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虹の先に繋がる世界  作者: 水無月 壱九
グロスティア
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73話 海老を食べよう

港でソン爺・マッスルさんと別れてブリード氏に借りた家に戻ってきたら、貰ってきたお魚さん達が皆瀕死だ。まぁ水揚げしてるしな・・・。クローンでこれらを複製した魚は食材袋に仕舞っておき、複製を終えた瀕死の魚達には、リバースを掛けてとりあえずの延命措置をする。時間を巻き戻された魚達は、また元気にビチビチしてきたのが確認できたので、まとめてマグロ養殖場に放り込んだ。


「ぬわーーーーーっ!!?」


マグロの絶叫が聞こえてきたが気にしないでおこう。一応食うなよとは言っておいた。

魚も保管できたし、今日は忘れない内にイノッチにご飯をあげてこよう。


「ちょっとイノッチのとこに行ってくるね。」


「あ、私も行くよー。」


今日もアリアと2人でイノッチの所に向かう事になった。

トリスは腕が痛いと言って、お風呂でマッサージ中、タァマちゃんは疲れたのかウトウトしてたので布団で寝かしておいた。


街の外に出てイノッチを呼ぶと数十秒でイノッチ登場。


「さぁイノッチ、今日もお肉だよー。」


いつもの様に牛肉200gを出してクローンを掛けて、10kgくらいまで増やした肉をイノッチに与えてる時に、ふとあることに気付いた。


「『リバース』」


牛肉にリバースを掛けてみた。アナウサギによる実験では体の一部から体全体を再生できた。ということは、これで牛も1匹再生できるんじゃないだろうか?加工してから時間が経っているだろうし、すぐには再生しないかもしれないが、10倍速で戻してるから少なくとも明日には変化があると思うんだ。これが成功したら、豚肉もツナ缶もサバ缶も鮭フレークも本体が出現するまで戻るんじゃないだろうか。できれば成功してほしいなぁ。


期待に胸を膨らませた俺は、イノッチの食後運動である木の葉ごっこで遊び、イノッチに満足してもらってから街に戻った。


「あ、ヨーヘーにアリア。おかえりなさい。遅かったんですね。」


夕飯を作るためにマジカルハウスの中に入ると、お風呂からあがってリビングで本を読んでいたトリスが俺達に気付いて立ち上がる。


「ただいま。ちょっとイノッチと遊んでたんだよ。それで今日の夕飯だけど、俺がエビを食べたいから今日は外食じゃないからね。出来上がるまで寛いでいていいよ。」


「エビというと殻虫のことですか・・・?ヨーヘー・・本当に食べるのですか?私は出来れば食べたくないのですけど・・・。」


「え!?そうなの!?勿体無い・・でもまぁ嫌なものを食べろとは言わないよ。俺だって芋虫食えって言われたら嫌だしね。トリスにとってはエビってそういう認識なんだろ?食文化の違いだし仕方ないよ。安心して、トリスの夕飯は別の料理作るからさ。」


「あの・・・アリアは食べるんですか・・・?」


「うん。虫を食べるのはちょっと緊張するけど、ヨーヘーの事信じてみるよー。」


「う・・・うぅ・・ヨーヘー・・・私の分も殻虫で作って・・・ください。」


「いや、無理すんなよ?無理してまで食べるものじゃないぞ?」


「でも美味しいのですよね?」


「さぁ・・?これがホントにエビなのかわからないしな。形はそっくりなんだけどねー。一応味見はしてみて、美味しくなかったら別の料理を作るさ。」


「と、とにかく、私も皆と同じメニューで大丈夫です。作ってください!殻虫料理を!」


「オ、オッケー。でも殻虫料理って呼ぶのやめない?こいつはエビだ。そしてこっちはカニという。虫っていうと食べ物としては印象悪くなるからね。」


アリアと一緒にキッチンに並びエビの調理を始めた。

味見してみたが味は俺の知っているエビの味だったので安心して調理を進めることができた。

今回はエビづくし、エビフライ、エビチリ、エビマヨ、エビクリームコロッケ、焼きエビ、蒸しエビ、エビ刺し等々。

ただこの世界ではエビは虫扱いのようだし、やはり食べるのに抵抗があるだろう。虫を料理したよ。食べてねと言われてもいい迷惑だろう。

俺もイナゴの佃煮を初めて出された時の事を思い出す。あれは衝撃的だった。軽いトラウマになっている。味はともかく見た目がアレ過ぎた。

アリアは食に対する好奇心から食べるだろう。実際味見をした時に食べてたし。タァマちゃんもあんまり考えないで食べると思う。マグロはグランドワームを食べるくらいだから問題ないだろう。ただ、トリスはさっきの反応を見る限り抵抗が強そうだ。本人は食べると決意していたが、実際目の前にして無理だということになると、トリスが食べるものが無くなってしまうから、トリス用に魚料理も作っておくか。さっそくタラっぽい魚・・・もうタラでいいや。釣ってきた魚を使ってタラのムニエルとカレイの煮付けも作っておいた。

後はテーブルに並べるだけなので、アリアにタァマちゃんを起こしに行って貰い、俺はマグロを呼びにマグロ養殖場に向かった。


「マグロー、夕飯だぞー。」


「む?ヨーヘー、ミーはトロだ。もう夕飯の時間かい?わかったすぐに行くよ。ところでヨーヘー。ミーの住処に新しい同居人がたくさん増えたのだが、これはなんなんだい?」


「あぁ、さっき海釣りに行った時に釣ってきたんだ。仲良くやってくれ。」


「なるほど、まぁそれはいいのだけど、このでかいのに小魚が何匹か食われそうになっていたから助けたけど、餌じゃないのなら何か対策したほうがいいと思うよ。」


なんだって?・・・まぁよく考えたらそうだよな。まぁ食うなとは言えないしなぁ。大きさで生簀を分けるか?まぁ食用だし生きた状態で取っておく必要はないんだが・・・。


マグロに声を掛けた後にリビングに戻ると、タァマちゃんが料理をテーブルに運んでくれていた。


「ありがとうタァマちゃん。偉いねー。」


「にゃあ!お兄ちゃんこれ美味しそうですっ!良い匂いがしますっ!」


寝起きだというのにタァマちゃんは元気だな。

テーブルに料理が並びそれぞれ席に着く。


「ん?ヨーヘー。殻虫を料理したのか?これは人族は食べないと思っていたよ。」


「魚人は食べるの?」


「あぁ!これはご馳走だね!これを食べない人族は損をしていると常々思っていたよ。」


グランドワームは理解できないが、エビは同意しよう。もしかしたらグランドワームも美味いのか?はっ!?もしかして今の俺はアリア達にグランドワームを食べるマグロと同じに見られているのではないか!?ちょっとマグロの気持ちがわかってしまった・・・。あの時はグランドワーム消しちゃってごめんな。次からはなるべく理解できるように頑張るから。とりあえず今は料理が冷めちゃう前に食事をしよう。


「じゃあ食べようか。」


「「「いただきます」」」


さっそく俺はエビ料理を口に運んでみた。

味見して予想はついていたが、やはり美味い。マグロは言うまでもないが、アリアやタァマちゃんも美味しそうに食べていた。しかしトリスは少し躊躇しているようだ。


「トリス、無理して食べないでもいいからね。そこに魚料理も作っておいたからそれを食べなよ。」


「い、いえ!折角ヨーヘーとアリアが作ってくれたのです。私も食べますよ!」


そう言ってトリスはエビクリームコロッケを口に運ぶ。


「あ・・・まろやかで美味しいですね。あと知らない味がします。これが殻む・・エビなんでしょうか?」


まずは姿が確認できないエビクリームコロッケから行ったか。エビクリームコロッケは初級用だ。上級用にそのままの姿で残っている蒸しエビ、焼きエビだな。

トリスは恐る恐るエビマヨに挑戦しようとしている。


「むぐむぐ・・・あ、美味しい・・・。ヨーヘー、これも美味しいです。見た目にはちょっと抵抗ありますけど、味や食感は嫌いじゃないです。」


見た目はともかく味は口に合ったようで良かった。


夕飯を片付けてマグロは養殖場に戻り、俺達は風呂に入って今日の疲れを癒す事にする。てかマグロ、部屋用意したんだからそっち使えよ。

明日は借家の1階にあった調理場を使えるようにするか。店を閉める前は食べ物屋だったのでそれなりに立派な調理場があったからな。そういえばこの世界の調理場がどんなのか知らないな。アリアによると水は魔法か井戸を使うからしい。井戸の水の方が美味しいと言っていたな。火についてはこれも魔法か薪、もしくは魔道具を使うらしい。今は魔道具が一般的らしいな。ウチは魔法だが。

明日また借家の整備やらするかな。ただソン爺が朝から海に行くような事言ってたな・・・。

拘束される時間によっては明日の整備は難しいかもしれない。

風呂からあがった俺達はそれぞれの部屋に別れて休む事にした。タァマちゃんは俺の部屋だ。



翌朝、太陽の日差しで目が覚める。


「うーん・・・ふぁぁ・・朝か・・・」


時間を確認すると7時だったので二度寝せずに起きる事にしよう。


「にゃぁぁ・・・」


俺が身を起こすと俺に抱きついて寝ていたタァマちゃんも目を覚ました。

まだ寝ぼけていたタァマちゃんの頭を撫でつつベッドから降りると、ムニュっと床とは違う感触がした。

驚いてベッドに戻り床を確認すると桃色の物体が床に落ちていることに気付いた。


「・・・アリア?」


アリアが床で寝ている。なんでだ?この状況がよくわからん。昨日の夜を思い出せ。風呂からあがった後、皆それぞれ自分の部屋に入っていったはずだ。タァマちゃんは本人の強い希望により俺と同室になったから一緒にこの部屋に入り、一緒に寝た記憶がある。そして気が付いたら朝だった。

うん、全然わからん。

アリアは自分の部屋に入っていって、そこで寝たはずだ。それがなんで俺の部屋の、しかも床で寝ているんだろう?

とりあえず起こしてみるか。


「ア、アリアさーん?もしもーし、朝ですよー?」


ゆっさゆっさ。


「う、う~ん・・・あ、ヨーヘー、おはよ。・・・体痛い。」


だろうな。


「なんで俺の部屋の床で寝てんの?」


「あ・・・えっとね。笑わない?」


なんか言い辛そうに視線を逸らしてる。


「たぶん笑わないと思う。」


「えっとね。あの後私も部屋に入って寝たんだけど、夜中に急に不安になって目が覚めちゃったの。それで1人で部屋にいるのが怖くなって、ヨーヘーの部屋をノックしたんだけど返事が無いし・・・。悪いなぁと思いつつも部屋に入らせてもらったの。そこで眠っているヨーヘーとタァマちゃんを見たらなんか安心しちゃって、私もそのまま寝ちゃったというか・・・。」


ボッチ時代のトラウマ治ってなかったのか。アリアに個室はダメなのかもしれない。


「今日からこの部屋かトリスの部屋で寝る?」


「うん。この部屋に移ってきてもいい?」


「おう、遠慮すんなよ。あとでベッド移動しておくから。」


「うん、ありがとう。ごめんね。」


「謝ることじゃないって。俺もアリアと同室の方が嬉しいしな。」


「うん♪じゃあお言葉に甘えるね♪なんでだろうね?ヨーヘーの魔力というか気配というかがなんか落ち着くの。」


アリアは着替えに自分の部屋に戻り、俺はタァマちゃんと一緒に1階に降りるとトリスが水壷に水を入れているのを見つける。


「おはようトリス。何やってるの?」


「あ、ヨーヘー、それにタァマちゃん。おはようございます。裏に井戸があったので生活用水を水を汲んできたんですよ。」


へー、井戸があるのか。海辺だけど塩辛くないのかな?ちょっとナメてみたが普通の水だった。この水を使って料理や洗顔、体を拭くといったことに使うそうだ。水魔法が使えない人はまず朝起きたら井戸に水を汲みに行って水壷に水を満たすことから1日が始まるらしい。そうだよな。魔法使いって10人に1人らしいもんな。9割の人が水を出せないわけだから井戸に頼らないといけないわけか。人族は皆魔力は持っているが魔法として使えるかどうかは才能次第だからな。魔法使えないんじゃ魔力要らないじゃんって思うかもしれないが、魔道具を使う時に使うし、何より魔力が無いとシナってなるからな。因みに水を出す魔道具は高価らしく、一般市民は基本的に井戸を使うんだとか。

よし、朝食でも作るか。あ、でもその前にトイレに行っておこう。


「・・・そうだった。汲み取り式なんだった・・・。」


俺達が普段使っているイレイズ式のトイレだが、これは一般家庭には無い。貴族の家にも恐らく無いだろう。だってこれ一応特殊魔法だしな・・・。

宿屋は水洗式で一箇所に水を集めているみたいだが、一般家庭は汲み取り式がほとんどらしい。依頼をすると風魔法が使える魔法師の業者(子供達からはウンコマンと呼ばれているらしい)がやってきて回収していくんだとか。


「これは改善する必要があるな。」


衛生面で言えばイレイズ式>水洗式>汲み取り式なわけだ。俺はイレイズが使えるから態々汲み取り式を使う必要は無い。昨日の内にクリーンで綺麗にしておいたから未使用のトイレは綺麗な状態だ。さっそくイレイズを使い、イレイズ式のトイレに変貌させる。

一仕事終えてマジカルハウスのキッチンに向かうとアリアが朝食を作り始めていた。


「あ、ヨーヘー。先に作り始めてるよー。とりえあずお味噌汁作ってるけど、今日は何作る?」


「んー、せっかく魚を手に入れたわけだから焼き魚にしようか。」


食料庫から鮭を取り出し捌いていく。さすがに5人で1匹は食べきれないかもしれない。余った分はおにぎりにでもしてお昼ご飯にしよう。

朝食に焼き魚と味噌汁か。なんか懐かしいな。

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