160話 追加報酬
兵士さんに案内されながらしばらく歩くと、大きなお屋敷の中に兵士さんが入っていった。
どうやらここが目的地らしい。
お屋敷の正面玄関から中に入り、そのまま2階にある部屋の前まで案内されると、兵士さんは部屋の扉をノックした。
待つこと数秒。すると中から別の兵士が出てきた。俺達を案内してくれた兵士さんがフリーターを連れてきたと伝えると、中から出てきた兵士さんは一旦部屋の中に引っ込んでしまったが、すぐにまた出てきて俺達に入室を促した。
失礼しまーすと職員室に入るノリで入室してみると、そこには予想通り若様が俺達を出迎えてくれた。
だが予想外だったのはそこに若様の父親、つまり国王陛下もいたということだろう。
てか、なんでいるんだよ・・・いるとわかっていればもうちょっと真面目に入室したのに。まぁ「ちわーっす!」とか言わなくて良かったと考えよう。
「呼び立ててしまってすまなかったな。私も王太子という立場から監視の目がある場所では大っぴらに動けないのだよ。」
「いえ、それは構わないんですが、俺達が呼ばれたのって追加報酬の件でいいんですよね?」
「あぁ、その話をしようと呼んだのだ。ただな、下賜しようとしている物が王家所有の物だから、父上にも了解を得る為に話をさせてもらっていたのだ。すると父上からこの度の事で感謝も込めて、直接下賜しようという言葉を貰ってな。ここに呼ぶことになったのだよ。」
ふむ、国王陛下が出てきてしまったので、物件が気に入らなかった場合にやっぱりいらないですとは言い辛い状況になってしまったぞ。
貰えるものは貰っておこうというスタイルだったが、王家のお下がりみたいな物だと気に入らないから処分しまーすってやり辛いよね。
ただの物品なら必要なければ魔法の袋にしまっておけばいいのだけど、今回貰うものは家だ。まぁ家だろうが魔法の袋に入ってしまうのだが、王家所有の物だった家を持ち歩いていいのかわからない。いや、普通にダメだろうな。間違いなく騒ぎになる。
かといって貰っちゃったけど気に入らないけどから放置しますってのが許されるのかどうか。
家ってのは人が住んでないと劣化するっていうし、やっぱり放置はダメだろうな。
ここは貰ってしまう前に辞退しておいた方がいいのかもしれない。
別に態々面倒臭そうな家を貰わなくても、自分で建てればいいのだ。元々そういう予定だったし、家を建てるのに一番のネックになるだろう資金についても、金だけは国が運営できるくらい金額を持っているのだ。
よし、断るか。
「あの、追加報酬についてですが、あまり無理をされなくてもいいですよ?冒険者ギルドからも報酬は出るんですから俺達としてはお気持ちだけで充分ですし。」
「いや、是非とも受け取って欲しいのだ。そなた達には関係の無い戦争に巻き込んでしまうかもしれない危険のあった依頼だったはず。その見返りを用意しないというは王家の矜持が許さないのだよ。」
じゃあお金でいいですー。家と土地が買えるくらいのお金くださいー。王家ゆかりの物とか困るんですー。
「なに、数年に1度しか使わぬ家だ。遠慮はいらぬ。実際に家を見て気に入らなければ住まなくてもよい。そんなことで不敬にはせんよ。まぁそこそこ広いからな、持て余すようなら気に入った部分だけを譲る形でもよいぞ。もしハルネを気に入ったといった場合、あの場所は自然や景観を壊さぬよう開拓に制限をかけておる。そしてあの街は人気が高いから、土地も余っていないだろう。貰っておいた方が後々後悔しないで済むと思うが。まぁそれでも気に入らないということもあるかもしれぬな。そうよな、家を見てもらってから引き受け申請がなければ返納してもらうという形にしておくか。それならば気兼ねなく受け取れるのではないか?こちらとしても将来この国を背負って立つ息子を救って貰ったのだ。相応の誠意を見せたいのだ。」
どうやってやんわりと断ろうかと考えていたら、国王陛下からそんなお言葉を頂いた。そういう条件で良いのであれば仮ということで貰っておいても・・・いいか?
「ところで話は変わるのだが・・・」
お家を貰うかどうか思案していると、国王陛下が控えめに声を掛けてきた。
しかし先程に比べてちょっと前のめりになっている気がする。
その国王陛下の視線は俺の腰の辺りを気にしているように感じる。なんだろうか?
「お主の腰に下げている魔道具なのだが・・・それはどういった物であろうか?いや、すまない、こう見えて実は魔道具に目が無くてな。特に古代ルドールの魔道具は我が祖国の遺産という事もあって世界中から収集しているのだ。まぁ手に入るのは9割方 偽物なのだがな・・・。まぁそれはいい、それよりもお主が腰に下げている魔道具だが、余の見立てでは見せ掛けだけの紛い物ではなく、実用性のある魔道具と見える。良ければ見せてもらえないだろうか?」
この王様は魔道具コレクターのようだ。それで俺が腰から下げている魔道具に目を付けたらしい。
現在俺が腰につけている魔道具は2つあるのだが、目を付けられた魔道具はどちらだろう?1つはいつもお世話になっている魔法の袋、そしてもう1つは光を発する魔道具。懐中電灯の様な物と思ってくれればいい。
王様はこれらのどちらの魔道具に興味を持ったのか。
有用性で言えば比べるまでも無く魔法の袋だ。但しこれはミイ師匠が作った魔法の袋(携帯用)である。
そして懐中電灯の方はというと、正真正銘王様が集めているという古代ルドールの魔道具である。俺が過去のルドール王国で手に入れた物なので100%本物だ。
ルドールの魔道具を集めていると言っていたから、この懐中電灯に並々ならぬ興味を持ったのだろう。王様の慧眼には恐れ入ったという心境だ。
そういうことであれば、御見せしようじゃないか。あんまり大したもんじゃないけどな!
俺が懐中電灯を外そうとすると王様から声が掛かる。
「いや、そちらではなく袋の方だ。」
王様の目は節穴だった。いやしかし、どっちが有用かと言われると、ぶっちぎりで魔法の袋なのは間違いない。
これはどう判断すればいいのだろうか?
王様に見る目があるのかないのかわからんな。
「これは魔法の袋です。この袋の中には俺達の旅装等が入っていますので、中身の検分はご容赦頂けますでしょうか。」
「やはり魔法の袋か!いいのう・・・ちなみに中の広さは如何程か?」
「2立方ミールくらいですね。」
「ほう!そのサイズで2立方ミールか!中々の広さではないか。」
「驚くところはそこではありません。この魔法の袋にはインデックス機能がついてましてね。なんと中に入らなくても取り出したい物をその手に吸い寄せる機能が付与されているのです!」
「なっ、なぬーーーーーっ!!?そ、それは凄く便利であるな!!・・・どうだろう?それを譲っ「譲りません」・・・ケチィのぅ。仕方ない、旅をするにあたって必要な物であるとは理解できるでな。では、先程の筒型の魔道具はどういった物なのだ?」
「これは光を発する魔道具です。暗い所では便利ですね。」
「ほう、火種を必要としない訳か。それはそれで使い道がありそうだな。やはりそちらも譲ってはくれんのだろうな・・・」
「いや、こっちならいいですよ?」
「そうだろうな・・・え?いいの!?」
おい王様、口調が変わってる。まぁこれなら一杯あるからね。
「家を頂けるようですし、お礼に進呈しますよ。」
「マジか!?もう返せと言っても返さんぞ?いいのか?いいのだな?もう貰ってしまうぞ?ぅわっほーい♪魔法の袋程ではないが魔道具ゲットじゅゎーーーっ!」
なんか王様のキャラが崩壊していく・・・。
「うむ、そなたらはもう下がってよいぞ。余はこれから大切な用事があるのだ。報酬については追って連絡する。」
大切な用事と言っているが、手に入れた魔道具をいじりたいだけに違いない。王様の興味はすっかり懐中電灯魔道具に向いていて、こちらを一瞥すらしない有様だ。
子供かっ、せめてこっち見ろよ。
一応このお屋敷の主から退出を促されたので、それに逆らうわけにも行かないので、ダメな父親を見て若干顔が引きつってしまっている若様に連れられて部屋を退室した。
その際、失礼しましたと王様に声を掛けたもののガン無視であった。ちょっとエクスプロージョンぶっ放してやろうかと思ったのは内緒だ。
「その・・・父上が見苦しい所を見せてしまい申し訳なかった。魔道具が絡むといつも父上はあぁなってしまうのだ。」
「いえ、ちょっと驚きましたが、大丈夫ですよ。」
「すまないな。報酬である権利書等の書状は明日にでもこの街の冒険者ギルドに届けておく。一応冒険者ギルドを通しておいた方がいいだろうからな。足労してもらいすまなかった。」
「いえいえ、それではもう一波来る前に去らせてもらいますね。失礼します。」
「もう一波・・・?」
俺達が館から出て、門に向かっていると、後方に並々ならぬ気配を感じたので、気配のする方に振り返って見たところ、館から凄い勢いで俺達を追いかけてくる人物が見えた。
綺麗なフォームで全力疾走してくる人物。それはこの国の元首だった。
思ったより早かったな・・・もう一波。
「ちょぉぉぉおっと待てぇぇぇぇいぃぃぃっ!!!こ、これ、これ、これっ古代ルドールの魔道具ではないかっ!!!これをどこで手に入れたのだーーー!?」
なんという興奮っぷりだろう。
1つの魔道具でこれだ。
この王様にマジカルハウス内にある魔道具部屋を見せたらそのまま昇天してしまうのではないだろうか?
あの部屋は俺から見ても結構ヤバイ。今では貴重な物や、チートみたいな効果の物、俺とユグドの製作した悪ふざけの産物なんかが所狭しと置いてあるからな。
そんな事を考えていたら、俺はムキムキの太い腕で首根っこを掴まれ、そのままズリズリと館へ連れ戻されてしまった。
あれから3時間、どこで入手したのか、他にも持っているのではないか等色々聞かれたが、のらりくらりと躱してなんとか誤魔化しておいた。そんな態度からまだ持っていることは悟られただろうが、現時点ではそれを打ち明けるつもりがないことは伝わったようで、渋々ながらも解放されたのだった。
1つは進呈したが、他の魔道具を融通してあげる程親密にもなっていないからな。相手の立場等を考えると、この場限りの関係になる可能性は高いだろう。
館から出る時に、終始若様が申し訳なさそうに頭を下げていたのが印象的だった。
メイトゥモローさんもそうだが、この国の人物は癖のある人が多い気がする。真面目そうな若様でも、立場を考えずに少数で前線に殴りこむようなぶっ飛んだ事をしたりするしな。
今更ですけど、あけましておめでとうございます。
今年も宜しくお願い致します。




