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いっちゃん(第二部)  作者: Thomas C. Knitter


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第三十八話「いっちゃん、上山バスケットを辞める」

旅館の部屋に響く怒声。

窮地に立たされたセツ子伯母さんが口にしたのは……。

「伯父さん……」

振り向いた私は呆然とした。

そこに立っていたのは、俊雄伯父さんだった。

「あなた、どうしてここへ?」

セツ子伯母さんがそういうと、

「お前が衣津子とコソコソやってるからおかしいと思って、社員に聞いたら、お前から、あの運転手の居所を聞かれたっていうんで、追いかけてきたんじゃ。そうか、お前、ワシと別れたいんか」

伯母さんは一瞬、目を逸らしてから言った。

「いや、あの、私は別れたいんじゃないのよ。ここに連れてきてくれたのはいっちゃんなの。全部、いっちゃんが仕組んだ事なんよ」

「衣津子、それはほんまのことか?」

「え? いや、それは伯母さんに……」

と、伯父さんの後ろでおばさんが、「しー!」というポーズと両手を合わせて「ごめん」ポーズをした。

「こがぁなことをするんなら、もう上山には置いとけん。馨の娘じゃ思うて、置いとるのに、恩を仇で返すとはこの事じゃ。衣津子、お前は出てゆけ。まぁ、そういうても荷物もあるから、一回、成羽に帰って荷物をまとめてから出てけ。わかったな!」

伯父さんの迫力に圧倒され、私は何も言えなかった。


それから、私と伯母さんは伯父さんに連れられて、成羽に帰った。

何も知らない伝姉が

「いっちゃん、おかえり。大阪はどうじゃったな?」

と聞くので、

「伝姉ちゃん、ごめん。私、ここから出てく」

と言った。

伝姉は、一瞬、呆気に取られた顔して、

「どして? 何があったん?」

と聞いてきた。

私は大阪でのいきさつをかいつまんで話した。

「じゃから出てくの」

「……わかったけど、でも、どこに行くんじゃ、コノブ伯母さんのとこか?」

「ううん、アテがあるので大阪に出てみよう、思うとる」

「大阪? なんでアテがあるん?」

「いとこの善昭ちゃんに大阪で会うたんじゃ。それで、仕事したいなら紹介するって言ってくれたんよ」

「それ、信用してええん?」

「大丈夫じゃ思う。善昭ちゃんは、三男のリョウちゃんみたいな意地悪は言わんし、仕事には誠実じゃと思うから」

「いっちゃんがそういうんなら、まちげえねえじゃろ。わかった。ほんなら行ってき」

「でも、伝姉ちゃん、一人になるよ」

「心配せんでええが。前も一人じゃったんじゃけ。うちはなんとでもするがな」

「……伝姉ちゃん」

私は伝姉に抱きついて泣いた。


こうして私は、成羽を後に大阪に出ることになった。


(つづく)

「うちはなんとでもするがな」

悲しみを堪え、いっちゃんの背中を押した伝姉の言葉。

理不尽な汚名を着せられ、住む場所も仕事も失ったいっちゃん。

ーーしかしその瞳は、 次なる舞台を見つめていました。


明日もお楽しみに。

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