32話 索敵魔法、そしてカレーの魅力
ガラダ方面に行くにはリンゼル樹海に沿った街道を通っていく。街道は冒険者や兵士が魔物を定期的に間引いてはいるが、森を住処にしている魔物が森から魔物が出てくるらしいから注意しておかないといけない。この辺りには中級の魔物までしかいないらしいが、中級の魔物は森の奥の方にいるので、森から出てくるのはフォレストウルフやゴブリンやオークといった下級の魔物くらいなんだとか。フォレストウルフとの戦闘経験から下級の魔物の大体の強さはわかった。それより強い魔物だとしてもマーシュサーペントくらいだと思う。あれくらいなら油断しての不意打ちを喰らわなければ対処できるだろう。でも今はタァマちゃんもいるから慎重に行かないといけないな。討伐に来てるわけじゃないから魔物に会わなくてもいいなら会わない方がいい。
「と思ってたんだけど、いきなり魔物が出てきたな。」
あれはフォレストウルフだ。えっとひーふーみ・・・7匹くらいいるな。
奴等の特徴は噛まれると痛い。それは良く覚えている。
もう噛まれるのは嫌だから速攻で倒すことにしよう。
「『ファイアーストーム』」
フォレストウルフ達を巻き込みながら奴等のいた周辺を炎の嵐が吹き荒れた。
「キャンキャンキャ・・・・」
「フヮーハハハハハーーーー!!!もぉぉぉえろぉぉぉおお!!」
火が視界を遮り、フォレルトウルフの姿は確認できないが、焦ったような声を発していた声は次第に聞こえなくなっていった。恐らく絶命したのだろう。
魔法の範囲は結構な広さだ。大体サッカーグラウンド半分くらいの広さだな。フォレストウルフ達を焼き殺した炎の嵐は更に勢いを増して燃え続ける。これが後の世で火の七日間と恐れ伝えられることになるのだ!
「ハーッハッハッハッ!!ハァァーーーッハッハッハッハッ!!!・・・・ねぇアリア。火が消えないんだけど、どうすればいいかな?」
火が街道周りの草や、森に燃え広がっていた。結構な高温だしなぁ、いくら生木だといっても燃えるだろう。
「!!?制御できてなかったの!?」
「いやぁ・・・魔力で出した分ならともかく燃え移った火の制御って出来ないよねー。」
「バカ!!ヨーヘーのバカ!!何やってるのよもう!『アクアレイン:スコール』!」
空は晴れてるのにザーっという大雨が降った。改めて魔法って凄いなぁ。
「おー、火が消えていく!」
「暢気な事言ってないでヨーヘーも手伝いなさいよ!」
「アイマム!『ウォータージェット』!」
俺は消防士が火事を消化するように水を噴射して消火作業を行った。
アリアが雨で全体を鎮火し、俺が火の勢いが激しいところをピンポイントで消火する。
「アリア!なかなか良いコンビプレイじゃないかこれ!?」
「そうね!・・・ってあなたがやったことでしょう!早く消すの!」
10分後。
なんとか火は消えた。
「ふぅ・・・何事もなく消火できてよかった。」
「そうね。何事もなくてよかったよ。・・・じゃないわよ!これどうするの!?」
目の前に広がるのは100m四方が焼け野原になってしまっている景色だ。青々としていた草原が真っ黒な大地に早変わりだ。これはもしかして偉い人とかに怒られるのだろうか?責任とれとか言われたらどうしよう。
「・・・・・・始めからこんな感じじゃなかったっけ?」
「えっ!?・・・えっと、そ、そうね。そう言われるとそうだったかもしれないわね。」
俺達はきょとんとしてるタァマちゃんを抱き上げてそそくさとその場を逃げるように後にしたのだった。
「・・・ヨーヘー。魔法の選択は間違えないようにね。フォレストウルフとかファイアーストーム使う程の敵じゃないからね?」
「はい、気をつけます。」
アリアに釘を刺されてしまったので、次はなるべく気をつけようと思う。
その後、ブランダの冒険者ギルドで街道沿いでの火事の原因を調べる依頼が出されたが、自然発火だろうという結論で収まったとか。
火事現場からそそくさと逃げ、3時間程経った頃。
グゥ~・・・
魔物じゃないよ?これは誰かさんのお腹の虫が鳴いている音だな。
「わ、私じゃないわよ!?」
「タァマでもにゃいです!」
俺が何かを言おうとする前にアリアが自分じゃないと主張してくる。タァマちゃんは恥ずかしがったというよりアリアが否定したから正直に申請しないといけないとでも思っての台詞だろう。
「うん、俺だ。というわけで、そろそろお昼ご飯にしますかねー。」
「「賛成ー(です)」」
「何にしようかなー。カレー・・・は夜だな。2人何か食べたいものある?」
「カレー?それも地球の料理なの?」
「うん、甘いものから辛すぎるものまであって、沢山の人に愛されている料理だ。もちろん俺も大好物だ!」
「へー、興味あるなぁー。それ食べたい!」
「だからカレーは夜ね!タァマちゃんは何か食べたいのはある?」
「えっと・・・、魚とかありますか?あ!無ければいいんです!我侭言ってごめんにゃさい!!」
「あー・・・魚かぁ。缶詰でもいいかな?イワシとかツナならあるんだけど。」
魚は食べる時に近所の魚屋で買おうと思ってたからスーパーでは買ってなかったんだよなー。
この世界の魚ってどんななんだろう?そういえば見たこと無かったな。
「ねぇアリア。魚って手に入ったりする?」
「うーん、ガラダなら川魚が手に入るかも。その先のキレースは港町だからそっちなら魚は名物だよ。」
「なるほどねー。んー・・・よし!今日のお昼はサンドイッチにしよう!中身はツナマヨとサラダと卵とハムだ!」
「サンドイッチ?」
「この前食べたオニギリあったでしょ?あれみたいに手軽に食べれる食べ物だよ。それじゃ早速作りに行こうか。」
料理の説明をしながら魔法の袋(家)の入り口を広げ、皆で中に入った。
キッチンに俺とアリアが並んで立ち、タァマちゃんは俺の背中にブラーンとぶら下がっている。
食パンの耳を取って、そこにツナマヨ、卵マヨ、サラダ、ハムマーガリンを乗せてパンで挟み込んだ。
挟んだ物を斜めに切って三角形にした。
「はい、おしまい。」
「え?もう!?」
「お手軽なんだよ。この料理は。」
余ったパンの耳をマーガリンでカリっと炒めて、砂糖を振ってラスクにしておいた。こいつはおやつにでも食べよう。
飲み物に紅茶をいれて魔法の袋(家)の外に出る。
「中で食べないの?」
「天気もいいし、俺の中でサンドイッチってピクニック料理ってイメージなんだよねー。」
「ピクニックって?」
「屋外に出かけて食べることだよ。」
手頃な岩があったので、そこに3人で腰掛けて食事を始める。
「わっ、あんなに簡単に作ってたのに結構美味しい!」
「にゃー!こんなの食べた事にゃいです!」
アリアは味を確かめるように、タァマちゃんは一心不乱に食べている。タァマちゃん。サラダも食べなさい。好き嫌いはダメですよ。
「美味しいです!美味しいです!でもこの飲み物はちょっと苦いです・・・。」
ん?紅茶は苦手だったかな?
「ちょっと貸してごらん。」
タァマちゃんがらカップを受け取り、砂糖と牛乳を入れてあげた。
「はい、どうぞ。」
「にゃ!白くにゃりました!コクコク・・・にゃにゃ!?美味しいです!!凄いです!お兄ちゃんは魔法使いです!!」
「はっはっはっ!まぁたしかに魔法使いだがな!!」
「ヨーヘー、それ私も飲んでみたいー」
リクエスト通りアリアの紅茶もミルクティにしてあげた。
「わぁ♪おいしー♪牛乳入れるとこんな風に滑らかになるんだねー。そういえばフルーツ牛乳もコーヒー牛乳もそうだったなー。コーヒーっていうのは牛乳入れないものはどういうものなの?」
「コーヒーか。そういえばコーヒー牛乳しか飲んだ事なかったよね。ちょっと待ってて、淹れてくるから」
一旦魔法の袋(家)に入り、コーヒー(ブラック)を淹れて外に出る。
「はい、これがコーヒーだよ。」
「いただきます。ンクンク・・・何これ?にっがーーい。」
「好みで砂糖とか牛乳とか入れて飲むといいよ。」
「そうする・・・。私はコーヒー牛乳の方がいいよ。」
楽しく昼食を食べて後片付けをする。タァマちゃんが食べこぼしたパン屑は鳥さんが片付けてくれるだろう。
「すっごく美味しかったです!タァマこんなに美味しいの食べたことありません!ふかふかしてて美味しかったです!!」
「そうかそうか!作った甲斐もあるよー。でも夕飯はもっと美味しいよぉ~。夜も楽しみにしててねー。」
「楽しみです!早く夜ににゃらにゃいかにゃー♪」
タァマちゃんは「な」が苦手なのかもしれない。特に「な」が「にゃ」ににゃるにゃ。あ、移ってしまった。
タァマちゃんを肩車しながら街道をてくてくと歩き、隣を歩くアリアはおやつのラスクを食べながら感心している。
タァマちゃんもラスクが気に入ったみたいだ。まぁお菓子だしな。
そんなことよりもタァマちゃん。ラスクの食べかすを俺の頭に落とさないでくれぇぇ。
ハトがいる公園にいたら俺の頭の10万の戦士達がバードアタックで大変な事になってしまうだろう。
ふと嫌な予感がして上空を見てみると、なんか鷹みたいな鳥が上空を旋回していた。
「あの、アリアさん?上で飛んでる鳥さんって人を襲うのでしょうか?」
「え?上?」
アリアが上を確認し、旋回していた鳥を見つけた。
すると、旋回していた鳥は進路を変えて飛び去っていった。
「あー、気付かなかったら襲われてたかもね。ヨーヘーお手柄だね!」
あ、危ねぇ・・・。
これからは上も注意しておかないとか。
午後も順調に進み、太陽もあと1時間程で沈むと思われた時、タァマちゃんが俺に言いたいことがあるのか、俺の顔を上から覗き込んできた。
「お兄ちゃん、何かいるみたいです。」
「え?」
辺りの草むらを探る。
こ、この気配はまさか・・・・・・すいません全然わかんないです。見得張ってみただけです。何かいるの?
「えっとタァマちゃんどこかな?」
「あっちの方です。40ミールくらい離れたところにいます。」
タァマちゃんが指差す方向を見てみる。
・・・どこだ?むー・・・フォレストウルフの依頼の時も思ったけど周辺を探知する魔法を作らないとダメだな。今後の課題にしよう。
「アリアはわかる?」
「うーーーん・・・ごめん、わからない。」
んー・・・あ!今あの辺の草が揺れた!
「ヨーヘー!」
「アリアもわかった?」
「えぇ、何かはわからないけど、草が揺れたよね。」
「タァマちゃん、何かわかる?」
「にゃー・・・、何がいるかはわかりませんです。でも、こっちを狙っています。20ミールくらいまで近づいてます!」
マジか!?
「『バリア』」
まだ姿は見えないが一応障壁を張っておいた。すると
「キキィィィ!!」
と体長50cmくらいの猿みたいなのが飛び掛ってきた。
「キャア!」
アリアが可愛い悲鳴をあげたが、猿は障壁に当たって弾かれている。
「こいつはハイドモンキー!個々の強さは脅威じゃないけれど、身を隠すのがうまくて死角から攻撃してくるの!」
イライラさせられるタイプの魔物か!まぁ今はバリアがあるから問題ないけど。
そんなに強くないならバリアがやぶられることもないだろう。
そういうことなら実験しますか。
実験というより開発だな。魔物を探知するのに特化した魔法が欲しい。アリアに実験したい旨を伝えてくつろいでもらっておき、新魔法の開発に専念する。
基本的にサーチの考え方でいいと思うんだよな。ただサーチはサンプルが必要という弱点がある。このサンプルをもっと大雑把にした感じの物に変えられればいいわけだ。魔物は人や獣と違って体内に魔結晶を持ってるらしいからそれを探知できるようにすれば・・・。ここをこういじって、こうして、こうやって・・・。
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「よし!たぶん出来た!魔結晶を持つものの探知に特化したものになったはず。効果範囲は今は500mくらいが限界か。名前は『スカウト』だな。さっそく使って見るか。
「『スカウト』・・・あれ?」
反応がない。失敗したのだろうか?理論は間違ってないはずなのにどこでミスったんだろう?結構自信あっただけに結構ショックだ。
「あ、ヨーヘー終わった?」
「え?あれ?なんで辺りが暗いの?」
「えっとね、ハイドモンキーに襲われてからヨーヘーがブツブツ言い出したの。バリアに阻まれて中に入って来れないと悟ったハイドモンキーは立ち去っていったんだよ。」
「え?え?」
どうやら魔法作りに夢中になっていたらしい。俺は凄い集中してたみたいで、邪魔しちゃいけないと思ったアリアはそっとしておいてくれたそうだ。そして今に至ると・・・。
「あのー・・・ちなみにどれくらい悩んでました?」
「えっとー・・・2時間くらい?」
「うわ・・・ごめんね。」
「ううん、気にしないでいいよ。それよりも今日はもう休みましょう。暗くなっちゃったし。」
「そ、そうだね。カレー作らなくちゃね!」
俺は慌てて魔法の袋(家)を出して中に入ったのだった。
「それじゃあカレー作るからタァマちゃん、お風呂入ってきていいよ。」
「タァマお兄ちゃんと一緒に入りたいです。」
「そう?じゃあ、その辺でのんびりしててね。」
はーいと元気に返事をしたが、俺の背中にブラーンとぶら下がった。
「アリア、俺はカレーの具を切っちゃうから、お米を炊いてくれない?」
「任せて!水とお米は1:1だったよね?」
「うん、それでいいよー」
アリアにお米は任せてジャガイモ、人参、タマネギ、にんにく、豚肉をカットする。
深い鍋でタマネギとみじん切りにしたにんにくを炒めて豚肉を投入、人参を投入、じゃがいもを投入、そして水を投入!!あとは煮る。
「それでおしまい?」
「まだだよー。火が通るまで煮るからしばらく待機だねー。」
「じゃあ、私サラダ作っちゃうね。」
「あ、お願いしまーす。」
じゃあ俺はタァマちゃんのベッドを作るかな。
ていうか2階作るか。さすがに風呂、トイレ、キッチン、リビング、寝室、物置があると10m×10mの空間でも狭くなるよな。サードアイで外の景色を堪能できる露天風呂モドキも作りたいな。露天風呂といえばやっぱり岩風呂だよな。でももう1個風呂を作るとなるとさすがに場所が無くなるな。そうだ、寝室とリビングは2階に移そう。これで岩風呂のスペースが確保できるだろう。
クリエイト、トランスフォームを使って2階を作成していく。1階にスペースが空いたので岩風呂も作成した。風呂がどんどん広くなるな。今はまだ大丈夫だが、その内魔法の袋(風呂)とか作ってそうだ。
俺の隣で部屋が出来ていく様を見ながらタァマちゃんがにゃあにゃあ言って興奮している。
「お兄ちゃん!凄いです!!みるみるお家が出来ていきました!!」
うむ!我ながら良く出来た!てかやろうとすれば3階と4階も作れそうなくらい天井が余ってるな。使い道ないけど一応作っておくか。
3階と4階を作り終わった頃にアリアが2階に上がってきた。
「わぁ・・・凄いねー。今度から2階で寝るんだね。」
「うん、なんか要望があったら言ってね。」
「うん、今は大丈夫。すっごい素敵な部屋をありがと♪」
お米も炊けて煮込んでいたものもいい感じになったので、カレーのルーを投入した。今回は甘口と中辛のブレンドだ。ルーが溶けたので、隠し味に醤油を入れる。少し煮込んで火を止めて寝かせる。本当は一晩寝かせたいところだけど、この香りを我慢するのは無理だ。
「美味しそうな香りだねーまだ?まだ食べられない?」
「にゃあぁ、美味しそうです!!」
2人が凄い期待に満ちた目で鍋を見つめている姿は微笑ましい。
そろそろいいかな。
「アリア、お皿にお米をよそってくれる。」
「完成なのね!すぐに用意するわ!!」
「タァマちゃんはスプーンの用意と皆の分の氷水をコップについでくれる?」
「にゃああああ!」
2人は準備に走ってくれた。
アリアが3人分用意してくれたお皿のお米の上にカレーをかける。やべぇ・・超うまそう。
皿の端っこに福神漬けを添えて完成だ!
カレーライスをテーブルに持って行き席に着いた。タァマちゃんは俺の膝の上、アリアは俺の隣というタァマちゃんフォーメーション通称Tフォーメーションだ。
それでは・・・
「「「いただきます!」」」
コップの中に入れておいたスプーンを手に取り、勢いよくカレーを食べる。
「「「んまーーーーい(です)!!!」」」
「久しぶりに食べたけどやっぱりうまいなー!」
「なんだろう?この甘いような辛いような・・・スパイシーなスープが味覚を刺激するね!あぁ・・・これはやめられない止まらないー!」
「美味しいです!美味しいです!美味しいでーす!!」
やべっ、懐かしい味に涙出てきた。カレーってこんなにうまかったんだな。
アリアもガツガツいってるし口に合って良かった。タァマちゃん美味しいのはわかるけど、こぼした物まで舐めるのはやめなさい。バッチィよ!興奮気味のタァマちゃんが食事をすることでタァマちゃんの服と俺のズボンはかなり黄色くなっている。カレーに気を取られ過ぎてエプロン着けるの忘れてた。これクリーンで落ちるかなぁ?
今日の夕飯は皆テンションが高く、全員でしっかりおかわりまでして満腹になるまでカレーを食べ続けた。




