3話 異世界グロスティアと魔法
イノッチを見捨・・・あの場の警備を任せて女の子を背負った状態で10分程歩いただろうか。
大切な事だからもう1回言おう。
女の子を背負って歩きました。俺は今幸せを感じている。主に背中に。
この場所は太陽の光は入ってきてないんだけど、真っ暗じゃない。
地面が微妙に光ってます。そのおかげでこの洞窟内は真っ暗ではないのだ。
何が光ってるのかメチャクチャ気になるけど、今はそれどころじゃない。
「疲れた・・・」
人を背負って歩くのって大変なんだな。
でもこの感触は棄てがたい。
くっ・・・俺はどうしたらいいんだ。
グゥー・・・
「うー、腹減った・・・」
昨日の昼から何も食べてないんだった。
もう手に入らないかもしれないとか考えずになんか食べておけばよかった。
さっきの岩の上に食料置いてきちゃったんだよな~。グス。
出来れば腐る前に回収したい。
「う、うーん」
お、女の子が目を覚ましたみたいだ。目の色は桃色じゃなくて碧眼なんだね。
「ここは・・・ハッ!?ベヒモスはっ!?」
「あれならこの洞窟の入口の警備をしているよ。」
「警備?あなたはさっきの。・・・えっと、ここはどこなの?」
キョロキョロと周りを見回す女の子を背中から降ろしてここに至るまでの経緯を説明する。やわらかい幸せよ、さようなら。できればシーユーアゲインしたいです。
「・・・はぁ。地球かぁ・・・異世界ってあるんだね。それにしてもベヒモスに襲われて無事だったなんて運が良かったのね。」
なんで俺がこんなところにいるのかというところまで説明することになったので、虹を超えてこの世界にやってきたことまで詳細に説明することになってしまった。
因みにこの世界はグロスティアという名前の世界らしい。やっぱり異世界だよな。するとどうやって地球に戻るかが問題だよな・・・。
あと、異世界に来たらまず出会うというお約束の魔物は雑魚だと相場は決まっているはずなのに、あのイノッチはベヒモスという魔物の子供なんだとか。
全然雑魚じゃないじゃん。ゲーム知識だけど、ベヒモスって結構上級のモンスターだったよな?子供と言っても勝てる気がしなかった。
ベヒモスは成獣するとメチャクチャデカくなって人の手に負えない災害なんだとか。
そんな災害の子供であるわけで、熟練の冒険者でも殺されてしまうとのことだ。
たしかに怖かった。あの突進痛かったしなー。・・・よく痛いで済んだものだ。きっとギャグ補正か何かついたんだろう。
俺達が落ちたところから奥に150m程進むと行き止まりになった。
「くそ、出口はイノッチが塞いでるし出れないじゃないか」
手頃な高さの段差があるので、そこに座って休むことにする。
「ん?なんか感触が岩っぽくないな」
岩だと思っていたら微妙にやわらかかった。
暗いからよくわからないけど、疲れたし気にしないでおこう。
今更だが休みながら自己紹介を済ませようか。
「俺は石川洋平って言うんだ。石川が苗字で洋平が名前。22歳だ。洋平って呼んでくれて構わない。」
よく英語で外国人に自己紹介する時にMy name is YOHE ISHIKA-WAみたいに絶対に日本じゃその発音で呼ばねぇよっていう発音で自己紹介するのはなんでなんだろう?実際あの発音で呼ばれて反応できるのか?
同じ日本人にその発音で呼ばれたらムカツクだろうに、外国人にはそういう発音で自己紹介するんだよな。不思議だ。
なので、バッチリ日本仕様で自己紹介してやった!
「ヨーヘー?」
「そう。洋平」
てか、今更だけどやっぱり日本語通じるんだな。通じないよりはいいし、細かい事は気にしないでおこう。
「私の名前はアリア=イグナスっていうの。アリアが名前でイグナスが苗字。人族の17歳。アリアって呼んでね。」
この世界では海外と同じ様に先に名前で苗字は後につけるらしい。今度から洋平石川と名乗ったほうがいいかな?それにしても人族か、人族っていうことは人族じゃないのもいるのか?
その辺をアリアと名乗った少女に聞いてみると、どうやらこの世界には獣人や魚人や魔族なんかもいるらしい。
魔族がいるということは魔王もいるのだろうか?
「魔王?もちろんいるよ。わかると思うけど魔族の王様が魔王になるの。」
「魔王はやっぱり世界征服を目論んでいたり悪逆非道を押し進む存在だったりするのか?」
「そこまでじゃないけど、魔族は好戦的だから他種族とはよく争ったりしてるよ。まぁ人族だって傍から見たら他種族の土地を我が物顔で侵略している種族だから平和的な種族からすると魔族とたいして変わらないかもしれないけどね。」
今のは自虐ギャグとかだったりするんだろうか?この世界の文化がわからないから笑うべきなのかまようところだな。
話を進めると、人族と魔族は長年争いを続けているらしい。数の人族、質の魔族という格言があるそうで、魔族の力は人族を大きく上回っているということがわかった。
「そんな魔族の王様である魔王だけど、実は魔王よりも危険視されている存在だっているんだよ。」
え?魔王より危ないのがいるの?それならもうそれが魔王でいいんじゃないだろうか?
「人族基準の危険度だからどれだけ人族にとって有害かという意味もあるんだろうけどね。例えだけど他国で暴れるドラゴンより隣にいる盗賊の方が脅威だと思わない?」
「たしかに・・・つまり人族の生活圏内に危ないのがいるってことか。」
「うん・・・そうなるね。」
なぜだろう?なんかちょっと空気が重くなった気がした。わ、話題を変えるか!
「ところで、なんでアリアはこんなところを一人でウロついてたんだ?」
「えっとね・・・実は私、セリアル様の子孫なのよ。それで古い文献からこの辺りにセリアル様のお墓があるらしいってことが書いてあってね、ご先祖様のお墓参りをしようとしたの。そうしたらベヒモスに追いかけられて・・・」
「ふむふむなるほどねー。よくわかったよ。・・・ところでセリアル様って誰?」
「えっ!?セリアル様はセリアル様よ。ルドールの聖女の・・・え?ホントに知らないの?年号にもなっているのに?冗談でしょう?」
「えっと、ごめんマジでわかんない。昨日この世界に来たばっかりなんだって。」
「あ、そうだったね。それなら知らなくても無理ないかぁ。よしそれじゃあ私が説明してあげる!」
妙に活き活きするアリアに説明してもらいました。
セリアル様。今から千年前に沢山の人を治療しながら各地を回った偉人らしい。800年前に滅亡してしまったルドールという国を中心にして活躍していたことから、ルドールの聖女と呼ばれ、その功績を称えて彼女が聖女と呼ばれた年を元年としたセリアルドールという年号が出来たとか。そんで、今はセリアルドール999年。今になっても彼女への信仰は根強いものがあるらしく、この大陸のほとんどの人がセリアル教の信徒なんだとか。
さて、アリアであるがかなり熱心な信徒のようだ。俺は軽く・・・いや、かなり後悔している。
セリアル様の話が始まって2時間になるが、まだアリアはセリアル様について語っている。
セリアル様は無償で病気や怪我をした者を助けた。
セリアル様には優秀な従者が2人いて、セリアル様を生涯守り通した。
セリアル様は治療士の祖と呼ばれ、現在の治療法や神聖魔法はセリアル様が広めたもの。
セリアル様が作ったと言われる壷を持っていると元気が沸いてきて幸福になり、毎日が充実した生活になる。
セリアル様のラブストーリー(←今ここ
「それでね、セリアル様の存在を邪魔に思っていた人達から襲われた時に従者の2人・・・あ、2人いた従者の内の1人がセリアル様の旦那様になるのよ。旅の間ずっと献身的にセリアル様に尽くしていたの。素敵でしょ?でねでね、この旦那様ともう一人の従者がね、襲ってくる刺客なんかを全て退けたんですって!たった2人でこんなことできるんだからすっごく強かったんだろうなー。セリアル様は街に立ち寄っては怪我人や病人を治療したり、治療術を教えたりして旅をしていたらしいの。今でこそセリアル様の治療術は当たり前になってるけど、この頃は治療術なんて酷いもので、セリアル様が使う治療術は神の技として奇跡に見えたらしいわ。その行為が色んな人に広まって信奉者や弟子志願者がどんどん増えていったのだけれど、セリアル様の旅にはこの2人の従者しか連れなかったらしいのよ。一緒に連れて行って貰えなかった信奉者や弟子志願者達でセリアル様を慕う人達が集まって組織されたのが、今のセリアル教会の始まりって言われてるのよ。この教会が力をつけるのはセリアル様の孫にあたる人がこの教会に所属してかららしいけど。それでねセリアル様と旦那様の長年に渡る・・・・」
勘弁してください。
それから2時間。俺はすっかりこの世界に詳しくなった(セリアル様限定)。
その辺のセリアル教の信徒なんかより詳しい自信があるぜ!!
話の断片から情報を拾うと、この世界には魔法があるらしい。会話の中に当たり前のように火を出しただの、竜巻を起こしただの出てきたし。なにより話の途中で喉が渇いたらしいアリアが普通に魔法で水を出して喉を潤わしていたのを目撃したからだ。
ステータスはでなかったのに・・・
しかし魔法か。なんだかワクワクしてくるな。俺も使えちゃったりするんだろうか?
こう集中して腹に力を入れて・・・はぁぁぁぁぁ!!
グゥ~・・・・
いかん・・・本格的に腹減ってきた。
「なぁアリア、魔法でご飯出せないの?」
「私は出せないよ?」
出す魔法あるのか・・・すげぇな魔法。
どんな魔法があるのかメチャクチャ気になってきた。
「魔法ってどんなのがあるの?」
「えっと、分類っていうことでいいのかな?まずは自然魔法ね。火を起こしたり、水を湧かせたり、岩を出したり、雷を出したりできるの。自分の魔力を自然現象に変換して発生させる魔法よ。」
一般的なポピュラーなやつだな。ゲームとかでよく出てくるやつだ。
「次に精霊魔法ね。これは発生する現象は自然魔法に似ているんだけど、自然魔法との違いは自分の魔力を精霊に渡して替わりに魔法を使ってもらう魔法ね。少ない魔力で高威力の魔法が出せるんだけど、火なら火精霊と契約。水なら水精霊と契約しないといけなかったりするし、精霊を探して契約しないといけないから手間がかかるし、何より精霊がいないところだと使えないとか微妙に使い勝手が悪かったりするみたい。でも契約した精霊がいる場所ならば効果は絶大よ。一番のネックは精霊と仲良くなれるかなんだけどねー。」
精霊もいるのかー。会ってみたいなー
「次に神聖魔法ね!これはセリアル様が始祖と言われてい「その説明はいいや」・・・なんでよぉ~?」
さっきスッゲー聞いたもの。そんなに残念そうな顔をしないでほしい。
要するに神聖魔法とは主に治癒魔法とかだろう。
「・・・じゃあ次ね。これは才能とかは必要ないの。魔力さえあれば誰でも使えるのが召喚魔法。まぁ読んで字の如く、呼んだものを使役する魔法よ。これは契約とかする必要はなくて呼ぶ固体毎に魔法陣があるの。魔法陣に魔力を注ぐことで召喚獣を呼び出して使役することができるの。ただ、呼び出した召喚獣に常時魔力を与えていないと送還されちゃうから燃費の悪い魔法なの。」
召喚!やべぇなんかかっこいいな!バハ○ートとか呼べるのかな!?使ってみたい!!
「それと、種族毎に固有の魔法があるって聞いた事あるけど、これは詳しくは知らないの。人族の話でいうと・・・人族は皆大なり小なり皆魔力を持ってるから、魔法師の才能がなくて魔法が使えない人でも魔法が使えるようにする為に魔法陣があるの。召喚の魔法陣と同じで魔力を流すだけで魔法陣に書かれた効果が発動するんだよ。初歩的なやつだと火を出したり、水を出したりする魔法陣が家庭にあったりするかな?でもやっぱり発動中は常時魔力を使うことになるから魔力が多い人じゃないとあんまり家事では使えないかな?」
生活魔法は魔法使いじゃない場合は魔法陣を使うってことなのか。でも魔力がなくなったりすると使えないから魔力の多い人じゃないと実用的ではないらしい。
「あとは・・・これ説明いるかな?特殊魔法っているのがあるんだけど、適性が必要であまり使い手がいない魔法分類なの。内容もハッキリしないのが多いしね。なんて言ったらいいのかな?特徴がありすぎてこれだ!っていうのが説明しづらいというか・・・あ、さっきヨーヘーが言ってたご飯出す魔法はたぶんこの特殊魔法になるんだと思うよ?」
ほぅ・・・特殊魔法ね。
そんなことよりご飯の話するからお腹空いてるの意識しちゃったじゃないか。




