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虹の先に繋がる世界  作者: 水無月 壱九
グロスティア
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58話 マジカルハウスへようこそ

テントの中に入った俺達は見張りの予定について話し合った。


「よし、じゃあ俺は2時になったらマグロと見張り交代するから皆は朝まで寝てていいからね。」


「え?私も一緒に見張りするよ?ちゃんと起こしてよね?」


「起きるならな!」


「むぅ・・最近はちゃんと起きてるじゃない。」


まぁそうだけどね。前科がある分100%信用はしていない。


「タァマも見張りするです!見張りよくやってたので得意です!」


「でしたら私も一緒に見張りしますよ。」


「まぁいいや、じゃあ夕飯が物足りなかったから軽く料理作ってお風呂入って寝ようか。」


「え?夕飯は豪華だったじゃないですか。何が物足りなかったんです?」


「あー、あのね、トリスの反応は正しいと思うんだけど、私達はちょっと物足りなさがあったんだよ。だからちょっと作って食べようかってさっき話してたの。」


「そうなのですか?」


「じゃあマジカルハウスに移動しようか。」


俺はマジカルハウスの入り口を広げる。


「あ、これはこの前入れてもらった真っ暗な空間に入る袋ですね。」


実はトリスとコメルさんはマジカルハウスの中に入ったことはあっても出入り口からちゃんと出入りした事はない。仲間になるとは思っていなかったし、マジカルハウスの存在は知らないんだったな。入れるときは魔法の袋に入れた状態で風呂場に出したし、出す時も同様の手順でガラダに着いてから外に出した。なので、治療中の時に入っていたマジカルハウスはガラダにある家だと思っているだろう。

まずアリアが中に入り、それにタァマちゃんが続く、トリスは恐る恐るといった感じでマジカルハウスに入った。


「あ、あれ?ここは・・・ここは治療して貰った家じゃないですか!?え?あの袋は空間移動の魔道具なのですか!?」


なるほど、そう来たか。


「いや、空間圧縮はされてるけど、空間移動じゃないよ。ここはさっきの袋の中なんだ。ホントはアイテムボックスだったんだけど、野営用のテントとして改造したんだよ。あ、靴はここで脱いで上がってね。」


「テント!?これがテント!?この家が持ち運び可能だというんですか!?」


「うん、そうだよ。まぁ詳しい話はアリアに聞いて。俺はちょっと料理作るからさ。」


後の説明をアリアに任せて俺はキッチンに立って料理を始める。

リビングではアリアがトリスに俺の魔法について等を説明しているようだ。

さて、何を作るかな。

夕飯は物足りなかったけど一応食べたからなぁ。空腹感はないけど満足感がない感じだ。

濃い味の物にするか。うーん・・・焼きそばでいいか。

あとはタァマちゃんの為にジャガイモを薄くスライスしてカレー味のポテトチップスでも作るか。


料理を作り終わってテーブルに持っていくと、丁度アリアのお話も終わったようだ。


「ヨーヘー、随分と規格外な魔法を使えるんですね。対象の時間を戻す魔法も驚きましたけど、クローンやクリエイトなんかも反則じゃないですか。昨日や今日の昼間も仰ってましたけど、ヨーヘーの特殊魔法は反則過ぎるという意味がやっとわかりました。確かにバランスが崩れるというのも頷けます。あとヨーヘーって異世界から来たと聞きましたけど本当ですか?」


「うん、本当だよ。」


「帰る方法を探しているとも聞きました。・・・帰ってしまうんですか?いえ、帰りたい・・・ですよね?はい、私も微力ながらお手伝いさせて頂きますね。」


「ん、あぁありがとう。アリア全部教えたんだね。」


「トリスはこのパーティ抜ける気はないみたいだし、御魂預けるくらいだからヨーヘーにとって不利になるようなことはしないと思ったの。それなら変に隠してもしょうがないでしょ?それにお兄ちゃんの問題が解決したらヨーヘーが帰る方法探しをしなくちゃいけないんだし、同じパーティメンバーなら付き合ってもらうことになるんだから知っておいて貰った方がいいと思ったの。」


「そっか、そうだね。俺の代わりに説明してくれてありがとう。そうだトリス、この家マジカルハウスって名前なんだけど、この家にいる時の料理は俺の世界の料理が結構出てくるから出来れば慣れて欲しい。どうしても口に合わないようだったら、グロスティアの料理も作るから言ってね。・・・と、言うわけで。早速ですが焼きそばを作りましたーー。さぁ皆で食べよう?」


いつものTフォーメーションに俺の向かい側にトリスが座る。


「では、頂きます!」


「「「いただきます!」」」


ズズズッ・・・あぁうまい。


「うわぁ♪これも美味しいねー。焼きそばだっけ?へぇ、こういう味なんだー。」


「にゃぁ♪美味しいですーー!」


アリアとタァマちゃんは満足そうだ。トリスは俺達を見つめていてまだ焼きそば口にしていない。

ん?どうしたんだ?あっ!箸しか用意してなかった!そりゃ使えないよな!


「トリスごめん!すぐにフォーク出すから待ってて。」


「いえ、この棒のような食器の使い方がわからなかったのですが、アリアやヨーヘーの使い方を見てわかりましたので、これを使ってみますね。」


よっ、ほっ、とか言って箸で食べる事に挑戦するトリス。てかもう持てているな。初見で箸を使うとは器用だな。


「なるほど、2本矢を放つのと同じような感覚ですね。」


違うと思う。でもなんか使えそうな雰囲気だな。

ちょっとぎこちないが焼きそばを掴んで口に運んでいる。


「これは・・・!す、凄く美味しいですね!!こんな濃厚な味の食べ物だとは・・・異世界にはこんな味の食べ物があるんですか!!・・・なるほど、今日の夕飯の時に皆が浮かない顔をしていたのはこういった食生活が原因ですか。確かにこういった味を知っていると物足りなく感じますね。野菜スープではしゃいでた自分がバカみたいです・・・。」


結構なハイペースで焼きそばを食べ終わりタァマちゃんが満足そうな顔をしているところにポテトチップスを出してあげる。


「にゃぁ!?カレーの!カレーの匂いがします!!お兄ちゃん!これ食べてもいいですか!?」


「はい、どうぞー」


「にゃぁぁぁあ!美味しいです!美味しいです!!」


あぁ・・・食べカスが・・・


「ヨーヘー、これは何?」


「これはポテトチップスって言ってジャガイモを薄く切ったものを油で揚げたお菓子なんだよ。今回はカレー味にしたけど、塩味、コンソメ味とか味に色々バリエーション付けられるお貸しだよ。」


「へー、あ、美味しい。でもこれは飲み物が欲しくなるね。」


「コーラ飲む?持ってくるよ。」


「あ、お願いー。氷で冷やしてね。」


「なんでしょう・・・今までの野営での食生活がなんだったんだろうって考えさせられますね・・・。しかも今まで食べたこともないような未知の味ですし、しかもそれがこんなに美味しいですし。それが今後も味わえる・・・私、私もうこのパーティから離れられないです!」


トリスの口にも合ったようだし、気に入ってもらえてよかった。



「さて、お風呂に入って交代の時間まで寝ようか。」


「ヨーヘー。お風呂とはなんですか?」


「身体を清めてリラックスする場所?この前身体を洗ったとこあったでしょ。」


「あぁ、あの場所はお風呂というんですか。身体を拭く場所のことなんですね。」


そうだった、この世界には湯に浸かる風習が無いんだった。トリスに詳しくお風呂の説明をしておいた。

その間にアリアは先に行ったみたいだ。


「トリスも興味があったらどうぞ。今から入るなら悪いが混浴だけどな!もちろん俺はウェルカムだ!」


風呂の説明も終わったのでタァマちゃんを連れて脱衣所に向かう事にする。トリスはちょっと戸惑いながらも付いてきた。


「脱いだ服はそこの篭に入れておいてね。じゃあ先に行ってるよー。」


服を脱ぐのを躊躇っているトリスに声を掛けて俺とタァマちゃんは服を脱いで風呂場に向かう。アリアは先に入って体を洗っているみたいだな。


タァマちゃんの体を洗っていると自分の体を洗い終えたアリアが俺の背中を流してくれた。

あぁ、気持ち良い。


「い、一度見られているとはいえ、やはりちょっと恥ずかしいですね。」


トリスの声がしたので振り向くと全裸のトリスが俺の背中を流しているアリアの隣に立っていた。俺は座っていたので目の前には青い草原・・が・・・!!?


「ト、トリス!?バスタオルワンピースは!?」


「え?タァマちゃんが全裸で入っていったので、そういう物かと・・・。」


そういう物だ、そういう物だ・・・が!しかしっ!!アリアの恰好見てなかったのか!?そうか、アリアは先に入ってたもんな。ちゃんと教えなかった俺グッジョブ。全裸でやってきてしまったトリスは両手で胸を隠しているが下半身は隠していない。

くそぅっ!目の前に広がる青い草原から目が離せない!!どうなってやがる!?


「見るなぁぁ!」


アリアが俺の背中を洗っていたタオルで俺の目を隠してくる。


「あぁぁぁぁぁ!目が、目がぁぁぁぁ!!石鹸が目に・・・あぁぁあぁぁ!!」


「トリスもいつまでもそんな恰好してないの!これと同じのあったでしょう!?それを着ないとダメだよ!ヨーヘーに見られて恥ずかしいでしょ!」


「た、確かにちょっと恥ずかしいですが、ヨーヘーになら・・・構いませんよ?でもあまり胸は見てほしくないですが・・・。」


「ダ、ダメだよ!ヨーヘーの教育にも良くないわっ!」


「くっ・・・まだ目が染みる・・・トリス待って、今アリアが着てるやつを複製するから・・・『クローン』・・・うぉわっ!?」


な、なんだ!?ごっそり魔力が持って行かれたぞ!?


「なっ!?アリアさんが2人に!?」


「もう!何やってるの!?また面倒なのが増えちゃったじゃない!」


どうやらアリアごと複製してしまったらしい。


「ちょっと手違いで・・・待ってて、今アリアン2号の着ている物を脱がして渡すから。」


「きゃー!きゃーー!ダメよ!なんでヨーヘーが脱がすの!?それ私なんだよ!?ちょ、ちょっと!?あ、あぁぁぁ!!ダ、ダメ、そこをめくらないでぇぇぇぇ!!」


色々カオスな状況になってしまった。俺の顔もアリアに殴られボコボコだ。


結局タァマちゃんが脱衣所にバスタオルワンピースを取りに行き、トリスにはその間に体を洗っておいてと伝え、俺とアリアはアリアン2号をブラックボックスに保管しに行く。

アリアン2号を運ぶ際に足側を持つと主張した俺にアリアのスパコーンが飛んできた。土下座して頼んだのにダメだった。非常に悔やまれる。


アリアン2号を収納し、風呂場に戻ってきたらトリスも身体を洗い終わっていたようなので、岩風呂に誘って湯船に使っているわけだが、トリスとアリアに挟まれている状態だ。


「はぁぁ・・・これは落ち着きますねぇ。」


俺は落ち着かないんだけどな。アリアだけでもまだ慣れていないというのに、ちっぱいだが美女のトリスまでいる。

これで落ち着けるようになるには俺にはまだ経験値が足りない。猫かきでお風呂を泳いでいるタァマちゃんを眺めることで心を静めているのだ。


「確かに落ち着くんだけど、景色がねー・・・。」


現在マジカルハウスはテントの中に置いてある。でもこれだと景色が楽しめないから視覚範囲を広げてテントの外を壁に映し出している。そこには見張りをしているマグロがいた。


「向こうからは見えていないということはわかっていても、なんか落ち着かないよね。うわっ!こっち見た!こっち見るなー!」


「私もトロさんは気になりますけど、それよりも気になることがあるんです。」


「うん、奇遇だね。実は俺もなんだ。マグロの近くにさ、・・・なんかいない?」


「なにかいますよね?トロさんは気付いていないみたいですけど・・・。というよりなぜ気付いていないのでしょうか?」


「実は仲間だったり?手懐けていたりしてるとか?」


マグロから10m程離れた位置に狼のような魔物が1匹いる。それに対してマグロは気付いていないのか気にしていないのか、反応していないのだ。判断に苦しむな。


「その割には魔物の方は身を低くして接近しているように見えるんですけど。」


「あ、マグロが魔物の方を向いた。・・・と思ったら視線を火に戻したぞ。気にしてないっぽいし、やっぱり手懐けているんじゃない?」


スカウトで確認したが、魔物は1匹のようだ。


「トロさん手鏡を出しましたね。なんかキメ顔してますね。あ、ポーズも決めてます。」


なんか自分に酔ってるな。俺達に見られているとも知らずに・・・。

そんなマグロに忍び寄った狼の魔物は背後からマグロに飛び掛かり、その肩に噛みついた・・・ように見える。

その場にうつ伏せで倒れるマグロ。起ちあがらないし、抵抗もしないな。ジャレてるだけなのか?

そう思っていたが、観察していると狼の魔物はマグロを食べ始めたのだ。


「食われてるじゃん!やっぱり敵じゃん!何を見張ってたんだあの人は!!」


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