7話 魔法の修行
2ヵ月が過ぎた。
俺は自然魔法と精霊の使役の仕方をマスターした。ここに精霊はいないが使役の方法を叩き込まれた。それはもう必死だった。全てはクローンの為に・・・!
そう、あれは今から1ヶ月程前になるだろうか。
アリアの料理が見違えるほど上手くなった。注意してほしい。上手くなっただ。美味くなったじゃない。読み方一緒だけど、この2つには大きな違いがある。
味はイマイチだが、形はまぁまぁの出来栄えになった頃だ。料理が作れることに自信をつけたアリアがこう言った。
「ふふ、私も随分料理が上手くなったでしょ?自分でもかなりイケてるんじゃないかって思うようになったんだー♪それでね、今度からは自分なりにアレンジした料理に挑戦してみようかと思ったの!楽しみにしててね♪」
その台詞を言ったアリアに俺とミイ師匠は思わずフリーズしてしまい止めるのを忘れてしまっていた。
それから新たな地獄の始まりだった。
最近ミイ師匠は研究したいことがあると、食事の時に出てこない。食事はミイ師匠の部屋の前に置いおくんだが、いつの間にか空になった食器が台所に置いてある。
絶対トイレに捨ててると確信している。
あぁ、個室だがプライベートな空間は必要だろうとミイ師匠が各個人の部屋を作成してくれた。
つまり、ミイ師匠がアリアの料理を食べるところはここ1ヶ月見ていない。傍から見れば美少女と2人で仲良く食事をしているように見えるが、嬉しいシチュエーションのはずなのになぜだろう?全然嬉しくない。
むしろ早く食事の時間が終わってほしいとまで思える程に・・・。
自分の味覚が壊れるのが怖くて、一度俺も料理作ることを提案したんだが
「料理は私の修行なの。だから任せてちょうだい!」
と自信満々に断られた。
そして!またまたスキルを手に入れてしまった。(※妄想です。)
【不屈の胃袋】【諦めない腸】【毒耐性】【麻痺耐性】【幻覚耐性】【痛覚遮断】【自然治癒上昇】【危険察知】【言い逃れ】【説得】【懇願】【九死一生】
アリアに料理はマニュアル通りに作ればいいんだよって教えたんだが、俺もアリアもグロスティアの料理を知らなかった。アリアはグロスティア料理を普段食べてるから知ってるけど調理方法は知らないらしい。見た感じ塩使って焼いてるんだろうなぁとかくらいしかわからないようだ。くそぅ・・・教えなくちゃ上達しないのはわかってるのに、どうやって教えたらいいんだよ・・・。クローンさえ・・・クローンさえ使えたら地球流の料理ってやつをこれでもかってくらい教えてあげられるのに!!
俺、この修行が終わったらラーメン食べるんだ。
・・・クローン覚えるまで俺の精神が壊れなければいいなぁ。
さぁ、そんなこんなで今日から始まるのは待ちに待った特殊魔法の修行だ!
「さて、では始めるか。特殊魔法を教えてあげよう。俺が知っているのに限るがな。」
「・・・師匠。とうとうこの日がやってきましたね。長かったような短かったようなそんな気がします。」
「う、うむ。怒涛の勢いだったな・・・。まさかこんなに早く覚えるとは思わなかったぞ。」
「命かかってましたからね。でもオカシイんです。最近アリアの料理じゃないと物足りない自分もいるんですよ。もうちょっとです。もうちょっとで何かを掴めそうなんですよ。」
「待て!!そっちに行っちゃいかん!!わかった!!クローンだな!?クローンを覚えたいんだな!?」
「クローン?なぜでしょう?その言葉に非常に魅かれてしまう。その魅惑の言葉は・・・私の進もうとしている道を妨げるかのような・・・くっ、去れ!マーラよ!!」
「マーラってなんだ!?あとお前一人称変わってるぞ!?あんなにクローンを覚えたがっていただろう!?」
「ふふふ、どうしたのですか?師匠そんなに心を乱して。心を落ち着かせ広い視野で世界を見るのです(微笑)」
「なんだそのなにかを悟ったかのような穏やかな笑顔は!?ちょ、ちょっと俺の部屋まで来い!!」
そう言われ師匠に連れられて穏やかな笑顔のまま師匠の部屋へ。
5分ほど待っていると器を持った師匠がこちらにやってきた。
「ほら!これを食え!早く食べるんだ!!」
そこにあったのはインスタントラーメン。
言われるがまま、ラーメンを一口食べる。
「・・・・・・う、うぅぅ」
「・・・だ、大丈夫・・・か?」
「うぅぅぅぅうぅぅ・・・・」
「・・・・・・」
「うぅ・・・・っっっ・・・」
「お、おい?」
クワッ!!
「うぅーーーーーまぁーーーーーいぃーーーーぞぉぉぉおぉぉぉおお!!!!」
「おわっ!?」
後に師匠はこう語る。お前の口から光線のようなエフェクトが見えたと。
大の男が滝のような涙を流しながらラーメンを貪り食う。
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「ありが・・とうっ・・ござい・・ま・・したっ!」
生まれて初めて心から神に感謝した。
師匠曰く俺は心が壊れかけていたらしい。
「さ、さて、特殊魔法の修行を始めるか。」
「お願いします!師匠!クローンを重点的に!!」
そうして俺の特殊魔法修行が始まったのであった。
2ヶ月ミッチリ修行して師匠の知っている特殊魔法を色々教えて貰った。
使えそうなのから宴会芸に近いものまで師匠の理論講義・実演を見ながら気合いで覚えた。
しかし耳が大きくなる魔法とか、凄く痒くなる魔法とか、くすぐられてる感覚の魔法とかいったい何に使うんだ?作った人は何を考えて作ったんだろう?
使えそうな魔法は
『フライ』:空中を自在に飛ぶ。
『クリエイト』:素材から念じたものを作る。
『セパレーション』:素材に分離する。
『アナライズ』:対象の成分分析。
『クローン』:同じものをコピーする。
『ドライ』:対象の水分を飛ばす。
『イレイズ』:指定空間内を消失させる。範囲は最大で1m程。
『トランスフォーム』:対象を変形させる。
『ピストン』:縦又は横への反復運動。
『ポーズ』:対象の時間を止める。
『ブースト』:対象の時間を加速する。
『スロウ』:対象の時間を減速する。
『リバース』:対象の時間巻き戻し。
『コンプレス』:圧縮する。
『スイッチ』:同じくらいの大きさの物を入れ替える。
『コントロール』:対象の支配。
『ホークアイ』:遠視。
『ディスペル』:魔法効果の打ち消し。
『ミニマム』:小さくする。
『バリア』:指定して空間に障壁を作成する。
『クリーン』:綺麗にする。
『テレポート』:見えてる範囲へ転移。
『バインド』:対象を拘束する。
等々
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時間系の魔法とか凄そうに見えるが、対象に意思がある場合は抵抗されると失敗する。魔力の耐性が高い程成功率が下がるらしい。戦闘では使えるのか微妙な魔法だな。
『テレポート』、これは凄く便利そうに見えるが、1度使うと1時間のインターバルが必要な上にすっげー疲れるので出来れば使いたくない魔法である。転移先に存在できる空間が無い場合は失敗するらしい。押し退けるタイプだったら次元カッターできると思ったのに・・・。切るという事なら『チョッパー』という切断魔法もあるが、切れ味がそこそこであり、わざわざ魔力使って切らなくても刃物使えばいいじゃないという不憫な魔法であった。
そして俺が考え出した特殊魔法が以下の4つだ。
『インビジブル』:透明にする。
『ファブリー』:消臭
『ミュート』:無音
『チーズ』:カメラみたいな。
『ペースト』:対象にイメージを転写。
なぜだろう?これだけ並べると犯罪臭がするのは。
ま、まぁ気にしないでおこう。
そんなことよりも、とうとう念願の『クローン』を覚えたのである。
さっそく食材が入っている魔法の袋に向かって使ってみる。
「あっ!ちょっと待・・・」
「『クローン』!』
師匠が何か言いかけたがはやる気持ちを抑えきれない俺には聞こえていなかった。
すると体から魔力がどんどん抜ける感覚がしてきた。
あ、これヤバい・・・?
「馬鹿者っ!魔法の袋のような魔力を大量に秘めた物をクローンするには大量の魔力が必要になるのだ!いくらお前の魔力でも無茶をするんじゃないっ!魔力が枯渇したらどうするつもりだ!!」
「あぁ・・・アリア・・・俺は・・・俺はミイ師匠みたいにシナってなっちゃってるのかな?これからはミイへーと呼んでほしい・・・。」
「大丈夫!ヨーヘーはまだミイ師匠みたいにシナってなってないわ!気をしっかり持って!!」
「やっぱりお前ら俺をそういう目で見てたんだな。」
「え?シナってなってない?魔力全部持って行かれた感じがしたんだけどな?」
「ふむ・・・、もしかしたらヨーヘーが地球出身だからかもしれんな。」
「えっと、どういうことでしょう?」
「地球には魔力がなかったんだろう?ということは、魔力が無くても問題ない身体というわけだ。だからシナってならなかったのかもしれん。」
「なるほど・・・じゃあ逆になんで俺の体に魔力が馴染んでいるんですかね?」
「知らん。魔力との相性がよかったんじゃないか?」
そんなアバウトな・・・
まぁ魔力使い果たしてもシナってならないなら恐れるものは何もないな!
ちゃんと魔法の袋も2つになってるし、魔力の無駄払いじゃなくてよかった。
クローンが成功していたことにミイ師匠は若干驚いているようだ。
クローンを覚えて浮かれているが、実はクローンに関しては虚しくなる出来事もあったりする。
それは、アリアの料理が美味しくなってしまった事だ。まぁたまに自分なりのアレンジに失敗してデモンズ料理が復活する時もあるわけだが・・・。
アリアは味覚音痴ということじゃなかったし、今まで自分で作った事がなかったみたいだから料理の仕方を知らなかっただけだったようだしね。
使う調味料とかは塩がメインみたいだったので、俺が地球流の調理方法をアドバイスしたら、グングン料理の腕が上達していった。
アリアの料理が美味しくなることはとても良い事なんだ。凄い喜んでいるアリアを見るとこっちも嬉しくなってしまう。
4ヶ月同じ釜の飯を食べて生活し、最後の2ヶ月は一緒に料理を頑張ってきたこともあり、初めて美味しく出来上がった時なんて喜びのあまり2人で抱き合って泣いたものだ。いろんな意味で幸せだった。
そう、アリアの料理が美味しくなってしまったことでクローンで地球食材を増やして食べれる料理を隠れて作ってコッソリ食べちゃおう計画も一度も実行していない。アリアも頑張って作ってくれるし、唯一の障害だった味の方も今では普通に美味しい。クローンを覚える為に意気込んでいた分ちょっと虚しくなったけど、アリアが嬉しそうなので概ね良しとしよう。
クローンには色々な使い道あるしね。地球食材の在庫を気にしなくても良くなったのは良い事だろう。
と言っても、この4ヶ月で地球の食べ物食べたのはあの時のラーメンだけか・・・。あれマジで美味かったなぁ・・・。忘れられない味であった。
「ヨーヘー、修行中にも言った事だが最後に特殊魔法についてのおさらいだ。特殊魔法は使いようによってはかなり強力な魔法だが魔力耐性の強いものに対しては失敗することもある。例えばスロウを自分以外に掛けた場合、魔力耐性が高い者に抵抗された時は失敗する場合がある。だから特殊魔法に完全に頼り切った生き方はするなよ。まぁ察知されていなければ魔力耐性が高かろうが抵抗されようが問題なく効果を発揮するだろうが。その事を踏まえるとお前が作り出したインビジブル等の魔法は奇襲に相性がいいのかもな。スケベ魔法とか言ってすまんかった。」
「はい、魔力耐性が高くても相手が抵抗せずに受け入れた時は成功するんでしたよね。」
「その通りだ。抵抗されなければ問題なく効果が発揮されるだろう。敵対者に確実に掛けたいのであれば相手を眠らせて抵抗できないようにすることだな。」
こうして魔法の修行は終わりを告げようとしていた。




