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虹の先に繋がる世界  作者: 水無月 壱九
グロスティア
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57話 魔法陣の実験 ~魔法矢編~

「トリス、凄いね。矢ってあんなに飛ぶんだね。」


「はい♪今のは魔矢といいまして、矢の後部に推進の魔法陣が刻まれてますのであれだけの距離を飛ばすことができるんです。しかし欠点がありまして矢が魔力に耐えられなくて使い捨てになってしまいますから、コストが掛かるんですけどね。」


「そうなんだ?でも凄いよ!あれだけ離れてたのに当てちゃうんだもんな!」


「魔法と一緒で少しだったら軌道修正できるんですよ。まぁ当たったのは偶然なんですけどね。」


そういうことか、自分の魔力で打ち出してるんだから少しなら軌道修正できるわけね。なるほどなるほど、物にもよるけど魔法なんかより全然射程が長いんだなー。

俺が関心していると、タァマちゃんが俺の背中に飛び乗ってきた。


「にゃあ!お兄ちゃんタァマ熊さんやっつけました!ズバーってやってきました!!」


「よしよし、タァマちゃん凄かったねー、ズバーってやってたねー。お兄ちゃん全然目で追えなかったよ。偉い偉い。」


ゴロゴロと喜んでいるタァマちゃんを撫でながら褒めてあげる。タァマちゃん可愛い。もう動きとか完全にアサシンだけど可愛い。


「いやー・・・凄いね。グリーベアーを簡単に倒してしまうなんて・・・。君達を雇ってよかったよ。」


「ホントありがとね。アタシャもうダメだと思ったよ。若いのに凄いんだね。」


良い子良い子がエスカレートしてタァマちゃんとジャレて遊んでいるとブリード夫妻が関心したように声を掛けてきた。


「いや、ホントに良いチームだね。ヨーヘー君が索敵をしてアリアちゃんが攻撃、トリスちゃんは牽制といった感じかな?そして一番驚いたのがタァマちゃんだ。小さいのに凄いねー!」


タァマちゃんは褒められて照れてしまったのか、俺の背中に隠れてしまう。


「おや、怖がらせてしまったかな?」


「いえ、照れてるだけだと思いますよ。」


「でもこれならキレースまで安心して進めるよ!これからも任せたよ。」


「はい!頑張らせてもらいます!」


「いやー、ミーが敵を引きつけている間に上手く倒せたみたいだね!どうだい?優秀な壁役だと思わないかい?」


たしかに、敵を食い止めてはいたな。捕食されながらだが・・・。方法はともかくグリーベアーを止めていたのは間違いない。


「マグロさんお手柄でしたね。おかげでスムーズに倒すことができました。」


「ミーの名前はトロ=オーマだ。マグロではない。まぁなんだ。これでミー達は厳しい戦いを乗り越えた仲間であるな!仲間にさん付けは必要ないだろう!トロと呼ぶことを許可するよ!ランク的にもミーの方が目上だがミー達はもう仲間だ!敬語も水臭いのでやめたまえ!魚人だから水臭いというわけではないよ!なーーーっはっはっはっ!!」


う、うぜぇ・・・


「わかったよ、マグ・・・トロもご苦労さん。大分食われてたみたいだったけど、大丈夫か?」


「うむ!もうこの通りだ!!我ながらミーの不死身っぷりには驚くね!なーっはっはっはっ!!」


ホントにもう治ってるし・・・食われたとことか綺麗に戻ってるよ。なんなんだ?常にリバースでもかかってるのか?

マグ・・・トロは高笑いをしながら御者席に向かっていった。


「あれだけ攻撃を受けてピンピンしてるとは・・・さすが星5つだ・・・」


ブリードさん、あれは星の数とか関係ないと思うわけですよ。


荷馬車に戻り、軽く荷馬車の車輪等のメンテナンスをして再出発した。




移動中荷馬車の上にて俺は気になる事があったのでトリスに確認することにした。


「トリス、さっきの矢見せてもらえないかな?」


「魔矢ですか?はい、いいですよ。」


はい、と先程見たのと同じ鉄の矢を俺に1本渡してくれた。

見た目は普通の鉄の矢だな。羽とかついていないのかな?

トリスに聞いたところ、普通の矢には羽が付いているが、魔力で飛ばす魔矢には羽は付いていないらしい。

お、これが魔法陣か。ここの部分だけちょっと材質が違うんだな。アナライズで調べると魔鉄という種類らしい。鉱石図鑑によると魔鉄は溶かした鉄に魔結晶を砕いた物を混ぜて作るものらしい。それで鉄でも魔力が纏わせられるとのことだが、魔鉄の部分は強度がかなり低いので、魔法陣を発動させると1回でほぼボロボロになって使い回しはできないらしい。ちなみに気になる矢のお値段は木の矢が10本で10レンス、鉄の矢は10本で50レンス、魔矢は10本で200レンスだそうだ。

さて、では刻まれた魔法陣の確認だ。

ふむ、それ程複雑な魔法陣じゃないな。ところどころ魔法文字で書かれているけど、それについてはミイ師匠のところで習得済みだから理解できる。魔法陣については自分で作れと言われていたのだが作り方がわからなかったが、先日ガラダで購入した「魔法陣入門」を読んで大体の基礎なんかはすでに習得済みだ。つまり魔法陣の中に相性の良い魔法文字か魔紋なんかを書き込んでやればいいのだ。基本さえわかればどうにか応用できそうな感じだった。さて、この魔矢の魔法陣だけど、これは触媒になる魔法石、この場合は魔鉄だな。ここに込められた魔力を噴出すといった効力のようだ。発動キーは魔力を込めた後の一定の圧力とあるから弦で弾いた時に発動するんだろう。あとは魔鉄が壊れるまで飛ぶという事か。

そこで考えた。魔鉄じゃなくてもっと魔力に耐えられるような素材で作ったらどうなるのだろうと。クローンで魔鉄の矢を2本に増やし、増やした方の魔矢の魔鉄の部分をミスリルと入れ替えてミスリルに同様の魔法陣を刻む。どうかな?うまく行くかな?


「トリスありがとう。この矢返すね。それで同じような矢を作ってみたんだけど、これを使って試し撃ちして貰ってもいい?」


「はい?いつの間に作ったんですか?えと、これを撃てばいいんですか?」


「うん、魔矢と同じ感じでお願い。」


「わかりました。」


トリスは弓にミスリル製の魔矢を番えて弦を引く。おぉ、改めて見ると弓を引くエルフってなんかかっこいいな。女性が弓を構える姿っていいかもしれない。あ、そういえばアマゾネスは弓を射る際に邪魔な胸を切り落とすらしいがトリスはそんな必要・・・トリスに睨まれた。なんでもありません。


「では、撃ちますね!」


トリスの魔力が込められた魔矢は光を放ちながら飛んでいった。なんかさっきよりスピードが速いな。距離もかなり飛ぶみたいだ。


「なっ・・・えぇ!?」


撃ったトリス本人が呆然としている。


「ヨ、ヨーヘー!なんですかあれ!?物凄く飛びましたよ!?見えなくなって正確にはわかりませんがたぶん8ムールは飛びましたよ!?」


「おー、思った通りだー。魔力に相性がいい素材を使うと効果が上がるんだな。」


「魔力に相性が良い素材って・・・魔鉄でも3ムールくらいが限界なのに、いったいなんの素材を使ったんですか?」


「ミスリル」


「・・・えええぇぇぇぇぇぇええっっっ!!?ミ、ミスリル!?あれってミスリルの矢だったんですか!?あわわわわ、ひ、拾いに行かなくては!!」


「いやいやいや、使い捨てならミスリルの部分は消滅しちゃうでしょ。そういう魔法陣だったし、取りに行っても鉄の矢が手に入るだけだと思うよ?」


「ですが!ミスリルの矢ですよ!?弓手にとって憧れの矢です!あれ1本で1万レンスはするんですよ!?・・・も、もっと大切に撃ちたかったぁ・・・」


「いや、ほら。ミスリルの矢なら一杯作れるし、またあげるからさ。それよりも実験を手伝ってくれてありがとう。思ってた通りの結果になって満足してるよ。」


「ミスリルの矢が一杯・・・」


「トリス、ヨーヘーのやる事なら慣れて行った方がいいよ。ヨーヘーってねちょっと価値観がズレてるから。」


「アリア、あとでヨーヘーの魔法について色々教えてください。毎回これだと疲れそうです・・・」


「うん、いいよー。じゃあ夜にでも色々教えてあげるね。」


人を非常識みたいに・・・まぁこの世界に来てそんなに経ってないから常識がないのは自覚してるけどさ・・・。



その後は魔物に遭遇することもなく荷馬車を進め、日が沈みかけてきたので、少し開けた場所で野営をすることになった。


「結構進んだね。やっぱり徒歩より全然早いや。」


ガラダからキレースまで70kmくらいの距離があるらしいが、今日は昼から夕方までの半日で30kmくらい進んだんじゃないだろうか?この分だと明日にはキレースに到着できそうだな。

馬車いいな。歩くより全然楽だし。徒歩には徒歩の楽しみがあるけど、馬車の楽さを知ってしまうとなー。キレースに着いたら買ってみようかな?荷台の方は自分で作れるから馬の購入を考えよう。


夜の寝床を確保する為にブリード夫妻用のテントと御者用のテント、そして護衛用のテントの3つを張ってから夕食の準備をしようとしたらマグロが俺に話しかけてきた。


「ヨーヘー!テントについて話があるんだが、ミー達は男2人、女3人のパーティだが同じテントでいいのかな!?いや、ミーは一向に構わないが、若い女性達には抵抗があると思うのだ!」


それもそうか。テントもう1個張っておいた方がいいかな?

マグロの指摘も尤もなので、もう1つテントを張ることにしたが、テントの予備がないという話だったので、こちらで用意すると言って、こっそりクローンでテントの複製をしておいた。


今日の夕飯は干し肉とナップ、それと野菜スープだ。

普通は干し肉とナップのみらしいが、グリーベアを撃退したことから商品の野菜を使ってスープを作ってくれたようだ。


「わぁ♪スープまで出してもらえるなんて嬉しいです♪豪華な夕食を振る舞ってもらえるなんて昼間頑張った甲斐もありましたね!」


「なーっはっはっはっ!野営でスープまで飲めるとは思わなかった!うん!うまい!!」


トリスやマグロは上機嫌で食べているし、ブリード夫妻も御者の2人も笑顔を浮かべて食事をしている。


しかし、こちらにそれ程テンションの上がっていない3人がいる。

なんというか物足りないな。


「にゃぁ・・・お兄ちゃん。カレー食べたいです・・・。」


「カレーは3日前に食べたよね!?」


「マジカルハウスでの生活が快適過ぎだったのよね。本来の野営ってこういうものだよね・・・。でもなんていうかちょっと物足りないかなーって思っちゃうね。」



「俺もそう思ってたところ。後でなんか作るからこの場はこれで我慢しよ。ね?タァマちゃん。」


「にゃあ!カレーがいいです!カレーが食べたいです!!」


「しっ!しー、タァマちゃん声が大きいよ!折角夕飯を用意してくれたのに違う物を食べたがったら失礼でしょ?」


「にゃぁ・・・ごめんにゃさい・・・。」


タァマちゃんは俺に抱きついてきて俺の胸に顔を埋めてきた。悪いことはちゃんと注意してあげないといけないからな。ちょっと心が痛いがここは甘やかしてはいけないところだ。


「色々学んでいい子になろうね。」


「にゃぁ、タァマいい子ににゃりましゅ。」


「んん?どうしたんだい?ご馳走を前に雰囲気がちょっと暗いようだよ?ミーに相談してくれて構わないよ!」


俺達の雰囲気をマグロが目聡く見つけて絡んできた。


「いや、実はアリアがタァマちゃんの干し肉を間違って食べちゃって、ちょっとグズっちゃったんだよ。」


「えっ!!?私!?」


「ふむ、アリア嬢。間違いとはいえ子供の物を取ってしまうのは感心しないよ?ささ、タァマ様、ミーの干し肉を献上しますのでお機嫌を治されませ。」


様!?なんだ?マグロのタァマちゃんに対する態度が他の人と違う・・・。


「うぅ・・・ごめんね。タァマちゃん。」


「(アリアごめん。)」


「(貸し1つだからね!)」


元々落ち込んでる理由が違うのでマグロの言葉にあんまり反応を見せないタァマちゃんだった。


「ほら、タァマちゃん。このスープおいしいよ。早く食べないと冷めちゃうぞぉ。」


「・・・にゃあ、食べます。」


タァマちゃんはフーフーとスープを冷ましながら飲んでいる。そういえば猫舌だったな。

食事を終わらせて、皆で雑談していたが、21時を過ぎたあたりで見張りをお願いされてブリード夫妻と御者の2人はそれぞれのテントに入っていった。

夜の見張りは先輩風を吹かせたマグロが見張りをすると主張してきたのでお言葉に甘えてお願いした。朝まで任せたまえとか言っていたが、さすがに全部任せるのは気が引けるので2時で交代することを伝えてテントに入る。俺が入ったテントにアリアとタァマちゃんが付いてきて、トリスもお邪魔しまーすと言いながら入ってきた。

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