33話 お風呂
カレーを満喫し、食器の後片付けをしようとしたところアリアから声が掛かった。
「ヨーヘー、タァマちゃん。洗い物は私がやっておくから、お風呂いってきちゃいなよ。服が凄いことになってるよ。」
そう、うっかりタァマちゃんのエプロンを着け忘れてしまっていた為、俺もタァマちゃんも服が大変なことになっているのだ。地球ならばクリーニングコース間違いなし。この世界ならクリーンの魔法がある。クリーンは特殊魔法だが昔の偉人が魔道具にすることを成功させている為、世間に広く出回っているみたいだ。とはいっても運用にコストが掛かるらしいので普段は水や水魔法を使って洗剤で汚れを落としているのが一般的でそれでも落ちない汚れの場合にクリーンの魔道具を使うと聞いている。とはいっても俺は特殊魔法でクリーンは使えるから出し惜しみする必要も無いけどな。それでも汚れが落ちないようなら俺とミイ師匠限定だがリバースという最終手段があるので俺に落とせない汚れはないのだ。もしかしたらこれで商売していけるんじゃないだろうか?クリーニングショップストーンリバーとして開業するのもいいかもしれない。まぁ今はそんなことよりも風呂だな。
「タァマちゃんお風呂に行こっかー。」
「お姉ちゃんも一緒にお風呂行くです!」
「えっ!?えっとぉ・・・」
グッジョブタァマちゃん!いいぞもっと言ってやれ!よし、僭越ながらこの洋平、援護射撃をさせて頂きます。アリアと一緒にお風呂に入る為に!!
「アリアも一緒に入るです!」
「バカ!入らないわよっ!!」
あるぇ・・・?どうやら逆効果になってしまったようだ。くそぅ、何がいけなかったんだ。
「お姉ちゃん一緒に入らにゃいですか?タァマはお兄ちゃんとお姉ちゃんと3人で入りたいです!」
「えっとね?あのね、うぅ~・・・」
モジモジしながらアリアがチラチラと俺を見てくる。そんなアリアに親指を立てて凄いいい笑顔で応じてあげた。
スパコーン!とスリッパが飛んできて俺の顔面にヒットする。解せぬ。
「とにかく!今日は2人で入ってきて!」
シューンとするタァマちゃん。タァマちゃん諦めるな!もうちょっとだ!もうちょっとで落ちるはず!まだ諦めちゃダメだ!!もっとタァマ凄く悲しいですオーラを出せばきっとタァマちゃんの希望通りの未来が待ってるはずだ!
「うぅ~・・・ヨーヘー・・・」
「トモダチナンダカライイジャナイカ!トモダチナラアタリマエ!」
「友達なら・・・はっ!?だ、騙されないわ!!ダメよダメダメ!!」
ちぃ!もうちょっとだったのに!しかし俺は諦めない!例えここで屈しようとも俺の欲望が消えぬ限り第2第3の俺が現れるだろう!!
「今日のところはこのくらいにしといたらぁ!!」
「早く入ってきなさいっ!!」
タァマちゃんを抱っこして俺は渋々と風呂に行くことになった。その際に俺の肩口からタァマちゃんの顔を覗かせてアリアをジーっと見させる事を忘れない。こういう事の積み重ねでいつかアリアとお風呂に入れる日を信じて・・・!
「タァマちゃん。いつか3人で入るぞ・・・!」
「はいです!!お姉ちゃんも一緒です!!」
「今日は薬湯に入ってみようかー。それとお風呂から外の景色が見えるように改造してみたから楽しみにしてね。」
「薬湯ってにゃんですか?」
「体にいいお湯だよー。お湯に入るだけで、お肌がすべすべになったり、悪いところが良くなったりするお風呂なんだよー。」
「凄いです!魔法のお風呂です!お兄ちゃん早く行きましょう!」
急かすタァマちゃんの服を脱がしてあげて俺も裸になってお風呂に向かった。
「こっちお風呂が薬湯なんだよー。」
風呂はヒノキ風呂と岩風呂がある状態なので、薬湯にしてある岩風呂を指差してタァマちゃんに教えてあげる。ヒノキ風呂の方は普通のお湯だ。そして魔法を発動させて風呂場の壁や天井に外の景色を投写した。
「にゃにゃ!?変にゃ匂いがしゅるです!あ、お外です!?お外に出ました!!」
サードアイで見ている外の景色をペーストで壁に映し出しているので気分は露天風呂だ。ついでに雰囲気を出す為に冷たい風を魔法で流しているので、このままだと少し肌寒い。岩風呂とヒノキ風呂があるから好みや気分で入り分けすればいいだろう。リクエストによってお湯を酸性かアルカリ性か中性に変化させよう。今日のお湯はとりあえず酸性のお湯にしてある。
俺とタァマちゃんは体を洗って湯に浸かった。タァマちゃんはお風呂の中で泳いでハシャいでいる。猫って泳げるのか。
5分程して疲れたのか俺の腹の上に座って首までお湯に沈んでうにゃーっと気持ち良さそうに目を閉じていた。俺はタァマちゃんの頭に畳んだタオルを乗せてみた。
うわっ、これ和むわー。
熱くなってきたら湯船から出て冷たい風で涼み、冷えてきたらまたお湯に浸かる。
外の景色も楽しめるし、自然風呂って感じで気持ちいいなー。
「にゃ?お兄ちゃん。あそこににゃんかいますよ。」
タァマちゃんが指差した先にはアナウサギがいた。餌を探しているのかな?
タァマちゃんは捕まえようとしているが、そこは壁だ。
魔法の袋(家)にはインビジブルが掛けられているから向こうからは見えないし、バリアも張ってあるから入ってもこれない。しばらくすると、アナウサギは立ち去ってしまった。
タァマちゃんが残念そうに戻ってきた。
「そろそろ上がろうか。」
「はいです!」
俺達はお湯からあがり、普通のお湯で体を流してから風呂からあがった。アリアにもわかるように薬湯側からあがる時は普通のお湯で体を流さないとお肌が荒れちゃうよという注意書きを張っておいた。
タァマちゃんの体を拭いて作っておいた寝間着に着替えさせてから、俺も着替えてキッチンに戻った。
「アリアー、お風呂空いたよー。」
「お姉ちゃんウサギさんがいましたっ!今度はお姉ちゃんも一緒に入るですっ!」
「そうだね。今度は私と一緒に入ろうねー。」
「はいっ!お兄ちゃんとお姉ちゃんとタァマの3人で入るですっ!」
「え?ヨーヘーも一緒なの?」
「はいっ!3人で入りたいですっ!皆で入りたいですっ!」
「うっ・・・ねぇヨーヘー。水着作ってくれない?」
「お風呂に水着は邪道だと思うのです!!全裸とは言わないので、せめてバスタオルだけで我慢して貰えませんでしょうか!?」
「それは恥ずかしいよ!外れちゃったら惨事じゃない!」
「綺麗なんだから見えてもいいじゃないですかー!」
「きれ・・・、あ!裸見た時の事思い出してるでしょっ!?やめてっ!思い出さないで!!」
「ごめんなさい!謝りますからぶたないでください!」
「私だって皆と入りたいよ・・・でも恥ずかしいのっ!!ここまで2人の楽しそうな声が聞こえてくるし、私だけ仲間外れでさ・・・ズルいよヨーヘーは。」
むぅ、そんな顔で見ないで欲しい。しかし風呂場で水着は情緒が無いというかお風呂が温水プールになってしまう気がしてなんか違うんだよなぁ。でもアリアと一緒に入りたいし、何か案を考えなくては
「とりあえずアリアがお風呂に入っている間にお湯を吸った重みでも外れないように工夫した物を作っておくから。なんとかしてみせるから!行って!ほら早くお風呂に行って!」
戸惑うアリアを半ば強引に脱衣所に押し込む。
そうと決まれば最優先で作ろうじゃないか!全裸にならず、水着でもなく、俺が許せる範囲でアリアが納得してくれるような物を!
プールや海での水着は色気を感じるが、風呂場で水着姿を見ても色気を感じない。むしろガッカリする。大幅に露出が減ってもバスタオルを巻いていた方がドキドキするのだ。不思議なもんだ。俺だけだろうか?
というわけで、水着は却下したい。バスタオル系で考えようと思う。バスタオルを巻いただけのスタイルが理想だけど、それだとお湯からあがる時に水を吸った重みでわーぉな事になってアリアが可哀想だ。そうだ、落ちないように肩紐を付けるか。ちょっとワンピースチックになってしまうが許容範囲だ。丈は・・・膝上15㎝に挑戦だ。
素材はバスタオルと同じだな。これは譲れない。なんとか納得してもらうように説得する必要があるかもしれないが、俺に説得できるだろうか。まぁこればっかりはアリアの気持ち次第だからなるようになるしかないだろう。
「よし!これでいいだろう!」
クリエイトでバスタオルで作ったワンピースのようなものが出来上がった。ついでに俺もテロにならないように同じ素材でトランクス型のパンツを作っておいた。
あとは・・・これ着たまま体洗うの大変だろうから、アリア専用の壁で区切った洗い場も風呂内に作っておくか。
やばい。アリアと一緒にお風呂入れると思ったらワクワクしてきた!
早く出てこないかなー。
しばらくするとアリアが出てきた。
「ヨーヘー。新しいお風呂なんだけど、変な臭いがしたよ?」
「あぁ、温泉成分が入っているからねー。」
「温泉成分?」
「体に良いって事だよー。お肌スベスベ、種類によっては切り傷、神経痛、筋肉痛、関節痛、肩こり、関節のこわばり、うちみ、くじき、冷え性等の回復効果が見込めます。」
「そうなんだ?確かに疲れとか取れたような気がするよー。あと外の景色が見えるのはいいね。魔法で風起こしてるのも雰囲気出ててよかったよー。ハイドモンキーが見えたときは驚いたけど。」
「アリアも見えたんだ?俺たちのときはアナウサギだったなー。タァマちゃんが捕まえようとしてた。」
「ふふ、ホントよく出来てるよねー。」
「露天風呂に浸かりながらお酒を飲むのも乙なものだよー。」
「お酒かぁ。学園を卒業したから飲んでもいい歳なんだけど、まだ飲んだ事ないなぁ。」
「苦手ならジュースとかでもいいかもね。」
「うん♪今度やってみようかなぁ。」
「それでね、アリアと一緒に入るためにコレを作っておいたんだ。俺はちょっと風呂に細工してくるから着てみてね。」
タオルワンピースをアリアに渡すと俺は風呂場に行き、中が見えないように仕切りを作りアリア用の洗い場を作成した。仕切りは曇り硝子にしようかと思ったが、その透けて見えるシルエットを想像しただけで鼻血が出てきたので、俺の安全の為に石製にしておいた。
作業を終えて風呂場から出て2階に戻ると、アリアがタオルワンピースを着てくれていた。
「グラシアス」
何故かお礼の言葉が出てしまった。俺はきっと今涙していることだろう。
「あっ!?ヨーヘー!ねぇこれちょっと丈が短くない??」
タオルワンピースを着たアリアはとても色っぽかった。あぁ、ありがとうございます。生きていて良かった。
「とても魅力的でございます。」
サムズアップをして笑顔で答えてやった。
「そ、そうかな?ってそうじゃなくて!ちょっと恥ずかしいんだけどぉ。」
むぅ、ちょっと抵抗あるか?よし!ここは最終兵器を使おう。
「タァマちゃんもあの服を着たお姉ちゃん綺麗だと思うよねー?」
「はいっ!お姉ちゃんは素敵です!タァマお姉ちゃんみたいににゃりたいです!」
「も、もう2人共やめて!ほ、ほら、もう寝ましょう?明日も一杯歩かないとだしね?」
よし!ダメだしされなかったからこれで良しとしよう!
「じゃあ寝ようか。タァマちゃんのベッドも作っておいたから使ってね。」
「タァマのベッドですか!?いいのですか!?」
「もちろん。枕の硬さが気になったら教えてね。調整するから。」
「にゃー♪フカフカですにゃー♪」
タァマちゃんは早速ベッドに飛びこんでハシャいでいた。
アリアはいつの間にか寝巻きに着替えていた。
「じゃあまた明日ね。おやすみー」
「「おやすみなさーい」」




