156話 絶対に末裔だ
ところで俺達はこの若様をどこまで送り届ければいいのだろう?
メイトゥモローさんから聞かされているのは囚われた若様を救出することだけなのだが、それだけだと護衛依頼とは言わないだろう。
2人は小国群の国家所属という話は聞いていたので、流れで小国群に足を踏み入れたわけだが、この小国群というのは約20の国家の総称だ。大きさも北海道くらいの大きさを持つ国家もあれば、国じゃなくて街だろうというくらい小さな国家もある。
そのどこかの国に所属している人物なんだろうが、どこまで護衛していけばいいのかわからない。ちゃんと聞いておけばよかったな。兄貴の墓があるのが小国群の1国らしいので、そこから近い国だと嬉しかったりする。
「ところでメイトゥモローさん、あんた達の祖国ってどこなの?そこまで護衛すればいいんだよね?」
「おぉっ、これは失礼、拙者伝える事を失念しておったでござる。我等の国はルッドール王国という。かつて栄華を誇っていた魔導大国ルドールの正当なる末裔が納める国家でござる。」
「ナ、ナンダッテー」
誇らしげに祖国を紹介したメイトゥモローさんに対し、すっごい驚いたリアクションをとっておいた。台詞が棒読みなのは信じていないからだ。
感情簿籠っていない台詞には気付かなかったのか、それを見たメイトゥモローさんは上機嫌になっているようだ。
「ヨーヘー、古代ルドール王国というのは今は失われた魔道具技術を持って繁栄していたというのは知っていますよね?現代では様々な国家の元首が箔を付ける為に、ルドールの正当なる末裔だと主張し、血統の格の高さを見せ付けるのと同時に、世界に散らばるルドールの魔道具の所有権を主張する動きがよく見られます。これは小さな国家によく見られる傾向がありますね。」
とトリスが現代のルドールについて解説してくれる。
「ルドールの末裔ねぇ・・・大体ルドールってコルベール王国があった場所にあったんだけどなぁ。あの国がどうやって滅亡したのか知らないけど、その末裔が色んなところに散ったとか?」
「ほとんどがウソの主張をしているのですよ。正式な家計図を所有する末裔はいないと言われていますし、ルドールの末裔を主張しているどの国家も彼の古代王国が滅亡したと言われている800年前から続いている国家はありませんからね。」
「トリス殿は我が祖国が虚言を言っていると申すか?」
「あ、いえ、そういうつもりじゃ・・・」
「我がルッドールは彼の国の後継でござる。そしてこちらにおわす御方こそ、ルッドール王国の王太子であらせられるのでござる。」
なんと、若様は貴族は貴族でも王族だったらしい。最近ネリアといい、若様といい、王族によく遭遇するな。誰か王族ホイホイとかの能力持ってるんじゃないか?
「やめよ、クラウドホース卿。私にとってルドールの末裔かどうかは些事に過ぎない。先祖様が残してくれた物は大切な物だが、それに固執してしまうと今を生きる民達を殺す事になる。それに、多数の国家がルドールの末裔を主張していることは事実だ。トリス殿の意見も尤もだろう。トリス殿は我が国を乏しめているのではなく、世間一般の意見を口にしただけであろう。」
「むぅ・・・かたじけないトリス殿。祖国を紛い物と見られているようで黙ってはおれなんだ。」
「い、いえ、私も言葉を選ぶべきでした。申し訳ありません。」
若様はそこまでルドールの末裔というステータスには執着がないんだな。民の事をよく考える王太子様か。ルドールの末裔かは置いておいても、結構いい国なんじゃないだろうか?現国王がどうかは知らないが、少なくとも次世代に暴君が立つことはなさそうだね。
「そうそう、申し遅れていたな。自己紹介もせずに失礼した。バタバタしていたということで許して欲しい。先程クラウドホース卿からも紹介があったが、ルッドール王国の第1王子であり、王太子である。名をフホッヒハッハヘッフハー=ルッドールという。以後宜しく頼む。」
「「「「・・・・・・」」」」
場を沈黙が支配した。料理をしていたアリアがオタマを取りこぼした音でなんとか全員が覚醒する。
俺は今思ったことについて、隣にいたトリスに小声で話しかける。
「(ねぇトリス、俺思うんだ。この若様、絶対ルドールの末裔だよ。)」
「(えっ!?どこでそのような確信を持ったのですか!?もしかしてあの肺の酸素が全部排出されそうな名前に何か意味が?)
「(いや~・・・ちょっと俺も確信を持ちたいから本人に確認してみるね。)」
「あのぅ、フホッヒ・・ ・(無理)、若様?つかぬ事をお伺いしてもよろしいでしょうか?」
「無理して名前で呼んでくれなくても構わないぞ。私はこの名前は好きなのだが、慣れていないと呼びづらいということも理解している。そして聞きたい事、というのはなんだろうか?」
「えっと、お父上のお名前も教えて貰ってもいいですか?」
「父上の?ハャスットゥットゥンバーだが?」
「え、えっと、お爺様の名前は・・・」
「アラランウヒョヒャッハーだ。」
「・・・ちなみにムヒョヒョンバッハとかルルルンルンベェって名前についてどう思います?」
「ほぉ、いい名前だな。世継ぎが生まれたらそのどちらかの名前を使ってもいいだろうか?むぅ、どちらも捨て難い・・・。悩ましい選択だな。」
この人ガチか!?
「(トリスッ!絶対この人ルドールの末裔だよっ!)」
「(ヨーヘー、落ち着いてください。ヨーヘーが何を根拠に断定しているのかわからないですが、ルドールの末裔だと主張する者は王族に限らず、結構な数がいるのですよ。先程の質問の中に決定付ける回答があったということですか?)」
「(あんな罰ゲームみたいなDQNネーム付ける感性もった王族があいつ等以外にいてたまるかっ!)」
「(そういえばヨーヘーは過去にルドールの王族と謁見しているのでしたね。もしかして先程出した名前は・・・)」
「(27代目と28代目の名前だよ。)」
「(うわぁ・・・ゴホン、なるほど・・・、私の知っているルドールの末裔を名乗る者に、あぁいった特異な名前を持つ者はいませんね・ ・・裏づけを取ることは適いませんが、ヨーヘーがそういうのであればもしかしたら本物なのかもしれませんね。)」
若様をよく観察してみると、それとなくムヒョヒョンバッハ陛下の面影が・・・あるわけがない。
仮に本当に子孫だとしても俺の知っているルドール王族は1000年前の人物だ。
ムヒョヒョンバッハ陛下の血なんて薄まりまくってて残っていたとしても指1本分くらいがせいぜいだろう。
「私の顔に何かあるのか?」
俺がジロジロ見ていたら、怪訝に思ったのか、フホッヒハッ・・・言えねぇよ!なんでハ行ばっかなんだよ!!酸欠になるわっ!
まぁ、そのハ行の若様が自分におかしな所があるのかと尋ねてきた。はい、そのネーミングがおかしいです。って言えたらどんなに楽か・・・。
「えーと、ハヒフヘホさん。ジロジロ見ちゃってすいません。ちょっと知り合いに(名前が)似ていたもので。」
「ハヒフヘホではない、フホッヒハッハヘッフハーだ。言い辛ければ、フホヒハハヘフハーと呼んでくれても構わないぞ。それにしても私に似ている者がいるのか。会ってみたいものだ。」
言い辛さ変わらねぇよ!むしろ言い辛くなったよ!
「かなり遠くにいる知人なので、難しいと思いますけど、機会がありましたら紹介しますよ。」
そんな機会は絶対こないけどな。妙な魔道具でも開発して生き長らえていない限り高確率で死んでいるだろう。
「ところで若様のルッドール王国というのは小国群のどの辺りにあるんですか?」
「我が祖国はここからだと・・・そうだな。国を3つ程越えたところだな。ルッドールは小国群でも3番目に大きな国だ。国土の半分、北側には緑豊かな山々が並び立ち、南側は平野が広がり、その先は海と面している。国境を山と海が守ってくれているので、大軍に攻め込まれる事も歴史上ほとんど・・・いや無いといえるな。とても平和な国だよ。」
「へぇ~、聞くだけなら素晴らしい国じゃないですか。でもなんでそんな国の王太子である貴方が、あんなゴルスタとの争いのある最前線近くにまで来ていたんですか?」
「よくぞ聞いてくれた!ゴルスタは領土を広げようと躍起になっている。我が祖国も今は国境に面していないから目に見えた脅威は解かり辛いだろうが、ここで静観していると必ず取り返しのつかないことになるのは目に見えているのだ。ゴルスタという大きな脅威の前に、小国群の国家は個々で当ればすぐに瓦解してしまうだろう。であるならば、今は脅威に晒されていない国家も明日は我が身と考えるべきであり、小国群の全ての国家が協力してゴルスタの侵攻を食い止めねばならぬのだ。」
いや、それはわかるんだけど、なんで王太子という重要な立場の若様があんな前線で捕虜になっていたのかを知りたかったんだよなぁ。他国と協力するのなら兵士を派兵すればいいわけで、王太子自らが前線に赴く必要はないと思うんだ。危険のない戦で実績をつける名目で王族が表に立つとかならわかるけど、相手は大国ゴルスタだ。戦死する確率は非常に高いのはわかるはずだ。自国が攻められてるならまだしも、王太子が出張るような話じゃないと思う。能力が非常に高くて、戦況を変えることができるとかなんだろうか?でも普通に捕まってたしなぁ。脅威だと思われているなら即処刑するよなぁ。情報が少なすぎてその辺はよくわからん。
「なるほど、それで俺達は若様達をルッドールまで送り届ければいいんですよね?」
「うむ、そうしてくれると助かる。今回私は多くの兵を失ってしまった。残っているのはクラウドホース卿だけだ。一度体勢を立て直す必要もあるから祖国に戻るのがいいと考える。」
「わっかりました。それとすいません、ちょっと勉強不足でして、ルッドールがどこにあるのか知らないんですよ。ここからどれくらいの距離があるんですか?」
「距離か・・・ふむ、そうだな・・・国境までは50メール程か?首都までとなると60メールはあるだろうな。」
ぶっ、国境まで500kmかよっ!結構距離があるな・・・。徒歩だと1日30kmと計算しても20日弱掛かるのか。東京=大阪間を移動しろということか。
どれくらい大変かわかるだろうか?ミイ師匠がいた岩場からユグドが引き篭もっていたザクレンまでが大体400kmちょっとだ。
つまり何が言いたいかというと、拙者そんなに歩きたくないでござる。・・・おっといけない、メイトゥモローさんの口調がうつってしまったようだ。
すごくイノッチで移動したい。イノッチならば500kmくらい1日でバビューンと移動してくれる。その代わり破壊を撒き散らすことになるが・・・
そうそう、イノッチといえば、この半年でまた一回り・・・いや二回り大きくなりました。ヤンチャっぷりは抜けていないので、遊ぶにも命がけだったりする。街道に出て旅人に恐れられたイノッチだったが、今はあの時にも増して更に災害級としての貫禄が付いてきたように感じることもあり、人々に与える恐怖は以前よりも相当強いだろう。成体になったらどうなってしまうんだろう?
というわけで、ベヒモスに慣れていないこの2人にイノッチと対面させるのは怖がらせてしまう可能性が高いからできれば避けたいところだ。
そうなるともう歩くしかないのだが、500kmも歩きたくない。さて、どうしたものか。
ハ行の多い若様でした。
そういえば最近気付いたことがあるんですが、ハリーポッターって作品あるじゃないですか。作者はスネイプ先生と子マルフォイが大好きなんですが、今は作者の好みはどうでもいいとして、その作品の中にグリフィンドール、スリザリン、ハッフルパフ、レイブンクローって4つの寮がありますよね?その中のハッフルパフ。
皆さんはハッフルパフって10回息継ぎ無しで言えますか?
作者は4回で空気が無くなりました。是非試して見てください。
ついでにちょっと申し訳ない報告が。
ちょっと海外に高飛びするので、来週と再来週は更新できません。
話のストックもないので、もしかしたら更に更新出来ない日が伸びるかもしれませんが、なるべく早く再開したいと考えております。
もし12月になっても反応が無いようでしたら、海外で何かあったと思ってください。
それでは、来週言えない分をここで。
「トリックオアトリート!!」




