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虹の先に繋がる世界  作者: 水無月 壱九
グロスティア
35/172

35話 アリアとお風呂

さて、夜を越す為に魔法の袋(家)に入ったわけだけど、実は待ちわびていた念願の夜であったりする。バスタオル型ワンピースを作ったので今日はアリアも一緒に入れるんじゃないかと内心ワクワクしてるのだ。

いやー、さっきのゴブリンとの戦闘でなんとなく汚れちゃったような気がしないでもないし、お風呂に入ってサッパリしたいなー。


「アリア、どうする?お風呂にする?お風呂にする?それともお・ふ・ろ?」


「どれだけお風呂に入りたいの?それじゃあ私が夕飯の用意しておくから先に入ってきていいよ?」


「いや、やっぱり夕飯を先にしよう。うんそれがいい。」


危ない危ない、急いては事を仕損じるところだった。タァマちゃんも今は空腹の方が強いらしく援護は見込め無そうだしな。


「お風呂はいいの?変なの。それで今日はから揚げって言ってたよね?」


「うん、肉に味をつけて衣を付けた物を油で揚げる料理だよ。」


「ふーん、楽しみ♪」


鶏肉を醤油ベースのタレに漬けこんで片栗粉で衣をつけて油の中に投入。うちのから揚げは2度揚げだ。

そんな風に肉の山を量産していく。ヨダレを垂らして肉の山を見つめているタァマちゃんにいっぱい食べてもらわないとな!

このままでもいけるが、好みがあるだろうからケチャップとタルタルソースを用意した。というよりそれらが無いと食卓が見事に茶色なのだ。彩があった方がいいよね。


「それじゃあ食べようか。いただきます。」


「「いただきます」」


全員が席に着いたのを確認していただきますの合図をする。

今日はタァマちゃんも俺達の真似をしてお箸に挑戦している。

初めてのお箸ということで、俺のズボンが未だかつて無い程汚れることが予想できたので、今回はエプロンを忘れない。これなら汚れるのはエプロンとテーブルだけだ。


「にゃあ!美味しいです!カリっとしてジュワーってしててウニャーって感じです!」


ウニャーって感じって何だ?独特の食レポをしてくれるな。ウニャーだと味があまり伝わってこない感想だがまぁウニャーって感じなんだろう。猫人ならわかるんだろうか?


「本当ね。ヨーヘーよくこんな色々な料理知ってるよね。」


「昔料理屋で仕事してたことがあったからね。その時に料理の楽しさを学んで、色々挑戦してみたんだよ。」


「そうなんだー、ねぇ今度ヨーヘーが知ってる料理のレシピノート作ってよ。食材の名前とか調味料の名前も色々詳しく知りたいなー。」


「じゃあ、ガラダに着いたら料理教室開こうか。俺もグロスティア料理覚えたいからアリアも教えてね。」


「ホント!?わぁ♪うれしい!・・・でもごめんね。ヨーヘーは知ってると思うけど、私ミイ師匠のとこで暮らすまで料理ってしたことなかったの。だから詳しくはないんだぁ。」


「いや、それでもさ、この世界の調味料とかは知ってるでしょ?俺はその知識もないからさ。」


「えっと、ほとんど塩だよ?果物からソース作ることもあるけど。基本的には塩なの。だからヨーヘーの持ってる調味料の味の幅には驚いてるの。色んな可能性が膨らむなぁって」


「マジでか。そういえば塩味が多かった気がするな。じゃあアリアも一緒にグロスティアの料理も勉強しようよ。」


「うん♪賛成ーーー!目標はグロスティアと地球を合わせた料理を作ること!だね。」


と、そんな会話をしていたら顔にペチっと何かがぶつかった。

そこを触ってみると


「血!?・・・いや、ケチャップ?」


視線を食卓に戻すとタァマちゃんがから揚げと格闘していた。箸を握ったタァマちゃんがから揚げを突き差し、ケチャップをたっぷりつけて勢いよく食べていた。から揚げの奴は死しても空を飛びたいのかタァマちゃんの箸から逃れようとフライングしている奴もいる。

エプロン意味NEEEEEEE!!


「タァマちゃん!もうちょっと落ち着いて食べよう!あぁ髪の毛にまでケチャップが!」


「にゃあ・・とても美味しかったので・・・ごめんにゃさい。」


「大丈夫、大丈夫だよ。怒ってるわけじゃないから。から揚げは逃げないからゆっくり食べよう?足りなかったら追加で作ってあげるから。」


「はい!ゆっくり食べるます!」


「いい子いい子」


頭を撫でるとにゃぁっと嬉しそうにしながらも、から揚げを頬張ることはやめないタァマちゃんだった。


「くすっ、随分汚れちゃったね。」


エプロンのおかげでズボンは無事だが、上着は凄い事になってしまった。タァマちゃんが喜んでくれるなら汚れるくらいなんてことないが、汚れないに越した事は無い。あ、また俺の顔面にから揚げが・・・。




食事が終わり、後片付けも終わったので、楽しみにしていたイベントの時間だ!!


「さぁタァマちゃん。お風呂に行こうか!今日はアリアお姉ちゃんも一緒だぞぉーーー!」


「はい!お風呂行きます!お姉ちゃんも一緒です!!」


「え!?ちょっ!き、今日なの!?今日はまだ心の準備が・・・!」


「さぁ行こう!すぐに行こう!」


「お姉ちゃんお風呂行きましょう!」


「ま、待って!ねぇ待ってーー!うぅ・・・わかった!わかったからタァマちゃん手を引っ張らないでー・・・ヨーヘー、後から行くから先に行ってて」


オーケーアリア、先に行って待ってるぜ!さすがに一緒に脱衣所に入るわけにはいかないからな。俺は冷蔵庫から作っておいた桃のジュースを取り出してタァマちゃんを連れて脱衣所に向かう。


脱衣所でタァマちゃんの服を脱がせて一緒に風呂場に入った。

体を洗いながらこれからアリアが来るんだなーと考えていたが、ふと冷静になった。

俺アリアにかなり無理な事お願いしたんじゃないだろうか。よく考えてみよう。年頃の女の子が家族でも恋人でもない男と一緒に風呂に入る。めちゃくちゃ抵抗があるだろう。

アリアの優しさに付け込んで無理な事をお願いしてしまっていたんじゃないか?

心の中で泣いてないだろうか?そんな事を考えるとアリアを傷つけているのではないかと不安になってくる。


「ア、アリア!!嫌なら無理に一緒に入らなくてもいいんだぞ!!」


「え?何?」


振り向いて脱衣所に向かって声を掛けたら、バスタオルワンピースを着たアリアが風呂場の入り口に立っていた。


「ごめん!アリア!!アリアの気持ちも考えずに強引に一緒にお風呂に入ろうとか言っちゃって!!アリアに甘えて無理なお願いしてしまったと思ってる!!友達でも嫌な事は嫌って断っていいと思う!!なのでアリアも無理しないでいいです!!」


「むぅー・・・本当だよ。すっごく恥ずかしいんだからね。」


あぁ・・・やっぱり無理させてた・・・。ギリギリで気付けて良かった。


「でもね。皆と一緒にお風呂に入りたかったのは本当だよ。あと、ヨーヘーはエッチなとこだけじゃなくて優しいところも見せてくれたじゃない。このワンピースとか水の重みで落ちないように工夫してくれているし、あの壁に囲まれた洗い場だって私の為に作ってくれたんでしょう?」


「うん・・・。」


「このワンピースが無ければさすがに一緒に入ろうとは思わないし、これのおかげで皆で一緒に入れるんだから感謝もしてるんだよ?ちょっと丈が短いのが気になっちゃうけどね。・・・だからヨーヘー、頭を上げて?」


アリアの優しさに少し泣きそうになった。


「アリア・・・ごめん。俺アリアに嫌われたかもしれないって思った。」


「ふふっ、こんなことじゃ嫌いになんてならないよー。それにヨーヘーはちょっとエッチなくらいじゃないとヨーヘーらしくないよ。ちょっとは自重してほしいけど。」


「はは・・・じゃあちょっとエッチなままで行かせて頂きます。」


そう言いながら頭を上げる。

アリアの顔を伺うと顔を真っ赤にして横を向いている。


「どうしたの?」


「・・・ヨーヘー、前隠して・・・」


はっ!!体を洗っていた為にトランクス型タオルは脱いでいて俺は現在全裸だった。頭を上げたら見えてしまったのだろうか・・・!?


「・・・き、きゃー、え、エッチ」


「っ!?言う!?それをヨーヘーが言う!?って、早く隠してよぉ!」


まだオープンだった事に気付いて慌ててタオルで前を隠した。いやん、もうお嫁にいけない。


「さ、先に岩風呂の方に行ってるからね。アリアは体洗ってきなよ。さ、タァマちゃん行こう?」


俺は「喧嘩はダメにゃのですよー」と言っているタァマちゃんを連れて岩風呂に向かった。もちろんトランクス型タオルは着用済みだ。岩風呂は露店気分を出す為に部屋を分けておいた。ひのき風呂が室内風呂で、岩風呂が露天風呂といった具合だ。風を吹かせて外が見えるようにしたのもこっちの岩風呂の部屋だけにしておいた。その方が雰囲気出るしね。

アリアが来るまでタァマちゃんと岩風呂で露天風呂気分を楽しむことにする。今日の風呂はアルカリ性だ。お肌がスベスベになるぞぅ。


「お兄ちゃん!タァマの泳ぎを見てください!」


「おータァマちゃん凄いなー。」


タァマちゃんはスイーっと猫掻きで泳いでいる。随分と滑らかに進むなぁ。


「これでお魚も捕まえるです!」


タァマちゃんとじゃれていると岩風呂の入り口が開いた。


「あ、お姉ちゃんです!」


「おまたせー」


なんだろう、濡れた体にバスタオルワンピースが張り付いて体の線がわかってしまう。何が言いたいかというと物凄く色っぽい。


「ヨーヘー、あんまり見ないで・・・恥ずかしいから。」


アリアは俺の視線から体を隠すように胸元と足の間を手で隠そうとする。その仕草もとても色っぽかった。


「いや、綺麗だなぁって思って。」


「もうっ!」


「お姉ちゃん早く入るですー!」


タァマちゃんに声を掛けられてアリアが湯船に入ってくる。やべぇ、すげぇドキドキする。

アリアは俺から1mくらい離れたところに座り湯船に浸かった。


「はぁー、あったかーーい。あれ?なんか昨日とはお湯が違うんだね?」


「うん、今日のお湯は肌がスベスベになるんだよ。」


「そうなんだぁ。それはいっぱい入っていないとね。」


「そうだ、ジュース持ってきてるから湯船に浸かりながら飲もうよ。」


そう言って持ち込んだ桃のジュースをコップに注ぎお盆に浮かせてアリアの方に流してあげる。


「タァマも飲みたいです!」


「はいはい、タァマちゃんの分もあるからね。」


タァマちゃんと俺の分をコップに注いで1つをタァマちゃんに渡すとタァマちゃんはすぐに飲み干してしまった。


「美味しいですーーー♪」


アリアはまだジュースを口につけずにタァマちゃんを見てクスクス笑っていたので、アリアに俺の持ってるコップを近づけた。


「じゃあ、1日遅れたけど露天風呂の完成を祝って。乾杯。」


アリアとコップをチンと合わせて桃ジュースを口に運んだ。


「ん~、美味しい♪なんかこういうのっていいね。」


「ホント、お風呂で飲む飲み物って美味しいんだよなぁ。」


「この景色も魔法だけど凄いリアリティがあって、ホントに外にいるみたいな気持ちになるね。誰か来ちゃうんじゃないかってドキドキしちゃうね。あ、ほら!お月様も綺麗だよー。」


あ~、なんか落ち着くなぁ。

俺達は月光を楽しみながらお風呂を楽しんだ。


「さて、そろそろあがろうか?」


「にゃにゃ?お兄ちゃん、あっちでにゃんか動いたです!」


そろそろのぼせちゃうかなーと思い、お風呂からあがろうとすると、タァマちゃんが何かを見つけたらしく、その指差した方をアリアと共に追ってみる。

見えている景色は薄暗いが、月光に照らされている為、確かに何がが動いているのがわかった。・・・アナウサギにしては大きいし、ハイドモンキーか?

影が近づいてきて正体がわかった。ゴブリンだ。


「きゃぁっゴ、ゴブリン!?いやーっ!!」


ゴブリンだと気付いたアリアが俺に抱きついてきた。

俺の鼻血が止まらない。


「ぶふぉっ!アリア!落ち着くんだ!落ち着いてそのまま抱きついたまま聞いて欲しい!これは映像だから!外の景色だから!そこにいるわけじゃないよ!でも怖いよね!?そう!もうちょっと強く抱きついてくれていいよ!!」


取り乱したアリアだったが、たぶん俺の方が取り乱していると思う。出来る事ならば時間よ止まれ。


ゴブリンは徘徊しているだけらしい。すぐに通り過ぎて行ってしまった。


「アリア?もういなくなったよ?」


身を守る物がバスタオルワンピースだけという状態でゴブリンは女性として恐怖だったのだろう。目を瞑ってギューっと俺に抱きついていたアリアがソーッと目を開けて辺りを見回してから俺の顔を見た。

そしてどんどん赤くなっていく顔。まぁ俺の方が赤いがな。主に鼻血で。


「ああああ、あのそここれあの!!」


自分の状況を認識し、軽くパニックになったアリアがワタワタしながら俺から離れる。

残念だがよかった。あのままだと失血死するところだった。


「ご、ごめん!先に上がるね!!」


耳まで真っ赤になったアリアがそう言い残してピューっとお風呂から出て行ってしまう。


「にゃー!お風呂が真っ赤ですー!」


タァマちゃん。そんなブラッディなお湯でハシャぐんじゃありません。

血まみれになった俺と血の池で泳いだタァマちゃんはもう一度体を洗ってから風呂から上がるのだった。


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