジン内部で爆発させた力で動かしてたという知識しかないです。ごめんなさい。」


「いやっ!用はこれを魔力なしで回せる方法を見つければいいということだろう!それくらいはこちらで模索するぞ!こういう技術を教えて貰えただけで感謝だ!」


チャリのペダルっていう手もあるだろうけど、体力勝負になっちゃうからオールと大して変わらないしなぁ。回す方法を完全に失念していた。エンジンの代役として俺にはピストンという便利魔法があるが、これだと魔力を使うから意味がない。マッスルさんが漁業協会の皆で考えるって言ってるから任せてしまおう。俺にはわかんないしな。


マッスルさんと別れて甲板に戻るとソン爺が釣竿をセットしていた。まだポイントに着いていないのにやる気満々である。


しばらくするとマッスルさんから釣りポイントに到着したと伝えられたので、それぞれ竿を受け取って釣りを開始する。今回タァマちゃんは俺とペアだ。また海に引きずりこまれたら大変だから、俺が抱っこして一緒に竿を持っている。足をブラブラ動かして鼻歌まで歌っているくらいご機嫌な様子だ。すると俺の竿がピクンと反応したのでグンと持ち上げると強い引きを感じた。よしっ!今日のファーストヒットは貰ったぜっ!

タァマちゃんと一緒によいしょよいしょっと糸を巻きとると、水面に魚影が見えてきた。

でかいな!2mはあるんじゃないか!?大物きたぜーーーっ!!ちょっと興奮気味で一気に引き上げると、甲板でビチビチと元気良く跳ね回っている。


「・・・・・・おい、何やってんだ?」


釣り上げたのはマグロだった。むぅわかりづらいな。魚人のマグロだ。ウチのパーティのバカ野郎の事である。姿が見えないと思ったら泳いでやがったのか。


「ヨ、ヨーヘー!ミーのチャーミングな唇に針が刺さっている!」


「リリースしたろか・・・、てかお前針に付いてた餌食っただろ?何やってんの?」


「泳いでいたら目の前に食べやすそうな餌があったので食べてみたらこのザマだよ。なーっはっ・・ちょっ!?ヨーヘー!?な、何を!?」


「泳ぐならこの船から離れて泳ぎやがれっ!!」


ドッボーーーン!!


マグロを海に放り投げてやった。あ、針外すの忘れてた。まぁいいや、糸切っちゃおう。


そして今日も夕方まで付き合わされたわけだが、今日の釣果は。


俺&タァマちゃんペア:アナゴ2匹、タラ3匹

アリア:カレイ2匹、タラ2匹、スズキ3匹

トリス:なんか100匹くらい

マグロ:泳いでいて釣ってない。

ソン爺:長靴1足


もう面倒臭いから○○っぽいって言わない。


「なんでじゃぁぁぁぁぁぁああ!!?」


ソン爺はボウズだった為か、この世に絶望したような声で絶叫している。

トリスは漁師に転職した方がいいんじゃないか?なんだよあの数・・・。マッスルさんも驚くくらいの釣果だったぞ。

今日は充分釣りを楽しんだし、まだ続けるんじゃとダダをこねるソン爺をなだめて港に戻った。


港に着くなりトボトボと冒険者ギルドに向かって帰っていくソン爺の後姿に哀愁を感じる。朝はあんなに元気だったのに・・・。

マッスルさんが今日釣った魚を市場に売りに行くと言っていたので、付いて行く事にする。


「あっ!タァマ3日前にトリスお姉ちゃんとここに来ましたっ!お魚さんがいっぱい売ってるところですっ!」


あぁ、この前言ってたところかぁ。


「むっは!ここは俺の縄張りなんだ。ここの市場は漁業協会が運営しているんだよ。」


おー!色んな魚が一杯いるなぁ!あ、貝類もあるじゃないか!魚は死んでいるけど貝類は生きたまま売ってるんだな!おっ、筋子も売ってる!!これでイクラ丼が食える!

市場に入った瞬間テンションが急上昇してしまった。なんか魚売り場とか行くとワクワクしちゃうんだよね。

さすがにカニとかエビは売ってないな。やっぱり食べる人いないのか・・・。美味しいのになぁ。

マッスルさんは部下に釣ってきた魚を受け渡していたので、彼等に売ってもらうんだろう。俺は勿論まだ持っていない色々な魚介類を買い漁っている。ふははははー!大量じゃーーーっ!!今日はシースーにしちゃおっかなー!

浮かれていたからか、ちょっと調子に乗り過ぎてしまった為、全員の手が塞がるくらい買い込んでしまった。売り子の人に食いきる前に腐っちまうよ?と心配されたが食料庫に入れてしまえば時間は止まるので問題ない。

マッスルさんに一声掛けて帰ろうとすると、マッスルさんから逆に声を掛けられた。


「ヨーヘー達はもう帰るところか?たくさん買い込んだようだが、もしかして今日は刺身という料理を食べるのか?・・・もし!もし良かったら俺を夕飯に招待してくれんか!?」


ギラギラした目でマッスルボディが迫ってくる。ちょっと怖いよ。


「あ、あぁ、えっと、刺身じゃないですけど、生魚料理なら作ろうと思ってます。良かったらどうぞ?」


「むっはーーー!言ってみるもんだっ!そうかそうかっ!刺身じゃない生魚料理かっ!むはー!楽しみだなぁ!」


準備が必要だから4時間後くらいに借家に来るように伝えて、俺達は市場を後にした。


「マッスルさんが来るなら、借家の調理場を使えるようにしないとな。」


「マッスルさんて・・・まぁわかりますけどね。帰ったらすぐに掃除してしまいましょう。」


なんかトリスがやる気満々だ。料理はいつも俺とアリアが担当してしまっているから、トリスとしては自分も何かしなくてはと思っているのかもしれないな。まだ付き合い始めて短いが、マジカルハウスの中も常に綺麗に掃除してくれていて助かっている。


買ってきた魚介類は食料庫にをしまっておいた。もちろん使って無くならないようにクローンで複製しておくことも忘れない。色々な食材を集めて将来的にはこの食料庫で揃わない食材は無いと言ってみたい。そして小さなレストランを経営するんだ!

借家の調理場にクリーンを掛けて、後の掃除をトリスに任せてから米を炊く準備をする。マッスルさんはあの体格だし、大量に食べそうだから多めに炊いておくか。

あ、今日はいつ抜け出せるかわからないから、イノッチの食事を先に済ませておくかな。忘れたら拗ねるだろうし。

食料庫から牛肉を取り出したところで、昨日リバースを掛けておいた牛肉の存在を思い出した。マジカルハウスの3階に放置しておいた牛肉さんの様子を見に行くと・・・牛がいた。


「うん、牛だな。とても立派な黒毛さんだ。意識は無いようだけど、これ死んでる状態なのかな?まぁこれ以上戻してもしょうがないので、リバースを解除して再度牛を見る。

さて・・・これどうしよう。

さすがにこの量はイノッチにだって多過ぎる気がする。とりあえず食料庫に入れておくか。色んな部位の肉が食べられるようになったんだと前向きに考えよう。この際だから豚や鳥も1匹戻しておくのもいいかもしれない。


借家の掃除をしてくれているトリスに一声掛けてから、イノッチのご飯の為にアリアとタァマちゃんを連れて街の外に向かった。門番さんに挨拶をして、街から充分離れたところでイノッチを呼び、ご飯だよーと牛肉を10kg分イノッチにあげるのだが、今日はいつのあげている生肉ではなく、火で焼いてから塩を振ってみたものだ。イノッチも味がわかるのか気になったので、調理をしてみたのだ。するといつもよりハイペースで肉を平らげて、お替りまで要求したきたではないか。これは味覚があると思っていいだろう。そうなると腕が鳴るな。イノッチにも美味しいものを食べて貰いたいし、今度からは調理してから食べさせてあげよう。

その後は食後の運動がてら、3人でイノッチの背中に乗って、街が一望出来そうな高台に登ってみた。


「うわぁー♪いい景色ー♪ヨーヘー、太陽が海に沈んでいくよー。綺麗だねー♪」


嬉しそうに微笑むアリアの方が綺麗です。

タァマちゃんは夕日に興味がないのか、イノッチとジャレて遊んでいる。

日が沈んでからもしばらくイノッチと遊んでいたが、そろそろシースーの用意をしないとマッスルさんが来てしまうから街に戻るとするか。

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