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虹の先に繋がる世界  作者: 水無月 壱九
グロスティア
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20話 やっぱり発病

アリアを連れて宿の部屋に入り、風呂に入れる為に魔法の袋(家)を取り出して中に入っった。

そのまま脱衣所まで連れて行ってアリアを降ろした。本当は服を脱ぐことまで面倒見たかったが変態だと思われてしまうのでグッと我慢する。


「俺は、ミランダさんに夕飯貰いに行ってくるから、ちゃんと湯船に浸かって温まってから出るんだぞ。」


「うん、ありがとう。」


体調が悪い人間を1人で風呂に残すのはちょっと危ない気もするので、何かあったら呼ぶように言い聞かせてから脱衣所を出てミランダさんの所に夕飯を取りに行く。


「あら、もうちょっと待ってくださいね。もうすぐ温まりますから。」


「ホントすいません。」


「アリアさんは大丈夫でした?随分雨に濡れていたようですけど。」


「体調悪そうにしてましたが、たぶん大丈夫だと思います。今は魔法で出したお湯で体を温めさせてますから、この後夕食を食べさせて寝かせようと思います。」


その後ミランダさんと少し雑談をして部屋に戻った。


「アリアはまだ風呂か。」


待つこと10分。一旦声を掛けようかと思ったところでフラフラした足取りのアリアが脱衣所から出てきた。


「ヨーヘー、お風呂ありがとー・・」


「大丈夫?夕飯用意してあるけど、食べれる?」


「うん、食べるー。」


なんか声が弱々しいな。

アリアと遅めの夕飯を食べているとアリアがジッとこっちを見ている。


「・・・何?」


そう聞くと少し目をキョロキョロしていたが、ギュッと目を閉じて何かを決心したような顔になった。


「あのね。聞いてほしいことがあるの。」


「うん。」


「聞いて欲しいのは今朝の話のことなの。内容は私の昔の話なんだけど、概要はザミーレさんから聞いちゃったよね。」


今朝のこと?あぁ今夜話したいことがあるって言ってたやつか。アリアの昔話についてだったんだな。


「えっとね、実は私、昔は貴族だったの。」


「貴族・・・ねぇ。」


あんまりしっくりこない。日本に貴族なんていなかったしな。


「うちの家系ってね。前にも言った通り、セリアル様の血を引いているのね。セリアル様の孫だった人からの家系図もちゃんとあったのよ。それがイグニス子爵家の誇りでもあったの。私も小さかった頃からお母様に「あなたはルドールの聖女の末裔です。困ってる人を助ける立派な人になりなさい。」って聞かされてて、私はあのセリアル様の子孫なんだーって嬉しく思ってたし、それが私の誇りにもなってたの。」


アリアのセリアル様に対する執心は小さい頃から植えつけられていたのか。


「それでね、私が7歳の時にロレイ女学園に入学した時の話なんだけど、私はそれまで神聖魔法の練習とかでほとんど家から出ることもなくて、初めて同年代の子達と過ごす場に浮れてたのね。それで自己紹介の時に失敗しちゃったの。ロレイ女学園はね、貴族の娘や平民でも裕福な家柄の娘しか入学できないんだけど、その初めての自己紹介の時に私はセリアル様の末裔です。セリアル様の様に立派な人になりたいですって言ってしまって・・・。セリアル様って凄い有名人だから血を引いてるっていうだけでかなり目立つのね。それが面白くなかったのかな?ある侯爵家のご息女がそんな私の言葉をウソだと言ってきたの。私は誇りに思っているセリアル様との関係は否定したくなかったから、ついウソなんかじゃないって反論してしまったの。それが気に入らなかったみたいで私は目立ちたがりの嘘つき娘と言われてしまって・・・。その侯爵家のご息女の家はかなり力を持っている貴族で、貴族籍の人は皆その方の側についてしまったわ。それで私に話しかける人がいなくなっちゃって・・・はは。もっと社交界とかに出て色々な事を知っておくべきだったなぁ。」


アリアが乾いた笑いを浮かべる。

別にアリアは悪くないじゃないか。今まで社交界に出てこなかったポッと出のアリアに人気を取られそうだったから嫉妬したってわけか?


「それからの3年は辛かったなぁ。家族に迷惑掛けたくなかったから言えなかったし。唯一の楽しみは長期休暇で家に帰ることだったの。でもあの日、私が10歳の時に学園の長期休暇を利用して家族と領地で過ごしていた時に、お父様とお母様、そして私と妹が乗った馬車が異教徒の狂信者達に襲撃されてしまって・・・私以外皆殺されちゃった。」


「ユグドさんとセリアさんに助けてもらったって時のことだよね?」


「うん、休暇にね家族皆で出かけてたんだ。その時に馬車が襲われて・・・。私と妹はお父様とお母様に座席の下に隠されたのだけど、直後に大きな音がして私の隣にいた妹が泣き始めちゃったの。それで私達も見つかって、私は剣で刺されて、妹は魔法で・・・」


「アリア無理しなくていいよ。」


辛い過去を思い出してしまったのか、顔色が非常に悪い。目の前で家族を殺される事を思い出して平気でいられるわけないもんな。


「・・・ごめんなさい。それでね、私ももうここで死ぬんだって諦めかけた時にお兄ちゃんとお姉ちゃんに助けてもらったの。それでお兄ちゃんが学園まで連れて行ってくれるって言ってくれて。少しの間一緒に旅をしたんだよ。最初はショックが抜けきらなくてしゃべれなかったんだけど、お姉ちゃんがいつも優しく話しかけてきてくれて、ようやくしゃべれるようになったの。1ヶ月くらい一緒に旅をしてから学園まで送り届けてもらったんだけど、本音を言うとお兄ちゃん達と一緒に行きたかった。でもこれ以上迷惑は掛けられないって思ったからお礼を言ってお別れしたんだ。」


「・・・・・・」


「復学して学園長に呼ばれた時に知らされたのがイグニス家の爵位剥奪だったの。一応卒業までは在籍することは許されたけど、その事が広まってから平民の子達まで私のこと避けるようになっちゃってね。卒業するまではずっと一人だった。これでも一人で生きていけるように必死に魔法の勉強とかしたんだよ。・・・でもやっぱり、一人は寂しいよ・・・。学園に戻ってから夜一人になると怖くなって眠れないの。寝ててもすぐに起きちゃうんだ。それは今でもなんだけどね。私が朝起きないのはヨーヘーと一緒に旅を始めて、同じ部屋で眠って、一人じゃないって事に安心しちゃって寝坊してるのかもしれないね。」


そういえばアリアが起きない時って俺が部屋にいる時だけだったな。スーラの宿屋の時も俺が下の食堂に朝食を取りに行った時に起きてたみたいだし、人の気配がなくなって起きてたのかもしれない。


「ヨーヘーに初めて会った時にヨーヘーはセリアル様を知らないって言ったでしょう?普通ありえないんだよ?でも、この人ならちゃんと私を見てくれるかなって実は期待してたの。久しぶりにお話できたもんだから今まで溜まってた分をしゃべり過ぎちゃって、それに気付いてまた失敗したって思ってたら、ヨーヘーは私の話をずっと聞いていてくれたでしょう?なんだか凄く嬉しくなっちゃったのを覚えてるよ。結構長かったと思うけどよく耐えたよね。ふふ。」


「あ、ははは・・・」


はい4時間です。自分でもよく耐えたと思っているよ。


「そこから先はヨーヘーの知ってる通り。これがアリア=イグニスです。こんな私だけど、ヨーヘーとはずっと・・・友達でいたいです。」


「ずっと友達と言わずに恋人になってくれてもいいのにー。」


「こ、恋・・!?」


ボンっと真っ赤になるアリア。可愛い。


「も、もうからかわないで!」


「あはは、でもね。さっきの話を聞いて、友達でいる条件を付けないといけないなって思った。」


「え・・・?」


急に不安そうになるアリア。感情がコロコロ変わる子だな。俺のせいでもあるが・・・。


「条件って・・・何?できることならなんでもするよ?」


「そんな大層な事じゃないよ。俺には迷惑を掛けないようになんて思わないで欲しい事。アリアは問題を抱えると一人で背負い込む癖があるみたいだ。友達なんだから迷惑かけていいんだよ。一緒に悩んで一緒に苦しんで一緒に泣いて、そして最後には一緒に笑おう。」


「うん・・・うんっ!!」


「どんどん我侭も言っていいからね。間違ってたり気に入らなかったら言い返すから!喧嘩することもあるだろうけどずっと一緒に仲良くやっていこう!」


「うんっ!!」


これからいい関係でいられるといいな。

アリアは話し終わってスッキリしたようで、フラフラしている。色々あったからな、精神的に相当疲れてるんだろう。


「アリア、疲れてるだろう?もう寝るといいよ。」


「うん、ありがとう。」


アリアはベッドに歩いて行って布団に入った。


はぁ、アリアめちゃくちゃ苦労してたんだなぁ。

7歳の時から17歳までだから10年か。

アリアには今後楽しい事をたくさん経験してもらって幸せになってほしいな。

それに寝起きはいいって言ってたけど、あれって孤独に恐怖して起きてるってことだよな。

長い間熟睡出来てないってことか?

それであの美肌はなんなんだ。ちゃんと睡眠取れるようになったらどうなってしまうんだ。

おっと、思考が逸れたな。

孤独の恐怖取り払ってあげたいな・・・。


「ヨーヘー」


ん?まだ起きてたのか。


「なに?」


「どこにも行かないでね。」


あら可愛らしい。


「大丈夫、安心してお休み。」


「うん、おやすみなさい。」


「おやすみー」


んー、俺も寝るかなー。



翌朝。


「ハァハァ・・・ヨーヘー・・・頭痛い・・・」


アリアは風邪をひいた。


「だから早く風呂入れって言ったのに!」


「うぅ・・・」


申し訳なさそうな顔になり布団で口元を隠すアリア。目が涙ぐんでいてなんかグッときた。


「病気治す神聖魔法ないの?」


「あるけど、病気の種類によって違うから・・・身体の異常を分析してから適した魔法を使うのだけど、今は集中できないから使えないー・・・」


使えねー!神聖魔法士使えねーー!!


「じゅ、熟練すれば・・ちゃんと使えるようになるんだよ?」


「今だよ!必要なのは今!」


「うぅ・・ごめんなさい。」


「はぁ、まぁいいよ。今日はちゃんと看病してやるから。」


「看病・・・してくれるの?」


「あたりまえだろ?」


「ふふ、ありがとー♪」


嬉しそうだなおい。

さて、俺は医療に詳しくない。民間療法をいくつか知ってるくらいだな。

この世界の風邪に効くような物なんて知らないしな・・・。

地球と一緒でいいんかな?


「ふむ」


俺は魔法の袋から風邪に効きそうな食材を取り出す。


「やっぱりよく聞くコレか?」


「ねぇヨーヘー・・・何それ?」


「ん?これは長ネギと言ってね、地球の食べ物なんだけど、俺の国では風邪の時にこれを使った民間療法があるんだ。」


「そうなの?・・・どんな風にするの?」


「ん~、実践あるのみだな。まずはアリア、四つんばいになってくれ。」


「えっと・・・こう?」


アリアは弱々しい動きで四つんばいになった。うお、顔を上気させて息の荒い美少女が四つんばいになってトロンとした目で俺を見ている。なんかこうグッとくるものがあるな!某三世ダイブしたくなる気持ちを抑えるのが大変だ。


「それから?」


「・・・・・・」


「ヨーヘー?」


ダイブを必死に耐えて次の工程に移ろうとしたところで大変なことに気付いてしまった。これをやろうとするとアリアの大事なところを見なくてはいけない。そんな状況になったら俺の中の三世を抑えられる自信がない。いや、しかしこれは治療だ!これをしないとアリアは治らないのだ!決して疚しい気持ちでやるわけではない!そうこれはアリアを治す為に必要なことなのだ!断じて興奮なんてしていない!


「ハァハァ・・・パ、パンツを下ろしてお尻をこっちに向けるんだ。」


「ん、パンツを降ろ・・・すわけないせしょう!?どんな民間療法なのよそれ!?」


枕が飛んできた。俺の顔面にダイレクトアタック!

この宿屋の枕は硬めであり結構痛い。


「いや、この長ネギを尻に刺すと治るっていう迷信が。」


「お、お尻に・・・!!??ダ、ダメよ!ダメに決まってるでしょう!!やっぱりヨーヘーはバカよ!変態よ!!それにお尻にだなんて・・・私も変態みたいじゃない!」


いかんアリアは病人なのに興奮させてしまった。顔を真っ赤にして抗議してくる。


「まぁ落ち着きなさい。身体に障るよ。」


「だっ誰のせいで・・・!もうっ!!」


落ち着かせようとしたが落ち着いてくれない。アリアに刺すのはなんか興ふ・・・いやなんでもない。まぁ俺がやられるとしたらすごく嫌だもんな。ここは引き下がるか。

後出来そうなのは生姜湯くらいか?


尻に長ネギを刺すのは残念ながら断念して、生姜をすり下ろしてお湯に溶く。そこに昨日取っておいたパショの実を絞り、ハチミツを入れて混ぜた。

どんな味かなーっと味見をしてみると、意外と飲みやすく出来あがっており、生姜効果で身体がポカポカするような気がしてきた。

あとは・・・そうだ。俺が風邪をひいた時にみかんの缶詰を食べていたな。あれも出してやろう。


「アリアー、これ飲むといいよー。」


「・・・なに?これ。」


何故かすごく警戒しているな。いったいどうしたというんだ?


「風邪に効くと思われる生姜湯っていう飲み物だよ。あと風邪ひいた時に無性に食べたくなるみかんの缶詰。」


「しょうがゆ?みかんのかんづめ?」


「まぁ飲んでみなって。」


恐る恐るといった感じで生姜湯に口をつける。


「あ、おいし。」


よかった。口に合ったようだ。警戒を解いたアリアはコクコクと飲んでくれている。


「わっ、なんか身体がポカポカしてきた。」


「よし、じゃあ俺は道具屋に行って風邪薬ないか聞いてくるから、それ食べて休んでるんだよ。」


「うん。ありがとう。早く帰ってきてね?」


「なるべく急ぐよ。アリアは飲み薬と座薬どっちがいい?」


「の・み・ぐ・す・り!!!」


ちぃっ


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