表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
46/337

44 夜に出会う共犯者

 クリフォードは放っといても死ぬと見られているのだろうか。

 だから、第二王子派は大人しくしているのかもしれない。


「もう第一王子派は死に体と見ていいな」

「死に体って言うな!」

「大体が第二王子派と見て手当たり次第声をかける」

「はい! 異議有り!」

 ナルミスの抗議を無視して結論付けるとカージスが手を上げた。


「やっぱり、出すものは国から出してもらった方がいいと思います! 今日のこの話は報告させてもらいますからね!」

「おう、報告しろ」

 義憤に燃えているような顔をしているので、笑って返す。


「大体お前の報告書の書き方がまずいんだよな。魔物が出ました、倒しました、終わり。子供の作文か。もっと詳細に書かんかい」

「だって報告書なんか書いたことなかったんですよ!」

 説教を交えながら詰め寄ると義憤はどこへやら、泣き言に変わる。

「お前が報告することによって、国が動いてくれるならそれで良し。どっちにしろ、俺は武器や金が得られればいいんだ」

 しゃべってる途中でマシュウと目があった。

 にやっと笑い返す。お前も報告しろよと念を込める。



 早川はもっと飲んでいたかったのに、カージスが眠いと言い出して解散になってしまった。

 消化不良を抱えたまま寝たくないので、クリフォードを呼び出すことにした。

「……眠いんだけど」

 こちらは既に寝ていたらしい。全然目が開いていない。

「そっちの様子はどうだ」

「今日はあんたの奥さんの実家近くの魔物を狩ってて……」

「え? ふじに会ったの?」

「うん、きれいな人だね……」

 しゃべってる内に寝そうになってるのか、体が傾いている。


「寝るな! まだ寝るな!」

「疲れた……硬かった……」

 眠気のせいか言葉が辿々しい。

「硬い魔物はな恐らくそっちで力をつけた魔物。だからお前には倒しにくいんだ」

「どういう……」

「魔物を倒すほど次の戦闘が楽になった経験はないか。魔物を倒す度にその強さを奪って自分の物にできると俺は考えている。

 だから、ガウェイン産の魔物は楽に倒せるんだ。お前がガウェインで倒してきた魔物と同じ性質を持つ魔物は倒しやすい。

 反対にそちらで成長した魔物はお前が倒した経験があまりないから倒しにくいんだ」

「ふーん……」

 わかっているのかいないのか気のない返事しか帰ってこない。


「そちらで困ってることはないか?」

「治安が悪いよ……今日も盗賊に出逢ったし」

「まあ、しょうがないなそれは。世相だから。誰か付き従ってるんだろう?そいつに任せとけばいい」

「……」

 返事がない代わりに妙に不機嫌そうな視線が返ってきた。

 どうしたんだろうと思うが、先に抱いていた疑問を解消する。


「お前、死んでもいいとか思ってないよな?」

「思ってないよ今は」

「今はぁ?」

「あなたを家族の元に帰すと誓ったから」

「……おう」


 返答の仕方から、やはり厭世的な感情は抱いていたらしいとわかる。

 だが、それは今はないと言う。その原因が自分にあったとは、想像だにしていなかったので早川は面食らった。


「この鏡、何をきっかけで会話できるようになるのかな」

「さあな。あれじゃないか、月の光が届いてると使えるのかもな」

 前回使えたときと今回と共通する事柄を思い浮かべて推論する。


「こっち奥まった室内なんだけど」

「小さい光は届いてるんじゃないか」

 炭焼きの男の家は簡素な作りなので、隙間はそこかしこにあった。

「じゃあ、使いたくないときはこれを布か何かで厳重に包めばいいんだな」

「そんなときあるか?」

「眠い!」

 怒りをにじませた一言に、苦笑した。さすがにかわいそうになったので解放する。



 さて、どうするか。

 こちらはまったく眠れないのだ。自由に使える金でもあれば、飲みに出たりもできるのにと口惜しく思う。

 金を得るのは兵力のためなどと言ったが、自分自身が使うためでもある。


「悪党ぶん殴って奪えばいいか」

 酔っぱらって悪事を働く者など探せば居そうだと考えた。



 そうと決めれば行動あるのみ、と意気揚々と部屋を出た。ところに、女が一人立っていた。

「騎士様、どうか一夜のお恵みをお与えください」

 唇に赤く紅を引き、目元に色を乗せている。服装は簡素ながら、化粧を施した顔は中々あだっぽい。


 商売女か、と彼女を見ながら考える。金は残念ながら持ってない。だが、あいつらのうちの誰かが持ってるだろう。

「いいぞ、入れ」

 後で借りればいいと結論付けると、彼女を招き入れた。

 緩くうねった金の髪が顔を縁取っている。はっきり大きな目は少し少女のような印象を与えた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ