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虹の先に繋がる世界  作者: 水無月 壱九
グロスティア
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103話 スニーキングミッション

「はい、皆さん注目~。障壁の突破方法の見当がついたからどう動くかを決めようかと思うんだ。」


皆のいる空き家まで戻った俺達は、そのまま作戦会議に突入。皆の意見を聞きつつ作戦を練っていった。それによって決まったことが


・作戦開始は明日の日の出前に決行。

・障壁はインビジブルで突破する。

・城内に入ったら臨機応変に。


これははたして作戦と呼べるものなのだろうか?障壁突破方法と時間決めただけじゃねーか。雑過ぎるのにも程がある。

と言っても城内の様子なんて知る由もないからこれ以外ないんだけどな・・・。

まぁ影人との戦闘になったとしてもマグロが盾役して俺とアリアでマグロごと焼き払って、タァマちゃんとトリスが打ち漏らしを仕留めるってパターンになるだけだから別にいいんだけどさ。

若干作戦に不安を覚えたけど、他にいい案もないので体調だけは万全にしておくべく、明日に向けて就寝することにした。




早朝・・・と言っても太陽もまだ昇っていないので早朝と呼んでいいのかどうか。今日はあのでかい月も出ていないから結構暗い。お星様が綺麗だ。

この暗さは討伐隊に隠れて城に侵入しようとする俺達にとっては好都合である。

皆の表情を見ると作戦前の為か引き締まっているようだ。早めに就寝した甲斐もあり、寝惚けてるような人はいなかった。


「準備はいい?よければ城に向かおうか。」


全員が頷いたのを確認して憤怒の魔法士、ユグドさんのいる城に向かって出発した。




城に入るために掛けられている橋付近の建物の影に隠れて様子を伺うが、当然の様に見張りがいる。


「見張りがいる。ちょっと無力化してくるよ。」


「待って、態々無力化しなくてもここでインビジブル使って姿消していけばいいじゃない。」


ソウデスネ。


ほら、見張りを見るとさ、気付かれないように背後から近付いて、声も上げさせずに気絶、もしくはキルしなくちゃいけない使命感が・・・そんなもんありませんよね。すいません。


「それじゃあ皆はぐれない様に手を繋いで。これからお互いの姿も見えなくなるから。万一に備えてマグロが先頭で進んでくれ。」


俺はマグロの手を握り、もう片方の手でトリスの手を握った。トリスはアリアの手を握ってもらい、アリアには殿を務めてもらう。タァマちゃんは俺が肩車だ。

それぞれ手を繋いだ事を確認したので、全員にインビジブルを掛けた。


「それじゃマグロ、行ってくれ。」


特に怪しまれる事も無く見張りの脇を通り抜けて、障壁も問題なく突破した。

そのまま橋を渡り、入口である城門まで到達したところでマグロが止まったので、全員が立ち止まった。


「どうした?」


「いや、どうしたというか、この門なんだがどうやって開けるんだい?」


「押せば開くんじゃねーの?」


「ふむ、そうか。・・・ふっ!!」


開く気配は無い。


「俺も手伝うわ。・・・ハッ!!」


ビクともしませんでした。


「「ふぉぉぉぉぉぉぉぉおおっ!!!」」



「はぁっはぁっ、何これ?なんで開かないの?」


「ふぅっふぅっ、これはもしかしたら引くのかもしれないよ?」


「「・・・・・・」」


「「ぬぉぉぉぉぉぉぉぉおおっ!!」」



「なんだよこれっ!なんだよこれっ!!開かないじゃん!!開かない扉は扉じゃないだろっ!!」

ほぼ八つ当たり気味に城門をゲシゲシと蹴りつけるが、やはりビクともしない。ちくしょう、どうしてくれよう。まさかの入場拒否とは。呼び鈴とかないだろうか?


「ごめんくださーーーいっ!!」


「バカッ!ヨーヘー声を大きいよ!見張りの人に見つかっちゃう!」


アリアの注意にハッとして後ろを振り返ると、見張りの人が怪訝そうな顔をしてこちらを見ていたが、俺達の姿は見えない状態なので首を傾げていた。

見つからなかった事にホッと胸を撫で下ろし、改めて城門に目をやる。なんて忌々しい城門だ。お客様の進路を阻むとは。木っ端微塵に破砕してくれようか・・・。


「あの、ヨーヘー?空を飛ぶ魔法フライでしたっけ?あれで飛び越えればいいんじゃないですか?」


トリスに言われて、飛ぶという手段を完全に失念していたことに気付く。飛べるなら別に橋を渡らなくてもよかったよね。


「今日はこのくらいにしといてやらぁ!覚えてやがれ!」


「ヨーヘー・・・すごく小物っぽいよ。」


俺達を前に微動だにしなかった城門に捨て台詞を吐き、フライで全員を浮かして城門の上を越えて城の敷地内に侵入した。

ここは庭になるのか?手入れをしていない為か雑草が生い茂っているが、木等は生えていない。たぶん兵士の訓練とかに使われてたんだろうな。辺りを見回して、誰もいない事を確認したので、まずはマグロのインビジブルを解除した。


「マグロ、ちょっとあの城の入口まで行ってみてくれる?」


「お、鬼っ!なぜミーだけが危険な目に!?」


「これはマグロにしか出来ない事なんだ。ベテラン冒険者であるマグロの経験が必要なんだよ。」


「任せたまえっ!危険がないか確かめてこようじゃないかっ。なーっはっはっはっ!」


マグロは頼られた事に喜びを感じたのか、スキップしながら城の入口に向かっていった。いくらなんでも無警戒過ぎるだろっ!

心配を余所に、特に問題なく入口まで到達したマグロは、手を大きく振って俺達を呼んでいた。

俺達もそのまま入口まで移動してインビジブルを解除した。


「それで、この入口の扉はどうやって開けるんだい?」


またかよっ!城門程じゃないが、立派な扉は閉じきっている。

ちょっと引いたり押したりしてみたが開く気配は無い。

城門もそうだったけど、討伐隊の皆さんはどうやって中に入ったんだろう?

インターホンも見つからなかったので、城を見上げてみると2階に開いている窓を発見した。

さっきと同様にマグロだけフライで窓の中に放り込み、危険は無いとの合図を受けて全員で城内に侵入した。


ここは普通の部屋のようだ。ベッド等は無いから寝室とかではないだろう。

部屋から出ると長い廊下だった。当然明かりなんか点いていないから薄暗い。

城門を超えた辺りで太陽が昇ったので、真っ暗ではないのが救いだな。


それよりもユグドさんってどこにいるんだろう?ハングーリに聞いておけばよかったな。

あれ?そういえばハングーリは城内に入ると影人が襲ってくるって言ってたよな?全然そんな気配はないんだけど・・・。


辺りを警戒しつつ廊下を進んでいると、不意にピーンという魔力の流れを感じた。


「ヨーヘー、今・・・」


「アリアも気付いた?なんか魔力が通ったよね?」


「にゃあっ!あっちから何か来ましたっ!」


俺がアリアと顔を見合わせていると、タァマちゃんが俺の肩から飛び降りて戦闘態勢を取った。

俺もすぐに廊下の先を見据えると、全身が黒い人型をした奴が5体こちらに向かってくる事が確認できた。


「さっきのは検知魔法か何かか!聞いてた影人の特徴と一致してるし、あいつ等友好的には見えないよなっ!皆やるぞっ!」


すぐに全員で戦闘態勢になり、トリスが弓を射抜く。

影人がこちらに来るまでに4体を射抜き、こちらに到達した1体もタァマちゃんが斬り倒した。

倒した影人はどういう仕組みなのか煙のように消えてしまった。死体が邪魔にならなくていいな。

ハングーリに聞いていた通りたいして強くはなさそうだが、たしか数が多いんだっけ?

ここに留まっていてもユグドさんは見つけられないだろうから、廊下を走り抜け城内を探す事にした。


道中、倒しても倒しても影人は続々と沸いて俺達に襲い掛かってきた。


「ヨーヘー!矢の追加をお願いします!」


「あいよっ!」


トリスには矢の残量を気にせずにガンガン撃ってもらっている。ストックが少なくなってきたら、俺がクローンで増やした矢を受け渡しているから出来る芸当な訳だ。

予め30本の束を用意してあるので、それを複製してトリスに渡しているのだ。


「ヨーヘー!次の矢をお願いします!」


「あいよっ!」


今回トリス大活躍である。遠距離攻撃っていいよねー。トリスは弓の名手だ。全然外さないからな。この前、矢の練習に付き合った時があったんだけど、簡単にロビンフッドをやってのけていた。3連射してロビンフッドをやってのけた時は、すっげー興奮した。オリンピックに出たら金メダルは間違いないだろう。


倒しながらだが、廊下を抜けたり、階段を登ったり、降りたりと15分くらい移動しただろうか?俺達は大きな広間にでた。


「うわぁ・・・」


誰の声だっただろうか、驚きの声が聞こえた。まぁ無理も無い。俺も同じ気持ちだったからな。

広間に出るとそこには溢れんばかりの影人が俺達を待ち受けていたのだ。

あまりの数に思わず足を止めてしまった。

影人達はまだ動かない。数は300くらいいるだろうか?数では圧倒的に負けている訳だからなんとか先手を取りたい。


「マグロGOっ!!」


「ギョギョッ!?ミーかい!?」


「お前のパーティの中での役割はタンクだろうが、率先して行かないでどうする?」


「うぐっ、それを言われると・・・う、うぉぉぉおおお!!」


マグロは半泣きで影人達に突っ込んで行った。いや、突っ込まなくていいんだけど。前に出て食い止めて欲しかっただけで・・・言い方が悪かったか。ごめんマグロ、頑張って。

影人達は突っ込んできたマグロに攻撃の照準を合わせて群がっていった。


「ギョッ!?ちょっ、待、痛っ、やめっ、ギョワーーーーーーッ!!」


マグロ、キミの犠牲は無駄にしない。規模的にはエクスプロージョンを叩き込みたいところだが、さすがに室内で爆発魔法ぶっ放したら、城が崩れる可能性があって危ないので魔力を多目に練り込み、部屋全体に効果が及ぶように火炎魔法を発動させた。


「『ファイアーストーム』」


部屋全体が炎に包まれる。俺達は火傷したら嫌なので、入ってきた入口から廊下に退避した。「ギョギョギョーーー」という声が聞こえる気がするが気のせいだろう。

炎が収まったのを確認すると、広間の様子を見るために中を覗いた。

あれだけいた影人は綺麗にいなくなっていた。

広間の中央には焼き魚が横たわっているだけだ。


「・・・ヨー・・ヘー・・これは・・・あまりに・・も・・・ぐふっ」


改めて思う。あいつ凄ぇな。

一応マグロの無事を確認して、周囲を警戒していると、広間の奥の扉がギィっという音を立てて開いたの事に気が付き、全員(マグロ以外)で扉に警戒する。

扉からは人影が1人出てくるのがわかったが、距離があるのと部屋が薄暗いため、顔まではわからない。


「騒々しい、毎度毎度人の研究の邪魔をしやがって・・・いい加減諦めたらどうだ?こちらとしてはいい迷惑なんだが?」

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