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虹の先に繋がる世界  作者: 水無月 壱九
グロスティア
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60話 魔物の大群

出発して1時間くらい経っただろうか。今のところ魔物の襲撃も無く順調に進んでいる。

索敵魔法の実験したいんだけど、こういう時に限って魔物とエンカウントしないとかお約束さんが頑張っているみたいだ。


「はぁ・・・平和ですねぇ。」


トリスからのんびりとした声が聞こえる。トリスそういう台詞は平和崩壊フラグなんだよ?


『魔物がいるよー』


!?


アリアの声が聞こえたので当人を見ると、彼女は顔の前で私じゃないと手を振っている。あ、そうか。アラームの音に設定したんだった。

今のは300m以内に魔物の反応があったってことだよな。改めてスカウトを使い、魔物の反応を視覚化して正確な位置の把握に力を注ぐ。進行方向に反応が4つ。動いてはいないが、進行方向にいるのでこのままでは遭遇してしまうだろう。御者の人と後方のブリード氏に、このまま進むと魔物と接敵することを伝えて一旦荷馬車を停止してもらった。ホークアイで前方を確認すると4本のウネウネしてるのが見えた。あれは・・・グランドワームだな。この前見た奴より小さいな。直径5cm程だ。もしかして子供のグランドワームだろうか?

御者とブリード氏に魔物はグランドワームだと伝えるとあまり危険もなく、このまま進んでも振り切れるだろうということから荷馬車を進めるという話になったのだが。


「何だって!?グランドワーム!?ここはミーに任せてくれ!」


マグロは言うが早いか御者席から飛び降りてグランドワームに向かって全速力で言ってしまった。

御者さんを含めた全員がポカーンとしてしまった。いったいどうしたんだ?少し戸惑ったが荷馬車を進めてグランドワームまで30mくらいの距離まで近付いて停止する。

するとマグロがグランドワームに撒きつかれながらもそのままグランドワームを飲み込もうとしているではないか。グランドワームの踊り食いだ。マジかよ・・・おぇ。


「ねぇアリア。あれって食えるの?」


「食べようとすれば食べられるよ?私は食べたくないけどね。あんまり美味しいものじゃないらしいし。」


「俺もアレは無理だわー。」


「あぁ、魚人の方はワーム系の魔物を好んで食べる方もいらっしゃるそうですよ?」


「「へー」」


しかし・・・


「ねぇ、あれ気持ち悪いんだけど・・・丸呑みしてるよね。」


「見ていて気持ちのいいものじゃないよね・・・。」


「私もあれはビジュアル的にダメです。」


イケメンが口を大きく開けてでっかいミミズを咥えて丸呑みする光景。俺とアリアとトリスはドン引きしている。タァマちゃんは興味が無いのかマグロの事よりも飛んでいる蝶々に興味があるようだ。先頭の御者さんは吐きそうな顔をしている。吐くなよ?

1匹を食べ終わったマグロは残りの3匹を持ってこっちに歩いてくる。


「待て!そんなもん持ってこっちにくんな!いらないなら捨ててこいよ!!」


「何を言う!?こんなに美味なものを捨てるとか頭おかしいんじゃないか!?ほら、ヨーヘーも1匹やるから食べてみるがいい!」


「食うかボケェェェェ!!!」


「なんと!?こんなに美味なのに・・・。アリアとトリスはもちろん食べるのだろう?」


「食べない!」


「私も遠慮しておきます。」


「なっ!?喉越しサワヤカなのだぞ!?ニュルっとした食感に腹の中でウネウネ動いているのがわかるんだ。たまらんのだぞー?」


美味そうな要素がわかんねぇよ!!ぎょ、御者さん!?頑張って!吐かないで!マグロの野郎、生々しい食感とかリポートするもんだから御者さんの顔色がスゲー悪くなってるじゃねーか。


「むむぅ・・・、タァマ様はお食べになられますよね?」


「いらにゃい。」


「なっなんと!?」


ガガーンとオーバーリアクションで驚くマグロ。

ダメだ。まったく理解できん。マグロは御者にも薦めていたが、それによって耐え切れなくなってしまった御者さんがマーライオンになってしまった。

こんなにうまいのにとか言いながらマグロは荷物袋にグランドワームを入れようとしている。


「おいやめろ。それ持って行く気じゃないだろうな?」


「持っていくに決まっているじゃないか。これはミーの昼食と夕飯にするんだ。」


「捨てて来い!今すぐに!!袋がウネウネ動いてて気持ち悪ぃんだよ!!」


マーライオンは更に水量を激しく放出していた。


「馬鹿なことを言うな!これを捨てるなんて勿体無い!ほらこんなに活きも良くウネウネしていて美味そうじゃないか!」


袋の中には体長1mくらいのグランドワームが3匹絡み合ってウネウネしている。


「見せるんじゃねぇよ!!益々苦手になるわ!!頭沸いてんじゃねぇのか!?」


「失敬な!これの良さがわからないユーがおかしいのだとミーは思うがね!!」


イルァ・・


「『イレイズ』」


ついカッとなってグランドワームを袋ごと消滅したった。


「あぁぁぁぁぁぁぁぁあああ!!!!?ミーの!ミーのグランドワームが消えてしまったぁぁぁぁぁ!!!いったいどこにぃぃぃぃぃい!!?」


「ナ、ナンダッテー!タイヘンダー」


よし、問題は消えたな。マグロが荷馬車の周りを凄い探しているが見つかるわけがない。


「ブリードさん、魔物は消えたので出発しましょう。」


「うぷっ、そ、そうだね。進むとしようか。」


ブリード夫妻もあまり顔色が良くないな。まぁ無理もない。モロに目の前でゲテモノ食いを見せられたマーライオ・・・御者さんなんて顔がちょっとやつれてるもんな。これは馬車動かせるのか?


「私が御者をしますよ。何回かやったことがありますので。」


トリスが馬車を動かした経験があったようなので、御者さんを荷台に寝かせて水を飲ませてあげてから、アリアに回復魔法を掛けさせてから休んでもらうことにした。


「申し訳ありません。魚人の方の食事がああいうものだと知らずに取り乱してしまいました。」


「今はしっかり休んでください。確かにあれは俺もキツかったです。お互い胸糞悪いものを見てしまいましたね。」


御者さんにはそのまま1時間程休んでもらった。


「それにしてもトリスが馬車動かせるのは意外だったよ。」


「そうですか?冒険者をやってると結構色々覚えられますからね。」


「やっぱり冒険者って馬車を持ってたりするもの?」


「んー、それぞれですね。移動の多いパーティは持ってることがありますよ。ただ安い物じゃないので、それなりに稼いでいる人じゃないと買えませんけど。」


「そっかそっか。俺実は馬車の購入を考えてるんだ。だから馬車を手に入れたらさ、扱い方を教えて貰っていい?」


「ヨーヘーは馬車を買う予定なんですか?」


「馬だけね。荷車の方は自分で作ってみるよ。」


「そうでしたね。ヨーヘーは反則魔法を使えるんでした。」


「その通りだけど、その言い方はちょっと嫌だぞ!?」


「だって、特殊魔法を使える人は何人か会ったことありますけど、ヨーヘー程規格外の魔法を使える人はいませんでしたよ。自然魔法にしたってアリアさんもそうですけど、洗練され過ぎてて畏怖を感じます。あ、そうでした。自然魔法と言えばガラダに凄い魔法使いがいたそうですよ。冒険者ギルド内で盛り上がっていました。たしか名前はサブロイなんとかさんといって、なんでもあの忌まわしいオーク達の集落を一瞬で吹き飛ばした魔法使いなんだそうです。ヨーヘーもその方に理論や術式を教えて貰えればよかったですね。まぁそれ程の方の授業料は高いのでしょうけど。」


あー・・・そんなに話大きくなってるの?エクスプロージョンはやり過ぎだったかなー?

サブロー先輩には迷惑掛けちゃってるかもしれない。





「キレースは港町なので楽しみです。お魚も美味しいのでしょうね。今のところ順調に進んでいますし、このまま何事も無ければ休憩を挟んでも14時くらいには着きそうですね。」


トリス、そんなフラグっぽいこと言うと何か起こっちゃうよ?


『魔物がいるよー』


ほらねー!!

すぐにトリスに荷馬車を止めてもらい、スカウトで周囲の魔物を索敵すると


「げ・・・」


「ヨーヘー、どれくらいいたの?」


300m離れたところに20個の反応。300m~500mの間に数えきれない程の無数の反応があった。


「あっちにね、魔物の反応があったんだけど・・・数がさ、100や200じゃ効かないんだけど・・・。」


「えっ!?そんなに!?」


隣にいたアリアにスカウトの探知した魔物をペーストで映し出して見せてあげる。魔物は赤いマーカーで表示されるのだが、300m先から赤いマーカーに塗りつぶされるような表示になっている。


「うわっ!?何この数!?なんでこんなにいるの!?」

「これはおそらく蟲型の・・・おそらく蟻系の魔物ですね。この辺りに巣があるのかもしれません。」


トリスが魔物の種類の見立てをたてる。こういう時に経験豊富な仲間がいるといいな。俺とアリアじゃ経験が無さ過ぎるからな。


「蟻系の魔物は群れて行動しているので数が多いのです。主に死骸や弱い生物を攻撃して食べる種類がほとんどですが、強者に対しても犠牲を顧みずに攻撃をしかける種類もいます。前者の場合は問題は少なそうですけど、後者の場合は危険です。ここはキレースまで2メールの距離がありますから、まだキレースに危険はないかもしれませんが、集団が大きくなった時にどうなるかわかりませんね。それよりもここまで来るのに魔物の数が少ないと思っていたんですけど、もしかしたらこの魔物に狩られてしまっているのかもしれませんね。ちょっと嫌な予感がします。」


だからそういうフラグっぽいこと言わないでーーー。

ホークアイで確認するとやはりトリスの言った通り蟻の魔物がいるようだ。体長は50cmくらいだろうか?但し牙の部分で20cmくらいはあるな。体長の40%は牙なわけか。とても攻撃的そうな臭いがプンプンするぜ。

1匹なら大したことなさそうだな。魔物図鑑風に言うと剣を持った成人でも倒せるんじゃないかと思う。あまり素早くもなさそうだしな。だが!しかし!あれ1000匹はいるだろう・・・。数の暴力にも程がありますよ?

とりあえず見ている光景をペーストで映し出してトリスに確認してもらおう。


「最悪です。あれはリーパーアントという魔物です。個々は脅威にはなりませんが、リーパーアントは常に集団で行動しまして1匹で倒せない獲物は10匹で、10匹で倒せない獲物は100匹でといった感じで、獲物と認識した相手には自分たちの犠牲を恐れずに襲い続けます。減った固体はすぐに女王が産み落として1週間程で成虫になってしまうので戦うなら長期戦は行わずに短期決戦で殲滅するしかありません。巣は一応持っているのですが、1週間程しか留まらないそうですね。移動して拠点を作り、狩り尽くしたらまた移動してという行動をしています。リーパーアントの通った後は生物が何も残らないので、死神の通り道と呼ばれていますね。ちなみに適正ランクは星7つ以上ですよ。」


上級冒険者レベルかい。

ただあの数見ると上級冒険者でも接近職はきつそうに思うんだけどな。正面から突っ込むのはバカの所業だな。


「女王を最初に倒して、増えないようにしてからちょいちょい狩るのはだめなの?」


「女王は群れの最奥にいますし、普段姿を見せません。それと女王と言っても他の固体と見分けが付かないそうですよ。仮に倒せたとしても女王候補が何匹かいるらしいので、新しい女王になるだけと聞いていますね。」


「無理に倒さなくてもいいんだよね?」


「はい、これはやり過ごした方がいいでしょう。幸い風下ですし、まだこちらに気付かれていません。あとは群れがキレースに向かわないことを祈るしかないですね。一応キレースに着きましたら冒険者ギルドにこの事を報告しておきましょう。」


「それでさ、もしだよ?もし奴らに気付かれたらどうなるの?」


「リーパーアントを全滅させるか、諦めるまで逃げ続けるかですね。」


「そうかそうか、それじゃあ例えば・・・まぁこんな事はないと思うんだけど、バカがリーパーアントに突っ込んで行っていると仮定した場合、俺達の行動はどうするべきかな?」


「その時は、私達は護衛なので、依頼人様の安全を守るのが一番大切なことですね。」


「そっかそっか。タァマちゃん、お願いがあるんだけどいいかな?」


蟻の群れの方をジーっと見ていたタァマちゃんに声を掛けて指示を出す事にする。


「はい!にゃんですか!?」


大きく手を上げてこっちに体ごと向いて返事をしている姿にちょっとほんわかした。


「これからブリード氏と荷馬車3台はあっちに避難してもらうから、タァマちゃんはブリード氏達を守ってくれないかな?」


「お兄ちゃんとお姉ちゃんは?」


「俺達はちょっとあの蟻さんをどうにかしないといけないと思うんだ。それで俺達がここに残るとブリード氏達を守る人がいなくなっちゃうでしょ?だからタァマちゃんにお願いしたいんだ。トリスも一緒に下がってもらうから2人でブリード氏達を守ってくれないかな?」


「にゃぁ・・わかりました。」


あんまり納得いってないようだけど、接近職にあの蟻は危険だ。


「トリス。もし向かう先に蟻がいて対処しきれないようだったら、この矢を空に向かって射ってくれる?」


「この矢は?」


「ただのミスリルの矢だけど、赤い軌跡を残しながら飛ぶ細工がしてあるから合図になるはずだよ。」


「ただのミスリルの矢・・・ですか。」


矢の軌跡が見えたらかっこいいと思って作った魔法陣を刻んだ矢が、こんなところで役に立つとはね。合図用のミスリルの矢を10本トリスに渡しておく。


「ブリードさん。そういうわけでキレースに向かって逃げてください。たぶん馬車なら追いつかれることはないと思いますから。」


「あ、あぁ、わかったよ。でも・・・いいのかい?」


「えぇ、俺達なら危なくなったら逃げる手段もありますから。アレの事も放っておけませんからね。なんとかしてみます。」


「無茶だけはしないでくれよ?ヨーヘー君達とは今後も色々話をしたいんだ。」


「えぇ、じゃあキレースで美味しい飯屋に連れてってください。楽しみにしてますよ。」


わかったと頷きブリード氏達は荷馬車に乗り込んだ。


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