72話 赤い海老~♪
ごめんなさい。予約投稿ミスってました(;>д<)
更新ペース戻すとか言った矢先にこれです。
日は跨がなかったのでセーフ!!
この船は全長20mくらいの大きさで結構広い。帆が無いということは推進力はスクリュー式なんだろうか?
いつもは2人で海洋調査という名目の釣りに行っているらしいが、今日は俺達もいるからかマッスルさんのテンションが高めらしい。
マッスルさんが操舵室っぽいところで、台座の上に乗っている半球体の物体に手をかざしている。マッスルさんはあの半球体に魔力を送ってようだ。すると船が静かに動き出し港から離れていった。
「マッ・・・アンデルセンさん。それはなんですか?」
「うん?これか?これは船を動かす魔道具だ。これに魔力を注ぎ込むと船体が水の上を滑るんだ。珍しいものじゃないと思うんだが、知らないのか?」
「あぁ、はい。俺の故郷では別の方法で船を動かしていましたからね。でもこっちの方が静かに進みますね。」
「ほう、そうなのか!その方法を後で教えてくれないか?実はこの魔道具は欠陥があってなぁ。魔力が切れると全く動かんのだよ!むっはっはっ!だから魔力が切れたときはオールを使って漕いで戻るんだ。」
それでそのマッスルボディなのか。てか20m級の船を1人で漕ぐの?凄くね?
「そやつは簡単に言っておるがの、普通沖で魔力切れを起こしたら魔力が回復するまで帰ってこれんからな。毎年何件かは魔力切れでそのまま流されて海から帰らぬ者もいるくらいじゃ。」
なるほど、魔力が燃料ということはそういう事故も起こるわけだな。
「ソン爺さん、あっちに鳥がいるな。あの辺りに魚がいるぞ。」
「ほう、今日は幸先いいのぅ。どれ準備するかの。ヨーヘー手伝うのじゃ。」
釣ポイントにはすぐに到着し、ソン爺と一緒に竿の準備をした。マッスルさんは船を止めて網を海に投げ込んでいる。
「よし!早速釣ろうぞ!嬢ちゃん達もこれを使うといい!」
ソン爺が人数分の竿を皆に手渡す。これは地球のと変わらないんだな。リールは自転車のペダルの様な形をしていたが。
「これはな。まず腰にこのベルトを巻いて、ベルトに付いている袋に竿を差し込むのじゃ。そうしたらこの糸巻きのペダルを両手で持って餌のついた針を投げ込む。そのペダルを回せば糸が巻き取れるから竿の先っぽがピクンと動いたら一気に引き上げるんじゃ。」
それから皆で一斉に釣りを始めたわけだが、ヒット第1号は意外にもトリスだった。
「わっ!ヨーヘー!見てください!こんなに大きい魚です!」
トリスが釣り上げたのは40cmくらいのアジみたいな魚だ。それを見た俺達は俄然とやる気を出した。
釣りを始めて2時間が経過。
現在の成果。
俺:小魚3匹
アリア:ヒラメっぽいの2匹
トリス:20cm~90cmの魚30匹以上
タァマちゃん:ボウズ
ソン爺:小魚1匹
「にゃぁぁ・・・」
タァマちゃんが落ち込んでいるな・・・。もしかして海中の魚はタァマちゃんの餌にニャンコの気配を感じているのかもしれない。この前マグロがその気配に怯えていたからな。
「アンデルセン!ここは全然釣れんぞ!別の場所に移動じゃ!」
あまり釣れないソン爺が拗ねて釣りポイントの変更を要求したので、別のポイントに移動する事にする。
ちなみに釣った魚は船内の生簀で生きたまま保管されている。冷凍保存を知らないみたいだから鮮度を保つのになるべく生かしておくのだろう。
その後、4回くらいポイントを変えた結果、それぞれの成果は。
俺:小魚7匹、、タイみたいなの1匹、ウツボっぽいの1匹
アリア:ヒラメっぽいの5匹、カツオっぽいの3匹、サケっぽいの1匹
トリス:20cm~1.3mの魚70匹以上
タァマちゃん:ボウズ
ソン爺:小魚1匹
「なんでじゃぁぁぁぁl!!」
ソン爺の絶叫が船上にこだまする。
ソン爺はいいよ。まだ1匹釣れてるんだから。タァマちゃんを見てみろ。誰が見てもわかるくらい落ち込んでいるぞ。
もう夕方にもなったし、そろそろ日も沈んで暗くなるので港に戻ろうという話しになった時だった。
「にゃあっ!?」
後片付けを始めていた俺達の背後でまだ粘っていたタァマちゃんの声が聞こえて、その次にドボンという何かが海に落ちる音が聞こえた。
タァマちゃんがいた場所を見るとタァマちゃんの姿が見当らない。
「タァマちゃんっ!?」
慌てて海を覗き込むがタァマちゃんの姿は見えない。冷たい汗が全身から噴き出すのを感じる。
「タァマちゃんっ!!どこだ!!タァマちゃんっ!!」
アリアとトリスも大声でタァマちゃんを呼んでいるが返答は無い。
船のへりを掴む手が震えている。タァマちゃんを探す為に海に飛び込もうとしたその時だった。
「にゃぁっ!」
俺達のいる側面の反対側から声が聞こえてきた。
俺は声の方にすぐに移動するとタァマちゃんが海面を何かに引っ張られているのが見えた。その先には3mくらいの魚影が見える。
俺は今度こそ海に飛び込んでタァマちゃんの所まで泳ごうとするが、魚に引っ張られているタァマちゃんの方が速度が速い。
「タァマちゃん!手を離すんだ!」
「にゃっにゃぁ!」
タァマちゃんは俺の声が聞こえていないようだ。くそっ!こうなったら・・・!
「『フライ』!」
俺は水面から空中に飛び上がる。そして魚影に向かって手をかざし、バインドで動きを封じ込める。
動きの止まった魚影からタァマちゃんを抱き上げて船の上に連れ戻した。
「にゃぁぁ・・お兄ちゃん・・お兄ちゃんっ」
プルプル震えるタァマちゃんを優しく抱いて背中をさすってあげた。
「よしよし、怖かったね。もう大丈夫だよ。」
必死に俺にしがみついてくるタァマちゃんが落ち着くまで、ずっとあやし続けてあげる。
「大丈夫じゃったかの?怪我は無いかの?さすがに肝が冷えたぞい。」
「えぇ、怪我は無いみたいです。ちょっと海水を飲んでしまったみたいですけど大丈夫でしょう。」
タァマちゃんをあやしている内にもう港の近くまで来たようだ。
「ところでヨーヘー。お主のさっきの魔法なんじゃが、あれは特殊魔法じゃな?」
「ん?ソン爺わかるんですか?」
「たしかに特殊魔法は珍しいがな。先程ヨーヘーが使った魔法の魚を動きを止めた奴があったじゃろ。あれは自然魔法では説明が出来んからのぅ。」
「なるほど、確かに俺は特殊魔法が使えますよ。さっきのは対象を拘束する魔法です。」
「ふむ、特殊魔法が使えるという事は、各所からの勧誘が凄いのではないか?」
「いえ?今まで勧誘されたことはないですね。」
「国やら商業組織にとっては喉から手が出るほど欲しい人材の筈なんじゃが、知られておらんということか。まぁ国や商業組織に雇われれば良い給料と地位を与えられるが、業務に役立つ特殊魔法の習得の為に拘束され、覚えたら覚えたで馬車馬の如く使われてあまり自由は無いと聞くからのう。冒険者にとってそれは苦痛じゃよな。」
ふむ・・・特殊魔法使いだとそんなことになるのか。
「あー、それはちょっと嫌ですねー。バレないようにした方がいいですかね?」
「まぁ数は少ないが特殊魔法の使い手がいないというわけでもないからの。ヨーヘは冒険者ギルドに所属しておることじゃし、それ程強引な勧誘はされんじゃろうから大丈夫じゃとは思うが・・・。まぁバレた際にヨーヘーがそういった組織に利用されたくないというのなら、ワシが手を回しておくわい。」
「それじゃあ、お願いします。冒険者を続けたいので、今のところ一つの所に留まるのは避けたいですから。」
それにしても国とかからの勧誘ねー。フリーだったらそういう可能性もあったのか。身分証を作る為に入ったとはいえ、冒険者ギルドに所属しておいて良かったな。拘束なんてされたら地球に帰る方法を探すなんてできなそうだからな。
ただディスペル、リバースは使えるのがバレるのは不味いだろうからこれは人前ではなるべく使わない。他にもクローンとかの反則っぽいのは身内以外には隠しておいた方がいいだろう。
「さて・・・気が重いが今日の成果の確認じゃな。1位は断トツでトリス嬢ちゃんじゃ。そんでビリはボウズじゃった猫の娘っこじゃのう。危なくワシがビリになるところじゃった・・・。」
「にゃぁ・・・」
ソン爺大人気ない・・・
「あぁ、そうだ。タァマちゃんが最後に引っ掛けた魚なんだけど、ちゃんと捕まえておいたよ。折角タァマちゃんが頑張って釣ったんだもんね。お兄ちゃんはタァマちゃんの頑張りを無駄にはしないよ!」
タァマちゃんにわかるように海中にバインドで拘束したままの魚を指差してあげた。
「にゃ・・にゃぁぁぁ!!タァマのお魚ですっ!にゃあ!お兄ちゃんっ!大好きですっ!!」
俺に抱きついたり魚を見てピョンピョン飛び跳ねたりして忙しいタァマちゃんを見てほんわかした。
「これでタァマちゃんはビリじゃないね。大きさでは一番だ。」
「ぬぉぉぉぉおお!!?なんてことじゃぁぁぁぁああっ!!」
ソン爺が両手を床についてホンキで悔しがっている。この人は初心者や子供に花を持たせてやろうという気概はないようだ。
「・・・明日もじゃ・・」
「え?」
「明日も釣りに行くんじゃ!付き合ってもらうからの!年明けまでこの街にいるなら時間はあるじゃろう!逃がさぬからの!アンデルセンもわかっておるな!?」
ソン爺、海洋調査の名目はどこに行った?
「明日の朝から出発じゃ!」
まぁ楽しそうだからいいか。
「それで、この釣った魚はどうすれば?」
「おうっ!その魚は要らないなら俺が引き取ろう!ちゃんと金も払うからな!それにしてもこれだけ大量に釣り上げるとはトリス嬢さんは釣りの才能があるのかもしれないなっ!」
「あら、ありがとうございます。さすがに釣りすぎてしまいましたね。引き取ってくださるのでしたらお願いします。」
トリスはたくさん釣ったのが嬉しかったのか今も上機嫌を保っている。ソン爺と対照的だ。これが勝者の余裕というやつか。
「あ、マッ・・・アンデルセンさん。これらの魚に興味があるんで、それぞれの種類の魚を1匹ずつでいいから分けてもらえませんか?」
「おうっ!全然構わないぞっ!そうだっ!今から網を引き上げるからそれを手伝ってくれたら網に掛かっている魚も持っていっていいぞ!むっはっはっ!!」
「おー、ホントですかー!勿論手伝いますよっ!」
その後、皆で網をヨイショヨイショと引き上げたわけだが、ほとんどマッスルさんが引き上げたようなものだった。あの筋肉は飾りじゃない・・・。
引き上げられた網を見てみると・・・おぉ~色んなのが一杯いる!!タコっぽいのやイカっぽいのまで!
「むっ?殻虫も混じっておるな。」
ソン爺がそう呟くと1匹の殻虫とやらを掴んでポイッっと海に放り投げた。
「な、なにをするだーーー!!」
俺は放り投げられた殻虫とやらを空中でキャッチ!
「なんじゃ!?そんなもん拾ってどうするんじゃ?」
「え?これ食わないんですか?」
「虫なんか食うわけないじゃろう。それともなにか?ヨーヘーの故郷ではそんなもん食べるのかの?」
「・・・たぶん食べます。」
ソン爺が放り投げたのは立派な海老様だ。見ているだけで真っ赤に茹でたくなってくるぜ・・・!今俺の頭の中には「IN THE MOOD」の曲が流れている。子供の頃、父親が録画していたテレビを一緒に見ていた時に、流れていたCMに使われていた曲で、陽気なテンポと美味そうなロブスターやカニの映像が流れていた。それを見てから父親に食べたい食べたいと泣きついたのだが、昔はお店が近所にあったんだけど、潰れちゃったんだよって告げられた時の絶望感といったらなかった。あの曲が流れると無性に大きなエビが食べたくなる。同年代の友達には理解されなかったが・・・。
その憧れの海老様が俺の手中にある。今の俺なら調理する事も出来るだろう。今思うと、俺が料理に目覚めたのはその時の悔しさからだった気がする。さて、どう料理してくれようか・・・くふふふふ。
「な、何を笑っておるんじゃ・・・?そんなもん食うのか・・・じゃあもしやこっちの小殻虫も鋏虫も食べたりするのかの?」
やだ、クルマエビさんとズワイ蟹さんじゃありませんかー。
「オフコース」
「マジか・・・。このにゅるにゅるの奴もか?」
「タコさんですね。それも大好きであります。」
「へ、変な食文化の国じゃのう・・・」
海洋国家なめんなよ。こちとら水族館に行って魚見ると美味しそうって思っちゃう民族だぞ!
色々な魚やタコ、イカ、海老、蟹の一番良さそうな物を雄雌1匹ずつ貰い(タコ、イカ、海老、蟹は捨てるっていうから全部貰った)、後はマッスルさんに引き取って貰う。タァマちゃんの釣った3mのマグロみたいな魚も貰える事になった。
とうとう魚をゲットしたぞ。これで料理の幅が広がるな。雌の魚には腹の大きな魚もいるし、魚卵も期待できるかもしれない。こうなると貝とかも欲しくなる。今度素潜りしてみるかな!




