告白
翌日の朝、来夢が登校すると教室の入口には見知らぬ髪の長い女子学生がいた。
折り目正しい制服の着こなし。スレンダーな体型と相まって雰囲気から真面目を体現したような人柄が推察される。
そんな彼女は来夢の姿を確認すると眉間にグッとしわを寄せてずんずんと音をさせんばかりに来夢に近づいてきた。
「なぜ来てくださらなかったんですか」
「なぜって……。――あ、あぁ、宗田の言ってた手紙の子か。別に俺は用はないし、バイトとか忙しいから……。それに宗田には断っといてくれって頼んどいたんだけど」
来夢は面倒くさそうに頭を掻いた。
「月原君……ですよね」
「あぁ」
これはひょっとして告られるのか、人生初のイベントを前に平常心を装いつつも落ち着かない来夢。どう傷つけないように断るべきか脳のフル回転が始まる。
「見ました。いや、見られ……た?たし、見たのもあるし見られたのもある?みたいな……」
「?――っ、な、何の話し?」
身構えていた方向とはあさっての方向から突如猫パンチが飛んできたような顔になる。この子は何を言っているのだ?来夢は話しの方向性が見えず問い返す。
「屋上、いましたよね。昼休み。眼鏡の友達と。その時私のスカートの中。目が合いました、間違いないです」
「ひょっとしてそんなことわざわざ確かめに?あれは風吹いて不可抗力だし、見ようとしたんじゃなくて目に入ったからすぐ背けたでしょ?見えてないよ、だから……うん。俺はてっきり告白……いや、何でもない」
「やはり見てたのですか。――最も、そこは本日の論点ではございませんけど。今、告白と言いましたか?ふっ」
女生徒は俯くと目を瞑り、軽く鼻で息をついた。
マウントをとられたかのような態度にプライド高い来夢が言い返す。
「断ろうと思っていたから。大体そんな手紙寄こすのってそんな類いのばっかだろ?そんな連中ばっかりだったからさぁ、違ってたらごめんね」
登校してきた絵音が来夢に気づく。前に女子生徒がいるのを見とめると誰か確認した。
「来夢おはよう。何だよ、如月栞が来夢に何の用だよ」
「これはこれは増田さん。――もしかして増田さんの想い人って。失礼ですが月原君は増田さんの幼なじみの方ですか」
「まぁ、そうだけど……」
「ばっ!ばか、如月何言ってんだよ。ら、来夢、あっち行ってろよ」
「お取り込み中悪いのですが、私、まさに月原君に用があるのですが……」
「用って何だよ」
「そうですねぇ。告白とは、違います。あなたの考えるような男女の機尾についてのあれこれとはかけ離れたことですので増田さんはご安心ください。――それに月原君はイケメンですがタイプという範疇ではございませんので」
絵音はジトッと来夢の顔色を伺う。 栞は来夢にニヤリと笑いながら口元を動かす。
その動きはまがう事無き「ぱ・ん・つ」。ブラフと受け取った来夢は観念したように首を縦にふる。その場をおさめて放課後落ち合うことにした。




