4話 おばけなんてないさ
空腹を意識してしまうと余計気になってしょうがない。特殊魔法で出せるということなので最優先で覚えておきたい魔法だな。
「そんで、魔法ってどうやって使うの?出来ればご飯を出す魔法を使いたいです!今すぐに!!」
「くすっ、さっきからお腹の虫がすごい鳴ってるものね。」
やっぱり聞こえてるよねー。恥ずかしいけどお腹が減ったんだからしょうがないじゃないか!さっきケチらずに食べておけばよかった・・・!結局全部置いてきちゃって手元にないんだもんなー。
「でもごめんね。私そういう魔法知らないの。私が使えるのは自然魔法と神聖魔法なのよ。特殊魔法は使えないからそういう魔法の知識もないし教えることも出来ないの。」
俺はこのまま飢え死にしてしまうのだろうか・・・
「携帯食で良ければ持ってるからこれを食べて?味はいまいちだけど、栄養だけはあるから。」
おぉ~、女神が降臨した。
女神が俺に棒状のクッキーのような物を渡してくれる。
「い、いただきます!!」
こ、これはっ!この味はっ・・・うん、確かにいまいちだな。
でも、お腹に溜まりそうな感じはある。味のないクッキーみたいだ。
ムグムグしていると女神が魔法で水を出してくれた。
この女神様は気が利くなぁ。クッキーもどきのパサパサ感と空腹効果によってゴクゴクと1リットルくらいの水を飲み干してしまう。
「ふふ、そんなに慌てなくてもいいのに」
「あぁ・・・生き返ったぁ。ご馳走様でした。」
「ふふ、お粗末様でした。」
「じゃあ、魔力の使い方から説明するね。」
食事を終えて空腹から解放されて余裕の出来た俺は魔法の使い方を教えて貰うことにした。だって魔法とか憧れるじゃん。使えそうなら使ってみたいじゃん!
「まずは魔力を感じるの。やってみて。」
え?なにそれわかんない。
「魔力っていうのは主に体内にある魔力を使うんだけど、足りなければ効率は悪くなるけど大気中の魔力素を自分の魔力に変換して使うことも可能なんだよ。」
「ちょっと待って。魔力を感じるのはわかったんだけど、魔力ってどんなの?」
「えーっと、こうフワワーってしてるのをギュってしてヌワッとした感じをビシッっとするの」
「・・・なるほど。」
わからん。なんてフワっとした説明なんだ。魔法ってそういうもんなのか?
「え、えーっとね?むぅ、なんて説明したらいいんだろう・・・今からヨーヘーに私の魔力を流すから、それを感じ取ってみて!」
そう言ってアリアが俺の右手を両手で包んできた。
あ、柔らかい。
そんなことを思っているとアリアから何かが流れ込んでくる。
おー、もしかしてこれが魔力か?
なるほど、なんというかフワワーってしてるなー。
どんどんフワワーっとしてるのが俺を包み込んでくる。
俺を取り囲む魔力が際限なく増えていくが、果たしてこれは大丈夫なんだろうか?最初は初めて感じる魔力に感動していたけど、この増え具合を見るとちょっと不安になってきたぞ。
「アリアありがどう。魔力がどんなのかわかったからもう止めていいよ。」
「え?私もう魔力流してないけど?」
「え?」
フワワーっとしたのがどんどん溢れてくる。発生源は俺の体内からのようだ。
はわわわ、こ、これ大丈夫なのか!?止まらないんだけどーっ!?
「こ、これ、これ、どどどどどうすれば!?」
明らかに異常を感じてパニックになる俺。
「うわぁ、なんて凄い魔力なの・・・ね、ねぇそろそろ止めたほうがいいと思うの。」
「その止め方を教えて!!」
「えっと、魔力の流れをスパッとするの!」
わかんねぇよ!なにをどうやればスパッって感じになるんだよ!?
「ねぇ!?これこのままだとどうなるの!?ねぇ!どうなるの!??」
「たぶん・・・シナってなる?」
「うぉぉぉぉおお!!シナってなるってなんだ!?この子の説明は擬音ばっかでわかんねぇよぉぉぉ!とにかくこのままだとなんか嫌な予感しかしない!!とぉーーまれぇぇぇぇぇ!!」
その時、何かが動いた。
俺の尻の下で。
『モゾモゾ』
ビックゥ!?
座っていた場所から飛び跳ねて離れる俺とアリア。
「騒々しい魔力だな。おかげで目が覚めてしまったぞ。」
さっきまで俺達が座っていた場所から声が聞こえ、むくりと起き上がった。暗くてよくわからないが人・・・なのか?
声の主が両手を広げた途端、俺の周りに充満していた魔力が彼の者に吸い込まれていく。
俺の魔力を10秒程吸い込んだ頃だろうか?彼の者からパチンと指を弾いたような乾いた音がなる。
すると俺から放出されていた魔力がピタリと止まった。
ほっ・・・危ねぇ・・・次からは止め方をちゃんと教えて貰ってから使うようにしよう。よくわからんけどシナってなりたくないし。
「えと、ありがとうございます?」
「なぜ疑問系なのだ?まぁいい。ここは少し暗いな」
パチン
先程と同じ様に指を弾いた音が鳴ると周りが明るくなってきた。
おぉ、これも魔法なのか。
明るくなったこともあり、先程の人物が良く見えてく・・・る・・・。
そこにいたのは
「ぎゃぁぁぁぁぁあああ!!ミ、ミイラーーーーー!!!」
「失礼なっ!誰がミイラか!お前のような無礼なヤツはこうだっ!!」
バチィ!
「アギャッ」
なんか野球ボールみたいな魔力が飛んできた。結構痛い・・・。
冷静にミイラ(本人否定)を見てみる。
・・・これどう見てもミイラだよ。目がリアルにあるからテレビで見たミイラより怖ぇんですけど。あ、目が動いた。うわぁぁぁ気持ち悪ぅ・・・。
「なんかまた失礼なこと考えているだろう?」
そう言って魔力球を手のひらの上に出すミイラ(本人否定)さん。
「いえいえ!滅相もない!それよりそのボール痛いからしまって!ほら早くしまって!!」
「ったく、口には気をつけろよ?」
さすが異世界だ。ミイラも動くのか。これが異世界ってのはスゲーな。この世界では当たり前のことなんだろう。
自分の中の常識に囚われていちいち動じていたらアリアに笑われてしまうな。
・・・あれ?そういえばアリアはどこだ?さっきまでそこにいたのに。
辺りを見渡すと10m程離れた壁際でこちらを伺っているアリアを発見した。
「アリア?」
「ち、違うの!!実は私アンデッド系苦手なの!でも、あなたを放って逃げられないし、かといって怖いから近くに行きたくないし・・・うぅやっぱ無理ぃ、ごめんっこの距離が限界!」
オバケが苦手らしい。神聖魔法ってアンデッド系の弱点なイメージがあるんだけど違うのだろうか?仮にも聖女様の末裔だろうにそんなんでいいのか?まぁ人には苦手なもんの1つや2つあるか。
「おい小娘、俺をアンデッドと一緒にするとはいい度胸だ。お前にもお仕置きが必要なようだな。」
あぁミイラ(本人否定)さん怒ってるよ。
「ひぃっ」
ミイラ(本人否定)さんに睨まれてアリアは顔を真っ青にしている。
「ちょちょちょちょ、ちょっと待ってください!ミイ・・じゃない。えっとリッチー様?あの子も悪気があったわけじゃな、痛ぇっ!?」
またミイラさんから生まれた魔力球がぶつけられた。
「お前、リッチーもアンデッド系だからな?ホントに怒るよ?どう見ても人族だろうに」
「・・・・・・で、ですよねー。はい!あなたは間違いなく(元)人族です!!」
ツッコまない、ツッコまないぞ。あれだ、きっと即身仏になるのを失敗した人かなんかだろう。
「今、人族の前に微妙な間があったんだが?」
「き、気のせいであります!!」ビシッ
「なんだそのポーズは?」
そんなやり取りをしていると、いつの間にか俺の後ろに来ていたアリアから俺経由でミイラ(本人否定)さんに鏡が手渡される。
アリア。そんなに服引っ張らないで。伸びちゃ・・・いや、破れちゃうから!
手渡された鏡を覗き見るミイラ(本人否定)さん。
「ぎゃぁぁぁぁぁあああ!!ミ、ミイラーーーーー!!!」
・・・おい。
「これが俺!?どうなっている!?完全にミイラじゃないか!?」
ワナワナと鏡を見ながら震えるミイラ(本人認定)さん。
「うわっ、目が動いた!気持ち悪っ!!」
自分に向かって容赦ないな。
5分程取り乱していたミイラさんだったが、落ち着きを取り戻し始めていた。
立ち直り早いな。俺なら自分がミイラになっていたら1年は塞ぎこむ自信あるぞ。
「ふむ・・・まさかこんなことになるとは・・・」
なんかブツブツ言ってこっちをジロジロ見てくるミイラさん。
「おい、今、何年の何月何日だ?」
「えっと西暦20「西暦ってなんだ?」・・・あ。」
そうだ異世界だった。セリアルドールって年号だったな。えーっと・・・
「セリアルドール999年の6月20日です。」
さっき話しに聞いていたセリアルドール年号を思い出していたらアリアが答えてくれた。6月20日か、偶然だと思うが地球と一緒なんだな。1年も365日らしいし、これなら混乱しないで済みそうだ。
なんてことを考えていたら日付を聞いたミイラさんが頭を抱えてワナワナしている。
「ヌォォオ・・・!なんてことだ・・・寝過ごしたぁ!!」
ミイラさんは寝坊してしまったようです。自分がミイラ化するまで寝坊するなんてスケールが違うな。
寝坊した事を悔いているのかミイラさんが挫折のポーズをしている。
今度は1時間くらい落ち込んでいた。ミイラになるより落ち込むような事ってなんだ?
「寝過ごしてしまったものは仕方が・・・ない。さっきは起こしてくれてありがとうよ。」
「いえいえ、こちらこそお騒がせして申し訳ありませんでした。」
「お前はヨーヘーだったか。なぜこんなところにいる?」
はて?自己紹介したっけな?あぁ、さっきアリアと自己紹介してたのを聞いていたのかな?
「実は・・・かくがくしかじが」
今までのことを話してみた。
「ふむ、地球・・・そして虹の橋なぁ・・・プッ、お前年齢のの割りにメルヘンな脳みそ持ってるな。」
「うぐっ!ち、ちがわい!ちょっと浮かれちゃっただけだい!・・・それで何か知ってます?俺は帰れるんですか?」
「いや、知らん。それに異世界と繋ぐ橋を出す術なんぞ人の持つ魔力で出せんだろう。恐らく自然現象の気まぐれだろうな。つまり戻る事は無理なんじゃないか?」
マジかよ・・・。これ帰れないってことか?せっかく行きたかったライブのチケット当ったのに無駄になっちまうのか・・・。泣けてきた。
「そう悲観するな。この世界の人生を楽しむといい。地球?には魔法等無かったのだろう?きっと楽しい事が待っているぞ。」
「そうですか・・・そうですよね!ライブは残念だけど、魔法が使えるのはワクワクしますもんね!でも家族のことを考えると・・・」
「そこは事故にでもあったと思って諦めるしかないな」
「そうですね・・・って、そんな簡単に割り切れるかぁぁぁぁ!!!うぉぉぉぉお!父さーーーーん!!母さーーーーん!!姉ちゃーーーーーーん!!俺はここにいるーーーーーー!!!」
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「・・・落ち着いたか?」
「・・・無理」
「そうか」
「・・・・・・」
ミイラさんが心配そうに俺を見て、アリアが俺の背中をさすってくれている。
「ほ、ほら、こう見えても俺は魔法師だ。帰れる手段を探してみようじゃないか!それにヒントならある!虹の橋だったか?大丈夫、こう見えても俺は不思議な現象を解明するのは得意なのだ!」
ミイラさんが俺を元気付けようとしてくれている。
「ありがとう。ミイラさん・・・落ち込んでばかりじゃダメだよね」
「ミ、ミイ・・・まぁいい、そうだな。お主がこの世界で生きていけるように、俺が魔法を教えてやろう。幸いお前の魔力はかなりあるようだしな。もしかしたら俺以上かもしれん。こう見えても世界一の魔法師だ!魔法の知識なら誰にも負けん自信があるぞ!」
なにそれすごく胡散臭い。




