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虹の先に繋がる世界  作者: 水無月 壱九
グロスティア
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69話 セリアはどこ?

ソン爺を見送った俺達も毒セリアさんにセリアル教会の場所を確認してから冒険者ギルドを出た。


「なんかソン爺さん凄い落ち込んでたね。教会は明日でもよかったよ?」


「いや、ここまでのんびり来ておいてなんだけど、情報が手に入る状態なら早めに入手しておいたほうがいいだろうからね。セリアさんを見つける事はユグドさんがどうして憤怒の魔法師と呼ばれているかを知る重要なヒントになるだろうし。」


「そう、うんそうだね。でも急な事にならない限りは明日はソン爺さんに付き合ってあげようね。」


しばらく歩いていると立派な建物が見えてきた。鐘楼を持つ建物でキレースで一番高い建物だそうだ。確かに遠くから見えてたわ。これがセリアル教会だったのか。ブランダの教会と比べると随分立派だな。よし、ここもアリアに任せよう。


「ごめんくださーい」


中に入ってアリアが声を掛けると奥から教会の修道士がやってきた。やはり白いローブを着ているな。セリアル教は白い服が修道服なんだろう。


「はい、当教会にご用でしょうか?」


「あの、この教会の孤児院の責任者の方に面会したいのですけど、いらっしゃいますか?」


チラリとタァマちゃんを見た修道士はこちらへどうぞと教会の奥にあった小部屋へと案内してくれた。タァマちゃんは預けないからな?


「ただいまお呼びしますので、こちらの部屋でお待ちくださいませ。」


修道士はそう言い残して小部屋を退室していった。

しばらくするとお歳を召しているが、ピンと背筋が伸びていて、立ち姿が凛々しい女性が入室してきた。


「私に御用があると伺いましたが。失礼、私はリーリアと申します。」


「初めまして、マザー・リーリア。私はアリア=イグナスです。この度はお忙しいところありがとうございました。」


「アリア・・・イグナスさん?もしかしてイグナス伯爵家の縁の方かしら?」


「はい、父がイグナス伯爵でした。もう伯爵家ではありませんけどね。」


「そうでしたか・・・ご家族は残念でした・・・大変だったでしょう?」


「あはは、色々とありましたから。」


「貴方様の血筋は尊い物です。もしご希望なされるのでしたら、セリアル教会は貴方様を歓迎致しますよ。」


「ありがとうございます。でも今は信頼できる素敵な仲間がいますから大丈夫ですよ。この仲間達と一緒にいたいのです。」


「そうですか。わかりました。それで本日はどんなご用件で?」


「はい、実はこの教会の孤児院でセリアという名前の人がいたと思うのですが。」


「セリア?ごめんなさいね。セリアという名前はたくさんいるの。今もこの教会には16人のセリアがいるわ。ちなみにさっき貴方達を案内した子もセリアよ。」


「あ、ごめんなさい。歳は22か23歳くらいでセリア=ローレンスという人です。」


「セリア=ローレンス!あの子ね。えぇ確かにいたわ。」


リーリアさんはセリアさんの名前を聞くとちょっと驚いた表情になったが何かを思い出したのかすぐに優しそうな表情に変わった。


「今私達はセリアお姉ちゃんの行方を捜しているんです。ご存知でしたら教えていただけませんか?」


「失礼ですがアリアさん。セリアとはどういったご関係で?」


「マザー・リーリアもご存知だと思いますが、私の家族が賊に殺された時に私を助けてくれたのがセリアお姉ちゃんだったんです。それで、その時にお姉ちゃんと一緒に助けてくれた人が信じられない事をしてるので、お姉ちゃんなら何か知ってるんじゃないかと思って探してるんです。」


「そうだったの・・・でもごめんなさいね。セリアは今から8年前にここを出て行ってから一度も戻った事はなかったわ。ちょくちょく手紙はくれたんだけどね。それも最近は来てないのよ。」


「そう・・・ですか。どこかいる場所に心当たりはありませんか?」


「そうねぇ・・・あの子色々な所を転々としてたみたいだから・・・。それに貴族様に追われていたし、そんなに足跡は残してないと思うの。」


アリアが目に見えて落ち込んでいるのがわかる。


「あの、リーリアさん。俺は洋平って言います。貴族に追われていたってどういうことです?」


「あら?あなたはアリアさんの良い人かしら?」


「ち、違いますっ!」


アリア、そんな風に即答されるとちょっとショックなんですけど。


「ふふっ、そうなの?でも・・・ふふ、まぁそういう事にしておきましょう。ヨーヘーさん、正確には違うのよ。あの子の連れが追われていたの。」


「ユグドさんが?」


「あら、ユグド坊ちゃんを知ってるのね。そうよ。彼が貴族様に追われていたの。」


「何をやって・・・?」


「何もしてないわ。ただこの街から出て行っただけ。ユグド坊ちゃんとセリアは幼馴染でね。よく一緒に遊んでたの。セリアったらお転婆でね。よくユグド坊ちゃんが振り回されてたわ。最初は私達も貴族様にもし何かあったらと思ってヒヤヒヤしてたのだけど、でも相思相愛とはああいうのを言うのね。2人はとても相性が良くて惹かれあってたみたいだわ。それで8年前、セリアが15になった時に一緒に街を出て行ったのよ。」


「それだけで貴族に追われるんですか?」


「ユグド坊ちゃんも貴族様でしたし、この地域の領主様の跡取りでしたからね。セリアと一緒に街を出て行った事が勝手な行動として見られたんだと思うわ。」


「マザー・リーリア、あの最後に来たセリアお姉ちゃんの手紙ってどういう内容だったんですか?」


アリアの言葉を聞いたリーリアさんは少し表情を曇らせて心配そうな色を出しながら語ってくれた。


「最後に手紙が来たのが3年前になるかしら・・・997年の3月だったから2年と9ヶ月前ね。あの子ねユグド坊ちゃんと結婚して、お腹に赤ちゃんがいるというの。その手紙にはもうすぐ生まれそうだって書いてあったわ。」


「え!?結婚!?赤ちゃん!?わぁ♪素敵!」


「本当素敵よね。でもね、あの子コルベール王国の王都ザクレンに住んでたみたいなのよ。」


「え・・・?ザク・・・レン?」


「そう、そのザクレンよ。これがどういう意味かわかる?」


「・・・・・・」


「アリア?どういう意味なの?知ってるなら教えてくれ。」


「・・・ヨーヘー。私ユグドお兄ちゃんが今いる場所について話したことあったでしょう?コルベール城にいるって。そのコルベール城があるのが王都ザクレンなの。・・・ちょっと悪い想像しちゃうよね。お姉ちゃんの手紙が来たのがセリアルドール997年の3月。そしてコルベールが地図から消えたのが4月なの。それ以来お姉ちゃんからの連絡は一切無いんですよね?マザー・リーリア。」


「えぇ、3月に貰った手紙を最後にセリアからの連絡は無いわ・・・。」


「お兄ちゃんと結婚しているのにお兄ちゃんと離れるわけないよね?赤ちゃんも生まれるんだし。そしてお兄ちゃんは今もコルベール城にいる。ヨーヘー、お兄ちゃんが何て呼ばれてるか覚えてる?」


「あぁ、憤怒の魔法師だろう?」


「・・・お兄ちゃんは・・・あの優しかったお兄ちゃんは・・・何に憤怒したんだろうね?国を滅ぼす程に・・・何よりもお姉ちゃんを大切にしていたお兄ちゃんが何に憤怒したんだろうね・・・?」


「あ・・・」


一番わかりやすい解答はセリアさんの身に何かあったってことか?貴族の追っ手が手を出したわけじゃないだろう。それならコルベール王国を滅ぼす理由にならない。ということはコルベール王国がユグドさんを怒らせることをしたということか?つまりコルベール王国が・・・セリアさんと赤ん坊を・・・殺した?

そう考えるのが一番辻褄があう・・・よな。コルベール王国を滅ぼす動機になって、憤怒と言われるくらい激怒するのも頷ける。セリアさんの消息が掴めないのも当たり前だ。死んでいるんだから。セリアさんがコルベールから逃げているということもありえるが、そうするとリーリアさんに3年近く連絡がないのが不思議だ。あくまでも仮説だけど、納得できてしまう気もする。希望を言うならユグドさんがコルベールに騙されて憤怒し、国を滅ぼして、滅び行く国からセリアさんがユグドさんを置いて脱出。手紙も出せない山奥とかでひっそり暮らしてるっていうのが理想なんだけど、ちょっと苦しいよな・・・。確率は0%じゃないがかなり低いだろう。


「リーリアさん。セリアさんの体の一部とかありますか?髪の毛とかなんでも構いませんので。」


「?体の一部?あったかしら・・・?えーっと・・・あっ、あの子の歯が入れ替わった時の乳歯がとってあったと思うわ。何に使うの?」


「セリアさんを探すおまじないをしようかと思うんです。」


「おまじない?よくわからないけど、それを持ってくればいいのね。ちょっと待っててくださいな。」


誰も話さない重い空気の中、リーリアさんを待つ事1時間。部屋の扉が開いてリーリアさんが戻ってきた。


「ごめんなさい。待たせてしまったわね。なんせ10年以上も前の物だから中々見つからなくって。でもちゃんと見つけたわ。これでいいかしら?」


俺はリーリアさんから子供の歯を受け取る。なんか血っぽいのが付いてるな。とりあえずやってみるか。


「『サーチ。捜索対象:セリア=ローレンス。探知対象:セリア=ローレンスの魔力又は肉体。探知サンプル:セリア=ローレンスの歯。』」



「どう?ヨーヘー。」


サーチを掛けて30分が経過し、不安そうにこちらを伺ってくるが今は魔法に集中する。



サーチに集中して捜索範囲を広げていたからどれくらい時間が経過しているのかわからなかったが、ふと時計を見ると6時間が経過しているようだ。

リーリアさんはやる事があるらしいので今は席を外しているし、タァマちゃんは孤児院の子供達と遊びに行ってしまった。

アリアとトリスはじっと待ってくれている。

しかし、6時間か・・・。さすがに辛いな。

そう、主に膀胱が。


「ちょっとヨーヘーッ!無理しないで!顔色悪いよ!?魔力が限界なんじゃない!?」


うん、漏れそうなんだ。限界なのは魔力じゃなくて膀胱さんだ。でも中断したらまた最初からになってしまう。この6時間が無駄になっちゃうかと思うとそう簡単にやめるなんてしたくない。トイレに移動するくらいならサーチの維持はできるが、放流したときの緩みでサーチが維持できるかわからない。もし解除されてしまったら笑えないからな。


「ごめん・・・まだ1.5モールくらいの範囲しか探せてないんだ。残滓すら見つからない・・・。でももうちょっとなら(膀胱も)大丈夫だから。」


最終手段として紐で縛るという荒行も残っているが、さすがにこの2人の前ではやりたくない。


「充分だよっ!もうやめて?ね?1.5モールっていう事は魔族領まで届いてるんだよ?赤ちゃんを連れた状態でそんなに遠くに行くとは思えないわ。だから無理しないで!お姉ちゃんは・・・いないんだよ。」


アリアが泣きそうな顔をして止める様に訴えてきた。アリアに心配をかけるわけにもいかないし、本格的にピンチだからサーチを解除した。まだチビってはいない。てかこれチビったらアウトだ。ちょっとでも漏らせばダムが決壊したように奔流を止める事は出来ないだろう。明日からお漏らしヘーちゃんと呼ばれるようになって、日々枕を濡らす生活が見えてしまう。


「あんまり無茶しないで、でもありがとう。」


気にするなと微笑みかけてそっと席を立ち、急いでトイレに向かったのは言うまでもない。


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