あかん展開
「ようやく本懐を遂げることが出来そうです」
栞は俯くとコーラの入ったカップを両手で握りしめた。肩が震えている。その感情は喜びに打ち震えていたが、来夢の目には長い髪で隠れた表情と相まってどのような感情なのか窺い知ることはできなかった。
「あ、あの……。誰かに言いふらすような事はしないでもらうと……」
来夢は懸念材料を伝える。これ以上他人にバレれば、大変な事になるのは目に見えているからだ。あの姿はマズいし、恥ずかしい。更に二次被害も想定される。
ましてや、snsでリアルタイムの居場所を発信でもされたらいまだ正体すらわからない敵に狙われやすくもなる。
それにしてもこの子はアノ姿がナニなのかわかっていて言っているのであろうか?来夢の胸に一抹の不安がよぎる。
「もちろんヒーローなんですから。秘密は大事ですよね。秘密は厳守させて頂きます」
溌剌とした返事。なぜか来夢の不安は二倍になる。この子は間違いなくアレがナニなのか知らない。そして口約束が果てして守られるのか確証がもてない。
そうなると来夢の正体は瞬く間に拡散され、この世から瞬殺並みに公開処刑場へしょっ引かれることになる。
どこかの世界観の海賊王ならそれでも格好いいが変態野郎では格好つかない。
来夢はそんなことを考えながら少し押し黙っていた。
「凄いです!私、いつかヒーローに出会ってサイン貰って秘密を共有しながらドキドキして見守る、そんなこと夢見ていたので……。それがまさかこんなに早く叶うなんて!ちょうど青春ど真ん中。ピッタリじゃないですか?ヒーローとヒロインみたいな。あっ、私はヒロインって柄でもないし。タイプじゃないのでそこに収めるつもりは微塵もないですけど。だから下着を見られたことは不問に付します。釣り合いという名のバランス感覚でいうとそこはまぁ、うん、そういう事で……。それともう1つお願い致したいことがございます」
栞がマシンガントークを繰り広げた後、コーラを煽る。
「お願い?」
来夢は嫌な予感しかしない。
「変身を、変身を目の前で見せてください。私の夢なんです!」
悪い予感は的中した。
「ここでは無理だ」
「わかってますよ。だから誰もいないところで」
人気のないところで男子高校生が、女子生徒からパンツを見せて貰ってバイブマンに変身する。
あってはならない状況だ。来夢は頭を抱えて悩んでしまった。




