身バレ
学校近くのファストフード店。5分前に約束した場所に到着した来夢の目には既に席に着席し、小説を読む栞の姿があった。
金のない来夢は真っ直ぐ席に向かうが店員に注意され一悶着となった。
その様子に気づいた栞は事情を尋ねるとコーヒーを一つ自分のポケットマネーから支払う。電子決済を済ますとコーヒーを片手に黙って来夢の前に突き出した。
来夢は面目なさそうに頭を下げるとバイト代が入ったら返すと告げ、席についた。
「時間が勿体ないので要点から説明しますね」
席に着くやいなや栞が口を開く。来夢は渡されたコーヒーの温もりを両手で感じながら次の言葉を待った。
「あなた、変身しましたよね。ヒーローのように飛んで戦い、そして去って行きました」
「見間違いだろ?」
来夢は惚ける。
「いえ、視力は良い方です。友達はいたのにあなたはいなくなっていました。あなたしか考えられません。月原君」
「あーっ……。俺体調悪くなって先に降りたんだ。そうだそうだ」
「いえ、降りる階段は私の横にありました。私の横を通らず屋上を後にするとはどのような方法で?透明人間か何かでしょうか?それはそれで興味深いですが」
「だから、見間違いだろ?つうか、見落とし。人間って結構目に入っているようで見落としてる事よくあるからな」
何とかやり過ごす。その固い意思のもと来夢は嘘をつき通そうとする。思案する栞はスマホを取り出す。
「本当の事をおっしゃってくださらないのですね。あくまでシラをきると言うのであればその時の映像、昼休みの終わりまでの屋上のドア並びにあなたが変身する様これを拡散させて頂くしか――」
「えっ!?動画あんの?ちょっまっ」
「ええ、認めるんですか認めないのですか。私はボタン一つで投稿できますよ。ちなみにフォロワー数は5万超えです」
「めっちゃフォロワー数多いわ!何やってる人?」
来夢は怖くなり、コーヒーを溢しそうになる。
「小説並びにヒーローものの考察についての配信ですが」
配信者ですが何か的にドャってくる。
「み、認めます……」
「はい?聞こえなかったのですが」
蚊の鳴くような声の来夢の返事にキラリと目の奥を輝かしながら再度問い返す栞。
「み・と・め・ます!」
「――やはり。私の見立ては正しかった……と言う事ですね」
勝ち誇ったように笑みを浮かべる栞。取調室で罪の告白した犯人とはこんな気持ちなのだろうか、来夢は肩を落としてそう思った。
「拡散だけは……」
来夢は貰った熱いコーヒーを我慢してグッと煽った。
「あっ、大丈夫ですよ。そんな動画一切ないですから」
来夢はコーヒーを全てを吐き出した。そして咳き込んだ。
まんまと栞の芝居にはめられたのである。こうして来夢の変身の秘密は簡単に一人バレてしまったのであった。




