28話 湿地帯に潜むモノ
フーダーとローラの供養を済ませてアリアのところに戻った。
「お待たせー」
「うん。お疲れ様。ねぇヨーヘー・・・」
「ん?どしたの?」
アリアがナイフを手にして猫耳幼女をチラチラ見たり目を逸らしたりしている。
「うー・・やっぱり無理!ヨーヘー取って!!」
何が無理なのかわからないがアリアは俺にナイフを渡してきた。
「取ってって、何を?」
ナイフを受け取りながらアリアに聞いてみると、アリアは猫耳幼女の服をめくり、お腹を出させた。
そこには体長10cmくらいのウネウネしてるのが3匹くっついている。何これ気持ち悪い。
「これは?」
「蛭だよ。生き物の血を吸うの。」
「蛭!?でかくね!?」
「私こういうウネウネしてるの苦手なのー」
俺も得意じゃないんだけどなぁ。てゆーかグランドワームは平気なのか?同じウネウネ系だと思うんだが、普通に焼いてましたよね?まぁ無理だっていうならしゃーない。こういう時って男は見得張らないといけないからツライね。
猫耳幼女のお腹についた蛭とお腹の皮膚の間にナイフを入れて落とそうとする。
ほほぅ・・・取れねぇ。
「こいつ・・・しぶといな。」
無理矢理引き剥がしたらお腹の皮膚が傷ついちゃいそうだ。
えっと蛭ってどうやって取るんだっけなぁ?
タバコ近づけるんだっけ?
でも俺タバコ吸わないしなぁ。
別にタバコじゃなくても高温な物を近づければいいんだよな?高温といえばやっぱり火魔法だよな。よーし!
「取れそう?」
アリアが俺の肩口から覗くように見てくる。
怖いなら見なければいいのにと思うが苦手なものは私は知りませんっていう性格じゃないしな。そんなアリアに苦笑する。
「今からやってみるよ。」
火魔法でナイフが真っ赤になるまで熱して・・・
「って、アァッチャァアーーーーーッッッ!!!」
ヤケドした。
ナイフを放り投げ湿った地面に落ちたナイフからジュッという音が聞こえた。
なぜだ?真っ赤になるまで高温になったナイフを握っていただけなのに!って当たり前ですねはい。
「わわっ、な、何やってるのーっ!?」
すかさずアリアがヒールで治してくれた。
傷は治ったが俺の心は傷ついてしまってナイフを持つのが怖いです。
よし作戦変更だ。
「『フレイムランス』」
今度はナイフを経由しないで魔法オンリーなので直接手に触れてないから熱くない。
出した炎の槍。これを魔力操作で凝縮させて縮小化させる。
3m程あった炎の槍が15cmくらいの白く輝く針の様になった。
これはフレイムニードルと名付けよう。密度が高くなって温度が上がった為か触れてないのに結構熱いな・・・まぁ我慢出来ない程じゃない。それに直接触ってない分さっきのナイフよりはマシだしね。
猫耳幼女のお腹がヤケドしないように障壁を張るなりして気をつけないとな。
作成したフレイムニードルを蛭にソーっと近付けて接触させた。
ジュッという効果音と同時にエビゾリになった蛭はボトリと地面に落ちて動かなくなった。
というか、フレイムニードルが接触した部分が消えてしまっている。
チラリとフレイムニードルを見る。
『ハッハハー!燃やし尽くしてやるぜぇ!バーニィィィング!!』と言わんばかりに輝いていらっしゃる。これ何℃なんだよ。
蛭が取れることはわかったのであまり気にしないことにしよう。
とりあえず他の蛭もバーニィィィングしてやらないとな。残りの蛭も落とし終えて他に取り忘れがないかをアリアと一緒に確認し、全部取れたことが確認できたのでこれにて蛭退治を終了とした。
「気持ち悪いやつだったね。さっき沼地に落ちた時にくっついたのかな?」
何気ない俺の一言にアリアがビクッっと体を震わせ、後ろを向いてからいそいそと身体中をチェックをしている。
俺もアリアの服装チェックをすることにしよう。
今日のアリアは長袖の上着に長めのスカート。そして太ももまで届くロングブーツだ。
狩りをする服装には見えないが、俺も似たようなもんだ。このまま街中を歩いても違和感はないだろう。そんな服装なのだが、今日のアリアの服装なら見えている肌は手首から先と首から上くらいだな。
俺もアリアに蛭が付いていないか軽くチェックしてみたが、見えているところには付いていないように見えるし大丈夫だろう。
アリアに大丈夫だよの意味を込めてグッと親指を立てたジェスチャーをする。
身体チェックを終えたアリアがこっちをジッと見つめてくる。
「よぉへぇ~・・・」
なんて情けない声だ。そして凄い涙目だな。
「うぇぇ・・・取ってぇぇ」
「えっと、いないように見えますが?」
「いるのぉ・・・ここにぃ」
アリアが指差した場所に視線を移す。
アリアが指し示す場所、そこはスカートだった。ふむ、スカートには付いていないように見えるのだが・・・はっ!?も、もしかして中!?スカートの中ですか!?
「え・・・?それ俺が取っていいの?恥ずかしくないの??」
「恥ずかしいに決まってるでしょ!!でもこれ無理ぃぃ・・・」
「無理ってこれ俺もすっげぇやり辛いからね!?」
「早く取ってよぉ・・・うぇーん」
泣くなよ。泣きたいのは俺の方・・・ウソつきました。本当は歓喜に震えております。
もう限界なのかアリアは座り込んでスカートをめくった。
すかさず俺はチーズを使う。いや、これは実験なんだ。急にサードアイを使ったチーズの実験がしたくなってしまったのだから仕方ない。今回の実験は自動シャッターだ。チーズを俺の意志に関係なく使用する実験。間隔は5秒に1回だな。ターゲットはアリアでいいかな。少し実験したところ、サードアイで視線を飛ばせる範囲は俺の周囲10m程だとわかった。色々なアングルで実験しないといけないな。
さて、魔法をセットしたので、改めてアリアを見てみる。
何がとは言わないが見えそうで見えない。
ロングブーツとギリギリのところまでめくられたスカートの間に見える白い太もも。
これは絶対領域と呼んでもいいのではないか?
この見えそうで見えない状態がなんかヤキモキして俺のテンションを上げてくれる。このギリギリ感!その先にある可能性!俺の興奮上昇率は上限を知らないぜ!!
おっと、ちゃんと蛭の確認をしないとアリアに怒られるな。
観察すると太ももの表に2匹、裏側に1匹の蛭が確認できた。
「3匹か。す、すぐ取るから待っててね。」
「ううん・・・全部で5匹ぃ・・・内ももにも2匹いるのぉ・・・」
な、なななななな・・・う、うううううう内ももだとぉぉぉぉおおお!!?
「いいんですか!?」
「良くないよっ!あの・・・見ないで取って・・・」
「無茶をおっしゃる!?」
いや待て!見ないでということは間違って思惑とは違うところに触ってしまっても事故で済むのだろうか?
「もうっ!見てもいいから早く取ってぇぇ・・・」
ちぃ。
アリアが必死に懇願してきたので仕方なく、そう!仕方なく正面に回りアリアのスカートの中を確認する。
白だった。
なんだろう?この胸の高鳴りは。妙にドキドキする不思議な布がある。フッ、俺とした事が鼻血が止まらないぜっ!
「ヨーヘー!鼻血!!見えちゃうのは仕方ないとしても私に悟られないようにしてよぉ!うぅ、それよりも早く取ってぇ・・・」
不思議な白い布にばかり視線が行ってしまったが、内ももにも2匹蛭が吸い付いていた。
なんて羨ま・・・いや、けしからん場所に!!でもありがとう!!さっきは気持ち悪いって言ってごめんね?キミの事好きになれるかもしれん。
蛭君に感謝を表明していたらアリアがマジ泣きしそうだったので心の中で謝りながらフレイムニードルでまずは表側の2匹を落とし、裏側の1匹も落とした。ここまではなんとか理性を保てている。平常心、平常心だ。俺のクララはもうハイジを感動させっぱなしだが、思考までそっちに引きずられると俺もどうなるかわからない。冷静に、冷静にだ・・・
さぁて!メインディッシュの時間だぜぇ!!
姉さん大変です。不思議な布が近いです。目の前なんです。内なるももに吸い付く蛭様を退治しないといけないのですが、まったく集中できません。蛭様退治の為に若干足が開かれておりまして、つまりどういうことかというともうチラというレベルではなくモロなんです。モロなんてありがたみがなくて興奮しないぜ!なんて言っていた昔の自分を殴ってやりたいです。アリアが恥ずかしさのあまり両手で顔を覆って真っ赤になっているのがまたなんとも・・・。不思議な布を凝視していると真ん中に谷があることに気付きました。谷が・・・谷・・・ブフォッ!?鼻血が、鼻血が止まらんとです。しかも沼地に飛び込んだ為か衣服はびしょ濡れです。不思議な布ももれなく濡れているわけで、ピッタリ肌に張り付いていて形がクッキリと・・・そして微かに透け・・・フングゥッ!鼻で息ができませんっ!
「ハァ・・・ハァ・・・」
「ヨ、ヨーヘー?」
息遣いの荒い俺をジト目で見つめてくる。状況的に弁明する資格は俺にはない。しかしこのままではアリアに軽蔑されてしまう。
「ハァハァ・・・ち、違うんだ・・・ハァハァ・・・鼻が詰まって、ハァハァ、呼吸が・・・ハァハァ」
赤面しているアリアに言い訳をしながら視線だけは谷から外さずに内ももの蛭様を落としていく。本音を言えば落としたくない。しかしそんなことをすれば蛭様は落ちなくても俺の評価が地に落ちる。ここは涙を飲んで蛭様を落とすしかない。
「取れた・・?」
「ハァハァ・・うん」
「よかったぁ・・・ありがとぅ。」
「どう致しまして・・・ハァハァ」
「ねぇ?いつまで見てるの?」
「も、もうちょっと?ハァハァ、も、もしかしたら、ハァハァ、下着の中にも、ハァハァ、いるんじゃないかと。ハァハァ」
「ばかっ!変態!!見ないでよぉエッチ!!」
アリアは足を閉じて俺の頭をその太ももで挟んで攻撃してきた。
「むぉ!ありがとうございます!ご褒美ですっ!!」
「キャー!キャー!」
その後アリアに蹴られたり踏まれたりしてやっとのことで俺の視線をバインドし続けた不思議な布から解放された。
俺、お蛭様のこと結構好きになれたかもしれない。
「グッジョブ蛭様!」
「うぅ・・・恥ずかしいよぉ」
「泣くなアリア。君のおかげで少なくとも1人の人間は幸せになった!」
「うるさいよっ!」
1時間後、俺達はまだ湿地帯にいた。
というよりまだ蛭と格闘した場所にいる。
そこで俺は正座をしていた。
ちょっと喜びを表現し過ぎたのかもしれない。
「あの・・・アリアさん?」
「・・・・つーん」
つーんって・・・
「ごめんなさい。素敵な物が見えてテンションが上がりまくってしまったのです。」
「・・・・・・」
「あそこまで釘づけにされるような物を見たのは初めてでして本当に美しいも「黙りなさい」・・・はい」
「反省してる?」
「反省はしてます。(後悔はしていない)」
「恥ずかしかったんだからね?」
「存じ上げております。」
「エッチなのはダメなんだからね?」
「感情が抑えられませんでした。申し訳ありません。」
「むぅー、はぁ。もういいよ・・・」
「ありがとうございます!アリア様!!」
「調子いいんだから・・・・・・ねぇ?・・・・本当に綺麗だった?変じゃなかった?」
「それはもう!!まさに女神が降臨されたかのような・・・」
「いい!もういいから!!」
顔を真っ赤にしてワタワタしている。
「俺以外には見せないでくださいね。」
「誰にも見せたりしません!!・・・それよりなんで敬語なの?」
「アリア様を崇拝しようかと。」
「お願いだからやめてください!」
深々と頭を下げられた。
許してもらえたみたいなのでその場で立ち上がる。
「あ、足が痺れて・・・」
「ほら、危ないよ。」
ふらふらしていたらアリアが支えてくれた。そのまま落ち着くまで支えてもらって街に戻る準備をする。
「あの、ヨーヘー?・・・蛭取ってくれてありがとね。」
そんなのこっちがお礼を言いたいくらいですよー!
またの機会があったら是非ともお任せください!!
気分の高揚していた俺は上機嫌で未だに眠り続けている猫耳幼女を背負って街に向かって歩き出した。
「ねぇヨーヘー。その子どうするの?あと一応治してはあるけど怪我人を背負ってスキップは止めたほうがいいと思うの。」
「あ、そう?とりあえず奴隷になった経緯を聞いて、問題なければ両親のところに返してあげたいね。」
両親に売られて奴隷になったのであれば同じことを繰り返すだろうからな。
街まであと1kmといったところだろうか?
俺の背中で猫耳幼女が目を覚ました。
「・・にゃ・・・お父・・・さん?」
「目が覚めた?あとお兄ちゃんな。」
「にゃ?あ、お兄ちゃん?」
背負っていた猫耳幼女を地面に降ろしてお話をすることにした。
「やぁ、大丈夫?どこか痛むところはない?」
「だいじょう・・ぶ?です。痛いところはありません。えっと・・・夢じゃにゃいですよね?」
「うん?君達がクロコスネーク討伐に向かって、君のご主人様とその連れがクロコスネークに食べられて、君に奴隷紋の激痛が襲って気を失う直前に俺の妹になってくれるって言ったことかな?」
「ヨーヘー。さりげなくウソを混ぜないの!」
「にゃにゃ!?タァマがお兄ちゃんの妹に・・・??」
タァマちゃんって言うのか。ますます猫っぽいな!コロコロしてて可愛い。
「えっと?まず自己紹介をしましょう?私はアリア。アリア=イグナスよ。こっちのお兄ちゃんはヨーヘー=イシカワって言うの。よろしくね。」
「アリアに、ヨーヘー・・・はっ!?ごめんにゃさい!タァマはタァマって言います!9歳です!猫人です!」
俺達の名前を呟いた後、慌ててペコペコ謝って自己紹介してきたタァマちゃん。腰の低い子だ。このくらいの歳の子はもっと無邪気でいてもらいたいもんだが・・・ん?9歳?今9歳って言ったか?マジかよ・・・4、5歳くらいにしか見えないぞ。おっと考え込んでいたらタァマちゃんに不安そうな顔をさせてしまった。いかんいかん。
「タァマちゃんかぁ。可愛い名前だね。ね、アリア。」
「うん!いい名前だね!」
「そ、そんにゃことにゃいでしゅ!」
タァマちゃんは焦ると噛む癖があるのかな?そういえばこの前も結構噛んでたな。
「あ、あの・・・ヨーヘー様がタァマの新しいご主人様ですか?」
「え?」
「タァマの首のとこ痛くありません。それはヨーヘー様かアリア様が新しいご主人様ににゃってくれたからじゃにゃいのですか?」
あぁ、そういうことか。
奴隷紋は消す事が出来ないと言われている。主人からの魔力供給が無くなれば激痛が伴う。今は痛くないので俺かアリアが主人になったのだろうと。
「いや、俺もアリアもタァマちゃんの主人じゃないよ?というよりタァマちゃんはもう奴隷じゃないからね。」
「・・・え?」
「奴隷紋も消えているんだよ。」
「そんにゃことにゃいです!奴隷紋は消えにゃいのです!とても痛いのです!!」
タァマちゃんは奴隷紋が消えたことを信じようとしない。実際に見せてやらないと理解できないか?
魔法の袋から鏡を取り出してタァマちゃんを映してあげる。
最初はわからないといった表情のタァマちゃんだったが、恐る恐る鏡を覗き込み、その中にいる自分を確認した。
「っ!!?フーーーッ!!」
猫かっ!!
「タァマちゃん!落ち着いて!これは鏡って言ってこの銀色の部分に映った物をそのまま映し出す道具なんだ!」
俺はタァマちゃんの隣に行って、タァマちゃんと一緒に鏡に映って説明した。
「にゃ!?この中にもヨーヘー様がいらっしゃいましゅ!!ヨーヘーしゃまが2人でしゅ!!」
俺はわかりやすいように鏡に手を振ったりして反射された世界だという事を認識させようとした。
タァマちゃんは鏡の中の俺に小さく手を振っている。
「これ、タァマなのですか?」
「うん、そうだよ。」
「これがタァマ・・・なんか汚らしいです・・・」
「洗えば綺麗になるから!今は奴隷紋を確認して!」
「にゃ・・・あれ?あれれ?奴隷紋がにゃいです。」
クルクル回って首にあるはずの奴隷紋を探している。
20回転くらいして漸く止まる。
「タァマ奴隷じゃにゃくなったです?」
「そうだよ。タァマちゃんはもう奴隷じゃない。自由なんだよ。」
「・・・自由。」
自由という言葉を反芻し、俯くタァマちゃん。
「・・・うぅ、ひっく、うぅぅぅぅぅ」
タァマちゃんの目から大粒の涙が零れる。
俺はそっとタァマちゃんを抱きしめてあげた。
「うぅぅ、うわぁぁぁぁぁぁぁあん!!あぁぁあん!!ふわぁああああ!!!」
「よーしよし、頑張った。頑張ったねー。」
タァマちゃんの背中をよしよしとさすりながらタァマちゃんが泣き続けている間、ずっと優しい言葉をかけ続けた。
それにしても、なんて細い体だろうか。ちゃんとご飯貰ってたのかと疑いたくなるくらいガリガリだ。
背中をさすっている手から骨の感触が伝わってくる。まずはしっかりご飯を食べさせてあげよう。




