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虹の先に繋がる世界  作者: 水無月 壱九
グロスティア
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30話 キレイキレイ

タァマちゃんを交えての食事を終えて宿屋の部屋に戻った俺達だったが、俺にはくつろぐ前にやらなくてはならないことがある。


「アリア、ちょっとお風呂行ってくるよ。」


「うん、ふふふ、服とか凄いことになってるもんね。」


「お兄ちゃんお風呂って何ですか?」


お風呂を知らないタァマちゃんがくいくいと俺の服を引っ張り見上げながら尋ねてくる。


「お風呂ってのはね、体を洗ってリラックスするところだよ。タァマちゃんも一緒に入るか?」


「入ります!お兄ちゃんと一緒にお風呂やります!」


冗談で言ったんだが思いっきり釣れてしまった。

どうしよう、タァマちゃんは女の子なわけで、男である俺と入浴なんて許されるのだろうか。9歳だけど見た目は幼児なわけだから親子感覚で許されるだろうか?この世界基準がわからん。セーフかアウトかで言ったらどっちなんだろう。逮捕とかされないだろうか?それだけが心配だ。


「俺とじゃなくてアリアお姉ちゃんと一緒でもいいんだぞー?」


「お兄ちゃんと一緒がいいです!」


嬉しい事言ってくれるじゃないか。お兄ちゃんも実はタァマちゃんと一緒にお風呂に入りたいと思ってました!そしてアリア、そこで悲しそうな顔するんじゃありません。


「よし!一緒に行くか―!綺麗にしてやるから覚悟するんだぞ!」


羨ましそうに俺とタァマちゃんを見るアリアにお留守番をお願いしてタァマちゃんと一緒に魔法の袋(家)に入った。


「にゃぁぁあ!!袋の中にお家がありました!凄いです!」


タァマちゃんはにゃあにゃあ言いながら興奮した様子で部屋の中をキョロキョロ見渡している。


「ほら、こっちだよー。」


こっちこっちと手招きしてタァマちゃんと手を繋ぎ、脱衣所に向かった。


「ここで服を脱ぐんだよ。脱いだ服はそこの籠に入れておいて。」


「はい!」


元気よく返事をして服をぬぎぬぎしているが、うまく脱げないようだ。

脱がすのを手伝ってあげる。やましい気持ちは無い。

すっぽんぽんになったタァマちゃんは冷蔵庫や洗濯機を興味深そうに見てはこれは何?あれは何?と質問してくる。

俺も服を脱ぎながらタァマちゃんの質問に苦笑しつつ答えてあげる。あ、この服洗っちゃったらタァマちゃん着る服がないな。綿の生地から白いワンピースを作っておこう。


「よし、お風呂入るよー」


裸になった俺はタァマちゃんを抱っこして風呂場に入る。


「まずここで体を洗うんだ。」


洗い場に腰掛けて、俺の前にタァマちゃんを立たせて、タオルを石鹸で泡立ててタァマちゃんの体を洗ってあげた。

コシコシコシコシ。

なんというか、多少肉はあるが骨と皮って感じだな。ミイ師匠ほどじゃないがガリガリだった。あまり食べさせて貰えなかったのだろう。先程の食事の時の態度からそれくらいは推察できた。俺達と一緒にいる間はお腹いっぱい食べさせてあげようと密かに誓う。

タァマちゃんはというと頭を洗ってあげた時に「目が沁みます!」と言ってギュッと目を瞑っていたのが可愛かった。

洗いながらわかったことがある。それは灰色だと思っていたタァマちゃんの髪の毛や尻尾は綺麗な白色だった。汚れていただけなんだな。

汚れが頑固だったみたいで、泡立つまで4回くらい洗ってやったよ。

最後に頭からザバーっとお湯をかけると、プルプルプルと頭を振って水を切っていた。

タァマちゃんを洗い終わったので俺も体を洗うことにする。


「タァマちゃんちょっと待っててね。すぐ洗っちゃうから。」


「お兄ちゃん!お兄ちゃんの背中はタァマが洗います!」


おぉう、初めてのお風呂のはずなのにそんなに高度なお風呂作法をやってくれるのか。

タァマちゃんは少し呆けていた俺からタオルを奪って背中に回り込み、んしょんしょゴシゴシと背中を洗ってくれる。

あぁ・・・なんかいいなぁ。


ゴシゴシゴシゴシ


気持ちええわぁ・・・


ゴシゴシゴシゴシゴシゴシ


・・・ちょ?タァマちゃん?


ゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシ


いて、いててててて


ゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシ・・・


「ちょっとタンマ擦り過ぎ擦り過ぎ!」


「にゃぁ!?ご、ごめんにゃさい!ぶたにゃでください!!」


失敗してしまった事に気付いたタァマちゃんは慌ててタオルを手放してペコペコと頭を下げて謝っていた。


「ぶたないよ!?でも、ちょっとやり過ぎだったかなー?」


「ごめんにゃさい・・・タァマ、何かお兄ちゃんの役に立ちたかったのです・・・」


なんていい子なんだろう。なんかキュンってきた。俺がほっこりしてる横でタァマちゃんはシュンとなっていたので俺はその頭に手を乗せて褒めてあげる事に決めた。


「俺の為に頑張ってくれたんだね。嬉しかったよ。ありがとう。まぁ最後の方は痛かったけどね。」


「にゃぁ♪褒めてもらえました!タァマもっとお兄ちゃんの役に立てるように頑張ります!次は何をすればいいですか?」


俺が褒めると嬉しそうに喜びを表現してくれた。何この子可愛い・・・。


「んじゃ次は一緒に湯船に浸かろうかー」


「あの池に入るのですか?」


露天風呂もどきはまだ完成していないから普通の風呂だな。

湯船に入り、俺の足の間にタァマちゃんを立たせる。この風呂の深さはタァマちゃんが座ると溺れるな。

タァマちゃんを俺の腹の上に座らせて、ひざの裏に腕を入れてズリ落ちないようにして一緒に湯船に浸かった。


「にゃぁぁぁ・・・気持ちいいです・・・」


「生き返るなぁ・・・」


タァマちゃんの髪からはシャンプーのいい匂いがしている。

さっきまではお世辞にもいい匂いとは言えなかったからな。

ぼーっとしながら5分程湯船に浸かっていただろうか。

タァマちゃんがこっちを向いて俺の体をよじ登ってくる。今は逆肩車状態だ。前が見えん。

一回タァマちゃんを抱き上げて普通の肩車をしてあげる。


「ぼーっとしそぅです・・・」


「ん、のぼせちゃったかな?そろそろ出ようか。」


風呂からあがった俺はタァマちゃんを抱っこして脱衣所まで戻った。

まずタァマちゃんの体をバスタオルで拭いてあげ、のぼせた体に風魔法で微風をあててあげた。・・・扇風機ほしいな。あとで作っておこう。


俺が座って頭を拭いているとタァマちゃんが俺の足に頭を預けてきた。所謂膝枕だな。初めてのお風呂で少し疲れてしまったのかもしれないな。

しかし体を拭いている俺は現在全裸であり、タァマちゃんもまだ全裸だ。絵的に宜しくない気がする。あっ、こら、お腹の方を向くんじゃありません。何をジーッと見てるですか?やめて、見ないで。


「お父さんと同じです。」


そうだろうよ。だから見ないで!恥ずかしい・・・

恥ずかしさに耐えかねた俺はなぜか嬉しそうに俺の俺を見ていたタァマちゃんの脇に手を入れて抱き上げた。俺の俺を凝視するのは小さい女の子の教育にはよろしくない。


「あはは♪あははは♪」


何がそんなに楽しいのか?ご機嫌だな。

よく見るとタァマちゃんは整った顔立ちをしている。これは将来美人さんになりそうだな。

ガリガリの今でさえこんなにも愛らしいからなー。健康的になったら更に可愛らしくなるだろう。

体を拭き終わってから冷蔵庫に入っていたフルーツ牛乳を取り出し、タァマちゃんに正しい作法を教えて一緒にぐぃっと飲み干した。


「ふにゃぁ!?美味しいーーー♪」って叫んでいたから口に合ったみたいだ。




「ただいまー」


お湯からあがった事をアリアに伝える為に声を掛けながら魔法の袋(家)から宿屋の部屋に戻った。


「おかえりー。随分長く入っていたね。あらタァマちゃん綺麗になったねー。」


アリアはタァマちゃんの毛色が真っ白だったことに驚きつつ、綺麗になったタァマちゃんに優しい口調で褒めてあげている。


「お兄ちゃんに綺麗にしてもらいました!この服もお兄ちゃんがくれたのです!」


ワンピース姿のタァマちゃんがクルクル回ってアリアに見せている。気に入ってもらえたようでよかったな。


「うんうん、可愛いよー。服の色がタァマちゃんの髪の色とマッチして凄く似合ってるよー」

褒められたタァマちゃんはテレているのかほっぺたを両手で押さえてにゃあにゃあ言ってモジモジしている。可愛いなおい。


「それじゃあ一休みしたら冒険者ギルドにタァマちゃんのギルドカード受け取りに行きましょうか。」


「了解ー。」




冒険者ギルドに入ると先程の受付のお姉さんが俺達に気が付いた。


「あ、フリーターさん。タァマ様のギルドカードの登録変更が終わりましたよ。」


「ありがとうございます。それとアイアンフロッグとマーシュサーペントの素材を買い取ってほしいんですけど。」


「はい、お預かり致します。それと先程ギルドマスターと協議した結果、マーシュサーペントを討伐したフリーターのお二人は星3つにランクアップとなりました。素材と一緒にギルドカードを提示して頂いても宜しいですか?」


「星3つに?やったなアリア!あ、これギルドカードです。」


アリアとハイタッチしたあとに俺とアリアのギルドカードを素材と一緒に提出した。


「また、大きいですね・・・どうやってあの湿地帯持ってきたんですか?」


「それは秘密です。」


「これでしたら高値で買い取り出来ると思います。査定致しますので少々お待ちください。」


待ってる間、ガラダへの運搬依頼がないかを探してみたが、残念ながら見つからなかった。中級者用の護衛依頼はあったけど、俺達は星3つだからなぁ。それに今日出発だ。


「まぁ適当な依頼もないし、のんびり向かおうか。」


「そうね。無いものはしょうがないものね。」


依頼板を眺めていると、先程の受付のお姉さんに呼ばれたので、カウンターまで移動する。


「お待たせ致しました。まずこちらがお二人のギルドカードになります。ご確認ください。」


それぞれギルドカードを受け取って確認する。うん、星3つになっているな。


「はい、問題ありません。」「私もありません。」


「続きまして素材の買取査定が終わりましたので内訳をご説明させて頂きます。まずアイアンフロッグの皮ですが、4匹分で2千レンスになります。マーシュサーペントの素材ですが、ところどころ焦げていたり破損している部分も多かったので、申し訳ありませんが多少減額させて頂きます。ですので、こちらは1万5千レンスになります。宜しければ買取致しますがいかがなさいますか?」


破損多かったか・・・まぁ好き勝手やったもんなー。リバース使って素材の時間を戻したら綺麗な状態になってたから使っておけばよかった。そうなるとどうやって倒したのかという話になるか。まぁ15万円相当だし、納得するとしよう。依頼料よりも素材買取の方が儲かるな。まぁ普通はこんなに大量に持ってこれないらしいから魔法の袋様様だな。


「はい、それで構いません。買取をお願いします。」


「承りました。それではこちらが買取金額の1万7千レンスになります。ご確認ください。」


金貨1枚と大銀貨7枚を確認する。


「確かに。」


「タァマ様にご確認致します。黄金の鎖でお受けになられましたクロコスネークの討伐ですが、継続致しますか?」


「にゃ・・よくわからにゃいです。」


実際はフーダーが取り仕切ってたみたいだし、この子は付いて行っていただけなんだろう。


「タァマちゃん、とりあえずそれはキャンセルしちゃおう。フーダー達も死んじゃったことだしさ。」


「にゃ、キャンセルって言えばいいですか?キャンセルしるます。」


「承りました。それではこれにて手続きは終了となります。ご利用ありがとうございました。」


冒険者ギルドを出て、今後の予定を決めることにしよう。


「この後はセリアル教会に行ってタァマちゃんを引き取って貰えるかを確認しようか。」


「そうね、聞きに行ってみましょう。」


タァマちゃんの俺の手を握る力が少し強くなった気がする。不安なんだろうな。

教会に向かって歩くこと15分。石造りの立派な建物が見えてきた。これがセリアル教会か。

俺とタァマちゃんが建物を眺めているとアリアは中に入っていってしまった。

慌てて後を追って中に入る。

中には白いローブに身を包んだ信徒と思われる人達がいた。皆慈愛に満ちた顔をしているな。彼等は教会の最奥にある女性像に向かって祈りを捧げているようだ。

いかん・・・こういう空間は苦手だ。

なんちゃって教の日本人にはこの本気度は若干引いてしまう。

微妙に引きつっていると、女性信者の人が話しかけてきた。


「当教会にご用でしょうか?」


「え?あ、はい!」

キョドッた対応をしてしまったが、アリアが私に任せてと言って前に出て対応してくれた。ふぅ、良かった。


「はい、実はこの子は両親が他界していまして、身寄りがないみたいなのです。ですのでこちらの孤児院に引き取って頂こうかと思うのですが宜しいですか?」


「そうでしたか、しかし申し訳ありません。現在ブランダの孤児院には40人以上の子供を預かっていまして、本当に身寄りのない子以外は受け入れることが厳しいのです。」


「あの?この子はその身寄りがない子に当てはまりませんか?両親も親類もいないのですよ?」


「心苦しいのですが、申し訳ありません。ここの子供達は街の道端で死にかけていた子達ばかりなのです。その子達を教会の者が保護しているのですよ。あなた方は見たところ冒険者でいらっしゃるかと存じ上げますが・・・?」


「はい、確かに私達は冒険者です。」


「もし、あなた方にもう少しだけ余裕がおありならば、この子を隣のガラダかスーラにある教会まで連れて行って頂けませんか?あちらならまだ余裕があると思われますので。依頼という形にして頂いても構いません。当院も余裕はそれ程無いので多くは出せないのですが・・・」


「そうですか・・・。はい、わかりました。ガラダに行く予定があるので、それまで私達で面倒を見ることにします。それにお金はいいですよ。元々行く予定のあった場所に行くだけですし。お忙しいところありがとうございました。」


「心苦しいのですがお願いしてもよろしいでしょうか?あなた方にセリアル様のご加護があらんことを。」


アリアと信者の人は独特のポーズを取り合った。

あれがセリアル教のポーズなのかな?

教会を出て、アリアがタァマちゃんに話しかける。


「タァマちゃんごめんね。新しいお家見つけてあげられなかったよ・・・。」


「いいんです!いいんです!お姉ちゃん達に迷惑かけているのは私にゃんですから!」


「そんな、迷惑だなんて思ってないよ。タァマちゃんは子供なんだからもっと甘えたり我儘言ってもいいんだよ。」


「・・・甘えて・・・。」


言葉を反芻した後ブンブンと頭を振ってニコっと笑った。


「次の町までお姉ちゃん達と一緒にいられるからうれしいです!」


「タァマちゃん・・・」

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