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虹の先に繋がる世界  作者: 水無月 壱九
天獣王編
127/172

124話 破壊女王と弟子

所変わってここはドアートの街だ。

ガオーの行方を追ってこの街まで来てみたものの、結構でかい街だとわかり、サーチ頼りでガオーを捜索中である。

街を横切り、反対側の門まで来た所でやっとガオーを見つける事が出来た。

見つけたガオーはというと、なんと護送中だった。・・・そう奴隷として。

あいつは一体何をやっているんだろう?仮にも奴隷解放軍のリーダーともあろう者が、捕まって奴隷に落とされてるとか冗談にしても笑えない。

お前の事を放っておいた俺も悪いと言えば悪いが、だからといって捕まってるっていうのはどうなんだ?ちょっと目を離すと何かやらかしているというような手の掛かる奴だったとは。つーか、お前兄貴とサシで喧嘩出切るくらいの実力あったよな?どうやったら捕まるんだよ?

冷たい目で俺がガオーを見ていると、俺の視線に気付いたのか、檻の中に入れられていたガオーが目を見開いて叫んできた。


「おいっ!おぉーいっ!!ヨーヘー!頼むっ助けてくれぇぇぇ!!ドジっちまった!ドジっちまったよぉぉぉぉ!!」


あ・ん・の・バ・カ・や・ろ・う!!

でっけぇ声で呼びかけやがって!おかげで奴隷商や警護の人、加えて門兵までもがこっちに注目しちまったじゃねーか!!助け出す難易度が一気に上がったぞ!あいつ後で絶対に殴る!!


「あっ!あいつはデスフィスト!!ノコノコ戻ってきやがったな!おい!兵士を呼び集めろ!!デスフィストがいたぞーーーーっ!!」


あれ?何これ?ヤバイんじゃないの?これは大騒ぎになる予感。ここまで騒ぎが大きくなってしまうと、穏便に済ますのはほぼ絶望的か?仕方ない、ローリーにはうまく逃げてもらって、俺だけでも自由に動けるように、ここは通りすがりの人畜無害な人族を演じる事にしよう。


「デスフィストの隣にいる黒髪の人族風の男が手引きしたに違いないっ!腕を組んでるくらいだ、無関係という事はあるまい!あいつもまとめてひっ捕らえろーーー!」


はい、手遅れでした。てか人族風ってなんだ!?俺はれっきとした人族だっ・・・あるぇ?そういえば地球人って人族に分類されるんかな?良く考えたら違うような気がする。ということは俺は人族風の男ってことになるのか。おぅ、あのおっさんの言うとおりみたいだ。

むぅ、こうなったら逃げるしかない。幸いすぐそこが街の出口だ。

俺はヴァン君を抱えると、ガオーの入っている檻に走り寄り、檻の傍にいた奴隷商と思われる小太りの男の肩に触れた。


「『スイッチ』」


入れ替え魔法を唱えると、檻の中のガオーと奴隷商を入れ替わる。奴隷商は何が起こったのかわからないようで、檻の中でパニックになっているようだ。


「すまねぇ!手間掛けさせた!」


「今はいい!早くそこの門から逃げるぞ!それと後で殴るかんな!ローリー逃げるよ!」


俺の号令で、ガオーとローリーは門に向かって駆け出した。門兵はすぐに門を閉じようとしていたが、俺達の方が門が閉じるより速く通り抜ける事に成功し、街の外に出ることができた。後ろを振り向くと凄い数の兵士さん達が追いかけてくるのがわかった。


妙に足の速いのがいるし、このまま走ってたら振り切れないと悟ったので、全員を抱えてフライで空に逃げようかと思ったところで、俺の横を並走していたローリーが立ち止まり、迫り来る兵士達に相対する。何をする気なんだ?


「ローリーは超絶な魔法を扱う大天才究極美少女大魔法師よ。逃げるのも癪だし、あんな砂利共なんてローリーが一掃してあげるわっ!」


彼女は魔法で追いかけてくる兵士達を蹴散らすつもりらしい。

それにしても、どんどん肩書きが増えていく気がするんだが・・・。


「さぁいくわよっ!その身に恐怖を刻み込みなさい!煉獄の炎よ、我の名において彼の者達を断罪せよっ!我が血を吸い、糧として灼熱の腸に全てを飲み込め!『スーパーデンジャラスアルティメットスーパーグレートスーパースーパーエクスプロージョン』!!」


何回スーパー入れるんだよ。どんだけ強調したいんだよ・・・。

それはともかく、なんて凄い魔法名だ。これはとんでもない威力の魔法な予感がする。なんといっても、将来破壊女王とさえ呼ばれるような子だからな。とんでもない破壊の力を持っているに違いない。普通のエクスプロージョンでさえ上級魔法なわけで、魔力の練り具合によって威力が変わるとはいえ、少なくとも直径30mは吹き飛ぶはずだ。エクスプロージョンレベルでも結構な威力だというのに、魔法名にあれだけスーパーやらが付いてしまうとなると、どれくらいの威力なのか検討もつかない。彼等の後ろにあるドアートの街も只ではすまないだろう。俺達だってバリアで身を守らないと巻き添えをくうのは確実だな。念の為に強力な障壁を張っておくとしよう。



「・・・あれっ?」


あれ?じゃねぇ!魔法発動してねぇじゃん!身構えて損したよ!!てかもう敵が目前まで迫ってるんですけど!?


「き、きゃあーーー!こっちにこないでーーー!!」


魔法が出ない事に焦ったローリーは、杖にしては太い棒、ローリー曰くファンタズムマジカルステッキを振りかぶり、思いっきり地面へと叩きつけた。


ドゴォォォォォオッン!!


・・・・・・はい?

な、なんだ今の?ファンタズムマジカルステッキが着弾した所を中心に、爆発が起こり、土が舞い上がっているんですが・・・。

土煙が晴れると直径10m程ののクレーターが出来ていた。勿論そんな爆発の中、生きている生物等ローリー以外いなかった。そこら中に兵士だったであろう四肢が散乱しており、結構グロい光景が広がっている。後続の奴等は、皆何が起こったのかわからないといった感じで止まってしまっているようだ。


「ど、どう!?ローリーの魔法は!!凄いでしょ?ほら見てここ!ほら!」


な、なんつー威力だ・・・一切魔力は感じなかったから魔法ではないと断言できるが、当のローリーは魔法だと言い張っている。

あまりの出来事に足を止めて呆けていた追っ手の皆さんだが、ローリーの事を危険と認識したのか、脅威を拭い去ろうとローリーを中心に兵士達が殺到した。


「むむっ?なんかまた一杯きた!ローリーの魔法を目の当たりにして、尚立ち向かってくるとは見上げた根性ね!まぁ追い掛け回す手間が省けたわ!まとめてローリーの大魔法でドカーンってしてやるんだからっ!」


ローリーは先程の攻撃で中程からポッキリと折れたファンタズムマジカルステッキを振りかぶると、襲い来る兵士達に向かって突っ込んで行き、それを振り回した。


「エクスプロージョン!エクスプロージョン!エクスプロージョン!エクスプロージョン!エクスプロージョン!エクスプロージョン!」


ドゴォォォォッ!ボゴォォォオッ!ズドォォォッ!!・・・・・


違う、あれは俺の知っているエクスプロージョンじゃない。というかどこの戦場だここは・・・地雷原も真っ青な爆発がそこら中で起こっている。

数分後、追ってのほとんどを葬ったローリーが不敵な笑顔を浮かべて仁王立ちしていた。

興奮しているのか、頬は上気しているローリーだ。自分の起こした光景に満足したのか、俺に振り返り得意気な顔を向けてくる。

正直に言おう。スゲェって思いました。無双ってこういう奴のことをいうんだなと。

あの物理攻撃をローリーは、なんちゃらスーパーエクスプロージョンという魔法だと言って聞かない。こんな凄い上級魔法を連発できるローリーは凄いでしょと得意気にアピールしてきている。

殲滅戦とも呼べる戦闘の途中で、ローリーが地面を打ち抜いた際に水脈を掘り当てたらしく、噴水のように水が噴出したことがあった。その時のローリーの台詞が、「エクスプロージョン!エクスプロー・・・はっ!?今だ!えっと・・・そうだっ!『アクアゲイザー』!!ほらっ、ダーリン見てっ!今っ!見た!?地面から水が噴き出る魔法よ!!」等とのたまっていやがったが勿論スルーした。薄々は感じていたが、その時に俺は悟ってしまった。あれは魔法に憧れるなんちゃって魔法師(笑)というやつなんだろう。突っ込みたい事は沢山あるが、触っちゃいけない部分なのかもしれないし、そっとしておこう。


因みにファンタズムマジカルステッキという、どこで拾ってきたかわからない棒は、スーパーエクスプロージョン2回目で原型を留めていなかった。それ以降ローリーは自分の拳で強パンチを繰り出していたのだ。


それにしても・・・改めて思う。四天王ってスゲーなぁ。



戦闘も終わり、勝ち誇るローリーをある種の羨望の眼差しで眺めていると、街の方の空に靄が掛かっているように見えることに気付いた。その靄はこちらに近付い・・・ヤバイ!!

俺はヴァン君を抱えたままローリーの所まで走って行き、彼女を抱き寄せてから周囲にバリアを張った。直後、バリアに無数の衝撃が響く。ギリギリ間に合ったようだ。靄に見えたのは無数の矢だったのだ。街から何かの道具を使って大量の矢を降らせたのだろう。

俺の腕の中でローリーが「ダーリン・・・」と呟き、キラキラした目で俺を見つめているが気にしない。あ、ガオー忘れてた。大丈夫だろうか?死んでなければいいんだけど。

俺がガオーに視線を向けると、あいつも持ち前の腕力で「うぉぉぉおぉぉっ!!」とか言いながら迫り来る矢の雨を撃ち落していた。あいつも結構スゲーよな。兄貴とガチの喧嘩をする事もあるくらいだし、ただの飾りの大将という訳じゃないんだよな。

しかし、一定の間隔で矢が飛来する為、このまま逃げるのも大変そうだ。仕方ない。


「深淵に流れる嘆きの川よ、閉ざされた世界から此の地に流れろ、全てを凍て尽かせ『コキュートス』!」


俺の放った水の上級魔法コキュートスによって、街と俺達の間に氷の壁が出現した。ちょっと多めに魔力を練りこんだので、幅100m、高さ40mはあろうかというくらいの氷の壁だ。俺達を貫くべく飛来していた無数の矢は、氷の壁に行く手を阻まれ、表面をわずかに削るだけで全て弾かれていた。この氷壁の厚みは30mくらいある。この様子なら途中で溶けなければ年単位で矢を防ぎ続ける事ができるだろう。矢の脅威が無くなったと判断した俺はバリアを解き、何本か矢が刺さってるガオーに声を掛けた。


「よし、今の内にズラかるぞ!!」




街から充分に距離を取り、追っ手が無い事を確認した俺達は周囲へ警戒を続けたまま休憩をしていた。


「ヨーヘー悪ぃ、気が付いたらヨーヘーがいなかったからよ。1人でドアートまで向かったのはいいんだが、噂の強ぇ女奴隷を探していたらドジ踏んじまってよ、捕まっちまったんだ。」


「あぁ、まぁそれはいいよ。俺もガオーの事忘れてたからな。それでお相子にしよう。」


「それでそっちの嬢ちゃんがデスフィストか?ヨーヘーが探しててくれたんだな。さすがヨーヘーだぜ。」


見つけられたのは本当に偶然なんだけどね。敢えてそれを訂正する必要もないか。


「まぁ成り行きで・・・」


そのローリーはというと、


「あぁん♪ダァ~リ~ン♪素敵素敵素敵~♪」と未だトリップ中である。そしてどこで拾ったのか、その手には二代目ファンタズムマジカルステッキが握られていた。


それに加えて、ヴァン君からはこれまたキラキラした瞳で見つめられている。ちょっとむず痒い気分になっていると、意を決したようなヴァン君から思いもよらない言葉が飛び出した。


「先生!ボクに魔法を教えてください!!ボクも先生みたいに強くてかっこいい魔法師になりたいです!」


「あー・・・あのな、俺は弟子は取らないようにするってある人と約束してるんだよ。だから弟子にする事は出来ないんだ。ごめんな。」


「そんなっ!ボクは先生みたいになりたいんですっ!それには先生から魔法を教えて貰うのが一番だって思うんです!だからどうかお願いしますっ!お願・・・うぅ・・・。」


「待ってくれヴァン君!泣かないでくれっ!わかった。止められてるのは特殊魔法だけだから、自然魔法なら教えてあげられるから!それでもいいかな?」


「はいっ!それで構いませんっ!いいんですよね?やったーーー!」


我ながら思う、押しに弱すぎるだろうと。さて、ここで問題が一つ浮上した。ヴァン君だが魔力はあるだろう。しかし魔法適性はあるのだろうか?いくら魔力があっても魔法適性がないと魔法は使えない。そして自然魔法の適性が無かったらどうしよう?俺のレパートリーでは特殊魔法を除けば精霊魔法しか教えられない事になってしまう。俺自身、精霊魔法の理論は学んでいるが、実際精霊と契約していないのでうまく教える自信が無い。期待が膨らみすぎる前にヴァン君の適性確認だけはしておいた方がいいかもしれない。そこで役に立つのがセリアとの旅の途中でユグドと一緒に作ったこの携帯用魔法適性測定装置!これがあればあなたの適性がどこでも調べる事ができる優れ物です!ご家庭に1つあれば嬉しいですよね。


「ヴァン君、魔法を使うには魔法適性があるかどうかが重要なんだ。これがないとスタート地点にすら立てない。この水晶を握って魔力を込めてみてくれ。それでヴァン君の魔法適性がわかるから。」


俺の言葉を聞いて真剣なそれでいて不安そうな表情になったヴァン君は、俺が渡した水晶に恐る恐る魔力を込め始めた。すると、水晶が淡く光りだした。この水晶、実は自然魔法、精霊魔法、神聖魔法、特殊魔法に反応する4つの水晶が1つにまとめてられており、適性のある水晶が光るようになっている。今水晶が光っているということは、ヴァン君には何かしらの適性があるということだ。これで自然魔法がなかったらどうしよう。俺がヴァン君から水晶を受け取り、ドキドキしながら確認してみると、ヴァン君の適性結果はこうだった。


自然魔法:○

精霊魔法:×

神聖魔法:○

特殊魔法:×


よかったぁ・・・自然魔法あったよー。無かったらヴァン君は凄い落ち込んでいただろう。慰めるのに大変だったかもしれない。特殊魔法もないみたいだし、心置きなく教えられるというもんだ。それにしても神聖魔法を持ってるのか。これについてはセリアやアリアが使っていたのを思い出しつつ教えるしかないな。他に教えられる人がいればいいんだけど。

ヴァン君は自然魔法の適性があることに歓喜して、俺の胸・・・は身長が足りないから腹に向かって飛び込んできた。俺はそれを優しく受け止めて一緒に喜んであげた。


「はいはい!次!次はローリーがそれをやりたい!ダーリン見ててね!全部の水晶光らせちゃうから!」

俺から奪い取るように適性測定の水晶を手に持ったローリーが、その身に宿る魔力を水晶に込め始めた。しかし、水晶は光らない。


「あ、あれっ?おかしいな?フゥゥゥンッ!!むむむーーーっ!!」


ローリーも頑張っているようだが、それでも水晶は光らない。


「あれれー?もしかして壊れてる?フッッッムーーーーン!!」


パリンッ!


「あ」


「・・・・・・」


「ロ、ローリーの魔力が強過ぎて水晶が耐えられなかったみたい!困ったなぁー、測定不能かぁー。」


魔力じゃねーよっ!握力が強過ぎたんだよ!!つか、なんつー握力してんのっ!?それドラゴンが踏んでも壊れないような強度のはずなんだけど!?水晶とは言ってもその水晶にはミスリルとオリハルコンを素材にクリエイトした水晶ですよ!?それを握力だけで壊すってどんなだよっ!!怖い!四天王怖い!

俺はこのままだとローリーの将来がちょっと心配になったので、ちょっとお説教をしながらアジトへと戻るのだった。

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