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虹の先に繋がる世界  作者: 水無月 壱九
グロスティア
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105話 そんな馬鹿な・・・

「あぁ、セリアは死んでいる。だが会えない訳じゃない。俺はセリアにもう1度会う為の方法を見つける為に研究しているんだ。一刻も早く研究に戻りたい所だがいいだろう、教えてやるよ。アリアちゃん、この国が昔なんて呼ばれていたか知っているかい?」


「・・・コルベール王国って意味じゃないよね。魔道具の国?」


「そうだ。この国には古代文明の遺跡があって、そこから発掘される魔道具を研究することによって最先端の魔道具技術を持っていた。俺とセリアも将来の役に立つだろうと思い、この国で魔道具の研究をする為に滞在していたんだ。技術の為に、国家繁栄の為にと非人道的な実験も行われていた。なによりこの国の王族も人命よりもよりも技術に重きを置くクズなこともあって、その体制に異議を唱えるような奴は消されてしまうんだ。」


「・・・・・・」


「今から3年前になるか・・・。俺はそんな王族の元で研究していた。軽蔑するかい?なんと思ってくれても構わないよ・・・。ある時、俺の上司である王族・・・この国の王子だが、そいつがとある魔道具を発見し、その効果を分析したんだ。新しいおもちゃが手に入って嬉しかったんだろうな。王子は魔道具を使いたがっていた。一国の王子が使いたいと言えば止める者なんてほとんどいない。研究者達も使ってみたかっただろうしな。だからその魔道具はすぐに使われる事になった。実験体に選ばれたのは・・・セリアだった。」


「っ・・・うそっ」


「俺は止めようとしたが力が及ばなかった。俺の制止も聞かずに魔道具は起動されてしまった。・・・その魔道具の効果はな、過去への時間跳躍だ。飛べる年は固定だと言っていたし、実際に俺もその魔道具について研究してみたが王子の言っていた事は間違っていなかったよ。魔道具の効果によって次元の裂け目が発生し、セリアは俺の目の前でその裂け目に放り込まれてしまった。後を追おうにも次元の裂け目は閉じてしまってね。再度魔道具を使うように要求したが、その魔道具を使うには魔道具に魔力を蓄積させないといけないらしく、すぐには無理だと言われた。いつになったら魔力が溜まるんだと問い詰めた訳だが・・・聞いて驚け、500年だそうだ。笑えるだろう?ふざけてるよな?俺は怒り狂った。それはもう・・・一国を滅ぼしてしまう程にな。」


「そんな・・・酷すぎる・・・セリアお姉ちゃん・・・。」


「だがな、セリアを失って失意の底に沈んでいた俺に、なんとセリアからの連絡があったんだ。元気でやっているとね。」


「セリアお姉ちゃん生きてたのっ!?」


「あぁ・・・生きていたさ。これがその時連絡を受けた手紙だ。読んでみるといい。」


あれは便箋だろうか?ユグドの手から離れた紙はふわふわと宙に浮かび、俺の頭上を飛び越えてアリアの手に収まった。

手に取った紙を読み進めるアリアの表情が驚愕に染まっていく。その口からは嘘・・・嘘・・・と言葉がこぼれており、目には涙を溜めていた。


「アリアちゃん、その手紙を読んでどう思う?セリアは生きていて、変わらずに俺を愛してくれていた。会いたいと思う事は間違っているかな?俺はその手紙を読んでどんな事をしてでも、例え世界中を敵にまわしてでもセリアに会いに行くと決意した。幸いコルベール王国は魔道具の最先端技術を持っていた国だ。ここで研究し、知識を深める事で時間跳躍の魔道具に、魔力を溜める時間を短縮する方法探し出し、俺はセリアに会いに行くと決めたんだ。見てごらん、これが俺からセリアを奪った忌々しい魔道具さ。こんな物すぐにでも壊してしまいたかったけど、これを壊すとセリアに会う為の道が完全に閉ざされてしまうから壊さない。研究を進めて魔道具の仕組み等は理解したが、魔力蓄積の時間短縮の目処が立たないんだよ。早く、早くしないと・・・もう3年も待たせてしまっている。だから最後にもう一度だけ言うよ。これ以上俺の邪魔はしないでくれ。」


・・・あれ?あの砂時計みたいな魔道具ってどこかで・・・あっ。

あれってミイ師匠の修行が終わった時に、憤怒の魔法師に対して有効な魔道具だって言われて渡された物に似てるな。

やべぇ、存在を完全に忘れてた。たしか弱らせてから使うんだっけ?えーっと・・・あ、あったあった。これだこれ。

見れば見るほどよく似てるな。違いは中に入っている石の色くらいか?ユグドの持っている方は中の石が両方とも灰色だ。だから似てるというだけで別物なのかもしれない。ミイ師匠が細工したとか言ってたしな。

あいつは邪魔するなとは言っているが、アリアも簡単に引き下がるような子じゃないから、また戦闘になった時の為にこの魔道具の準備はしておいた方がいいだろう。さて・・・これってどうやって使うんだっけ?スイッチはどこだ?

起動方法を探して色んな角度から魔道具を見るがスイッチが見つからない。あれー?ミイ師匠なんて言ってたっけなぁ?

そこで俺はある事に気付いた。なんか静かだ。

さっきまであんなに饒舌に語っていた奴が黙り込んでいる。

訝しんでユグドに視線を移すと、奴は俺を見て固まっていた。否、正確には俺が手に持っている魔道具を見て、だな。


「・・・お、お前、そ、それ・・・魔力が溜まって・・・ど、どうしてお前がそいつを持っているっ!?」


「は?貰ったんだよ。」


「一体誰から・・・いや、そんな事はどうでもいい!そいつを寄越せっ!」


「何言ってんだ、これはあんたに対して絶大な効果を発揮する魔道具だ。そんな切り札的な物を態々渡すと思うか?」


「た、頼むっ!なんでもするっ!俺が今まで研究してきた成果を全て譲ってもいいっ!金が欲しいなら宝物庫の物を全て持っていって構わない!だからそれを譲ってくれっ!いや、譲ってくださいっ!」


宝物庫の宝とかあんたの物じゃないだろうが、まぁ持ち主もいなくなったわけだから所有者無しで第一発見者のこの人の物になるのかもしれないが。

しかし、一体どうしたと言うんだ?使う前からすでに絶大な効果を発揮しているように見えるが。

もしかしてこれが魔力が溜まっている状態の時間跳躍の魔道具なのか?もしそうだとしたら・・・国を滅ぼしてまで手に入れようとしていたものだ。喉から手が出るほど欲しいだろうな。

ただミイ師匠が細工したとか言ってたから、あいつの求めている物とは違う可能性もあるわけだが。


「これはあんたが期待しているような魔道具じゃないかもしれないぞ?形は似ているが魔水晶の色も違うしね。」


「その魔水晶の色は魔力が溜まっている証なんだ。頼むっ、いやお願いします。それを譲ってください。」


急に下手に出始めたな。むー、譲ってしまっていいんだろうか?皆と相談するべきかな?お、良かった、タァマちゃんも気が付いたみたいだ。これで寝てるのはマグロだけだな。

皆に視線を向けていたらアリアと目が合った。

・・・わかってるよ。アリアなら渡しちゃうんだろうなぁ。甘いと言えば甘い。でも俺はそんなアリアが大好きだ。


「ユグド、これを譲ってやってもいい。」


「本当かっ!?」


「但し!条件がある。」


「条件・・・?構わない!俺に出来る事ならなんだってする!条件はなんだ!?」


「1つ、この魔道具があんたの望む効果が発現しなくても文句は言わない。」


「あぁ、俺は少しでも可能性があるのならそれに賭けたい。その結果がどうあれ気にしない。」


「2つ、俺達に危害は加えるな。」


「それは・・・殺されそうになってもか?殺されるのは困るんだが・・・。」


「いや、俺達もあんたが攻撃してこないなら殺そうとしたりしないよ。」


「わかった。それなら受け入れよう。」


「最後に、・・・ちょっと3発殴らせろ。」


「ヨーヘー!?」


「殺しはしない。けどな、あんたは俺の大切な仲間を傷つけた。誰も死んでないから命までは取らないが、それでも腹の虫が収まらねぇんだよ。だから殴らせろ。それで最初の攻撃についてはチャラにしてやる。」


「ヨーヘー!やめてよ!私なら大丈夫だから!・・・ね?」


「アリアごめん。これだけは譲れない。俺は大切な仲間を傷つけられて黙っていられるほど人間が出来ていないんだ。」


「でもっ」


「いいんだ、アリアちゃん。俺だってそれで国を滅ぼしたくらいだ。それを3回殴るだけで済ませてくれるなら彼は優しいだろう。これはケジメでもあるし、その方が今後しこりも残らない。」


まだアリアは何か言いたげだったが、思い直したのか引き下がってくれた。アリアの好感度下がっちゃったかなー?それだと寂しいなぁ。これが原因で婚約解消されちゃったらどうしよう。ヤバイ不安になってきた。

でもアリアの分は無しにしたとしても、タァマちゃんの分とトリスの分、2回は殴らないとな。マグロの分?あいつはいいや。だってあの状態にしちゃったの俺だし・・・。


「いつでも構わない。さぁ殴ってくれ。」


「・・・よし行くぞ、歯ぁ食いしばれっ!」


意を決してユグドに歩み寄り、拳に力を籠める。


「これはトリスの分っ!」


ズムッ


「がっはっ」


俺の渾身の右がユグドのボディに突き刺さった。


「次行くぞっ!これはタァマちゃんの分っ!」


ズムッ


「がぁっ」


再度、ボディにめり込む俺の鉄拳。


最後の1発は顔面に叩き込む!


「そしてこれは・・・・・・俺の分だぁぁぁぁっ!!」


バキィッ!


「ブァッ!」


「私の分はっ!?」


「へっ!?あ、えっと、こ、これはアリアの分っ!」


ベシッ!


「へぶっ」


「ねぇ、どうして私の分がついでみたいな感じになったの?」


「いや、これは・・・アリアは殴って欲しくなさそうだったからさ・・・。でも3発殴るって言っちゃったし、それなら自分の分でいいかなと・・・。」


「たしかに殴って欲しくは無かったけど、それでも私だけ仲間はずれにしないでよぅ。皆と一緒がいいもん!」


「ごめんね?ちゃんとアリアの分もぶっておいたからこれで皆一緒。一緒だよ。」


「むぅぅぅ。」


「ぐぅ・・・3発だと思って油断した。話が違うじゃないか。」


「誤差!誤差の範囲だ!あんたも男なら細かい事は気にすんなよ!」


もう勢いで誤魔化すしかない。




「ほら、約束だしな。受け取れよ。」


俺はミイ師匠から貰った砂時計型の魔道具をユグドに渡してやった。

俺に殴られた事で呼吸を乱していたユグドだったが、魔道具を受け取ると嬉しそうというか悲しそうというか、なんともいえない表情を浮かべて魔道具に目を奪われていた。


「これで・・・これで・・・セリア、今行くからな。」


「ユグドお兄ちゃん、本当に行っちゃうの?折角、折角会えたのに・・・。これでお別れなの?」


「ごめんねアリアちゃん。大きくなったアリアちゃんに会えたのは本当に嬉しい。でもセリアが待っているんだ。俺は行かなくちゃならない。」


「うん・・・わかった。元気でね?セリアお姉ちゃんに宜しくね?ちゃんと守ってあげてね?」


「勿論だよ。さぁ危ないからもう離れるんだ。この魔道具は起動すると周囲の物を吸い寄せる。しっかりと踏ん張って引き込まれないようにね。」


「お兄ちゃん・・・さ、さよなら。」


アリアは泣きながらユグドに抱きついた。あの砂時計型魔道具が本当に時間跳躍の魔道具ならもう2度と会えないだろうしな。気持ちはわかる。別に嫉妬なんてしてないぞ?でもちょっと長くないですかね?ねぇいつまで抱き合ってるんだい?

あーーーーーっ!!ユグドの野郎アリアの額にキスしやがった!!にゃろう・・・、ダメだとわかっちゃいるが失敗を願いたくなってしまう。

名残惜しそうに2人が離れて充分に距離を取った。

ユグドが砂時計型魔道具に魔力を籠めている。

すると青色だった方の石、魔水晶が淡く光り始めた。

ユグドは砂時計型魔道具を床に置くと不安そうにじっと何かを待っているようだった。

すると魔道具の上に直径2m程の灰色の球体が浮かび上がる。あれが次元の裂け目なのか?

吸い寄せられると聞いていたが特にその様子は無い。まだ次元の裂け目は出ていないのか?

するとユグドがこちらを振り向いた。


「感謝する。魔道具は正常に起動した。これで俺はまたセリアに会える。ありがとう。」


ユグドは一度微笑むと躊躇うことなく灰色の球体に入っていってしまった。


「行ってしまったのか・・・?」


少しすると次元の裂け目に向かって強烈な突風が吹いた。くそっ!吸い寄せられるってこの事かよ!


「皆踏ん張れ!!吸い込まれるぞ!!」


全員に注意を喚起して俺も踏ん張った。


が、


ツルッ


踏ん張ったところで、足の裏が何かを踏んでしまい、それに滑ってコケてしまった。体勢を崩してしまい、踏ん張る事も出来なくなってしまった俺は、なす術も無く球体に吸い寄せられてしまう。

なんだ!?一体何が!?

球体に吸い込まれる直前に俺の視界に入ったのは、驚愕の表情を浮かべるアリア、トリス、タァマちゃんと・・・さっき俺が捨てた黄色い物体。俺に踏み抜かれて少し傷ついたバナナの皮だった。


「そんなバナナーーーーーっ!!?」



「ヨーヘー?」


アリアの声が虚しく響く。

突風は収まり、灰色の球体は消えている。残されたのは魔力を使い果たしたのか、青かった魔水晶が灰色に変色している砂時計型の魔道具のみ。

さっきまでそこにいたユグドと洋平の姿はどこにも見当たらなかった。

ありがとうございました。

ここで1章が終了です。

次回からは洋平君のいる場所の都合上、アリア、トリス、タァマちゃん、ついでにマグロは登場しません。

アリア達に遭いたい一心で(作者が)ちょっと駆け足に展開してしまうかもしれませんが、ご了承ください。


ついでに話のストックが無くなり始めました。もう少ししたら更新頻度が落ちると思います。少し書き溜める事を考えて、更新は1週間程時間を空けようかと思います。

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