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虹の先に繋がる世界  作者: 水無月 壱九
グロスティア
39/172

39話 ガラダ冒険者ギルドで緊急依頼

持ってきた荷物を職員さんに見せると軽く驚かれた。


「お待たせしました。ってこれ全部ですか!?」


「はい、見てもらっていいですか?」


「わかりました。確認させて頂きますね。」


その後、職員3人くらいで荷物の検分を行っている。俺達は待っている間暇なのでガラダの依頼板を見ていた。


「星3つだから、えーっと・・・[採取]グラスツリーの皮、[採取]大岩貝の貝殻、[雑務]魔法師組合の調査、[雑務]古屋敷の害虫駆除、[討伐]フォレストウルフ20匹、[討伐]シックルスパイダー、[討伐]ブラッドビートル10匹、[討伐]ロックボア、[討伐]アームコンゴ、[緊急]オーク・ゴブリンの集落殲滅・・・か。」


緊急っていうのは初めてみる。文字通り緊急なんだろうけど、どういった物なのかは詳しく知らない。後で受付の人に聞いてみるか。

それと魔法師組合の調査ってなんだ?依頼者が冒険者ギルドになってるんだけど・・・。あ、中級にグリーベア討伐が依頼されているな。くっ、達成報酬が5千レンスだと・・・依頼を受けていればと思うと損した気分だ。まぁ俺達は星3つでまだ初級だから中級の依頼を受けるには1ランク上げないといけないから結局受けれなかったけど。

そういえばあの魚類に掛けた魔法を解くの忘れてた。解除しておくか・・・よしこれでいいだろう。

依頼内容を見ると害虫駆除と魔法師組合の調査以外は生息地域が森の中だな。今日はもう街から出たくないから何か受けるとしたら害虫駆除か魔法師組合の調査の2つになるわけか。1個下の依頼までは受けられるから星2つの依頼でもいいんだが、これも全部森に行かないといけないものばかりだ。

アリアに今日はもう街を出たくないでござると告げるとアリアも同意してくれた。


「魔法師組合の調査ってなんだろうね?」


「あー・・・、私もそんなに詳しくないんだけど、ガラダの冒険者ギルドのマスターと魔法師組合のマスターが昔冒険者をやってた時のライバルだったらしくて仲が悪いらしいよ?だからお互いの弱みを握ろうと探り合ってるみたいなの。」


「なんだそれ?てかそんなん自分で調べろよ。態々依頼出して調査させるとか職権乱用もいいとこじゃねーか。」


「一応報酬もでるし依頼は依頼だからねー。あ、そうだ。そういえば私達魔法師組合に魔法師登録してなかったよね?この街でやっちゃう?」


「あー、そうだった。身分証手に入れて忘れてたなぁ。・・・あれ?身分証発行以外に登録するメリットってあるんだっけ?」


「えっと・・・魔法講習が受けられるとか、要魔法師の依頼斡旋とか?よくわかんない。」


「まぁとりあえずこの街で登録するのはやめよう。なんか嫌な予感がする。加えてのこ魔法師組合の調査って依頼も回避の方向で。」


「そうだね。じゃあ魔法師登録はまた後でってことで依頼はこっちの古屋敷の害虫駆除にする?」


「うん、それぐらいが丁度いいね。それにしよっか。」


古屋敷の害虫駆除の依頼用紙を依頼板から剥がしたが、さっきの受付のお姉さんがまだ外で荷物の検分をしていたので冒険者ギルド内のテーブルに座って検分が終わるのを待つ事にした。

他の職員さんに依頼手続きをしてもらってもよかったんだが、手続きは1回にまとめたほうがいいと判断した結果だ。決して最初の受付のお姉さんが一番美人だったからではない。


待ってる間、依頼板にあった魔物のことを魔物図鑑で調べてみた。


シックルスパイダー

体長2~3ミールの蜘蛛型の魔物。1ミールある大鎌を2本持つ。牙には毒があり、毒液に触れると1分程で全身が麻痺してしまう。解毒薬、解毒魔法によって回復可能。腹部の突起より粘着性の糸が吐き出される。身動きの阻害になるので注意。初級冒険者の剣士が1人で戦うと勝率は3割程。2人いる場合は1人が囮になれば比較的楽に倒せる。


ブラッドビートル

体長30マールの甲虫型の魔物。血のように真っ赤な甲虫。動物に取り付き肉を食べる。強靭な牙は木枝を噛み切る。取り付かれれば危険だが、それ程素早いわけではなく、羽音から接近がわかる為、初級冒険者の剣士であれば1人で5匹は対処できる。


ロックボア

体長3~4ミールの猪型の魔物。強烈な突進と硬い体皮が特徴。突進は木々を薙ぎ倒す威力で体皮は岩のように硬い。剣では相当の実力がなければ切れないだろう。初級冒険者の剣士が正面から戦うと勝率は3割。罠に仕掛けて狩ることを推奨。


アームコンゴ

体長2~3ミールの猿型の魔物。速さはないが、両腕から繰り出されるパンチの威力は驚異的。ドラミングには精神干渉し、恐慌状態になることがあるので注意が必要。初級冒険者の剣士が戦うと勝率は3割。近接戦闘はオススメしない。


グリーベア

体長2mの熊の魔物。集団で行動し、連携した攻撃をしてくる。スタミナがあり、爪と牙の攻撃や圧し掛かり攻撃がある。中級冒険者の剣士であれば2匹まで相手にできるだろう。


なんか星3つになって急に難易度が上がった気がするんだが。強さの例えの剣を持った一般人は出てこなくなったな。戦闘経験者じゃないと狩れないレベルになってきたのか。それにしても初級冒険者の剣士が例えになったとしても魔法使いの俺達にはあまり参考にならない。まぁ指標みたいな物なんだろう。にしてもブラッドビートル以外は全部俺達よりでかいな。ロックボア以外は足は遅そうだし、あのグリーベアが中級なんだから接近さえされなければそんなに大したことはないのかもしれない。

そんなことを考えていたら職員さんが新しい依頼書を依頼板に貼り付けていた。数人の冒険者が新しい依頼を見ていたので、一緒に依頼内容を見てみると、[雑務]異常魔力の調査、とあった。詳細は先程街の外で異常な魔力が感知されたらしい。魔法師組合の連中がキナ臭い魔法実験を行った可能性が高いので原因や現場の調査をあわよくばヤツの弱みを握るネタを入手してほしいとのこと。・・・ヤツって何だよ。しかし、その依頼を見て俺は背中に嫌な汗が流れたのを感じた。


「ヨーヘー・・・」


物凄く心当たりがある。絶対コキュートスの魔力を検知されたんだよな?上級魔法はやりすぎたかもしれない。でもイラっときたんだ!仕方ないじゃないか!あいつだ!あの魚類が全て悪いんだ!


動揺を隠してテーブルに戻り、落ち着くためにタァマちゃんを膝の上に座らせて頭を撫でた。

撫でられたタァマちゃんは嬉しそうに目を細めている。ふぅ、なんとか落ち着けそうだ。


30分くらいすると検分をしてくれていた受付の美人なお姉さんから声を掛けられた。


「お待たせいたしました。荷物の調査が終わりまして、荷物の持ち主がわかりました。持ち主はチャリートという男性でして、商人をしていたようです。依頼証を持っておりましたので調査したところ、ブランダからガラダに荷物の運搬護衛を依頼していたようです。先程仰っていた目撃者という方について教えて頂いてもよろしいですか?」


「あぁ、はい。なんだっけ?美味しそうな名前だった魚類なんだけど。中級の冒険者って言ってたなぁ。確か・・・マグロ=オーマだっけ?」


「えっと・・・ごめん、私も覚えてない。たぶんそんな感じ?」


「お魚さんです!!」


「魚類・・?魚人の方ですか?魚人で中級の冒険者でマグロ=オーマ・・・。少々お待ちください。」


美人の受付お姉さんは手に持っていた書類に目を落とす。


「1月以内で護衛依頼を受けた方の中にトロ=オーマという魚人の方がいらっしゃいますが・・・」


「あっ!そうそう!トロだトロ!そんな名前だった!」


「因みにその方は?」


「冷凍マグ・・・いえ、たぶんまだ街の外にいるんじゃないかと。」


「そうですか、ありがとうございます。さて、先程の荷物ですが、このガラダで荷物を受け取る商人がいらっしゃるようなのですが、いかがなさいますか?」


「え?いかがなさいますかというと?」


「チャリート氏が死亡していることがトロ様に確認が取れ次第、あちらの荷物の所有権は第一発見者であるあなた様に移ります。所有権が受取人にあった場合は5割になってしまうのですが、今回は所有権がチャリート氏にあるようなので、受取人には受け渡す義務は発生しません。仕入れできずに多少は困る事になるでしょうが、大きな問題にはならないかと思われます。必要ないのなら、受取人の方にあなた様がお売りすれば宜しいかと。」


「そうなんですか?えっと、じゃあチャリートさんの死亡確認が取れるまであの荷物預かってもらってもいいですか?」


「はい。300レンスでお預かり致しますよ。」


金取るんかい。でもまたあの荷物を魔法の袋に収納したり出したりするのは面倒だしなぁ。


「申し訳ありません。あの量ですので場所を取ってしまうのです。仮にチャリート氏が生存していらっしゃいましたらチャリート氏に請求しても問題はありませんので、ご了承してくださいませんか。」


「むぅ、わかりました。お願いします。」


仕方ないので預かって貰うことになった。あれだけの量の物資だし、マイナスになることはないだろう。


「では、依頼の受注をしたいんですけど。」


「はい、承ります。」


「あ、そうだ。その前にこの子なんですが、パーティ登録したいんですがお願い出来ますか?」


タァマちゃんにギルドカードを出してもらい、美人なお姉さんに手渡した。


「はい、承知いたしました。一緒に参加されるパーティリーダーの方のギルドカードもご提出ください。」


パーティリーダー?どっちだ?わからなかったので、俺とアリアのギルドカードを両方渡した。


「えーっと、パーティ「フリーター」のリーダーはヨーヘー様ですね。ありがとうございます。」


フリーター代表か。なんか嫌な役職である。

ギルドカードを提出したついでに依頼の受注も行った。


「はい、古屋敷の害虫駆除ですね。依頼主は不動産屋のリアール様です。詳しい事は依頼人にご確認ください。成功報酬は1千レンスになります。よろしいですか?」


「はい、お願いします。」


「・・・はい、登録完了いたしました。ご健闘をお祈り申し上げます。」


「あ、もう1ついいですか?依頼板に緊急っていう見慣れない依頼があったんですけど、あれってなんですか?」


「あ、はい。緊急というのは急を要する依頼ということです。出来れば優先して受けて頂きたい依頼ということです。この他にも「強制」という内容もありまして、こちらは依頼を見た冒険者、又はギルドから話を受けた冒険者の方には強制で受けて頂く依頼になります。今回は森の奥にオークとゴブリンの集落が発見されまして、オークが約50体、ゴブリンが約200体確認されております。数の多さに複数の冒険者が犠牲になっておりまして、事態を重く見たギルド長が今回緊急依頼として依頼を出しました。」


「オークとゴブリンの集落ですか・・・。」


「あの、帰ってこなかった冒険者に女性はいたんですか?」


アリアが少し顔色を悪くして受付のお姉さんに質問している。


「・・・はい。3名の女性冒険者の行方がわからなくなっています。それと別の調査で森に入ったギルド職員が1名戻っていません・・・。」


「っ!・・・そうですか。ちなみに行方不明になってからどれくらい経ちましたか?」


「冒険者の方は3週間と2週間。ギルド職員は・・・1ヶ月です。」


「そんなに・・・どうして今頃緊急クエストになったんですか?」


「集落が見つかったのが2日前なのです。女性冒険者の方達はギルド職員の捜索に行ってくださった方、森の調査に行った方達です。戻らない冒険者の総数は30名程です。最近になって人族の武器を持つゴブリンが多数確認されていまして、戻らない冒険者達はゴブリンの集団に襲われたのではという推測がされ、集落の発見を急ぎまして、先日やっと見つけることができたのです。」


うわー・・・重いなぁ。ゴブリンとオークの集団かぁ。一昨日アリアに聞いた事から推測すると30人近い冒険者が食われたってことか、4人の女性は・・・そういうことだよな。

すると顔色が悪くしたアリアが俺の腕を掴んできた。不安なんだろうな。


「あの、メンバーに女性が在籍するパーティに頼むのは心苦しいのですが・・・よろしければ緊急依頼に参加して頂けませんでしょうか?」


「うーん、俺だけなら構わないんですが、この子達は連れて行きたくないんですよねぇ。」


「っ!?ダメよ!!50のオークに200のゴブリンだよ!?ヨーヘーなら大丈夫かもしれないけど万が一ってあるでしょっ?ヨーヘーにもしもの事があったら私、耐えられないよ・・・。」


「その気持ちは嬉しいけど、ゴブリンオークの大集団だしアリアも行くってのはちょっとなぁ。」


「依頼を受けないって選択肢だってあるでしょ?困ってる人がいたら助けてあげたいのはわかるけど、それで友達に危険が及ぶのなら私は友達の安全を優先したいの!」


「アリア・・・それを言ったらどの依頼も受けられなくなっちゃうよ。危険度で言えばクロコスネーじゃないや、マーシュサーペントの方がよっぽど危険だったわけだし。」


「うぅ・・ごめんなさい・・・私ちょっと弱気になってたよね・・・。」


「いや、アリアが言ってることは間違いじゃないし、俺も知らない人より友達を優先したいって気持ちには賛同するしね。そういう優先順位は大切だよ。いざって時に迷わなくなるし。」


「うん・・・。あの、もう一つ聞いてもいいですか?」


アリアがお姉さんに向き合った。


「はい。構いません。」


「その規模になるともしかしてホブゴブリンやゴブリンメイジ、ハイオークの存在も確認されていますか?」


「いえ、集落の調査ではオークとゴブリンしか確認できませんでした。ただ可能性はあると思います。」


「そうですか・・・ヨーヘー、もしヨーヘーが緊急依頼を受けるなら私も行くからね。」


「はぁ?ダメに決まってるじゃん!何言ってんの?」


別に受けるつもりではなかったのだが、アリアに危険が及ぶなら受けないつもりだ。アリアが付いてくると言うなら尚更受けないだろう。


「はい!タァマも行きます!!」


「ダメだっつーの!失敗した時どうなるかわかってる!?」


「失敗したら死んじゃうだろうね。」


「俺はな!アリアは違うだろう!?」


「違わないよ。慰み者になるのは嫌だもの。その前にちゃんと自害するわ。」


「はぁぁぁ!?自害って何言って・・!」


「これは覚悟の話よ。負けなければいいんだから大丈夫よ。」


「あのさ?なんかもう受けるって流れになってるんだけど?」


「え?受けないの?」


「「・・・・・・」」


「あ、あのぅ・・・?」


「「あ、すいません。」」


「あの・・・自分本位のお願いだとはわかっているのですが、緊急依頼受けて頂けませんか?あなた方は星3つではありますが、マーシュサーペントを討伐なさっておりますし、グリーベアーも討伐しているようですので、実力がお有りかと思いお願いさせて頂いたわけですが、実は・・その、行方不明になったギルド職員は、私の妹なんです・・・。本当はすぐにでも私が探しに行きたいのですが、戦闘力のない私では二次被害にあって更にご迷惑を掛けることになりかねません。それでも妹の事を思うと今でも心配で・・・心配で・・・。」


外堀が埋められていく。なんだこの断りづらい空気は。綺麗なお姉さんのお願いは聞いてあげたくなるのが心情だ。しかし俺が行くとアリアやタァマちゃんも付いてくるだろう。


「危険な場所に探しに行って欲しいというのは酷い話だという自覚はあります。でも、それでも妹を諦めきれないんです・・・お願い・・できませんでしょうか?」


悩んでいるとなんとか気丈に振舞っていた受付嬢が自分の感情を抑えられなくなったのか目に涙を溜めて懇願してきた。それはズルいなぁ。横にいたアリアに視線をやると頷いてくれた。


「わかった!受けます!!目の前に困ってる人がいるなら話は違うしな。綺麗なお姉さんのお願いは断りづらいから仕方ない!!」


「ヨーヘー。前半はまぁいいとして、後半の考え方は身を滅ぼすから改めてね。」


「はい!気をつけますっ!」


「受けて頂けるんですか!?ありがとうございます!ありがとうございます!もし妹が見つかりましたらお礼はさせて頂きますので!!・・・たとえどんな姿になっていても帰ってきて欲しいのです!どうか・・・どうかお願いします!!」


綺麗なお姉さんに手を握られちゃったー。役得ですなー、はっはっはー。


「痛ぇ!?」


「デレデレしないのっ!」


気持ちが表情に出てしまっていたのかアリアにつねられてしまった。


「出発は本日の夕方になります。他にも中級の冒険者の方が50名程参加して頂けるのですが、集落への道案内は元冒険者の副ギルド長にして頂きます。集落への到着時間は深夜になるのですが、ゴブリン達が寝静まっている明け方に襲撃を掛けるそうです。」


「あー、この害虫駆除の依頼はどうしよう?そういうことならこれから準備したいのだけど。」


「そちらの依頼の期限は1週間なので、お戻りになられてからでも構いませんよ。長く掛かりそうなら私の方でうまく処理しておきます。貴方様方の経歴に傷をつけるようなことにはしませんので。」


「そうですか。わかりました。」


「それでは夕方になりましたら、またこちらにお越しください。宜しくお願い致します。」


「あ、そうだ。妹さんってなんて名前なんですか?それとあったらでいいんですけど、妹さんの髪の毛とかあったら頂きたいんですが。」


「・・・髪の毛・・・ですか?それを何に・・・?」


あぁ綺麗なお姉さんに訝しげな目で見られている・・・興奮はしてないぞ?


「あれば妹さんを見つける手掛かりになるかもしれませんので。まぁ無ければいいです。特徴を教えてください。」


「・・・妹の部屋にあるかもしれないので探してみます。妹はコメルという名前です。私と同じ薄緑の髪と青い瞳でして、身長は150マールです。後は右肩に2つ並んだホクロがあります。」


「わかりました。ありがとうございます。」

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