43 第一王子派は息してますか
「第二王子の勢力を削ぐってセオドア殿下を貶めたいんですか!?」
「なんでだよ」
カージスの非難に突っ込みを返す。
「失脚を願ってるんですか!?」
「そんな気毛頭無いっての」
カージスの明後日の方向に飛ばす思考を否定する。
「王になる気はないって、セオドア殿下自身がおっしゃってただろー」
指摘するとカージスはあっと小さく声を漏らす。
「王になる気なら、とっくに動いてないとおかしいんだよな。これほどクリフォード王子を廃しやすい状況はなかなか無い」
カージスは目を輝かしながらうんうんと前のめりに頷く。美談に酔いやすい男である。
「セオドア殿下の意思がどうであれ、暗躍して継承権を弄りたい輩はいるはずだが、それを実行できてもない。のらりくらりとかわして、暗躍するやつらの動きを止めるくらいのことはできてるわけだ」
早川はセオドアのことを結構買っていた。
「ヘラヘラと能のないふりをしつつ兄の地位を守ってるわけだ。中々できることじゃないな」
それなりに能があるということは、王になってもなんとかやっていけそうでもある。
だが、平時の王だろうと早川は思う。戦乱を乗りきるには少し厳しいと感じる。
カージスが感動してる傍ら、ナルミスはムスッとしている。分かりやすい男だ。
「ナルミス、お前がなんでセオドア殿下を嫌うのか指摘してやろうか」
早川は笑顔で切り出す。
「セオドア殿下がクリフォード王子の第一の臣下だからだよ。お前じゃない。お前はただ側にいただけだ。だから苛つくんだろ」
言うと、ナルミスの顔から表情が消えた。顔を真っ赤に染めるが、何も反論できないのか、絶句して俯く。
「悔しかったら、まず役に立ってみやがれ」
一連のやり取りにカージスは引いている。
マシュウはただそこにいるだけで、一言も発しないし感情を表に出さない。適当にうなずいたりしている。
「第二王子派の派閥教えろよ」
「明確に第二王子派と言えるのは、ハイドン侯爵。娘のヴィオラ嬢がセオドア殿下の婚約者だ」
「……えっ、それだけか?」
次いで情報が出てこなかったので、思わず突っ込んでしまった。
ナルミスが悔しげにうめくので、気の毒になってきた。
「よし。消去法だ。第一王子派を教えろ」
答えられる質問に変更する。
「……第一王子派の筆頭は宰相を務めるアンダーソン公爵。こちらも娘のエレノア嬢がクリフォード殿下の婚約者だった」
「だった?」
過去形に疑問に思うとナルミスの表情が暗くなる。
「エレノア嬢は亡くなった。アンダーソン公爵家が魔物に襲われて、在宅していたエレノア嬢は犠牲になったのだ。公爵と嫡男は城で仕事をされてたので難を逃れた」
気の毒な話だと思いつつ、クリフォードの顔を思い浮かべる。
「そのときの魔物は?」
「見つかっていない。それ以来クリフォード王子は先頭に立って魔物討伐に当たるようになったのだ」
弔い合戦かと思う。婚約者を亡くした千佐とクリフォードが出会ったのはなんの因果だろうか。
「ブランドナー公爵。嫡男のアレックスはクリフォード王子の学友だった」
「だった?」
またしても過去形である。
「……彼も魔物にやられて亡くなった。一人生き残ったブランドナー公爵は心を痛めて引退された」
「ええ……」
先程から暗い情報ばかり出てくる。
「ギブソン侯爵。娘のルーティア嬢はアレックスの婚約者だったが、アレックスの生前に断罪されて追放された。醜聞に晒された後、魔物に襲われて亡くなって現在はギブソン侯爵の弟が領地を運営している。彼の所属している派閥はわからない」
「おいおいおい。第一王子派大丈夫か?」
「全然大丈夫じゃない」
ナルミスが過剰にカリカリしている理由がわかった気がした。もう派閥の体をなしていないのだ。
「だがクリフォード王子さえ健在ならば」
「いやーでもなー」
反論しかけるとナルミスの目がつり上がる。だが、しょうがないと思うのだ。
ふと、ひとつの可能性を思い付く。
婚約者を亡くした第一王子。既に後ろ楯が機能していない。そして、代替になれそうな第二王子。
クリフォードよ、お前死んでもいいと思って戦ってないか?




