34話 アサシン?
「・・・朝か・・・」
「スゥスゥ」
「・・・・・・」
はて?この愛らしい猫幼女はなぜ俺のベッドで一緒に寝ているんだろう?しっかりと俺の寝巻きをにぎって寝ている為に起きていいものか迷ってしまう。
「タァマちゃん?」
「ん・・・にぃ・・・にゃ、おはよごじゃましゅ。お兄ちゃん。」
「はい、おはようございます。なんで俺のベッドにいるの?」
「えと、夜起きちゃってお兄ちゃんを見てたらにゃんだか一緒に寝たいにゃーって思っちゃって。甘えてもいいって言われたの思い出して・・・ごめんにゃさい」
あぁ、奴隷紋を消してやった時にそんなこと言ったな。凄く懐いてくれていると思ってたけどあの甘えていいからねって台詞がそんなに影響あるものだとは思わなかった。今までどんな生活だったのかと思うとフーダー達に対する怒りがフツフツと湧き上がってくる。
「ううん、別にいいよ。お兄ちゃんタァマちゃんに甘えて貰えて嬉しいなぁ。」
「にゃあ♪お兄ちゃん大好きです!」
タァマちゃんは嬉しそうに抱きついてきた。ムニムニと俺の胸に顔を擦り付けてくる。ヤバイ、超可愛い。
「よしよし、タァマちゃんは可愛いなぁ。」
頭を優しく撫でると目を細めて気持ち良さそうにしているタァマちゃん。猫の獣人だからだろうか?随所に猫っぽい表現をしてくる時があるな。
「タァマ、お兄ちゃんに撫でられるの気持ち良くて凄く好きですー」
はい、お兄ちゃんもタァマちゃんに甘えられるのが大好きですー。
・・・次の街に行ったらこの子とお別れになるかもしれないのか。果たして俺は耐えられるのだろうか?かといって、俺達の旅は魔物と戦ったりするから危険であるし、こんな小さな子をそんな危ない目に遭わせる訳にも行かないしな・・・。タァマちゃんはどう思ってるんだろうな。出会ってから短い時間だけど、こんなに離れがたくなるとはね。次の町に行ったらお別れになるのだろう。それまでは今まで不幸だった分の幸せを取り戻すくらいの勢いで幸せを感じてほしい。
「よし!アリアお姉ちゃんを起こして朝ご飯にしようか!」
「はい!ご飯です!」
「アリアー朝だよー。」
ゆっさゆっさ。
「うにゅぅ・・・ぅん、おはよぅヨーヘー、タァマちゃん」
「お姉ちゃんおはようございます!」
「おはようアリア、朝ご飯にしよう。」
キッチンまでアリアを伴ってやってきて朝ご飯の準備を始めた。
「朝ご飯は何作るの?」
「昨日のカレーがまだ余ってるから、朝からちょっと重いかもしれないけど、これでカレーチャーハンにでもしようかなと思ってる。あとはお昼ご飯用にカレーパンでも作ろうかな。」
「カレーって色々レパートリーがあるのね!面白いなぁ。」
「タァマ、カレー大好きです!今日も明日も明後日も、これからずーーーっとカレーでもいいです!」
タァマちゃんは相当カレーが気に入ったみたいだな。子供の大好物は異世界でも通用するみたいだ。
「でもタァマちゃん。もっと色々な料理があるからそっちの味も知らないと勿体無いよ?」
「カレーよりも美味しいものあるですか!?」
「どうだろうねー。一杯あるかもしれないし、無くてもカレーの素晴らしさを再認識できるよ。」
「にゃー、タァマ色々なものを食べてみます!」
よしよしとタァマちゃんの頭を撫でてから朝食の準備を進めた。
「カレーチャーハン?これも美味しいね♪」
予定通りカレーチャーハンを作ってそれを食べている。カレーパンは現在進行形で作成中だ。
「他にもカレーうどんとかカレーを使った派生料理は数多いから、グロスティアの料理と組み合わせて新しい料理を開発するのも面白いかもね。」
「あー!それ楽しそう!やってみたいね!!」
「カレーですか!?カレーが食べられるのですか!?」
「そうだね。色々なカレーが食べられるかもねー。」
タァマちゃんは目をキラキラさせて興奮しているようだ。アリアもあれをカレーにしたらとか言ってすでに新しい料理の開発に着手しているみたいだ。
後片付けを終えて、魔法の袋(家)から出てガラダ目指して歩き始める。
「平和だねぇ・・・」
「ヨーヘー、そういう事言うと魔物が出るよ。」
しまった。フラグだったか?
慌てて辺りを見渡す。しかし周辺に魔物の姿は見えなかった。危ない危ない。
「くすくす、冗談、冗談だよ。この辺はあまり魔物は出ないと思うよ。出るとしたら明日かな?」
「明日って何かあるの?」
「このペースで行けば明日には森に入るんだよ。」
「ん?街道から外れるの?」
「ううん、街道が森を突っ切るの。リンゼル樹海って北の海から南の海まで続いているから森の向こう側にあるガラダに行くにはどうしても森を突っ切らないといけないの。それで森が一番細くなってる部分にガラダに向かう街道があるんだよ。まぁ細いって言っても2メールはあるよ?つまり魔物の住処になりやすい森を突っ切るわけだから魔物に襲われる可能性が上がるってことなんだよ。それでその森を抜けるとすぐにガラダに着くのー。といっても、冒険者ギルドや、戦士団の人達が定期的に街道付近の魔物を間引きしてくれてるから街道付近は比較的安全だと思うけど、油断はしないで用心しておいたほうがいいかなー。」
「わかった。気をつけながら進むよ。」
その後は特に魔物に襲われる事も無く街道を進み、夕方になると街道が森に入っていっている地点が見えてきた。森に入る手前に小屋が建っているのが見える。アリアに聞くと森に入る前に休憩したり夜を明かすのに使われるらしい。基本的に管理者はいないので、使った人が責任を持って整備や掃除することになっているんだとか。それにしてもこの街道は人通りが少ない。お昼にカレーパンを食べている時にブランダに向かうであろう商隊とすれ違ったくらいしか人と会わなかったな。人はおろか魔物にも遭遇しなかった。
「たまには何も無い1日というのもいいな。」
「またヨーヘーはそういう事言う・・・」
「まぁいいじゃない。それでどうする?あの小屋を使って夜を明かす?それとも適当な場所に魔法の袋(家)を設置して休む?」
「うーん、あの小屋だと見張りはしないといけないだろうから魔法の袋(家)で休みましょ。他の利用者がいたらお風呂とか入りづらいし。」
「んじゃこの辺で野営しよっか。あんまり森に近づいても危ないだろうしね。今日の夕飯は何がいいかな?」
「うん今日はこの辺で野営しましょ。夕飯はお任せするよー。」
「うーん、それじゃあ鳥のから揚げにしようか?鶏肉を油で揚げた料理なんだけど凄く美味しいよ。」
「うん♪じゃあそれでお願いしまーす!」
「じゃあ、魔法の袋(家)出すね。・・・ん?あれは・・・人・・・いや魔物か?」
魔法の袋(家)を用意しようとすると森の方から人影のようなものが見えた。人間にしては身長が小さいがこんなところに子供がいるはずもないしな。ホークアイで確認すると、体長70cmくらいの茶色い肌をした奴が6匹こちらに向かってきている。大きな耳にワシ鼻で鋭い黄色い瞳が不気味だな。手に剣等の武器を持っている。
アリアにも視認できる距離までそいつらはやってきた。
「あれは・・・ゴブリンかしら?」
ゴブリン達との距離は100m程だ。
「やっぱあれ俺達狙ってるよね?」
「確実に狙ってると思うよ。戦闘態勢入ってるね。ヨーヘー戦闘準備して。ゴブリンやオーク、オーガには間違ってもやられちゃダメなんだからね。あいつらに捕まると女である私とタァマちゃんは酷い目に遭わされちゃうんだから。」
「それはいかんなっ!ちょっと待ってて、瞬殺するから!」
やっぱりゴブリンなんかの魔物はよくファンタジーにある設定を同じなんだな。魔物図鑑にもそんなような事が書いてあった気がする。こちらに女がいることに気付いているのか下卑た笑みを表情に浮かべている気がする。
俺はアリアを隠すようにゴブリン達とアリアの間に体を入れた。
「・・・ってあれ?タァマちゃんは?」
キョロキョロ辺りを見渡すと俺達の後方50m位の所で「お兄ちゃーん」と手を振っていた。いつの間に・・・
タァマちゃんに手を振り替えして返事をしてあげると嬉しそうにピョンピョン飛び跳ねている。微笑ましい光景だがとりあえず、目の前のゴブリンを始末するか。
「『トルネード』」
魔力を練りこみゴブリン達にのいる場所に直径10mの竜巻を発生させたった。
「ギャワワワ!」「ギャッグエッ!」「ギャッギャッ」
不幸な事に固まってこちらに向かっていた為に全てのゴブリンが悲鳴を上げで竜巻に巻き込まれてしまった。一緒に巻き上げられた石や木片等がゴブリン達に当たりダメージを与えるている。30秒程で奴等の声が聞こえなくなったので竜巻を霧散させる。
ボトボトボトと巻き上げられた物が無造作に地面に叩きつけられる。
ゴブリンは絶命しているようだ。
「お疲れ様。私の出番無かったね。」
「まぁ下級って聞いてたし、あれくらいならね。タァマちゃーん。もう大丈夫だよー!」
後方に退避していたタァマちゃんに声を掛けると
「ふみぃ、お兄ちゃんこれどうするですー?」
という返答が返ってきた。
ん?
俺とアリアは顔を見合わせてタァマちゃんのところに行く。
すると4匹のゴブリンが首をかっ裂かれて息絶えていた。
「え!?これは??」
「後ろから狙ってたから回り込んでやっつけたです!」
マジでか・・・気付かなかった・・・挟撃狙ってやがったのか。意外と知恵が回るんだな。
俺はアホか。なんの為にスカウトを昨日開発したんだ。折角の魔法も使わなければ意味が無い。これは反省しないといけないな。もうちょっと危機感を持たないとダメだ。
「これタァマちゃんがやったの?」
「はいっ!そーっと近付いてやっつけました!!」
アサシンですか!?返り血も浴びてないし、後ろから首を短剣で裂いたのか?
「タァマちゃん凄いな!助かったよ!」
褒められたタァマちゃんはにゃあにゃあ言って喜んでいる。
「タァマちゃん戦えたんだね。」
「はい!前のご主人様に弱い魔物を見つけたらご主人様達の手を煩わせずに事前に倒しておけって言われてましたから!」
話によるとフーダーによく命令されて戦わされていたらしい。まだ小さいタァマちゃんは体格で劣る敵に対して正面から戦っていたら殺されると悟ったようで、気配を消す方法等を身につけたとか。そういえば冒険者ランク星3つだったもんな。
苦労たんだろうなぁ・・・
「獣人族の身体能力って凄いね。その中でも猫人はハンターとしての資質が凄いって聞いたことあるよ。」
まぁ猫だしな。なんとなくわかるわ。
タァマちゃんの倒したゴブリン4匹と俺の倒した6匹は素材としては使えるところは無い。魔結晶を回収するくらいだな。あとはボロボロの剣や斧を持っていたからこれらを回収して鉄素材として使うとしよう。
「人族の武器を持ってるね・・・盗んできた物ならいいんだけど・・・」
「どういうこと?」
「この武器、持つ柄のところがゴブリンの手には大きいでしょう?だからこれは人族の武器なのよ。ゴブリンは自分達でも武器を作るんだけど、品質が悪いから人族が作った武器があるとそっちを優先して使うの。人族の武器を手に入れるには街や兵舎から盗んでくるか、旅人から奪うかなの。もし後者だったら・・・男性は食料になるし、女性は・・・ね。」
「なるほど・・・盗まれたものならいいね・・・。」
ちなみにゴブリンやオークはオスの遺伝子が強すぎる為、どの種族のメスからもオスの種族が優先されて生まれるらしい。ゴブリンの場合は50日で5~6匹生まれるんだとか。繁殖力高すぎるな。
そいつらにエンカウントしたら何を棄ててでもアリアは守らないといけないな。
ゴブリンの死体は残しておくと別の魔物が寄って来そうだったので、イレイズで消しておいた。
一応スカウトで周辺に魔物がいないかを確認したが、魔物の反応はなかったので魔法の袋(家)に入って休む事にした。
この魔法まだ魔物を探知したことがない。本当に狙った効果が現れるのか不安だな。実績の無い魔法を信用するわけにはいかないから戦闘の直後ということもあり、いつもより念入りにバリアの魔法を掛けておいた。




