43話 こいつです。
轟音の後の一時の静けさ。その後、冒険者達の驚愕の叫びが辺りに響き渡る。障害物が無くなってしまっているので響く響く。
「アリア、これやりすぎちゃったかな?」
「盛大に爆発したねー。でもこれなら生き残りもいないだろうし、戦闘でこちらに被害も出てない。・・・でもね、森も燃えてるじゃない!どうするのこれ!?」
「しまった・・・マジでどうしよう・・・。」
「またなの!?だからいつも言ってるじゃない!もうちょっと後先を考えて行動してって!この前だって・・・」
「待って!待ってアリア!今はこの状況をなんとかしないと!」
「なんだこりゃ!?今の魔法か!?うっく・・なんか息苦しいぞっ!?」
やべっ、今回爆発が広範囲だったから一時的に酸素が薄くなったのかもしれない。爆発で使う酸素なんかは魔法で作成されているけど、普通に周りの酸素も使うからな。屋外だし大丈夫だと思うけど念の為に魔法で風を起こして酸素を送っておくかっ!
呼吸困難になってしまっては大変だと思い、薄くなった酸素を補充する為に風魔法を使用すると
ゴォォォオオオ!!
炎が強くなりました。
「アリア、俺もうどうしたらいいかわからないよ。」
「諦めないでっ!水っ!水で消すのっ!ほらっ!やるよっ!」
アリアに促されるまま魔法で水を出して消火活動を行うと、それを見ていた冒険者が我に返ったんだろう。まだ呆けている冒険者達に指示を出し始めた。
「魔法使いは水や土を出して火を消せーーーっ!それ以外の者はこれ以上燃え広がらないように燃え移った枝を落とすなりして対応だっ!いいか?無理はするなよ!」
徐々にこっちの世界に返ってきた冒険者達から消火活動を行い、火が沈下出来たのはそれから2時間程経った後だった。
エクスプロージョンは爆発系だ。範囲内を吹き飛ばしたので魔法の範囲内はほぼ鎮火している。範囲外は燃え移って大変なことになってしまったが。同じ上級魔法である高温で範囲内を燃やし続けるインフェルノを使わなかった俺を褒めてあげたい。魔法範囲外の木なんかは生木だったので燃える速度が遅かったのも良かった。それでも燃え広がろうとする火を討伐隊皆の努力も成果もあって消し止めることに成功したのだ。
突然の消火活動に皆疲労で座り込んでいる。
場の空気が落ち着いてきた頃、誰かが呟いた。
「おいおい、なんだったんだあの爆発は・・・」
「そ、そうだ!誰だ?あんなのやった奴はっ!?」
「あんなんできるのって魔法使いだよな?ということは遠距離攻撃グループの奴だな?」
ヤ、ヤバイ・・・怒られるっ!!
そこに消火で魔力を使い果たして呆然としているサブロー先輩が目に映った。その時俺に天啓が降りてきた。
「す、すすすすす、すっげーーーー!!すっげーッス!サブロー先輩!!さっきの爆発した魔法俺にも教えてくださいよ!!」
「へ?・・・は?・・・へ??」
突然の俺の賞賛に戸惑っている様子のサブロー先輩。この状態なら勢いで押せば調子のいいサブロー先輩の事だ、きっとノセることが出来るだろう。お願いしますサブロー先輩、俺は怒られたくありませんっ!
「いやー、凄かったなぁ。これが星5つの魔法使いの実力かよー!もう星5つのレベルじゃないっしょー!上級レベルっしょこれーーー!!サブロー先輩の詠唱に燃え盛る炎とか大爆発とか広範囲とか言ってたもんなー!すげーーーなーーーー!!!マジ憧れるっス!!」
「へ?」
「お、おい、そういえば確かにそう言ってよな?」「あぁ俺も聞いた。」「あの魔法使いとんでもない奴だったんだな。」「火事のことはまぁ置いといてあれだけの魔法が使えるとかたいしたもんだ!」
「ぼ、僕にこんなに凄い才能が・・・・ぼ、僕は・・・僕は天才だ!!!!」
よし!掛かった!!
「あぁお前は天才だよっ!」「ははっ火傷の治療費は出して貰うぞっ」「サブロー!!サブロー!!サブロー!!サブロー!!」
「サブローじゃなぁぁぁぁぁぁぁぁい!!!」
あるぇ?怒られないのか?なんか称えられてないか?
ちなみに俺の詠唱は近接攻撃グループさんの大きな咆哮によって聞こえなかったみたいです。
敵がエクスプロージョンで全部消し飛んでしまった為、戦闘前の最高潮に高まっていたやる気なんかが行き場を失ってしまった上に、戦闘の代わりにやる事になったのが消火活動というわけで鬱憤も溜まっているっぽかったが、冒険者の皆はこの依頼で1人も犠牲者を出さなかったことを素直喜んでいる。実際に戦闘になっていたらいくら低ランクの魔物だとしてもあれだけの数がいたわけだから少なからず犠牲も出たはずだ。それが死者0で乗り切ったのだから大勝利と見ていいのだろう。
溜まった鬱憤を最大の功労者であるサブロー先輩を小突いたり絡んだりして多少散らしてるみたいだが。サブロー先輩もサブロー先輩で満更でもなさそうだ。
ふっ、俺としたことが怒られるのが怖くて手柄を譲ってしまったぜ・・・。
まぁ今更実は俺がやりましたーとか野暮にも程があるからな。
太陽も昇り、辺りが明るくなってきた頃、漸く興奮も落ち着いてきたらしく、数名の調査隊を残してガラダに戻ることになった。俺達はコメルの捜索をするからもう少し調査してから戻るとマイツァさんに伝えて、遠距離攻撃グループの皆にもここで抜けると挨拶をした。
「おう!ちょっと拍子抜けした感もあるが、お互いの無事を喜ぼうじゃないか!しかしちょっと暴れ足りねぇよなっ!全部サブローが持っていっちまったからなぁ。まぁ多少矢を射れた分何も出来なかった近接攻撃グループよりはマシか?ヨーヘー達はまだこの森に残るんだって?油断はしないように気をつけろよ。」
「あぁ、ロビンも帰り道気をつけて。街で会ったら俺を外道だと思っていたことの謝罪も込めて飯を奢ってくれよ。」
「わかったわかった。それじゃあな!」
ロビンがパーティメンバーの所に戻ると、入れ替わりでプレジャダスがこっちにやってきた。・・・なんだ?
「アリアさん。ボクはさっきの戦闘で8匹のゴブリンを仕留めました。その内1匹は少し体が大きかったのでもしかしたらホブゴブリンだったかもしれません。対してそこの男は魔法も撃たずにビクついて突っ立っていただけ。とんだ腰抜けです。そんな腑抜けの癖にこの森に残って調査をすると言っている。この森がどれだけ危険かも知らずにアリアさんをこの場所に残そうとしてるんですよ!やはり、アリアさんはそいつと一緒にいたら不幸になる。ボクならアリアさんを幸せにしてあげます!だからボクと一緒にガラダに戻りましょう?さぁほら!」
そう言いながらアリアの腕を掴もうとしてきたのでその手を剣の鞘で叩いてやった。
「っ!!何をするっ!!雑魚の分際でこのボクの邪魔をするな!!殺されたいのか!?」
「お前さぁ、昨日から何なんだよ?俺がお前に何かしたか?」
「下衆がボクをお前呼ばわりするな!」
外道が下衆になったよ・・・強打してもいいかな?いいよね?・・・ちっ避けられたか。
俺の強打をヒョイっと避けたプレジャダスがこれを好機と見て俺を糾弾してくる。
「やはりボクの思った通りだな!都合が悪くなって力に訴えてきたか!だけどね、お前みたいな雑魚の攻撃なんてかすりもしないよ。所詮魔法師なんて魔法が無ければ一般人と変わらない雑魚なんだよ。さぁアリアさん!こっちに来るんだ!」
こいつの中で俺ってどんなポジションなの?盗賊Aとかそんな感じなわけ?ちなみにアリアも魔法師なんですよ。魔法師を馬鹿にすることでアリアも馬鹿にしていることには気付いているのだろうか?なんかムカツクからもう1回強打を狙ってみようかな。
「アリアの意思も聞かずにお前ちょっと強引過ぎるだろ。」
しゃべりながら強打を繰り出すがうまく避けられて当たらない。ちくしょうめ。
「ふん!アリアさんもそれを望んでいる!!」
こいつ・・・マジか?ロビンが思い込みが激しいとか言ってたけど、そういうレベルかこれ?
すると俺の後ろからアリアがプレジャダスに話しかけた。
「あの、プレジャダスさん。私はヨーヘーのパーティメンバーですからプレジャダスさんのお誘いはお断りさせて頂きます。ヨーヘーと離れるつもりもないですし、プレジャダスさんの仲間になるつもりもないんです。ごめんなさい。」
「なっ!?・・・そうか、そいつに何か弱みを握られているんだね?」
おぉぅ・・・こいつすげぇ・・・見習いたくはないけどな。
「私は私の意思でヨーヘーと一緒にいるんです。じゃあ聞きますけど、私と一緒にヨーヘーもパーティに入れて欲しいとお願いしたら了承してくれますか?」
「そんな奴は必要ないっ!!アリアさんだけ来てくれればいいんだよ。大丈夫。ボクがそいつからアリアさんを守ってあげるから。」
プレジャダス・・・イヤな奴だけどそこまでハッキリと嫌われるとちょっと心痛いんですけど?
チラリとアリアが俺を見る。あ、また自分のせいで俺が傷ついていると思ってるなこれは。アリアに心配掛けたくないから笑顔・・・はこの場の雰囲気じゃないな。よしどんな顔をすればいいのかわからないから無表情を貫こう。
「お話になりませんね。あなたもう私達に関わらないでください。迷惑です。」
「アリアさん!そいつに何を掴まれてるんです!?ボクがなんとかしてあげますよ。」
「やめてください。私の大切な友達を侮辱する人に私の名前を呼んでほしくありません。」
うわ、アリア怒ってる?昔ボッチで寂しい思いをした癖に人を拒絶するような行動をとるとは・・・
等と考えていたらアリアに足を踏まれた。
「(何か今失礼な事を考えてたでしょ?。)」
アリアが俺だけに聞こえるように足を踏んだ理由を教えてくれた。無表情だったはずだが実は顔に出てしまっていたか?
「そいつがいけないんですね!そいつがいるからいけないんだ!待っててください!今射殺しますから!」
なにぃぃい!!?殺される謂れはねーよ!?てか本当に弓に矢をかけてるぞ!?
「レジャスやめないか!!何をやってるんだ!?」
「殺してやる・・・・!!」
ロビンが慌ててプレジャダスを止めようとしているがロビンの静止を聞かずに弓を引こうとする。
しかし、その弓が引かれることはなかった。
・・・ボト。
それはプレジャダスの右腕が地面に落ちていたからだ。
「あぁぎゃぁぁあああ!!!ボクの!ボクの腕がぁぁぁぁ!!」
突然の事に全員が何が起こったのかわからないといった表情をしている。
血を撒き散らしながら絶叫するプレジャダス。
ロビンが慌ててのた打ち回るプレジャダスを押さえつけて腕の止血をする。
だが俺はそんな2人よりもプレジャダスの腕を斬り落とした存在から目が離せなかった。
「タァマちゃん・・・」




