表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
虹の先に繋がる世界  作者: 水無月 壱九
グロスティア
19/172

19話 アリアの逃亡

ロジャーさんの開いてくれた宴会も終わり、冒険者ギルドを後にした俺達は宿に向かって歩いていた。


「あー、楽しかった。変な男の人に絡まれた時はどうしようかと思ったけど、助けてくれてありがとうね。」


「いやいや、でも気のいい人達でよかったよ。楽しい雰囲気でよかった。」


「私今までこんなたくさんの人と過ごしたことなんてなかったから、新鮮ですっごい楽しかったよー。ヨーヘーと友達になれてすっごい良かったなぁって思ってるんだー。」



「あら、もしかしてアリアさんじゃありませんこと?」


そんな話をしていた時に近くを歩いていた女性から声を掛けられた。

アリアの知り合いか?若い男2人女1人のグループがいた。男の1人と女は身なりのいい恰好。もう1人の男は革製の鎧を着ている。


知り合いかな?とアリアの方を見ると、表情がこわばっていた。なんだ?


「アリアさんですよね?私ですわよ。同じクラスだったザミーレです。こんなとこで会えるだなんて。ふふふ」


「・・・ザミーレさん。」


「まだ、この国にいらしていたんですのね。とっくにこの国から出て行ってるものとばかり思っていましたわ。」


そう言ってホホホと笑っている。

なんか様子がおかしい?アリアが小刻みに震えているように見える。


「・・・・・・」


「どうなさったの?お顔色が優れないようですが、何かおかしな物でもお食べになった?」


「ぃぇ・・・だ・じょ・ぶです。」


「何を言ってるのか聞こえませんわね。まぁしゃべってもウソしか言わない口から出た返答を頂いても困るのですけど?」


なんだ?こいつのあの蔑むような目は。その視線はアリアに向けられているんだよな?


「貴族も落ちぶれると惨めなもんですね。あ、元貴族でしたか。ふふふ、あら?アリアさんがお着けになっていらっしゃるそのペンダント、随分粗末な物でいらっしゃいますのね。まぁアリアさんには丁度良いと思いますが。」


「っ!!」


「おいおい、ザミーレさんよぉ。その嬢ちゃん何なんなのよ?お?よく見たらすっげー可愛いな。なぁあんた、ザミーレさんの知り合いなんだろ?だったらこれから俺達と遊ぼうぜ。いいだろ?」


2人の会話に革鎧の男が混ざってきた。


「ちょっと、ロイド。やめてくださる?、私は一緒に遊ぶなんて嫌ですわよ。」


「まぁそう言うなって、ちっとくらい楽しませてくれよ。」


「あぁそういうことですの。私は一緒にいたくありませんので、私のいないところでやってくださいな。」


「へへへ、わかってるって。」


そんな会話をアリアを無視して進めている。

アリアは顔が青ざめている。これはダメだ。


「そんなわけで、アリアちゃん。俺とあっち行って遊ぼうぜ。」


ニヤニヤしながらアリアの腕を掴もうとする男の手がアリアに触れる前に遮ってアリアを俺の後ろに隠す。


「あぁ?なんだてめぇは?アリアちゃんと遊ぶんだからよぉ。ひっこんでろよ。」


「俺か?俺はアリアの友達だ。「ぷっ」アリアとこの後約束があるから悪いな。」


ザミーレって女か?友達と言ったら笑われたぞ。


「はぁ?何言っちゃってんのお前?その約束はキャンセルだ。とっととどっか行きな!」


ロイドと呼ばれた男は俺の腹部を拳打してくる。

うぐっ・・・コイツ・・・!いきなり暴力を振るってくるとはなんて乱暴な奴だ・・・


「ぷっ、ククク、あーはっはっはーーー!」


突然ザミーレが笑い出した。


「んぁ?急に笑い出してどうしたんだよ。」


「ククッ、だって、クク、その人アリアさんの友達だって言うもんだから。ふふふ、先程、あなたの友達でよかったーなんていう聞いた事のある声が聞こえたものですから、さすがに何かの間違いだろうと思ったのですけど、プククク、アリアさんの友達、クク。あ、あなた、アリアさんの友達様でいらっしゃいますの?」


笑いを堪えながら(堪え切れてないが)俺に確認する為に聞いてくるザミーレ。何がそんなに可笑しい?


「あぁそうだ!アリアは俺の大事な仲間であり友達だ!!」


「クククククッはぁはぁ、大声を出さないでくださいまし。そしてあんまり笑わせないでくださいな。」


「何が可笑しいんだ?」


「いえ、アリアさんに友達が出来たと思うと面白くて面白くて、アリアさんは半年前まで私と同じマギルのロレイ女学園に通っていましたの。その時にアリアさんってば友達が1人もいませんでしたのよ。もっとも、誰も嘘吐きの友達になりたいなんて思いませんものね。あなたも騙される前に友達なんてやめたほうがいいですわよ。」


「やめて!!」


声を上げたアリアを見てみると大粒の涙を流していた。顔色はすごく悪い。不安そうな表情で俺を見つめてから、ふいっと顔を逸らすとそのまま走り去ってしまった。


「あなたに友達なんて出来ませんのよ!作らせるもんですかーーー!」


走り去るアリアの背中に向かって声を投げ掛けるザミーレ。


「アリア!!」


「お待ちなさいな。あの子の過去を聞きたくありません?色々教えて差し上げますわよ・。」


気にはなるが今のアリアの方が放っておけない。


「そんなもんはどうでもいい!」


アリアがいなくなった方へ走り出す俺。


「アリアさんに肩入れしてもきっと騙されますわよー!」


「ちっ、アリアちゃんもいなくなっちまったし、シラケちまったなぁ。色町でも行くかぁ。」


そんな声が後ろから聞こえてきたが無視をする。


アリアを追いかけたはいいが、見失ってしまい俺は一人で街中を走っている。


「くそっ!どこに行ったんだ!」


その時頬に冷たい物を感じた。


「・・・雨?」


降り始めた雨はだんだん強くなってきた。


「アリア・・・そうだ、雨も降ってきたしもしかしたら宿屋に戻っているかもしれない。」




雨に濡れながら宿屋まで戻るが、部屋の鍵はカウンターに預けたままだった。

カウンターに俺達の受付をしてくれた女性がいたので確認してみる。


「あの、ここに俺の連れ戻ってきませんでした?」


「あら、お帰りなさい。あの子ならまだお戻りになられていないかと思いますよ。」


「そうですか。ありがとうございます。」


「おはぐれになったんですか?」


「えぇ、ちょっと目を離したところで見失っちゃって。もう一回探してきますね。」


「あ、お待ちください。雨が強くなっていますので、これをお持ちください。」


そう言いながら傘を貸してくれた。


「早く見つけてあげてくださいね。」


「ありがとうございます。これお借りします。」


もう一度宿を出て今度は冒険者ギルドに向かう。

ここにも・・・いないか。

どこに行ったんだよ・・・アリア。

雨はどんどん強くなっていく。


探し始めて1時間経ったが手がかりすら見つからない。

くそ、こんな時に役に立ってこその魔法じゃないのか!

・・・待てよ。魔法か。

捜索系の魔法を作れればいいんだよな。時間がないので完璧に居場所がわかるような細かい設定は必要は無い。そういうのは後で微調整して今はざっくりでも方向さえわかれば手掛かりになるからそういう魔法を作ればいい。呪文名は『サーチ』だな。一番シックリくる。


魔法の構想を練り始めて10分程経過した頃になんとか魔法が形になった。


捜索対象。何を?アリアだ。探知対象は?魔力だな。魔力のサンプルは?サンプルか・・・そうだ!

人目に付かないところで魔法の袋(家)に入り、アリアのベッドのところまで行く。えーっと、あった!

よし。


「『サーチ。捜索対象:アリア。探知対象:アリアの魔力。探知サンプル:アリアの髪の毛。』」


どうだ?

・・・よしあっちに反応ありだ!

この魔法やっぱり方角しかわからないのな。まぁ今はそれだけわかれば充分だけどね。後で距離もわかるように調整にないとな。

俺は自分にブーストをかけてサーチが示す方向に走り始めた。

高速で走り続けるとサーチは街の外を指し示していることに気付いた。


「マジかよ・・・。」


街を出てサーチの示す方向には森があることに気付く。


「昼間に行った森か。」

森の中に行ってたら厄介だなと思いつつ森の入り口に向かうと、入口から少し離れた木の辺りに人影が見えるのに気付く。アリアだ。


「う・・・ぐす・・・うぅ・・・」


「アリア。やっと見つけた。」


ビクっと身体を震わせるアリア。

恐る恐るこちらを見る。


「・・・ヨーヘー?」


「そうだよ。あんまり心配かけさせるなよ。ほら、ずぶ濡れじゃないか。」


「心配・・・?私を?・・・なんで?」


なんでときたか。はぁ・・・


「友達を心配するのは当たり前だろ?」


「・・・友達・・・。ヨーヘーは・・・まだ私と・・・友達でいてくれる・・・の?」


確認するのが怖いかのような言葉を振り絞った感じで尋ねてきた。


「アリアが嫌だって言っても友達と言い張るよ?」


「でも、で・・も、ザミーレさんから私と・・友達に・・なるなって言われ・・なかった?」


「言われた。アリアが嘘つきだとも言われた。」


「・・・・・」


「でもそれがどうかした?今日初めて会った様なヤツに友達になるなとか言われて素直に聞くわけないだろ。それに俺はアリアが嘘つきなんかじゃないってことも知っている。過去に何があったのかとかわ知らないけどね。」


「私が逃げた後、・・ザミーレ・・さんに・・私の話・・言われなかったの?」


「言いたそうにしてたし気にもなったけど、アリアが心配だったから俺もすぐにアリアを追いかけたから聞いてない。ていうか、逃げ足速いね。すぐに追いかけたはずなのにアリアすぐに見失っちゃって大変だったよ。」


「でも・・・でも・・・」


場の空気をちょっとでも軽くする為にちょっと茶化してみたが、あまり効果はなかったようだ。


「アリアは俺と友達なのは嫌?」


「そんなこと・・ない!・・・私と友達で・・・いてください。」


「なら何も問題ないねー。アリアとはこれからもずっと一緒に旅するし、一緒に遊ぶし、一緒に買い物もするし、一緒に依頼だって受けるんだ。楽しい未来しか想像できないよー。」


「ヨーヘー・・・うぅ!」


「ほーらほら泣き止んでー、落ち着いてー。大丈夫だから、大丈夫。」


大丈夫だと言いながら泣きじゃくるアリアの背中を優しくさすってあげる。

アリアは嗚咽を漏らしながら俺の胸に抱きついてきて更に大声と出して大泣きし始めた。


「うわぁーーん!私、私ぃ・・・!!えぐっ、うぅ、わーん」


「大丈夫。大丈夫だよ。こんなに身体冷え切っちゃって・・・しょうがないなぁ」


「えぅ、えぅ、ヨォォヘェェエ・・・うぁぁぁ」


俺はアリアが落ち着くまで背中を撫で続けた。




「ひっく、ご、ごめんね。でも・・・ありがとう。」


「ん、落ち着いた?とりあえず宿に戻ろうか。と、その前に」


タオルを取り出して涙でグショグショになっていた顔を拭いてあげる。


「むぐ・・・自分で拭けるよぉ。」


アリアの抗議は無視してそのまま髪の毛も拭いてあげた。


「アリア、俺はこれから宿に向かうから、その間に魔法の袋(家)でお風呂に入っておきなよ。身体冷えてるみたいだし。」


「・・・嫌。」


「は?」


「私もヨーヘーと一緒に宿屋まで行く。お風呂に入るのは部屋に戻ってから。」


意味がわからん。


「とにかく!早く宿に戻ろっ!」


そう言ってアリアは俺の手を引いて街に向かって歩き出す。


「風邪引いても知らないからなー。」


「・・・えっとね。たぶん手遅れかな?なんか頭痛いし・・・」


おいっ!ダメじゃねーか!フラフラしてて危なっかしいな。


「バカ!早く風呂入って温まれよ!」


「イ・ヤ!」


むぅ、こうなったら速攻で宿屋に戻ってやる。後悔しても知らないからな。


「えっ?ちょっと?何!?」


アリアの膝裏と背中手を添えて抱き上げる。いわゆるお姫様抱っこだ。


「『フライ』、『ブースト』」


「え?え?え?ちょ、ちょっと待っきゃぁぁぁあああ!!!」


アリアが俺の頭にしがみついてきた。とても柔らかい物が顔に当ってる。冷たいけどいい感触だ。

とても嬉しいのだが一つだけ問題があった。前が見えない。


「ちょ!アリア!?前見えないから!!ねぇちょっと!?墜落するよ!?」


「そ、そんなこと言ったって!きゃあ!!」


誰かが見ていたら、かなりフラフラ飛んでいる物体が見えたことだろう。

激突することなくなんとか宿の前に降り立つことに成功する。あっぶねぇ・・・。


「うぅ怖かったぁ・・・。怖かったけど、ふふ。なんか楽しかった♪」


俺もなんか幸せでした。怖かったけどな。

宿に入ると受付の女性が俺達に気付き声をかけてきた。


「よかった。無事見つかったんですね。」


「ご心配お掛けしてすいませんでした。おかげ様で見つける事ができましたよ。あ、傘ありがとうございました。」


「夕飯の時間は終わってしまいましたが、取っておいてあるので後で取りに来てくださいね。お湯は必要ですか?」


ずぶ濡れのアリアを確認した宿の女性は心配そうにお湯が必要かと確認してきてくれた。


「本当ですか!ありがとうございます!夕飯どうしようかと思ってたんですよ。あおれとお湯は大丈夫です。こう見えて魔法師なのですぐに用意できますから。」


「ありがとうございます。えっと・・・女将さん?」


「いえいえ、では夕飯の準備しておきますね。10分程で準備出来ると思いますのでそれ以降に取りに来てくださいます?私はミランダと言います。一応女将ですよ。ふふ。」


「では、ミランダさん。アリアを部屋に連れて行ったら夕飯取りに行きますね。お心遣いありがとうございます。」


「はい、ではまた後で。・・・それにしてもお姫様抱っこいいですね。私も旦那にしてもらいたいです♪」


そう、俺はまだアリアをお姫様抱っこのままだ。立たせるとフラフラしてるから危ないしな。

アリアはまだお姫様抱っこされていたことに今気付いたようで顔を真っ赤にして俺の肩に顔を埋めている。だが、降りようとはしないので嫌がってるわけではないんだろう。


ミランダさんに再度お礼を伝えて部屋に行く為に恥ずかしがるアリアを連れて階段を上っていく。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ