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いっちゃん(第二部)  作者: Thomas C. Knitter


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第三十三話「いっちゃん、セツ子伯母さんに振り回される」

容姿への無神経な言葉、そして尽きることのない嫌味。

新天地・成羽でいっちゃんを待ち受けていたのは、一癖も二癖もあるセツ子伯母さんでした。

上山バスケットで働くことになって、俊雄伯父さんの家に入った日、セツ子伯母さんは私と伝姉の顔をじっと見て、

「やっぱり、二人とも上山の顔じゃないね。アヤ子さんそっくり」

と言った。

私は、(また顔のこと、言われるんか)と思ったが、

「こんな顔で、生きております」

と精一杯、笑って、その場をやり過ごした。


その後も、たまの休みに二人で部屋にいると、やってきて、私に向かって、

「いっちゃんは、あんなに綺麗な字を書くのに、どうしてアヤ子さんに似たんかねぇ。上山家の顔なら、いいとこへお嫁に行けるのに」

と、愚痴とも嫌味ともとれる言葉を投げてきた。

そんな時は、伝姉が、

「しょうがねぇが。母親に似たんじゃけ。変えられんがなぁ。まぁ、でも、それがいっちゃんじゃが」

と笑いながら言ってくれた。

伯母さんは、伝姉にかかると、調子が狂うのか、苦笑いしながら、部屋を出ていった。


「いっちゃん、大丈夫やで。いっちゃんは頭がええんじゃもの。絶対、いいところへお嫁さんに行けるで」

「そうじゃろか?」

「そうじゃ。間違いねぇ。うちが言うんじゃけぇ、な。大丈夫じゃ。いざとなりりゃあ、うちがついとる」

「いざとなりゃあ、ってそれ、お嫁に行けん、ゆうこと?」

「まぁ、そうなったらの話じゃが。今、心配せんでもえかろ」

「もう……!」

それでも私は、言葉は悪いが、心の優しい伝姉が大好きだ。



そのうち、伯母さんは病気で寝込むようになった。

そして、医者から処方してもらった薬を飲むようになったが、その薬が切れそうになるたびに、私と伝姉が交代で、その薬を医院の薬局まで取りに行くようになった。


私は、心臓が少し弱いこともあって、夏の暑い日に薬を取りに行くのが苦手だった。

伯母さんに、

「私は暑いのは苦手じゃから、夏に薬を取りに行くのは勘弁して。その代わり、木枯らしが吹く寒い日でも、雪の降る晩でも、冬ならいつでも取りに行ってあげるけぇ」

と言った。

こうして、夏の暑い間は、いつも伝姉が、そして寒い冬の間は、私が伯母さんの薬を取りに行くという生活を送ることになった。


(つづく)

「いざとなりゃあ、うちがついとる」

不器用な伝姉の言葉は、いっちゃんにとってどんな良薬よりも効く心の特効薬でした。

夏の暑さは姉が、冬の寒さは妹が。

寄り添い合いながら、二人は過酷な日々を「かけがえのない絆」で乗り越えてゆきます。


明日もお楽しみに。

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