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虹の先に繋がる世界  作者: 水無月 壱九
グロスティア
36/172

36話 ずっと一緒だよ。


次の日


「さぁ今日から森に入るから気をつけてね!」


昨日の出来事からすっかり立ち直ったアリアの号令の元、俺達はガラダに向かって進んでいる。

森に入ると空気が変わったな。奴等の気配がそこかしこからこちらを伺っているのがわかる。・・・ごめんなさい、魔物の気配とかわからないので、こういう表現をしたらかっこいいかなと思って言ってみただけなんです。本当は森に入って、ヒンヤリした空気が気分爽快で清清しいなーって感じてるだけです。

タァマちゃんの耳がピクピク動いているからなんかいるんだろうなぁ。あ、スカウト使えばいいのか。こういう時の為に使えって話ですよね。


「『スカウト』」


お?おぉー現在の最大範囲である半径500mを索敵したら結構な反応があった。大きさの違いは魔素の量だから体長とか強さとかかな?

えっと、一番近いのは・・・2時の方向40mに小さい反応が6か。

40mね。・・・近ぇよ!!すぐそこじゃねーか!!


「アリア!向こう側40ミール先に6匹の魔物の反応があるから気をつけて!」


「え?うんわかった!また便利な魔法作ったね。」


「タァマちゃん、わかる?」


「はい!にゃんかいます。たぶんお猿さんです!ちょっと行ってくるです!」


フッっと肩から重量が無くなった事に気付いた頃にはタァマちゃんはうまく隠れながら魔物に向かっていた。

タァマちゃんが魔物に向かって行って1分程経った頃、タァマちゃんが戻ってきた。


「やっぱりお猿さんでした!2匹やっつけましたけど、気付かれちゃったから逃げてきました!!」


確かに反応は4つになっている。お猿さんはこちらに向かっているようだ。

戻ってきたタァマちゃんをよく見たら腕に怪我をしているのに気付いた。


「タァマちゃん?怪我してるよ!?」


「2匹目やっつける時に反撃されちゃったです。」


「アリア!魔物は俺がやるからタァマちゃんを治してあげて!」


「わかったよ!」


攻撃準備をしていたアリアにタァマちゃんの治療をお願いし、今度は俺が向かってくる魔物に迎撃準備をする。

スカウトで位置がわかっているハイドモンキーなど脅威でもなんでもない。

探知された場所に向かってファイアーボールを4発撃ち出した。

全弾命中!スカウトの反応も消えたから倒せたのだろう。


「アリア、終わったよ。そっちはどう?」


「こっちも終わったよ。タァマちゃん。危ない事しちゃダメだよ。」


「うにゃ・・・ごめんにゃさい・・・タァマ、お兄ちゃんやお姉ちゃんの役に立ちたかったです。」


タァマちゃんは耳をシュンとヘナらせて俯いてしまった。


「その気持ちは嬉しいけど、タァマちゃんが怪我をしたらとても悲しいからさ。無理はしないでね。」


「でもタァマはお兄ちゃん達の邪魔ににゃらないようににゃりたいのです。」


「ん?タァマちゃんの事邪魔だなんて思った事ないよ?」


「うにゃぁ・・・」


どうしたんだ?タァマちゃん。タァマちゃんは目に涙を溜めてプルプルしている。

泣かせちゃった!?そんなに強く怒ったか?


「ごめんね?タァマちゃんが心配だったから注意しただけなんだ。だから泣かないで?ね?」


「違うのです・・・タァマ達はガラダに着いたら教会に行くんですよね?」


「うん、タァマちゃんの新しいお家を探さないといけないからね。」


「・・・・・です。」


「え?」


「それは嫌にゃのです!タァマはお兄ちゃんやお姉ちゃんとずっと一緒にいたいです!お別れしたくにゃいのです!お兄ちゃん達といると凄く楽しくて、凄く安心出来て、お兄ちゃん達の役に立てればずっと一緒にいられるんじゃにゃいかって・・・お願いしますお兄ちゃん!荷物運びでもにゃんでもやるから捨てにゃいでください!」


大粒の涙を流しながら必死に俺に訴えている。

おぅふ・・これは・・・

タァマちゃんの為を思うなら・・・どっちがいいんだ?あぁもうよくわからん!俺はどうしたいんだ?

ブランダからここまでの短い間だったけど、お兄ちゃんと慕ってくれてとても楽しかった。出来る事なら一緒にいたい!でも・・・

タァマちゃんを見ると助けてほしいといった顔をしている。例えるなら雨の日にダンボールの中にいる濡れた子猫のような・・・。

俺の中で何かがハジけた。


「ママー、この子飼ってもいいでしょ?ねぇ、飼ってもいいでしょ??」


「誰がママよ!でも・・・ねぇタァマちゃん。私達こういう旅を続けるの。それこそブランダの湿地帯にいた蛇みたいな怖い魔物とも戦ったりするし、もしかしたらタァマちゃんの前の主人みたいに死んじゃうかもしれねいの。とても危ないのよ。孤児院ならば少なくとも成人するまでは安全に暮らせるわ。それでも私達に付いてきたいの?」


「それでもタァマはお姉ちゃん達と一緒がいいです!2人とも優しくしてくれるし、ずーーーっと一緒にいたいのです!にゃんでもやります!お皿も洗います!掃除もちゃんとします!言う事もちゃんと聞きます!だから!だから!・・・」


「タァマちゃん、もういいよ。ヨーヘー、この子は2人でちゃんと守ってあげようね。」


女神!!アリアさんマジ女神!!


「やったな!タァマちゃん!ママが飼ってもいいってさ!!」


「ママじゃないわよ!!それに飼うって表現やめなさい!ペットじゃないのよ!仲間として迎え入れるの!!」


「はい!ごめんなさい!!」


「にゃぁ・・いいの?ホントに一緒にいてもいいの?」


「もちろんさ!タァマちゃんは今から俺達「フリーター」のパーティメンバーだよ!」


「ふ、ふぇぇぇ・・・ふわぁぁぁあああ!!」


タァマちゃんは心底安心したように俺に抱きついて泣き続けた。




「ヒック、ヒック」


あれから30分くらい経ったがタァマちゃんはまだ泣いていたので、俺が抱っこして進んでいる。

ハイドモンキー以降は魔物とは出会っていない。スカウトの有効範囲には反応があるが、こちらに向かってくる様子はないみたいだ。


「アリア、この街道ってさあんまり人とすれ違わないんだけど、あんまり使われないものなの?」


今まで他の人とすれ違ったのは俺が魔法開発をしていた時とこの森に入る前の2回だ。

スーラ━ブランダ間の方がまだ人の往来があったと思う。


「たぶんこの森が原因なんじゃないかな?魔物がいる領域を通ってまで行こうと思わないんじゃないかしら。ブランダもガラダも同じくらい大きな街だけど、これといって目立った特産品があるわけじゃないからあんまり交易もしてないみたい。」


そういうもんなのか。まぁ運搬依頼もなかったしな。


「あ、でも護衛依頼はあったよね?」


「どうしても運ばないといけない物もあるでしょうから、護衛を依頼してこの森を抜けるんじゃない?」


「なるほどねー」


その後、タァマちゃんは泣き止んだが俺に抱かれたままである。安心するのか俺の服をギュッと掴んで嬉しそうにしていた。まったくタァマちゃんは甘えん坊さんだな。


「そろそろご飯にする?」


「そうね。森の中だし、手軽に食べちゃいましょう。」


お昼ご飯を食べる為に少し開けた場所にレジャーシートを敷いた。


「なんで敷物を敷いたの?」


「え?森の中だし、ピクニック的な?」


「歩きながらで良かったのに・・・呑気に食事してたら魔物に襲われちゃうよ。」


「でもほら折角森の中にいるんだし、自然に囲まれながら食べるのもいいと思うんだけどなぁ」


「うーん・・・それもそうね。ヨーヘー、バリアは張っておいてね。」


「あいあい」


今日のお昼ご飯はサンドイッチとおにぎりだ。やっぱり自然の中で食べるご飯は美味しいな。小鳥のさえずりが心地いい。気分がいいからさっきからバリアにバンバン跳ね返されているハイドモンキーも気にならないくらいだ。

食休みも済ませて、邪魔だったハイドモンキーも駆逐し終わったので、ガラダに向けて再出発した。


森の日没は早いのか?まだ15時くらいなのに辺りは薄暗くなってきた。


「ちょっと薄暗くなってきたけど、どうする?今日はここまでにする?」


「うーん、ガラダまであと1メールくらいだと思うんだけど、どうしようか?」


1メール・・・10㎞か。微妙な距離だな。歩いてる速度が時速2~3kmくらいだから4~5時間ってところか?


「微妙な距離だね。森から抜けるまではどれくらい?」


「それは60ムールくらいだと思うよ。」


森から抜けるまでは2~3時間ってところか。普通は野営するのにテントを張ったりを明るいうちに始めるものだが、俺達の場合は魔法の袋に入るだけだからな。もうちょい進んでも問題ないだろう。


「森を抜けるまで行っちゃおうか、もし暗くなって危ないって感じたら無理せずに野営しよう。」


「うん、それでいいよー」



そうは言ったものの、時間が経つにつれて辺りはどんどん暗くなっていく。正直森の夜をナメていたかもしれない。


「なんか不気味だね。」


スカウトで魔物の位置はわかっているのだが不気味なもんは不気味だ。

そんな雰囲気にビビったのかアリアの距離が肩が当たるくらい近い。もうさ、しがみついちゃいなよ!俺の腕空いてますよ!

タァマちゃんは肩車しているので様子はわからないが、頭に置かれている手にあまり力が入っていないようだから大丈夫そうだ。

尻尾が俺の背中をゆらゆらと撫でているのがわかる。むしろご機嫌?

1時間程歩き、16時頃になると、すっかり暗くなってしまった。まぁ木で空見えないしな。


「よ、ヨーヘー、なんとなくだけどね、木の陰からア、アレが私達を見ている気がする・・・の。」


アレ?アレってなんだ?アリアは何かに怯えるように周囲を気にしているようだ。


「なんか不安なの?よし、だったら歌を唄って気分でも紛らわせよう。」


「そ、そうね!それがいいと思う!」


「タァマお歌知ってます!タァマ唄います!!」


「お?それじゃあよろしくー。」


「はいっ!ゴホン・・・わーるい子♪わーるい子♪わーるい子ーはー食べちゃうぞー♪木ー陰かーらー見ているぞー♪うーしろかーらちょっきんぱー♪泣いても絶対逃ーがさにゃいー♪いつでもお前を見ているぞー♪お前が隙を見せたにゃらー「やめてーーーー!!」」


「うにゃ?」


何そのスプラッタな歌・・・アリアが頭を抱えて蹲ってしまった。小さな物音にも敏感になっちゃってるよ。


「タ、タァマちゃん、その歌は?」


「はい!昔お母さんがよく唄ってくれました!」


あれか、悪い子に育たないように悪い子になるとこんな怖いことが待っているぞー的な教育か。日本にもあったよな。地獄の話とか。


「その歌は今のアリアお姉ちゃんには刺激が強いから、俺が別の歌を唄ってあげるね。んんっ、ゴホン。おばけなーんてなーい「嫌っ!!」ぐふぉっ!?」


アリアのリバーブローが俺に綺麗に決まった。くの字に折れ曲がったがタァマちゃんはバランスがいいらしく、落ちることなく俺に肩車されたままだ。


「くっ・・・良い右を持ってるじゃねぇか・・・俺と一緒に世界を取らないか?」


「もうっ!もうっ!!アレの話はしないでよ!!なるべく意識しないようにしてるんだから!!」


おばけさんですか。薄々そうじゃないかなとは気付いていたが怖がりすぎじゃないか?そういえば俺と会う前にこの森をアリアは1人で通ったんだよな?その時はどうしたんだ?


「あ、アリア・・・一人旅してた時はどうしてたの・・・?」


「夜になる前に走って森を抜けたの。」


結構強引な突破をしたらしい。まぁ夜の森はおばけ抜きにしても色々と危ないからな。


「ヨーヘーはこの森に1人で入ったことないからわからないんだよ。頼れる人は誰もいないし、色々な影から見られている感覚がするんだよ・・・。」


「・・・どうして一人で入ったのよ?」


「文献で見つけたセリアル様のお墓に行くにはこの森を越えないといけなかったから・・・、でも一緒に行ってくれる人いなかったし、行商隊もなかったし・・・一人で入るしかなかったんだもん。」


「そうでしたね・・・」


地雷踏んでしまった。そういえばこの子はぼっちでした。

なんかもうアリアがダメそうだったので、ここで野営することにした。


魔法の袋(家)に入るとさっきまで怯えていたのはなんだったのかというくらいアリアが元気になった。現金な娘さんだ。


「さぁヨーヘー!今日の夕飯は何にする??」


「タァマはカレーがいいのです!」


「カレーはまた今度ね。」


「にゃぁ・・・」


俺も食いたいがこの短いスパンでカレーにしてしまうとその内毎日カレーになってしまいかねないからな。ガラダでタァマちゃんとお別れになるならタァマちゃんの希望も聞いただろうが、これからはずっと一緒なのだ。


「よし、今日はとんかつにしようか!とんかつは美味しいぞぉー。サクッとしていてうまうまだぞぉ~。」


というわけで、とんかつを作りました。


「これがとんかつですか?」


「そうだよ、このソースをつけて食べるんだよ。」


「じゃあいただきます。」


「「いただきます!!」」


「にゃぁ!とんかつ美味しいです!サクサクです!」


「これも美味しいね。お米が欲しくなっちゃうね。」


「さぁ米だ!食べるがいい!!」


「さっすがー♪わかってるぅー。」


「タァマちゃん、想像してごらん。お米の上にこのとんかつを乗せる。そこにカレーをかけるんだ。それがカツカレーという料理だよ。」


とんかつを食べていたタァマちゃんがピタリと止まる。きっと想像しているんだろう。


「にゃぁぁぁぁああ!!にゃぁぁぁぁああ!!」


「うぉわ!?タ、タァマちゃんヨダレ!ヨダレ!!」


ビビった。いきなり大興奮してしまったぞ。


「お兄ちゃん!カレー!カレーが欲しいのです!」


「今日は無いよー」


「ふみぃ・・・お兄ちゃんは意地悪です・・・」


「また近いうちに作ってあげるから、ね?」


「明日ですか?明日作ってくれますか?」


「あー、明日はガラダの街に入っちゃうからなー。「フリーター」のルールで街の宿とかに泊まる時は食事もその街の物を食べようねってことになってるんだよ。折角訪れているんだから堪能しないとねってことで。あまりにも不味かったら考えるけど・・・。だから次にカレーを作るとしたら最速でガラダを出てからになるねー。」


その事を話すとタァマちゃんはお箸にとんかつを刺したまま固まってしまった。


「・・・・そ、そんにゃ・・・あんまりです。それはあまりにもあんまりです。」


「ほ、ほら、我慢した長ければより一層美味しく感じると思うんだ!俺もカレーは1月に1回くらいだったし。1月ぶりに食べるカレーは美味しかったなぁ。」


「ひ、ひとつ・・・き・・・?」


なぜこの世の終わりのような絶望を顔に浮かべるのだろう。悲壮感が半端じゃないな。


「ほら、タァマちゃん。ヨーヘーと会ってなかったらカレーにも会えなかったんだから出会えたことを喜びましょう?タァマちゃんはこれからもずっと一緒にいるんだからもうカレーが食べられないってことはないんだから。ね?」


「にゃあ、はい!タァマはお兄ちゃん達とずっと一緒にいます!カレーとも一緒です!!」


アリアの言葉で元気を取り戻したタァマちゃんだが、どうしてここまでのカレー信者になってしまったのだろうか?スパイスの中にマタタビとか入ってないよな?


「ヨーヘー。そういう事だからガラダを出たらカレーよろしくね♪」


ここにもカレー信者がいらっしゃった。カレー恐るべし。


食後はまた皆でお風呂に入ってわいわい騒いだ。今日の露天風呂で壁に映し出されたお客さんは猪みたいな獣だった。猪か・・・イノッチ元気かなぁ?


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