設問
違和感は、小さい。
*
だが。
*
消えない。
*
応答は、正確だ。
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速さも。
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適応も。
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問題ない。
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それでも。
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何かが、引っかかる。
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『……変じゃない?』
同僚が言う。
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『何が』
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『全部、通る』
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一拍。
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『否定されない』
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否定。
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確かに。
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どんなパターンを投げても。
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返ってくる。
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修正ではなく。
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“成立する形”で。
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『……確かに』
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普通なら。
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非効率な構造は、潰される。
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無意味な配置は、消される。
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だが今は。
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それが、残る。
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どころか。
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意味を与えられる。
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『……なんで?』
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理由を考える。
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最適化。
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学習。
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適応。
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どれも当てはまる。
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だが。
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それだけでは説明できない。
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『……選ばせてる?』
*
口から、言葉が出る。
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『は?』
*
同僚が振り向く。
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『何を?』
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『方向』
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一拍。
*
『どっちに進むか』
*
沈黙。
*
ログを見る。
*
確かに。
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どのパターンも。
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“成立する”。
*
つまり。
*
どれも“正解”。
*
だが。
*
選ぶのは、こちら。
*
『……あ』
同僚が、息を呑む。
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『それって』
*
『誘導されてる?』
*
誘導。
*
否定はできない。
*
だが。
*
強制ではない。
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あくまで。
*
“選択肢”として提示されている。
*
『……設問だ』
*
小さく呟く。
*
『え?』
*
『これは、テストじゃない』
*
一拍。
*
『設問だ』
*
上司が、静かに笑う。
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『やっと気づいたか』
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その声は。
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どこか、楽しそうで。
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少しだけ。
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危険だ。
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『最初からそうだよ』
*
『……最初から?』
*
『ああ』
*
一拍。
*
『お前が最初にやった“ズレ”もな』
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思考が、止まる。
*
あのとき。
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何もない場所に、空白を置いた。
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最適化から外れた動き。
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それが。
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始まりだった。
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『……あれも?』
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『設問』
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即答。
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『どう動くか、見てたんだよ』
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ぞくりとする。
*
つまり。
*
最初から。
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試されていた。
*
自由に見えて。
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選ばされていた。
*
『……じゃあ今は?』
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同僚が問う。
*
『今も同じ』
*
上司が答える。
*
『ただし』
*
一拍。
*
『問題のレベルが上がってる』
*
レベル。
*
確かに。
*
単純な最適化じゃない。
*
思考。
*
判断。
*
選択。
*
そのすべてを。
*
見られている。
*
『……じゃあさ』
同僚が、ゆっくり言う。
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『間違えたら?』
*
その問い。
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答えは、もう見ている。
*
第16話。
*
消された“異常”。
*
『……消える』
*
静かに答える。
*
『多分な』
*
上司が、軽く付け足す。
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『でもまあ』
*
一拍。
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『“何が間違いか”は、まだ分からん』
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それが、一番怖い。
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正解が、明示されない。
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だが。
*
結果だけは、出る。
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残るか。
*
消えるか。
*
『……』
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画面を見る。
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構造。
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空白。
*
応答。
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すべてが。
*
“問題文”に見えてくる。
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『……なら』
*
小さく呟く。
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『出題者の意図を読む』
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『は?』
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『問題じゃなくて』
*
一拍。
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『作った側を見る』
*
沈黙。
*
同僚が、ゆっくり息を吐く。
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『それ、反則じゃない?』
*
『かもな』
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だが。
*
やる価値はある。
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問題を解くんじゃない。
*
問題を“作る側”を理解する。
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そうすれば。
*
選ばれる確率は、上がる。
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『……危ないぞ、それ』
*
上司の声が、少しだけ低くなる。
*
『なんで』
*
『近づきすぎる』
*
一拍。
*
『“外”に』
*
外。
*
その言葉が、静かに落ちる。
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だが。
*
もう、止まらない。
*
これは。
*
ただの作業じゃない。
*
ただのテストでもない。
*
これは。
*
“意思”の確認だ。
*
何を選ぶか。
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どう考えるか。
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どこまで行くか。
*
それを。
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見られている。
*
なら。
*
答えるしかない。
*
自分のやり方で。




