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虹の先に繋がる世界  作者: 水無月 壱九
グロスティア
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6話 オールバーニング

夕方になるとアリアが帰ってきた。


「あれ?もう今日の修行終わったんだ?」


「あ、うん・・・終わっちゃった・・・」


「順調?」


「ノーコメントで・・・」


「最初だもん、ちゃんとうまく扱えるようになるよ。私も最初はダメダメだったから。」


笑顔でそう言ってくれるアリア。

対して苦笑いする俺。

ごめんなさい!なんもやってないんです!言えない、ぼーっとしてただけなんて言えない。


「修行で疲れてるだろうから今日の夕飯は私が作るね!さっきアナウサギ見つけたから獲ってきたの。」


そう言って5羽のウサギっぽいやつを見せてくるアリア。笑顔が眩しく、そしてとても後ろめたい気分になりました。


「すぐ作るからねー」


あぁ・・・心が痛い・・・よし、明日から頑張るぞー!





「ねぇアリア、これってなんていう料理?さっきのウサギの肉使ったんだよね?」


「うんそうだよ。これはオールバーニングアナウサギっていう料理だよー♪」


アリアの笑顔が素敵です。そうじゃない。要するにウサギの丸焼きか。・・・丸焼きだよな?もうローストとかそういうレベルじゃない。炭にしか見えないんだが・・・そもそもこれは肉なのか?

これ火加減を間違えたとかそういうレベルじゃない気がする。だって炭化してるもの!

これがこの世界の料理なのか?これ食べなきゃダメなのか?


「さぁたんと召し上がれ♪」


アリアを見る。串に刺さってる炭を見る。アリアを見る。もう一回確認しよう。これ食べなきゃダメなのか?

師匠は・・・


ブルブルブルブル


オールバーニングアナウサギ(炭)を見つめてすっげー動揺してるんですけどぉ!?

やっぱこれこの世界標準じゃないよな!?


「あ、あのぉアリア?食べ方が良くわからないなーって・・・あはは」


「え?簡単よ。かじりつくだけだよぉ」


「へ、へぇ・・・そうなんだぁ」


「変なヨーヘー。ミイ師匠も見てるだけじゃなくて食べて食べて!」


「あ、あぁ・・・す、素晴らしい芸術的な形をしていたのでこ、この形を崩すのが勿体無く・・て・・・な。」


ガクガクガクガクッ!!


師匠の震えが強くなった。


「ア、アリア?先に食べてていいよ。探し物してて疲れちゃってるでしょ?」


「え!?私が食べるの!?・・・これを?」


おい確信犯か?


「う、うむ。これは食材を調達してきたキミが最初に食べる権利を持つだろう。さぁ、俺達を気にする必要は無い。先に食べるがいい。」


「そ、そう言うなら・・・うぅ。」


ゴリッ・・・シャギャキン・・・ジャリジャリジャリ・・・ゴクン・・・


「(ひ、『ヒール』)」


明らかに食事の音じゃない。まるで鉱山を掘り進めるかのような音だ。それと今最後に魔法使わなかったか!?名前から察するに回復の魔法だろ!?

炭を食べ続けるアリア。それを見守る俺達。

ヒールを20回程かけながら1羽食べきるアリア。

涙目になりつつ苦しい笑顔を作っている。顔色悪いなおい


「あ、あー美味しかった♪」


「「ウソつけ!!!」」


ミイ師匠と見事にハモったツッコミを決めるのだった。


「ごめんなさい。ちょっと火加減を間違えちゃって!」


ちょっと火加減を間違えるってレベルじゃないだろこれ・・・



因みに残り4羽はスタッフ(俺とミイ師匠)がおいしく頂きました。

アリアにヒールと状態異常回復のリフレッシュをかけてもらったのは言うまでもない。

正直死ぬかと思った。


「アリア・・・明日からお前は料理の修業だ・・・」


「・・・はい」


アリアの料理修行が始まることになった。本気で取り組ませる為に一定のレベルになるまで料理はアリアが担当することになってしまった。命の危険を感じた俺は必至に抗議したのだが、それが逆にアリアのやる気に火をつけてしまったらしい。俺は処理班に回る事が必然的に決定になってしまった。修行というより苦行が始まってしまったのであった。

この修行を生きて終える事が出来たなら、きっと悟りを開けるに違いない。

悟りか・・・俺は聖者になれるのだろうか?そう考えれば少しは耐えられるかもしれない。


たのしみになってきた。

すばらしい世界が待ってるに違いない。

けいけんを積み重ねて真理を理解する。

てあたり次第食べ尽くしてやる。







次の日。


「ミイ師匠。俺お腹の調子が悪いので魔法の修行は明日からにしたいんですけど」


「問題ない。焦っても仕方ないからな。今日はゆっくり体を休めるといい。」


「ありがとうございます。それで師匠、お願いがあるんですが」


「・・・言ってみろ」


「早くトイレから出てきてください!俺ももう限界なんです!!」


「耐えよ。まだまだ無理である。」


オールバーニングアナウサギを食した俺達はお腹を壊していた。


「師匠は魔法でもう1個トイレ作ればいいじゃないですか!!俺にはそのトイレしかないんです!!」


「焦るといいことはないぞ。心を落ち着かせるのだ」


「落ち着けるかぁぁぁあ!!!・・・あ、大声出したら・・・あ、あぁ・・・」


「む?粗相してしまったのか?大丈夫か?」


「ま、まだセーフ・・・師匠・・・おね・・・がい・・・」


「待て!こんなところでぶちまけられたらかなわん!いやしかしこの安住の地から離れるのはいささか不安が・・・新しいトイレを作る最中にもよおしてしまったらどうなるか・・・」


「い、いいか・・・ら・・早・・・く・・・出て・・・」


「わ、わかった。すぐに出る!・・・む?このトイレ紙がないぞ・・・!?」


「ヒッヒッフゥ・・・ヒッヒッフゥ・・・」


「おい!?その呼吸はダメなヤツな気がするぞ!?仕方ない、水洗するか・・・『ウォーターピラー』!・・・ふぉおぅ!」


ガチャ


「くっ・・・尻が・・・ほら!出てきたぞ!・・・お、おいなんて顔色だ・・・歩けるか?」


ヒョコヒョコヒョコ・・・バタン、ガチャ


「ふぅーーー・・・あっぶねーーーー・・・・ギリギリだったよ・・・これはヤバイかった・・・それにしてもなんて安心する空間なんだ。ミイ師匠がここから離れたがらなかった理由がわかった気がする。」


コンコン


「・・・・・・」


ん?ミイ師匠第2波が来たのか?


コン・・・コン


なんて力の無いノックだ。しかし俺もまだ不安が残る。まだ譲るわけにはいかない。


「ミイ師匠まだ無理ですよ!もう1個トイレ作ってそっちで済ませてください!」



「・・・あ、あの・・・ヨーヘー?・・・あのね、あとどれくらいで出る・・・?」


アリアかよぉぉぉぉぉぉぉおおお!!!


「あのね、ヨーヘー・・・私もう・・・限界・・・かも・・・」


「なっ!?ま、待って!すぐ!すぐに出るから!!」


「うぅ・・・ハァハァ・・・は、早く・・・出てくだ・・・さい・・・ハァハァ」


息の荒い女の子とかなんか興ふ・・・いやいやいやそんな事思ってる場合じゃない!


「う・・・ハァハァ・・・17にもなって・・・うぁ、くっ・・・もう・・・ダ・・・メ」


「ちょっ!?アリア気をしっかり持って!すぐだから!!」


「ヨーヘー・・・私が汚れちゃったとしたら・・・お嫁さんに貰ってくれる・・・?」


なんかアリアがおかしくなってる!アリアみたいな可愛い子ならウェルカムだが、なんかこれは違う!


「もう今すぐ出るから!出るか・・・ら?あれ!?紙が!!紙が無い!?師匠ーーー!?紙が、紙がありません!!師匠ーーーーー!!俺まだ水魔法とか使えないんですけど!?師匠ぉぉぉおおぉぉ!!」


「ヨ・・・ヘ・・・も・・・ダメ・・・私・・・あ・・・あぁ・・・あっ!?」


「アリアーーーーーーっ!?」



さぁ、魔法の修行の時間だよ!




ん?さっきのトイレ攻防戦?

彼女の名誉の為にも言っておこう。悲劇は起きなかったと!

俺がケツ拭かずに飛び出したからね。

アリアは顔を真っ青にしてトイレに飛び込んで行ったさ。

凄い速さだったよ。

そしてケツをどうやって拭こうか悩んでいたら、アリアが真っ赤な顔をして出てきた。

耳まで真っ赤である。そりゃさっきは恥ずかしかっただろうな。

だが、なんかおかしい。アリアの視線がチラチラっと俺の下半身を見ている。

そこである事に気付いてしまった。

俺、ズボン下げたままだった・・・。


「み、見てないから!」


そう言って走り去ってしまった。

チラチラ見てたよね!?

なんてこった・・・とフリーズする俺。

その後ミイ師匠が紙を持ってきてくれてキレイキレイしておきました。

ちなみにもうこんな悲劇が起こらないようにトイレは3つ作ってある。



さぁ、今度こそ魔法の修行の時間だよ!

昨日は全員お腹の調子が悪かったので休養となったのだが、全然体力が回復した気がしない。でも、そんなことを言ってるといつまで経っても修行が始まらないから強行することにしたのだ。


ミイ師匠の課題の通り、魔力操作から始めることにした。

まずは魔力を止めること。

これ凄く重要。

魔力が枯渇すると、シナってなるらしい。

つまりミイ師匠のようになってしまうのかもしれない。

ミイラは嫌だ。


まず、ミイ師匠と手を繋いでミイ師匠の体を流れる魔力を感じることから始まった。

昨日大放出したから、どれが魔力なのかよくわかる。このフワっとしたやつだな。

ミイ師匠の魔力を感じていると突然ミイ師匠の魔力が激しく動き出した。


「え?え?」


「うろたえるな。流れを読め。」


冷静に流れを観察する。なるほど、ギュっと力を加えて活性化させてるんだな。

しばらくするとその流れが穏やかになり、やがて止まった。元のフワっとした魔力だ。


「これが魔力の流れの制御だ。これが出来ないと話にならんぞ。」


「はい!ちょっとやってみます!」


「うむ、また暴走したら止めてやるから死ぬ気で覚えろよ。」


よーし、たしかこうやって・・・ギュっと。

俺の中の魔力が奔流となって体内を巡る。収まりきらない魔力が体外へと放出される。なんで放出されるんだ・・・?

制御制御・・・さっきのミイ師匠のやり方を見よう見まねで実践してみる。

お?放出される魔力が減った?

何かを掴んだ!これならいけそうな気がする!



いけませんでした。

そんなに甘くなかった。でも、感触は掴んだぞ。


「相変わらずバカみたいな魔力だな。やはり魔力だけなら俺よりあるぞ。」


「俺の魔力ってそんなにあるんですか?」


「うむ!一杯あるな!」


一杯って・・・そんな雑な。


そんな修行を1週間続けて、とうとう俺は魔力制御を自分の物にした。

更に!かなり重要なスキルを手に入れてしまった。


【鋼鉄の胃袋】


アリアの料理を食べてもトイレに駆け込まなくても平気になってきた。

まぁスキルに関してはステータスが出ないことでわかるように気分的な問題だ。胃が強くなったなと思ったのでこういう言い回しにしただけだ。

さて、この1週間で変わった事がある。それは喜ばしいことにアリアの料理の腕も上がっていることだ。

まだ食えたもんじゃないが、少なくとも炭は出なくなった。

最初の5日間はどんな食材を使っても黒くて硬いものが出ていた。

それが6日目の夕飯のこと。炭になっていない肉の部分があったのだ!

俺とミイ師匠はあの感動を忘れない。

正直魔力操作をマスターした時より嬉しかった。

現在のアリアの料理の腕は焦げてはいるが、なんとか食える。そんな状況だ。まぁリフレッシュは必要だけどね。


明日は魔法適性を見るらしい。

これだけやっておいて、魔力はあるけど魔法使いの才能はありませんって結果だったらどうしよう。




さぁ、俺の気になる魔法適性はー?


結論から言おう。俺にはちゃんと魔法使いの才能はあったみたいだ。

かなりホッとしている。

結果は以下の通りだ。

自然魔法:○

精霊魔法:○

神聖魔法:×

特殊魔法:○


特殊魔法キターーーーーーー!!!

ちなみにこの適性、ミイ師匠と同じだそうだ。

師匠に似るんだな!


「さぁ師匠!特殊魔法を!!俺にクローンを!!」


「うっさい!最初から特殊魔法とは生意気だ!基本通り自然魔法からだ!」


「そ、そんな!俺にはクローンが必要なんです!」


「黙れ!そもそも特殊魔法に適性があるからといって、クローンが使えるとは限らんぞ。仕組みを理解できなければ使えんからな!そもそも特殊魔法とは自然魔法に分類されない魔法を自分で作り出す魔法だ。クローンは俺が生み出した魔法で開発に1ヶ月掛かった。簡単に教えるのはなんかムカツクから今は教えん!」


特殊魔法は本来適性がある人が研究に研究を重ねて生み出すものらしい。

特殊魔法使いの師匠がつけば、その魔法の理論を伝授してもらって相伝されていくらしいが、特殊魔法の資質を持つ者は少ない為そのままお蔵入りになってしまう魔法も多いとか。魔導書に記されたりもしてはいるが、やはりうまく伝えきれないらしく、ヒントくらいにしか使えないそうだ。

さて、ミイ師匠であるがさすが世界一の魔法師を自称するだけあって使える特殊魔法は50を超えているらしい。数えるのがメンドイという理由で大雑把な数だった。

うぬぬ、しかしクローンは今すぐにでも覚えたい。俺が地球から持ってきた食材。特にインスタントラーメンを増やしたい。

師匠が夜な夜な布団かぶってラーメンすすってるの知ってるんだぞ。

俺だって・・・俺だって!!水っ気のあるもの食べたいんだよぉぉぉお!!


そんな俺の魂の雄叫びも虚しく空回りし、結局自然魔法から教えてもらうことになった。

こうなったら自然魔法も精霊魔法もマッハでクリアしてクローンを教えてもらうからね!!


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