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虹の先に繋がる世界  作者: 水無月 壱九
帰ってきたグロスティア編
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159話 ノッガーナの宿にて

その後、俺達を案内してくれたのはあの場にいた近衛に兵隊さんじゃなく、いかにも下っ端な感じの一般兵の人だった。下っ端さんに連れられてノッガーナの街に入ったのだが、そのままどこにも寄らずに1軒の宿屋まで案内された。少しくらい街を案内してくれてもいいのになーとか思ったりもしたが、これがこの下っ端さんの仕事なんだろう。

宿屋の中に入ると、彼は受付の人に何かを告げるとこちらに戻ってくる。そして宿泊費は王国が持つという旨を伝えると、これで任務完了とばかりに下っ端さんは足早に去って行った。

ちょっと素っ気ないなぁと思ったが、よく考えたら出兵前だ。本来なら俺達の案内なんてしている場合じゃないのだろう。

戦争か・・・メイトゥモローさんは災難だったな。やっと帰ってきたと思ったらすぐに前線に戻るわけだ。少しくらいはゆっくりしたかっただろうに。いい加減な男であったが、ちょっと同情してしまう。


その後は宿屋のおばちゃんに部屋を案内され、ひと段落する。今回は1人1室を宛がわれた。たまにはこういうのもいいだろう。毎日続くと寂しくなってしまうだろうけどね。

過去で皆と別れていた分、以前にも増して一緒にいたいと思ってしまう。

甘えてるなと自分に対して苦笑しつつ、窓から外を覗くと街を行く人が慌ただしく動き回っているのが目に入る。大通りに面した宿屋なので窓の下に見えるのは沢山の人が行きかう大通りだ。

今日は戦の準備で街中が慌ただしいのだろう。

邪魔になってはいけないので、今日は大人しく宿屋でゆっくりするとしよう。

そうすると何をしようか・・・そうだっ、アリアの部屋に行ってイチャイチャしよう。

すっかり忘れていた婚約の申請をセリアル教会に出しに行くことを話し合わないといけない。

ユグドの事が片付いたら結婚するとか言ってた癖に、あれから半年以上経ってしまっている。俺の時間軸で言えばセリア達と10年、奴隷解放で9年くらいか?まぁ約20年経っているわけで、忘れちゃうのも無理ないよねって感じだ。

ちょっと待て、千年のほとんどを魔法の袋の中で過ごしていたとはいえ、約20年は活動していたわけになるが、そうすると俺の年齢は43・・・いやいやいや、それは違うはずだ!リバースの効果で肉体年齢は23歳をキープしてるわけだし、実際に俺が生まれてからの年数で言えばまだ23歳!40代じゃない、40代じゃないはずだ!!

・・・不毛だな。年齢については考えるのはやめよう。生きていればそれでいいじゃない。


さて、すっかり忘れているといえば魔法師ギルドへの入会だ。機会があったらしようねとアリアとは話した事があったけど、その機会がなかなか無かった。さて、どうしようかな。

なんか今更感が半端じゃないんだよな。入るタイミングを逸しまくったというか・・・

身分証は冒険者ギルドのもので間に合っているので特に魔法師ギルドの身分証明が欲しいというわけではない。

魔法師ギルド員じゃないと閲覧できない魔導書とかは結構気になったりもするけど・・・この時代の魔法師のレベルを考えると、まったく発見がないとは言わないが、そこまで期待できないんだよなぁ。

魔法師ギルドに入会する旨みがあんまり無いように感じてしまう。


そんなことを考えていると、コンコンと俺の部屋のドアがノックされた事に気付く。

ドアを開けると、アリアがいた。


「休んでた?ごめんね。なんかヨーヘーの顔が見たくなっちゃった。」


「いや、大丈夫。俺もアリアに会いに行こうかなって思ってたところ。」


「本当?嬉しい♪ねぇ入ってもいいかな?」


「もちろん、ささっ、ベッドはあちらですよ。」


「ちょ、ちょっとヨーヘー!まだ明るいよ!?せめて太陽が沈んでからで、ね?」


「アリアは何を言っているんだい?俺はベッドの場所を言っただけなのに。」


「~~~~~~っ!!ばかっ!あほっ!もう知らないっ!」


「ごめんごめん、アリアが可愛いからつい、ね?」


「もうっ・・・からかわないでよ。」


むぅ、アリアがとても可愛い。片方の頬をぷくーっと膨らませた表情がなんかグッとくる。

膨らんだ頬を指先で押してみると、プーという可愛い音がアリアの唇から発せられた。

ちょっと怒ったような顔で俺を見上げてくるアリアだったが、そんな怒っている顔も可愛いのだから反則だ。


「本当に反省してる~?ってきゃぁ!?」


アリアを見てたらなんかムラムラしてきた。俺は本能に従ってアリアをお姫様抱っこし、そのままベッドにダイブした。宿屋のベッドなので硬いだろうと思っていたが、意外なことにベッドはスプリングが効いていた。なので、アリアとベッドに腕をサンドイッチされたのだが、全然痛くなかった。


「ちょっ、ちょっと!?本気なの!?ねぇ?ヨーヘー?あっ、なんか目がギラギラしてる。ちょっと落ち着こう?ね?っんぅ!?」


アリアの口を唇で塞ぐとアリアは大人しくなった。長いキスからアリアを解放し、表情を見てみると、上気した表情を浮かべたアリアがとろんとした目で俺を見つめてくる。アリアもその気になったようだ。

アリアの胸に手を当てて、もう片方の手でアリアの足に・・・


「お兄ちゃーーーんっ!!ここですかー!?」


「「ぎゃーーー!」」


不意を突いたタァマちゃんの登場に思わず跳ね上がってしまい、着地した時にその反動でアリアがバウンドし、ベッドの下に落ちてしまう。


「あーん、痛いよぉ。」


「ど、どどど、どうしたのタァマちゃん?」


「にゃぁっ!遊びにきましたっ!にゃ?お姉ちゃんもいますっ!」


「そ、そっかぁ。」


「にゃぁ?お兄ちゃん忙しいですか?」


「そんなことないよー!お兄ちゃんはタァマちゃんと遊びたくて我慢できないんだー。ほぅら、高い高ーい!」


「にゃははははー♪」


不思議な事に高まっていた俺の心はタァマちゃんの笑顔を見ている内に霧散していった。

さすがはマイエンジェル。笑顔だけで俺の心を穏やかにしてくれるラブリーニャンコ。

俺の手に抱かれて本当に楽しそうに無邪気な笑い声をあげるタァマちゃんを見ていると、あらゆる邪念が祓われていくように感じてしまう。

しかし、アリアはそうではなかったようで、落ちた時に打ちつけたのか、お尻をさすりながら俺に近付き


「夜になったら・・・ね。」


と言って、ベッドに腰掛けた。

どうやらキスでアリアのスイッチが入ってしまったらしい。

そういうことなら仕方ない。タァマちゃんの登場で賢者状態に近いのだが、夜までには再びテンションを盛り上げてみせる!




翌朝

え?夜についてだって?それは秘密だ。

それぞれ個室を取ったのにアリアが俺のベッドで寝ているということで理解して頂けると思う。

なぜかタァマちゃんも潜りこんでいるけどな!面倒臭がらずに寝巻きを身につけておいてよかった。

それにしても俺の意識が無くなる前はタァマちゃんは別の部屋にいたはずだ。

寂しくなって潜り込んで来たんだろうが、この子は親離れならぬ、俺離れできるのだろうか?

いや、離れて欲しいわけじゃないんだけどさ。将来を考えるとちょっと心配になるわけですよ。

しかし、タァマちゃんの寝顔を見ているうちに俺離れできなくてもいいという感情が強くなっていった。

むしろ離れてしまったら俺は凄い落ち込む事になるだろ う。想像しただけでここまで気分が落ちるんだもんな。




所変わって今は食堂に降りてきて皆で朝食をとっている。

このルッドール王国は主食が豆ではなく小麦だった。

そういった国は過去にはいくつかあったけれども、この時代では初めてだ。

つまりどういうことかというと、小麦粉が主食ということで、パンとか麺類があるのですよ。

まぁ、これまでも豆粉で作ったナップというパンみたいな物はあるわけだけど、やっぱりパンと言えば小麦粉だと俺は思う。

しかもこのパンね、柔らかいんですよ。ヨーロッパみたいに歯茎にパンが刺さりそうなガッチガチのパンじゃなくて、日本人ウケが良さそうな柔らかいパンだったのです。

これにはかなり驚いたね。色々研究されている ということだろう。

なので、地球育ちの俺からしたら、かなり慣れ親しい食感だった。

これは他の料理にも期待が持てると思い、並べられた料理に手を伸ばすと・・・相変わらずの慣れ親しんだ塩味だった。

いや、塩味が嫌だって言ってるわけじゃないんだよ。塩美味しいよ?でもね、もうちょっと調味料の方にも力を入れようよ。

パンだってこんなに頑張ってここまで改良してるじゃん。

味のバリエーションも研究しようとは思わないのか?なんで全部塩味なんだよ。味覚ないの?ないのって言うか、毎日同じ味で耐えられるの?え?俺がおかしいの?おかしいんだろうな、この世界では!

でも俺のパーティーの皆は塩以外の味も気に入ってくれている。毎日塩味だとキレるレベルで地球の調味料に染まっているとも言えるだろう。

なので、この国の人も単純に味を知らないだけなんだろうと予想できる。

これは色々な調味料とレシピを売ればボロ儲けできるんじゃないだろうか。

金に困っているわけじゃないからボロ儲けできなくてもいいんだが、たくさんの人に色々な味を知ってもらいたいという気持ちはある。


そんなことを考察しながら朝食を食べていた所、兵服を纏った兵隊さんが宿屋の入口から入ってきた。

はて?兵士の皆さんは遠征に出たんじゃないのだろうか?まぁさすがに全軍で遠征するわけじゃないか。

兵隊さんは宿屋をぐるりと見渡すと、俺達を視界に入ったところでこちらに歩み寄ってきた。


「失礼、君達が『フリーター』の者であっているだろうか?私はフホッヒハッハヒェッフュヒャー・・・殿下の使いの者だ。」


噛んだね。更にちょっと酸欠になったね。まぁ無理だよね。

ったく、こんな名前付ける親の顔が見たいもんだ。

・・・昨日会ってたわ。立派な貫禄を持たれていた王様だった。

名前だけ・・・名前だけが彼等の足を引っ張る。非常に残念な事だと思う。

まぁそれはいい。

この兵士は若様の使いだと言っていた。恐らく追加報酬の話だと思う。


「はい、俺達がフリーターですが。」


「フホッヒ・・・殿下が君達と話をされたいと仰っているので迎えにあがった。ご同行頂けるだろうか。」


名前言うの諦めんなよ。経験を積み重ねればいずれ噛まずに言えるようになるかもしれないじゃないか。

まぁいい、若様からの呼び出しね。たぶん報酬なんかの件だろうな。


「今朝食を取っているので、食べ終わるまでちょっと待ってもらってもいいですか?」


「わかった。私は外で待機しているので、準備が出来たら声を掛けて欲しい。」


兵士さんを待たせることになってしまったので、気持ち急いで朝食を済ませる事にした。

皆が食べ終えてから外で待っていた兵士さんに声を掛けると、そのまま付いてくるように言われたので、先を歩く兵士さんの後に付いていった。

たぶんこれが年内最後の更新になります。

次回は1月の中旬頃に更新する予定です。

それでは皆様良いお年を。来年もよろしくお願い致します。

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