161話 タコスうまー
館を後にした俺達だが、昼食をとっていない事に気付いたので、大通りに面したそこそこ繁盛してそうな食堂に入って食事を取ることにした。
長い時間拘束してくれた割に食事も出さないなんてケチィ王様だぜ。
爺やっぽい人が「お食事はいかが致しますか?」って王様に聞いてきたりはしたんだが、「今はよい」とか言って断ってくれたからな。
王族の食べる料理に興味あったんだけどなぁ。
食べさせてくれたら魔道具もう1個くらいあげても良かったんだけどなぁ。
まぁこの国の料理はまだ1回しか食べてないし、これらの料理も気になるからいいんだけどね。
今回俺達が頼んだのは定番と言われる料理をお願いした。
出てきたのはこの国の主食である小麦をトルティーヤのようにして焼いた物をの上に肉やら野菜やらの具材が置かれている料理だった。タコスかこれ?
周りを見てみると、皆手掴みでトルティーヤで具材を巻いて食べていた。
食べ方もタコスと同じでいいらしい。
皆で並べられた料理、もうタコスでいいや。
タコスに噛り付いてみる。
・・・うん、結構うまいな。
塩味だから結構あっさり系だ。
噛った反対側からは肉汁と思わしき物が垂れそうになったので角度調整をしながらタコスを堪能した。これ結構食べるのにコツがいるな。
皆はどうしてるのかと思ったら、案の定タァマちゃんは垂れる肉汁なんか気にしないでムシャムシャ食べていて、アリアとトリスは俺と同じ様に角度調整しながら噛っている。
ガオーなんて一口で口に放り込んでるから肉汁が垂れる隙を与えていない。
そしてマグロはというと・・・腰の袋をゴソゴソしていると思ったら、袋からミミズのような物をタコスにトッピングして食べていた。
若干食欲が無くなりかけたが、トッピングというのは悪くないと思った。
俺もマグロに習って魔法の袋から取り出したチリソースをタコスに掛けて食べてみると
「お、いいなこれ。」
「あ、ヨーヘーずるい。私にも頂戴。」
「これちょっと辛いよ?」
「たぶん大丈夫だと思うから頂戴。・・・んー、美味しいね♪こっちの方がいいよー。」
このタコスは美味しいのでソースを掛けて他の味も試したくなるな。サルサとか作り置きしておけばよかった。あ、ドレッシング系も合うかもしれないな。
「おい兄ちゃん。」
俺がそんな思案をしていると、隣のテーブルに座っていたおっちゃんが俺の肩をポンポンと叩きながら話しかけてきた。
「なぁ兄ちゃん、それ何をつけてんだ?よかったら俺にも分けてくれねぇか?」
「あ、どうぞどうぞ。辛いので掛けすぎないように注意してくださいね。」
「ありがとよ!・・・・おーっ!なんかピリっときて美味ぇじゃねーか!これはいいな!」
おっちゃんがでかい声で宣伝してくれたおかげで周りの人が俺にも使わせろと取り合いのようにチリソースがあちこちに移動していく。
中には俺の注意を聞いていなかった人がチリソースを掛けすぎた結果、顔を真っ赤にして苦しんでいたりもした。
チリソースは概ね好評で、騒ぎを聞きつけたお店の人に譲ってもらえないかと懇願されたので、適正価格(円をレンスに変換した価格)で結構多めに売ってあげた。
あの調子だとすぐに無くなるんだろうなぁ。
タコス食堂を後にして、街中をブラブラ歩いていたところ、ふとセリアル教会が目に入った。
折角だからアリアとの婚約届けを申請しに行っちゃおうかな。
「アリア、そこに教会があるけど、俺達の結婚届け申請しちゃわない?」
「あ・・・、そ、そうだね。うーん、でももうちょっと待って欲しいかな。あ、別にヨーヘーと結婚したくないってわけじゃないのよ?出来ればすぐにでも結婚したいんだけど、今はまだ待って欲しいっていうか・・・。大丈夫になったら私からちゃんと言うから、焦らしちゃってごめんね・・・。」
「えっと・・・なんか事情があるの?それはどれくらい待てばいいの?」
「うん・・・、事情の内容については私からは言えないんだけど、遅くても半年!半年以内には頑張ってもらうから!」
頑張ってもらうってなんだ?俺とアリアの結婚なのにアリアの言い方は第3者の影響で今は結婚出来ないって言っているように聞こえる。俺は今すぐにでも籍を入れたいのだが、こういうのはお互いが納得しないと溝が出来てしまうかもしれない。半年・・・遅くても半年待てば籍を入れると言っているんだからここは大人しく待つことにするか。
「わかった。じゃあアリアの準備が出来たら言ってね。」
「うん!ごめんね。私の我侭で・・・。」
「いや、アリアには何か考えがあるんでしょ?それが解決しないと気持ちよく結婚出来ないって考えてるんだよね?」
「うん、ヨーヘーと少しでも早く結婚出来るように私も頑張るから!だから今は待ってて。」
「わかった。俺に出来る事があったら何でも言ってね。」
「それだったら・・・ううん、何でもない。」
それだったら何だろう?俺に出来る事があるみたいな口ぶりだな。アリアは何かを見て言うのをやめたみたいな動きだった。一体なんだ?気になるじゃないか。
結婚届けを出す事はしなかったが、教会には立ち寄り、セリアル像にお祈りをした。
セリア、今はダメだったけど、もうちょっとしたら俺達結婚するからさ。ちゃんと祝福してくれよ。
・・・ちなみにアリアが今結婚してくれなかった原因ってセリアじゃないよね?俺の見落としたところに変な家訓とか残してないよね?そういう嫌がらせしてたらマジで怒るかんね?ヨウフェの自書伝出版しちゃうからね?知られざるセリアルの本性とか世に知らしめちゃ・・・ごめんなさい。そんな事致しません。だから妙な威圧を放たないでください。私めは貴方様の敬虔なる信徒でございますので。ホントごめんなさい。
祈りを済ませてから教会を後にして、その後も街をぶらつきながら買い物をしたりして宿に戻った。
冒険者ギルドに依頼達成の報告に行ってもよかったが、追加報酬を明日届けると若様が言っていたので、そちらへの報告は明日でいいだろう。
翌日、特に依頼を受ける予定もなかったので、比較的朝はゆっくりだった。
のんびりと支度を整えて冒険者ギルドに向かったのが11時くらいだ。
さすがに時間も遅い事もあって、冒険者ギルド内は閑散としていた。
暇そうにしている受付嬢の前に立ち、護衛依頼の完遂を報告する。
「どうもー、護衛依頼を終えたので手続きにきましたー。これ完了証書でーっす。」
「あ、ご苦労様です。・・・はい、確かに完了ですね。ではこちらが報酬の4万レンスになります。それと、この依頼には追加報酬があるみたいですね。確認してきますので少々お待ちください。」
そう言って席を立った受付嬢は奥の部屋に消えていった。
「追加報酬って家の権利書だよね?本当にくれるのかな?」
「うん、王様もくれるって言ってたし、貰える事は間違いないと思うんだよね。」
アリアとそんな事を話していると、受付嬢が戻ってきた。その手には1枚の封筒を持っているようだ。
「追加報酬はこの封筒みたいです。中には紙が入っているみたいなんですけど、これでいいんですよね?中身をご確認されますか?」
「たぶんそれでいいと思いますけど。一応確認しますね。」
受付嬢から封筒を受け取り、封を切って中身を確認する。
中に入っていたのは1枚の紙だった。かなり高級そうな紙だ。透かしでよくわからない紋章が浮かび上がる手の込みようだ。
紙に書かれている内容を読むと、クラウドホース領ハルネにある王家所有の家屋を下賜するといった文が書かれていた。
ほうほう、クラウドホース領ハルネね。ふむ・・・クラウドホースか。はて?どこかで聞いたような?
「ヨーヘー、どうしたの?」
俺が首を傾げているとアリアが俺が読んでいた証書を覗き込んできた。
「わぁ、本当に貰えるんだね~。ん?クラウドホース領・・・クラウドホースってメイトゥモローさんの家名と一緒だよね?」
あっ! そうだ、道理で聞いた事ある名前だと思った。ゴザルと同じ名前なんだ。そういえば道中でメイトゥモローさんはルッドールの地方領主だって聞いた事があったな。ということは、あの人の領地にある家ということか。
・・・なんだろう?あの適当な人が領主を務める町とか、言い知れる不安を感じなくもない。いや、でも面識のある人が領主をやっている土地の方が色々と融通が利くかもしれない。
「あのぉ~?どうですか?追加報酬はそれで大丈夫でしたか?」
「あ、はい。問題ないみたいです。」
「チラっと見えちゃったんですけど、その紙の透かしになっている紋章。それってルッドール王家の物じゃありませんか?」
あぁ、この紋章ってルッドール王家の紋章なんだ?そ ういえば古代ルドールの紋章に似てるな。ますます子孫の可能性が高くなったように思えるぞ。
「実は護衛依頼で王家の人と知り合ったんですよ。それでその方からこの追加報酬を頂いたんです。」
「はぁ~、そうなんですかぁ。それは運が良かったですね~。」
「そうですね。追加報酬も貰えて幸運でした。そうだ、聞きたいんですけど、クラウドホース領ってここからだとどうやって行けばいいんですか?」
「クラウドホース領ですか?それならノッガーナから北東方面ですよ。直線だと7メールくらいですが、途中で山を迂回しないといけないので、大体13メールくらいですかね?」
迂回で60kmも距離が伸びるのか。まぁ山に囲まれた場所だって言ってたし、道を作るのは大変なんだろう。
歩けば4~5日だろうが、イノッチ列車なら数時間だ。
しかし、イノッチは今不在である。あの子はどこかに遊びに行ったまま帰ってきていない。
今までも何度かそういうことがあったが、イノッチはあれで結構甘えん坊なので、いなくなっても1週間開けた事はない。最後に姿を見たのは2日前(若様達には見つからないようにジャレていた。)だな。
まぁいつ帰ってくるかわからないから歩いていってしまった方がいいだろう。
「ありがとうございます。簡単な地図とかってありますかね?」
「大体の地図でよければありますよ~。街の名前と大体の距離・方角がわかる程度のものですが。」
「それで構わないので貰えますか?」
「はいっ、500レンスになります!」
有料だった。しかも結構高い。手に入れた地図は子供でも書けそうな観光地マップみたいなやつであり、更に残念な気持ちにさせられる。山があって、川があって、道と街が書いてあるくらいだ。しかもルッドール全土が載ってない。まぁ、正確な地図は軍事機密にもなるって聞いた事あるし、小国群は現在ゴルスタと交戦中らしいから戦時中に手に入るものとしてはこんなもんなんだろう。そう自分に言い聞かせて納得することにした。
クラウドホース領方面に向かう護衛や、輸送依頼があれば受けても良かったが、依頼板を見た感じ該当する物がなかったので、俺達は冒険者ギルドを後にして宿に戻る事になった。




