157話 ルッドールに入国
どうやって500kmの道のりを進もうか悩んでいたが、とりあえず心が折れるまでは徒歩で進んで、歩くのがダルくなったら護衛対象の2人を魔法の袋にぶち込んでイノッチを呼ぶなり空飛んでいくなりすればいいだろうとう結論に至った。空路はガオーが物凄い勢いで抵抗するから空輸する場合はガオーには眠ってもらう必要があるけどね。
歩きながら定住先を探しつつ移動すれば、すぐに飽きるという事もないだろう。
500kmも移動したら兄貴の眠る地を通り過ぎてしまうかなと思ったのだが、ガオーの話だとルッドールから少し北に行ったところらしいので、ちょっと回り道をする感覚でいけるとのこと。今は護衛依頼中なので、依頼を済ませてから兄貴のところに向かうとしよう。
さて、移動を始めて10日が経ちました。
え?ぶっ飛びすぎだって?
いや、特に大きなイベントががなかったんですよ。
野営の準備しまくっていたから、街に立ち寄っても買い足す物もほとんど無く、道中アリアとイチャイチャしたり、タァマちゃんとキャッキャウフフしたり、トリスと語らったりしてたくらい。
戦時中である為か、魔物の間引きに裂ける人員が少ない為、魔物との遭遇率は上がったけど、街道を進んでいるからか、ランクの高い魔物と遭遇することはあまりなかったかな。
順調ともいえる旅路で、あえて問題をあげるとするならば、護衛対象であるメイトゥモローさんが魔物との戦いで前線に出ることくらいだ。
意外にも彼は相当な剣の腕前を持っているようで、危なげなく魔物を切り伏せていたりしてた。
こう見えてもメイトゥモローさんはルッドールを守護する将軍の1人なんだそうだ。
あの長い大太刀を自在に振り回し、バッタバッタと魔物を両断していくのだ。
驚いたのが抜刀のやり方だった。
最初、どうやってあの長い鞘を抜くのだろうと思って、興味津々に見ていたのだけど、なんとメイトゥモローさんは居合いの構えをし始めたのだ。
それはさすがに抜けないだろうと呆れたのだが、俺の心配をよそに彼は大太刀を振りぬいた。振りぬいた先にあるのは確かに抜刀された大太刀。日光を反射し、鈍い光をきらめかせていた。
そして魔物目掛けて飛んでいく鞘。
居合いかと思っていたら、鞘を使った遠距離攻撃でした。こうやって一つの謎が解けたのでした。
そんなわけで、メイトゥモローさんのおかげで戦闘では結構楽をさせてもらってる訳だけど、一応護衛対象なんだから少しは自重してほしいというのが俺の意見だ。
移動しながら定住先予定地探しも行っている。
ここまでに湖を2つ程見つけたけど、立地的にちょっと不便かもしれないということで、候補にはならなかった。今のところ第1候補は半年間植林作業をしていたキクケ湖だな。街から遠いってデメリットに目を瞑れば最有力候補であるのだ。
そして本日3つ目の湖を目の前にしている。
「ここは・・・どうだろうなぁ。」
「うーん、街から徒歩で4時間くらいかぁ。微妙に遠いよね。」
「にゃぁ、ここにはお魚さんがいません。」
そうなのか。なんでわかったんだろう?
タァマちゃんの言葉を受けて、俺も湖の中を見てみると、水草が1本も生えていない事に気付いた。陸地の植物も湖から10m以内には生息していない。
ここの水質は生物が生きていけない環境なのかもしれない。
「ここはダメだな。定住先には向かないよ。湖があってもこれじゃ何も出来ない。」
「そうね、ここじゃ魚も獲れないし、危ない水がある近くに住むのも精神的に疲れそう。」
「ん?ヨーヘー殿達は定住先を探しているのだろうか?」
俺達が話し合っていると、若様が興味を持ったようだったので、定住先を探していることと、その条件を話してみた。
何かいい情報があれば足を向けてみるのもいいかもしれない。
「ふむ、その条件であれば我が国に薦めたい場所がある。我が国の北部にある街なのだが、山々に囲まれた場所に湖があり、その畔に人々が暮らす街があるのだ。景色も良く、美しい土地だぞ。領都ではないので人口はそれ程多くなく、5千人といったところだが、自然が豊かで休養地としても注目されている。」
「へぇ、そんな場所があるんですか。ちょっと見てみたいかも。」
「そうだねっ、湖の畔にある街かぁ。素敵なんだろうなぁ。」
「もし気に入ったのなら、今回の護衛報酬としてその地に住居を手配しよう。」
「え、本当ですかっ?報酬で家なんて貰っちゃってもいいのです?」
「ヨーヘー殿達には命を救われたといってもいいのでな。それくらいのことならお安い御用だ。その地で王家が所有する土地を提供しても良いと考えている。まぁ父上の許可は必要になるが、うまく説得するさ。」
これは思っても無い申し出だった。どういったロケーションなのかは見てみないとなんとも言えないが、聞いた分には良さそうな条件である。更に土地と家付きということならば更にポイントは高くなるだろう。
そんな風に考えていると、若様は俺の耳へ囁くようにこう言った。
「(それに我が国は一夫多妻を容認している。見たところヨーヘー殿はアリア殿と恋仲のようだが、トリス殿からも思いを寄せられているように見える。将来的な選択肢として我が国に籍を置くのは都合がいいのではないか?)」
なっ、何を言ってるんだこの若様はっ。トリスとも結婚?いやいやいや、それはアリアに対して失礼だろう。
トリスが思いを寄せてくれているのはさすがに気付いているが、それでも俺はアリアの事を大切にしたい。
いくら国が許可してくれているといっても、不誠実だと感じてしまう。
でもトリスは俺に御魂を受け渡してくれたんだよな。
リオンに聞いたことがあるが、エルフが御魂を渡した以外の相手と結婚することはないらしい。つまり俺が責任を取らないとトリスはこの先ずっと独身という事だ。
御魂を貰った時は軽いものだとは思っていなかったものの、ここまで重いものだとは思っていなかった。
むぅ、この事は婚約してしまっている身だから俺1人で決めていいことじゃないな。婚約者であるアリアも無関係ではないのだから、後でアリアとじっくり話し合う必要がある。
そんな一面もあったが、俺達はルッドールに向けて順調に進み続けた。
途中で商隊に出くわしたので、ヒッチハイクをしてみたところ、リーダーさんが快く同乗することを許可してくれた。
タダ乗りするのはなんか悪いと思ったので、道中の護衛役を申し出たのだけど、すでに護衛は雇っているから気にしなくていいと言われてしまった。
イノッチ馬車のように流れるような景色ではなく、徒歩よりは早いがのんびりとした移動もいいよね。
しかし時間が経てば経つ程、タダ乗りしている自分達に負い目を感じ始めてくる。野営の準備、時折遭遇する魔物の処理、手綱を操り商隊を進める等の仕事を一切やっていないのでソワソワしてしょうがない。そこで俺達は食事を振舞うことにした。長距離移動の食事は乾物が普通だが、魔法の袋で食材の時間を止めている俺達は町にいる時と同じ料理を振舞うことができる。これが商隊や護衛の皆さんには好評だったので、別れるまでの料理当番を買って出る事にしたのだ。やっぱり自分達の作った料理を食べて笑顔になってもらえるのは嬉しいと感じてしまうな。
商隊と別れた時にはすでにルッドールに入国していた。関所みたいなところを通った記憶があるから、恐らくそこが国境だったのだろう。
故郷の地を踏んだからか、若様とメイトゥモローさんからどこか安心したかのような雰囲気を感じる。
「ここから首都まで10メールくらいでしたっけ?そこまで送れば依頼完了ですかね。」
「いや、ここから3メール程北東に向かった所にノブロイ領ノッガーナという街がある。今はそこに父上が滞在しているという情報を受けたので、そこまで護衛してもらえるだろうか。」
いつの間にそんな情報を仕入れたのだろうか?
「王様って首都にいるんじゃないんですね。わかりました、ではノッガーナまで護衛しますよ。」
「あぁ、父上は対ゴルスタの軍を編成する為に、国境近くで一番大きな街であるノッガーナにて準備をしておられるようだ。」
あぁ、戦争やってるんだよな。小国群からしてみたら攻められてきたから迎え撃たないと好き勝手やられるわけだし、抵抗するのは当たり前だよな。
この国の民の為にも頑張って欲しいところだ。
ルッドール王国は俺の中ではルドール王国の正統な血筋の国家だと信じている。ということは、今作られる魔道具よりも高性能を誇っていたルドールの魔道具をたくさん保有している可能性はあるんじゃないだろうか?
ルドールの魔道具があれば、ゴルスタの侵攻を食い止めるのに大きく役立つだろう。
特に王家が保有していた魔道具は凶悪な物が結構あったのを記憶している。
こんなん使ったら敵も滅ぶが自国も滅ぶだろうってのが複数あったのだ。開発者は何を考えて作ったのだろうかとユグドとよく議論をしたもんだ。
・・・もしかしてルドールが滅んだのってそれらの魔道具が原因だったりしてな。
俺達はノッガーナに向かってルッドール王国内を進んでいるのだが、ルッドール王国内を歩いていて感じた事がある。
それは魔物のランクが少し上がったように思えるのだ。
街道に現れる低ランクの魔物が、他の地域では人の手が入っていない森や湿地帯等の中部にいるようなランクの魔物が出るのだ。つまり、街道ではあまりエンカウントしない中級クラスの魔物が襲ってくる。
ブレードリカオンと同じか、それ以上の魔物がポンポン出てきて、街道だからといって気が抜けない。
これって行商人は相当強い護衛を雇わないと商売にならないんじゃないだろうか?
その辺の事を若様に聞いてみると、これが日常なので、そんな事は考えた事が無かったと言う。そういえば国外の魔物は歯ごたえが無かったなと言ってメイトゥモローさんと笑っていた。
実際、魔物が出ても、メイトゥモローさんは嬉々として切り倒していくので、若様の言ったとおり、本当にこれが日常レベルなのだろう。
ということはルッドールってかなり底力のある国なんじゃないだろうか。さすがに一般人は他の地域とそうは変わらないだろうが、戦いを生業としている者はこんなのと戦っているのだから自然と力を付けることなるよな。
ルッドールに入国して1日半程進んだところで、前方に大きな街が見えてきた。
しかし、それよりも気になったのが、街の外に展開している大勢の人達だ。
「あれは・・・」
「あれは我が国の戦士達だな。これから前線に援軍に向かうのであろう。」
あれはルッドール軍か。全部で何人いるんだろう?1万はいないと思うんだけど・・・
そんな事を考えていたらガオーが「5千人くれぇか」と呟いているのが耳に入った。
こいつは大軍と対峙した経験がありすぎるから、それなりに信頼できる数字だと思う。
ルッドールの兵士は精鋭揃いだとメイトゥモローさんから聞いている。
たしかに普段からあのレベルの魔物を相手にしているのだから、精強なのは間違いないだろう。
それが5千人か・・・。
ゴルスタの兵がどれくらい強いのかわからないが、ネリアはかなり強かった。
強い人間がいると周りも一緒に成長するものだろう。そんな兵士がゴルスタには60万いるらしい。
・・・・・・無理じゃね?
いくら精鋭といっても5千対60万。
その差は100倍以上ですよ?
1人で100人斬らないといけない計算になるわけだけど、いくらなんでも非現実的だろう。
ルッドールだけが戦うわけじゃなく、小国群の国々が兵を出すらしいので、実際には10万くらいにはなるのかもしれないが、それでも全面戦争になれば蹴散らされる兵力差だ。
ゴルスタは小国群の他にも近隣諸国や魔族にも手を出しているので、そちらにも兵力を割いているからなんとか持ちこたえられているのだろう。
若様に聞いてみたら、ゴルスタが対応出来ない程の兵力を投入してきたら、無理して迎え撃たずにその土地を放棄して、逆に手薄になったゴルスタ領地を奪い、あわよくば補給線を断って弱らせようという作戦で対応してるようだ。
さすがに馬鹿正直に正面からぶつかるわけないか。
ゴルスタも補給線を断たれると大打撃をくうので、すぐに奪われた領地を取り戻そうとするので、そこを更に回り込んで手薄な所を叩くといったゲリラ戦を仕掛けているのだとか。
それによって陣地の取り合いをしているような状況らしい。前線の国家は堪ったもんじゃないな。
戦況はどっちが優勢というようにはなっていないようで、負ける時もあれば勝つ時もあるとのこと。
若様が捕まった時は運悪く負けた時なんだろう。
そんな話を聞いていたら、ルッドール軍の中から誰かが凄い勢いで走ってくるのに気が付いた。
一応生存報告です。
国外逃亡から帰ってきました。
知ってますか?外国って日本語が通じないんですよ。
注文する事は出来るんです。でも向こうが何を言ってるのかわからないんです。
あとチップの文化はよくわかりませんね。なんで店側が雇った人に客が報酬を払わないといけないのか・・・文化だと言われればそれまでなんですが。
さて、今月中に更新しないと何かあったと思われてしまうので生存報告更新させて頂きましたが、来週更新できるか微妙です!頑張ってみますが、ダメだったらごめんなさい。
それとブックマークが500を越えていました!お付き合いして頂ける事をこの場にて御礼申し上げます。




