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【完結】お話は、それだけでしょうか? 私は忙しいので。 ✦  作者: 逆立ちハムスター


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滅びゆく元職場の楽しい日常

その頃――アルカディア王国・王宮。


かつて優雅な夜会が開かれていた大広間は、今や「この世の地獄」と化していた。


「ひぃぃぃぃっ! モンスターだ! 国境の結界が消えたから、魔物が侵入してきたぞーっ!」

「魔導炉が止まった! 王宮の明かりが消える! 冷凍庫が使えないから、高級食材が全部腐ってしまうーっ!」

「エルシリア様を連れ戻せ! 今すぐだ! 誰でもいいから彼女に頭を下げて謝ってきてくれぇぇぇっ!」


悲鳴と怒号、そして書類が散らばる音。

王宮の廊下では、財務大臣が泡を吹いて倒れ、近衛隊長は「俺は辞める! こんな国やってられるか!」と剣を投げ捨てて脱走を図っていた。


そして、かつて輝かしい王太子であったジュリアン殿下はといえば――。


「エルシリア様、私たちが愚かでした、ごめんなさい……エルシリア様、私たちが愚かでした、ごめんなさい……っ!」


暗闇の魔導炉の前で、髪をボサボサにし、目を血走らせながら、正座をしてドワーフ語をひたすら暗唱していた。

その数、すでに78回目。


「で、殿下……! もうやめてください! そんなことをしても、魔導炉は動きません!」


可憐なヒロインであったはずのマリア様が、ボロボロになったドレスを着て、泣きながらジュリアンの服の裾を引っ張る。

しかし、ジュリアンは振り向きもせず、壊れた人形のように呪文を唱え続ける。


「うるさい! 黙れマリア! お前が『エルシリア様はいじわるだ』なんて言うから、俺は最高の経営者を失ったんだぞ! お前のせいだ! お前があの時『毒を盛られた』なんて嘘をつかなければ、エルシリアは今も徹夜で書類を処理してくれていたのにぃぃぃっ!」


「なっ……ジュリアン様、ひどい! 私を愛しているって言ってくれたじゃないですか! 聖女の私を抱きしめてくれたじゃないですか!」


「聖女だあ!? 聖女なら今すぐこの魔導炉に魔力を注ぎ込んでみろ! 1ゴールドの予算も生み出せない、書類の一枚も書けない女が、何の役に立つというんだ! この役立たずめ!!」


「キーーーッ! あんただってただの無能じゃない! エルシリア様の手のひらで踊らされていただけのバカ王子!!」


「なんだとこの泥棒猫!!」


かつて「運命の愛」を誓い合ったはずの二人は、ドロドロの醜い取っ組み合いの喧嘩を始めていた。髪を引っ張り合い、顔を引っ掻き合い、互いに罵詈雑言をぶつけ合う。


その惨状を、国王(病床から這い出してきた)が杖をつきながら絶望の表情で見つめていた。


「おわりだ……アルカディア王国は、あの悪女……いや、完璧すぎた公爵令嬢を失った瞬間に、終わりを迎えていたのだ……」



「ぷっ……くくっ……ハハハハハハっ!!!」


グランベルド帝国の最高級ホテル、スイートルーム。

巨大な魔導スクリーンに映し出された元婚約者たちの醜態を見て、私はお腹を抱えて爆笑していた。

上品な公爵令嬢の淑女の面影など微塵もない、腹筋が崩壊しそうなほどの大爆笑だ。


「チェルシー、見た!? あのジュリアン殿下の正座! そしてマリア様のキャットファイト! 最高の喜劇だわ! 観賞料として金貨一千枚払ってもいいくらいよ!」


「お見事でございます、お嬢様。私が手配しておいた『ドワーフ語の解除コード』ですが、実は100回詠唱しても何一つ起きない『ただの精神攻撃』仕様となっております」


「やだチェルシー、あなた天才!? 嘘でしょう、ただの筋トレじゃない!」


「ええ。解除スイッチなど最初から存在しません。魔導炉の物理的な鍵は、すでに旦那様が溶かして処分いたしましたから」


「最高! 我が家の侍女は世界一優秀だわ!」


私が涙を拭いながら笑っていると、隣で一緒に画面を見ていたクロード殿下が、心底満足そうに私を見つめていた。


「君がそんなに楽しそうに笑う姿を見られるなら、あの愚かな国を存続させておいた甲斐があったというものだ」


「あら、クロード殿下。あの国を滅ぼさないのですか?」


「滅ぼすのは簡単だが、それでは面白くないだろう? あの国にはこれから、我が帝国から【天文学的な額の損害賠償請求】と【超高金利の緊急融資案】を突きつける予定だ。死ぬことも許されず、一生我が帝国の奴隷として働き続けさせる。……それが、君を傷つけた者たちへの、私からのささやかなプレゼントだ」


さらりと恐ろしい拷問計画を口にする氷の皇太子。

うーん、さすが帝国を統べる男。考える嫌がらせの規模が違いすぎる。


「ふふ、頼もしい旦那様をお持ちできて、私、とっても幸せですわ」


私が微笑むと、クロード殿下は耳まで真っ赤にして「っ……! 今、結婚を前提とした発言をしてくれたね!?」と大惨事に陥っていた。可愛いところもあるじゃない。


「さて」


私は優雅に立ち上がり、高級ワインのグラスを掲げた。


「ブラック国家の崩壊に、そして……ホワイト帝国での、私の新しい『悪女経営ライフ』に、乾杯しましょう!」


「乾杯、私の愛しい皇帝陛下(未来の)」


グラスとグラスが重なり、涼やかな音が部屋に響き渡る。


こうして、私の「完璧な退職と再就職」は完了した。

これから始まるのは、重すぎる愛を注いでくる溺愛旦那と共に、帝国全土を裏から牛耳る、最高に痛快で、ブラックで幸せな未来。


私の第二の人生バカンスは、まだ始まったばかりなのだから!

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