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虹の先に繋がる世界  作者: 水無月 壱九
グロスティア
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71話 家を借りよう

次の日、アリアはいつも通りのアリアだった。昨日のような思いつめた感じはなさそうなので良かったと思うべきかな。

俺達は今冒険者ギルドにいる。またしても二日酔いで潰れていたマグロは置いてきた。


「ほっほっほっ、よく来たのう。待っておったぞ。」


冒険者ギルドまで行くと、ギルド長のソン爺が冒険者ギルドの入口で出迎えてくれたのには驚いた。毒セリアさんによると2時間くらい前から入口付近でウロウロしてたらしい。ソン爺可愛い。


「ヨーヘー、今日は暇じゃろう?暇じゃよな?ワシと一緒に外回りに行かんか?」


「えぇ、予定はありませんからお付き合いできますよ。」


「おぉっ!そうか!!行ってくれるか!」


「ギルド長またサボリですかー?」


喜ぶソン爺に毒セリアさんが水を指した。


「外回り営業じゃ!!キレースは港町じゃからな!海洋調査をしっかりしておかないといけないのじゃっ!何か起こってからじゃ遅いのじゃっ!!」


よくもまぁこんな言い訳が思いつくもんだ。


「ではヨーヘー!アンデルセンには話を通しておくでな、ちぃと船の準備をしないといけんから、そうじゃのぅ、2時間後に港の船着場まで来てくれんか?」


「わかりました。2時間後ですね。」


伝えたいことを伝え終わったソン爺は風のように冒険者ギルドを飛び出して行ってしまった。元気な爺さんだ。


時間が空いたのでブリード氏の店を訪ねることにした。店には俺より年上だが若い女性が店番をしていたので、ブリード氏がいるかどうか聞いてみる。


「すいません。ブリードさんはいらっしゃいますか?」


「はい?兄さんですか?ちょっと待っててくださいね。兄さーーん!お客さんよー!」


女性の声に反応し、ブリード氏の声が奥から聞こえ、それ程時間を置かずにブリード氏が姿を現した。


「やぁ!ヨーヘー君じゃないか!」


「おはようございます、ブリードさん。昨日はご馳走して頂きましてありがとうございました。」


「いやいや、我々も楽しませて貰ったよ。トロ殿は大丈夫だったかい?」


「いや、また今日も死んでますね。まぁ午後、もしくは夕方までには復活するでしょう。」


「はっはっはっ!随分と調子良く飲んでいたからねぇ。それで今日はどうしたんだい?」


「えぇ、実はこの街に年明けまで滞在する事になりまして、貸家を扱ってる人を紹介してもらえたらなぁと思いまして。」


「おぉ!そうなのかい?うーんそうだなぁ・・。貸家だと年間契約が主流だからねぇ。せめて半年は使ってもらいたいというのが不動産屋の言い分だから1ヶ月だけとなると難しいかもしれないよ。」


「やっぱりそうですか・・・。」


宿暮らししかないかなぁ?ちょっとでも節約できればと思ったんだけど。それともルールを曲げてマジカルハウスで生活してしまうか?


「もし住めるだけでいいと言うなら、この前畳んだ店舗があるんだけど、そこを使うかい?倉庫として使っているけど、掃除をすればまぁ住めると思うよ。」


「え?いいんですか!?」


これは願っても無い提案だ。問題は家賃だが町によって上下するが、だいたいの相場だと、貸家は年間約5万レンスくらいだトリスから聞いている。無理を言っているわけだし、5千レンスくらいになるといいなぁ。


「但し条件がある。倉庫として使ってしまっているから、荷物の片付けをしてほしいんだ。何、売れなかった在庫を置いてるだけだからそんなに数は無いよ。端っこの方に置いておいてくれれば邪魔にはならないだろう。」


「ありがとうございます。あの・・・それでお家賃はいくらくらいですか?」


「ん?あぁ、いらないよ。ヨーヘー君達には命を助けてもらってるからね。」


「いや、そういうわけにもいきませんよ。こっちが恐縮しちゃいます。」


「兄さん、ここは少しでも貰っておいた方が円滑に進むのよ。」


「む?そうか・・・。んー、では千レンスでどうだい?これ以上は貰わないからね。」


やっす!1ヶ月1万円って。でもこれ以上は貰わないって言ってるし、お言葉に甘えるか。


「ではお借りします。今日から使っても大丈夫ですか?」


「今日からかい?さすがに汚れていると思うが・・・」


「パパッと掃除しちゃうので大丈夫ですよ。」


「そうかい?それじゃシーニュ、俺は店の準備をしないといけないからヨーヘー君を案内してくれ。」


声を掛けられた女性はシーニュさんというのか。俺は忘れない内にブリード氏に千レンス手渡して、シーニュさんに貸家までの案内をお願いした。


「私はシーニュ。ブリード兄さんの妹よ。普段兄さんの店の手伝いをしているの。兄さん、さっき言ってた店舗って街中の?それとも海沿いの?」


「あぁ、海沿いの方だ。そこの方がここから近いからね。」


シーニュさんに案内された場所は賑わっていた通りから少し離れた場所にあった。


「ここの店舗はね、ラプカを売っていた店舗だったんだけど、見ての通りの人通りでしょう?全然売り上げが伸びなくてね。半年前に畳んじゃったのよ。」


たしかに人通りがまばらだ。賑わっていた通りと同じ通りなのだが、周りに店が無い為が人がいない。5分も歩けば人が一杯いるのにな・・・。それに扱っていた商品がラプカ。スーラで食べた奴だな。豆をナップ(パンの様なもの)で挟んだこの国のオニギリ的なポジションである食べ物だ。物珍しさもなく態々ここまでラプカを買いにくる客もいなかったのだろう。

建物は2階建てで1階を倉庫として使っているみたいだな。中に入ると少し埃っぽい。ブリード氏は倉庫と言っていたが、何かが入っている袋が20袋程置いてあるだけみたいだ。


「置いてある荷物はそれだけみたいね。たぶんそれ兄さんが仕入れてきた豆なんだけど、色が黒くて見た目も悪いからあまり売れなかったの。味はそんなに悪くないんだけどね。」


袋の中身を見せてもらうと小さな黒い豆が入っていた。これ全部そうなのか・・・。


「もし良かったら食べちゃってもいいわよ。ウチでも食べて減らそうとしてるんだけど、この量でしょう?使い終わるのが何年先になるか・・・。」


何かあったら言ってねと言い残してシーニュさんは帰っていったので、豆の袋はどこかにまとめて積む事にして寝床確保の為に掃除を始めますか。


「タァマちゃん集まれーーー!」


「はいっ!タァマはここにいます!」


両手を挙げてピョンピョン跳ねて自分をアピールしている可愛いタァマちゃん。


「これから俺が魔法で埃や汚れを飛ばすから虫退治をお願いします。ガラダでやった感じで行こうかー。」


「はいっ!虫一杯捕まえます!!にゃぁぁああ!」


元気良く虫退治に向かったタァマちゃんを確認して、俺はクリーンを使って部屋を綺麗にしていく。俺の作業は15分程で終わってしまった。タァマちゃんはにゃぁぁ!といった気合いの入った声が聞こえるのでまだ頑張っているのだろう。アリアは弱い電撃魔法を使って目に見えない虫を駆除してるし、トリスは雑巾で窓なんかを拭いたりしている。布団なんかも用意しないといけないなぁ。2階は4部屋あるし、俺とアリアとトリスとマグロで分ければいいだろう。タァマちゃんは俺かアリアと同室だな。タァマちゃんとアリアが行っている害虫駆除が終わった部屋から、マジカルハウスで使っているベッドをクローンで複製して設置していく。寝る場所はこれでよしと。

各部屋の準備が終わると、タァマちゃんが自慢気にバケツを持ってやってきた。バケツの中にはタァマちゃんがやっつけた虫の死骸がぎっしり詰まっていた。結構いたんだな・・・虫だけじゃなくネズミもいる。こんだけいると気持ち悪ぃ・・・。自分の顔が引きつっているのがわかる。この虫どうしよっかなー。マグロが食べるかな?するとタァマちゃんが俺を見てソワソワしている事に気が付いた。そうだ、頑張ったタァマちゃんを褒めてあげないと!俺はタァマちゃんを抱き上げて頭を撫でて褒めてあげると目を細めてにゃぁぁ・・と気持ち良さそうな声をあげて喜んでいた。

とりあえず虫の入ったバケツはマグロ養殖場に置いておこう。


掃除を終えて、アリアとトリスはそれぞれが新しい自分の部屋をチェックしているみたいだ。


「もうベッドまで用意したんですね。これで夜もちゃんと寝れますね。」


「風呂だけはマジカルハウスの物を使うことになるけどね。あぁそうだ。宿はチェックアウトを伝えておかないとダメだよね?」


「いえ、前金で払っていますし、お昼までに更新手続きがなければ自動的にチェックアウトになりますから大丈夫ですよ。荷物も全部持ってきていますし問題ないですね。」


なるほど、そういうシステムだったのか。


「そっか。じゃあちょっと早いけどソン爺との待ち合わせ場所に行こうか。」



「おーいこっちじゃよー!」


港に着いて、ソン爺を探していると、1隻の船からソン爺が俺達を呼びながら手を振っているのに気が付いた。

ソン爺の乗っている船にもう1人いるのだが、日に焼けた肌、ムキムキのボディ、ツルツル頭のボディビルダーみたいな大男だった。このマッスルボディの持ち主がアンデルセンさんだろうか?


「ヨーヘー良く来たな!待っておったぞ!紹介しよう。こやつは漁業協会会長のアンデルセンじゃ。」


ムキッと筋肉を強調して白い歯を見せてニカっと笑ったアンデルセンさんが握手を求めてきたのでそれに応じる。


「むっは!お前がヨーヘーかっ!ソン爺さんが気に入った男がいると昨日から騒いでいたんで会ってみたかった!よろしく頼む!お嬢さん方もよろしくな!」


それぞれ挨拶をして軽く自己紹介をしておいた。


「ほう?ヨーヘー達は年明けまでキレースに滞在するのか。それはいい!今度は別の生魚料理を作ってもらわなければらなんからのう!」


「おぉ!俺もソン爺さんが持ってきた黒い液体に生魚を付けて食ってみたが、あれは深い味がしたな!一回で気に入ったよ!もしっ!もしあの液体の在庫があるなら譲って欲しい!ソン爺さんは分けてくれないんだ!刺身?という料理も1切れしかくれないしなっ!あんな味を味あわせておいて1切れとか酷いと思わないか?おかげで昨日の夜は悔しくてよく眠れなかったっ!むっはっはっ!」


「ほっほっほっ、この前お主が釣り上げた魚を食わせてくれなかった仕返しじゃよ。」


この2人は凄くいい関係なんだな。喧嘩しているようだが、凄い楽しそうにしているし、なんか心地いい会話の応酬に聞こえる。

互いに文句を言い合いながら2人は船に乗り込んで行ったので、俺達も後に続いて船に乗船することにした。

少し余裕が出来たので、更新ペースを戻します。

それと、累計PV数が10万アクセスを突破しました!

お付き合い頂きましてありがとうございます!

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