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38 どうもすいませんでした2

 庭先で老人が夜十彦(やとひこ)苦無(くない)投げを教えている。

 誉めそやされ、夜十彦は機嫌良く乗せられて技を習得していっている。本人は遊びの一貫に思わされているが、実践的な技術である。


 クリフォードと千佐は縁側に座ってそれを眺めている。

「我々は姑息にも義姉が戻ってくる前に事を片付けて何事もなかったかのように装うとしたのです」

 千佐の言い方にそんな言い方をしなくてもと苦笑が漏れる。


「気持ちはわかるよ」

 無駄な心労は避けたいと思うのは自然な心情だろう。

「でも、全然無理でした」

「うん」

 どちらからともなく、長いため息がついて出る。

 つくづく召喚などするものではないと思わされた。人の人生を壊してかかる所業である。


「あの人は大体どんなときでもああやってにこにこされてるから、無理をしてるのか本心からそうなのか全然わからないんですよね」

「そうか」

「夫婦仲は良さそうに見えたんで、なんとも思ってないなんてことはないはずなんですけど」

「そうだね」

 二人の子である吉之介があれだけ父親を恋しがっている辺り、夫婦仲がいいのは本当だろうとクリフォードは思う。



 だだだと足音が響かせながら吉之介が走ってきた。

「あ!」

 庭先の夜十彦の苦無投げを見て声をあげる。そのまま庭に降りようとしたのを、追いかけてきたふじに止められる。


「これ、裸足はダメ!」

 草履を履かせて吉之介を庭へを送り出すと、ふじはにこにこと笑いながらこちらへ寄ってきた。

 千佐が緊張しているのを微妙な表情の変化で読み取る。クリフォードも何を話せばいいのかわからない。

「今日は良い天気ですねぇ」

「そうですね」

 世間話の最たるもの、天気の話題を振られても適当な返事しか返せない。すぐ側に座られてしまって、退路を絶たれたように感じる。


 吉之介は夜十彦から苦無をむしりとると、見まねでそれを投げる。苦無は見事に的に当たる。老人と夜十彦は大袈裟なほどにそれを誉める。

 吉之介の得意気な表情がなんだか見覚えがある。

「母ー」

「上手ねぇ」

 誉めてもらおうと思ってか、吉之介が走り来る。庭から縁側に身を乗り出してふじにひとしきり撫でてもらうと、こちらににじり寄ってくる。


「ん!」

「ん?」

 頭を向けられて意図がわからず首をかしげる。

「父はよくやったって頭ぐいぐいする!」

「ああ……」

 同じように誉められ撫でられたいと要求している。

 望む通りに頭を撫でる。撫でられて満足したのか、ふふんと笑うとまた的の前へ走っていった。


「お父上の代わりが欲しいのかしら」

 ふじに言われて、また罪悪感を握りつぶされた気になる。暗に責めているのではとクリフォードは思った。

「怒ってますか?」

 詮無いことと思いつつ口走ってしまう。

「いいえぇ」

 あっさり否定されて、そんなわけがないと反論しかける。


「戦に行くのは、武士の定めですもの。これまでも遠国に出兵して長く帰らないことはありましたし、今回もそれと同じこと」

 同じと言われると違うと説明したくなるが、細かく説明してもふじの出す結論は変わらない気がした。

 それにどんなに弁明しても、クリフォードのやるべきことは変わらない。


「私は幸せ者ですわ。結婚を諦めていたのに英心様のような立派な方と結ばれてかわいい子まで授かって。私のような醜女には有り余る幸せ。それを思えば、少し待つことぐらいできます」

 聞き逃しかけたが、違和感のある単語が混ざっていた。ふじは今、自分の事を醜女と言った。


「おきれいですよ?」

「まあ、お上手」

 本心から言ったのに、さも冗談を受け取ったかのように笑って流される。意味がわからない。

 ふじの容姿は急に手を握られたりすれば動揺するくらいには美人である。

 緩くうねった髪は艶やかで彼女のはっきりした顔立ちを彩っている。

 大きめですこし垂れた目はにこやかな表情と共に柔らかな印象を与えている。

 ふっくらした唇は嫌みなく色気がある。

 着物ではっきりとはわからないが、出るとこは出ていて素晴らしい体型であることは間違いない。


「母ー!」

 吉之介がまた走ってきた。勢いよくふじの胸元に飛び付く。勢い余って胸ぐらをつかんでしまい、膝に倒れ込む。

 それでふじの豊満な胸元が顕になってしまう。

「うわあああ!」

「あら、まあ!」

 唐突な露出にクリフォードは動揺するが、ふじは息子の方を先に気遣う。胸の谷間が丸見えなのはそのままに息子を助け起こす。

「あの、早く仕舞ってください!」

 慌てて顔を反らす。すぐ側の千佐の存在に冷や汗が出る。

「いや、あの」

「そこが見えていても誰も気にしませんよ?」

 千佐に弁解しようとして、不思議そうに言われる。


「海沿いで働いている女などは諸肌脱いで仕事してますよ」

「ええ……」

 またしても文化の違いがクリフォードを襲う。

「でも、大きい胸が好きな殿方はたくさんいますよ」

「えっ」

 胸元を直しながら言うふじの言葉に千佐は自分の胸を見下ろす。


「別に小さくはないですが……義姉上ほどは……」

 千佐は目に見えて落ち込む。あだっぽく笑うふじと落ち込む千佐に挟まれて勘弁してくれとクリフォードは内心苦しんだ。



「醜女ってなんだろう」

「私も義姉は美人に見えるんですが、この国の一般的な美人の基準からは外れてるんです」

 ふじは今吉之介のすぐ側で苦無投げを見ている。


「髪は真っ直ぐで目はすっと切れ長で色白で頬はふっくらしてるのがいいとされてるんです」

「へー……千佐はそれ全部満たしてるね」

「えっ!? いや、私は目の大きさなどは当てはまってないと思いますが」

 珍しくしどろもどろになり、照れてる様が可愛らしいと思う。


「んん!そうではなくてですね、私が言いたいのはですね、その」

 千佐は気を取り直して発言しようとするが言いづらそうだ。


「人妻に手を出すのはいけないと思うんです。武家法度でも禁止されてますし」

「出さないよ!? 何で出すと思ったの!?」

 千佐はごく真剣だ。なんだかすれ違ってばかりに感じる。

千佐はCカップぐらい

ふじはEカップぐらいな感じで

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