15話 最初の町よ、さようなら
次の日の朝
「うーん、よく寝たー。マッサージのおかげかな?体に疲れが無いや。」
さて、今日はキエフさんからの運搬の依頼でブランダに向かうことになっている。
今日の予定はこんな感じだ。
・アリアを起こす。
・朝食を食べる。
・チェックアウトする。
・キエフさんから荷物を受け取る。
・ブランダ目指して出発する。
よし、まずアリアを起こさないといけないな。これが一番難しい気がする。
隣のベッドで期待を裏切る事なくスヤスヤと眠る娘さんに目をやり、自分の両頬を叩いて気合いを入れる。
「アリア―!朝ですよーーー!めーざーめーよーーー!!」
ゆっさゆっさ。
「んむぅ・・・スゥスゥ・・・」
「アッリアー!ご飯食べて依頼に行くよーーー!!」
ゆっさゆっさゆっさ。
「んぅー・・・スゥスゥ・・・」
ちっくしょう、相変わらず手強いなっ。昨日みたいにまた朝食を貰ってくればお腹を空かせて起きるかもしれない。派手な音を出して起こしてもいいんだが、さすがに他のお客さんにご迷惑だからな。
朝食の前にトイレに行っておこう。
部屋を出て共同のトイレに行き、用を済ませた後に食堂に降りる為に階段を降りていると
「ヨーヘー!」
後ろからアリアに声を掛けられた。
むぅ、起こし方がやっぱりわからん。まぁ起きたからいいか。
「おはようアリア。朝ご飯食べに行く?」
「う、うん!行く、食べに行きます!」
そのままアリアが走り寄ってくる。寝間着のままで。
「アリア、とりあえず着替えてきたら?」
「え?・・・あっ!!」
自分の姿を確認して顔を真っ赤にしながら慌てて部屋に戻っていった。
その後、着替えたアリアが出てくるのを待って一緒に食堂に下りて行った。
「ヨーヘー、一人で行かないでちゃんと起こしてよー。」
起こそうとしましたよ!?
「起きなかったのですよ?」
「それでもちゃんと起こして。次から先に行ったら怒るからね。」
そんな理不尽な・・・
「じゃあちゃんと起きてね・・・」
「・・・頑張るっ!」
両手を胸の前で握り締め、フンスと気合いを入れている。可愛いけどなんだこれ?
食堂の席に着いて朝食を食べながら今日の予定を確認する。ちなみに今日の朝食はグーツという料理、豆の煮物っぽいのとナップというパンのような食べ物だ。塩味が効いていてとてもおいしい。
食事を終えてから女将さんに世話になったお礼を言って、部屋に戻って出かける準備をしてから宿を後にし、キエフさんの鍛冶屋を目指した。
「おう!待ってたぞ!これが運搬してほしい品物だ。ちっと重いが大丈夫か?」
そういって木箱を渡してくるキエフさんから依頼の品を受け取る。
うぉ!?重いな!!20kgくらいありそうだ。
「大丈夫か?重さは2グルくらいだからなぁ」
単位がよくわからん。これもアリアにあとでアリアに聞いてみよう。
「なんとか・・・大丈夫です。」
「重そうだね、ヨーヘーはそっち持って。」
アリアが木箱を挟んで俺の反対側に立ち木箱を支える。
「わっ、ホントに重いねー。」
「おいおいホントに大丈夫か?」
「大丈夫ですよ。ちゃんと責任を持ってブランダまで運びますから。アリア行くよ。」
「ならいいんだが・・・」
心配そうなキエフさんに声をかけて荷物を持った俺達は町の出口に向かった。
「アリア重くない?疲れたら言ってね。」
「うんまだ大丈夫だよ。ガンバロー!」
んっしょ、んっしょと木箱を運び町を出た。町を出るときに門番さんに荷車使えよと突っ込まれた時に、それもそうだと気付かされた。
いいんだよ、人目がつかない所で魔法の袋に収納するんだし。
一応ミイ師匠の話だと魔法の袋は希少な物らしいから、盗まれたくなければ人目につかない方がいいと言われているから、使う時は隠すようにしてるわけだ。複製できるし、作ろうと思えば作れるから盗まれてもいいといえばいいんだが、中身まで持っていかれるのは面白くない。
複製できるとか希少とはなんなのかという台詞だが、出来ちゃうものは出来ちゃうのだ。
まぁ、今のところ魔法の袋を持っている事をアピールするような場面には遭遇してないので態々嫉妬を買うようなことをしないでもいいだろうとの判断で隠してるだけだ。
荷車を用意したとしても、もうちょい運べば不要な道具になってしまうので、荷車にも悪いしな。
荷車を用意しなかった言い訳をつらつらと並べましたが、気付かなかったただの負け惜しみです。
そんなわけで、またな!俺にとっての異世界最初の町!
休憩しながら町から充分に離れたところで木箱を下ろす。
「あー、重かった。」
「マジで重いな。腕が痛いよ。こんなんじゃ6日で着くか怪しいね。これはまた夜アリアにマッサージしてもらうかなー。」
「ふふ、いいよー。」
「そうだアリア。この世界の重さの単位って何て言うの?」
「えっとね、一番小さい単位がガル、ガルの100倍の重さでギル、ギルの100倍でグル、グルの100倍でゲル、ゲルの100倍でゴルになるよ。ゴルなんて滅多に使われないけどね。」
なるほど、長さと同じ上がり方なんだな。そう言って魔法の袋からコーラのペットボトル(1.5L)を取り出してアリアに渡す。
「アリア、これどれくらいの重さかわかる?」
「んーっと、14ギル?15ギル?16ギルとかそのくらい?」
正確な数字は違うのかもしれないが1Kg=10ギルくらいってところか。つまりこういうことだ。
1ガル=1g
1ギル=100g
1グル=10kg
1ゲル=1t
1ゴル=100t
「ありがとう。大体わかったよ。」
「ねぇヨーヘー。これ何?黒い水?」
物珍しそうにアリアがコーラを見ている。
「それはコーラって言う飲み物だよ。」
「これ飲み物なんだ?飲んでみていい?」
「いいよ。あ、冷やしたほうが美味しいよ。」
冷蔵庫には入れてなかった物なのでとても温いはずだ。
「わかったー、『ブリザード』」
魔力調節をしたのか、コーラを中心に1mくらいの小規模な範囲に吹雪状態になった。
1分後、キンキンに冷えたコーラがあった。
俺は待ってる間に出しておいたコップに冷えたコーラを注ぐ。
1つをアリアに渡し、一口飲む。あー、冷えたコーラうまいなー。
俺が飲むのを見ていたアリアは恐る恐るコーラに口を付ける。
「!!?何これシュワシュワする!!」
そりゃあ炭酸飲料だからな。シュワシュワしてなかったらたぶんクレームくるぞ。
「それに甘くておいしい!」
そう言ってゴクゴクとコーラを飲み干すアリア。
ペットボトルを掴んでお替りを注いでいる。気に入ったのかな?
俺が飲み終わる頃に2杯目も飲み干していた。
「ヨーヘー、これ貰ってもいい?」
「いいけど、気に入ったの?」
「うん!これおいしいよ!」
そう言って肩にぶら下げていた水筒の中身の水を地面に流して、空いた水筒のにコーラを注ぎこんでいる。ペットボトルのまま持って行けばいいのに、自分の水筒に入れることで私の物アピールをしているんだろうか?
「蓋ちゃんと閉めておかないとシュワシュワが無くなっちゃうからね」
「うん、わかったよー」
「さて、休憩も終わりにしてブランダに向かいますか。」
重かった木箱は魔法の袋(携帯用)に収納し、ブランダ目指して歩くのだった。
今更だけど、グラビティの魔法で軽くしてから運べば良かったと魔法の袋に収納する時に気付いたのは内緒だ。魔法師として失格である。
道中エンカウントするグランドワームやアナウサギを倒しつつ歩き、日没が近づいてきたので今日はここまでとし、野営できそうな場所を探す事にする。
街道から少し外れた所に岩場を見つけたので、そこで野営することにしよう。
「アリア、今日はここで野営しよう。」
「りょうかーい。このペースだと到着は明後日くらいかな?」
今日1日で20kmくらいは進んだと思う。スーラからブランダまで続く街道には旅人の為に10km毎に野営出来る広場が存在する。さっきその広場の2個目を通過したから20kmくらいなのだろう。広場には何組かの旅人がいた。馬車に荷物がたくさん積んであったから恐らく商人だろう。
人前で魔法の袋(家)を使い、それを売れだのどこで手に入れただのと根彫り葉掘り聞かれるのも面倒な上に奪おうと襲われる可能性も捨てきれないので、俺達の野営ポイントは広場から1kmくらい進んだところだ。
魔法の袋(家)に入り、アリアと夕飯の相談をする。
「今日は何を作るの?」
「うーん、そうだなー。米は今炊いてるからいいとして、おかずはどうしようか。アナウサギの肉を使うか、地球の食材を使うか。」
「昨日宿の女将さんに初日の夕飯に出た豆の炒め物あったでしょう?あれロイト豆のプラニュって料理らしいの。レシピ教えて貰ったから、それ作ってみる?材料も買っておいたし。あれ、お米と一緒に食べてみたかったんだー」
「お、いいね。じゃあそれにしよう。それと買った食材と調味料貸してもらえる?使い切ってもいいようにクローンで増やしておくから。」
アリアと一緒にロイト豆のプラニュを作って、あの時欲しかったお米と一緒に食べた。
やっぱりこの料理お米に合うわー。
「うん、おいしいねー♪」
アリアも自分が作った料理が美味しく出来ていてご満悦の様子だ。
その後お風呂に入って昨日に引き続きマッサージをお互いにやりあった。
やっぱりすげー気持ちよかった。長距離を歩いて硬くなった筋肉がほぐれた感じがするな。
アリアなんてマッサージをしている最中に寝てしまったのだ。
スーラで作ったベッドの寝心地が良く、二重の気持ち良さで寝てしまったんだろう。俺も落ちそうになったしなー。
起こすのもなんだからそのまま寝かしておこう。
俺は眠気を我慢して文字の勉強だ。
アリアから基本的なことは教わっているので、あとは反復勉強だな。アルファベットを読むのはできるようになったが、書くことになると思い出せないものが2~3個あるのでそれらの書き取り練習を行った。
ついでにスラスラ読めるようになる為に、本でも読もうかと思ったわけだが、肝心の本がなかった。スーラで買っておけばよかったな。ブランダに着いたら探してみよう。




